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第10章 ダンジョン攻略
22 【ワルダー盗賊団1】
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<<ワルダー盗賊団団長ワルダー視点>>
「お頭、新しく出来たマサル共和国って国なんですが、ひどく景気が良いらしいですぜ。
世界中の名だたる商会が支店を出してしのぎを削っているって聞きましたよ。」
「あっしも聞いたことがありやす。
毎日大量の観光客が訪れ、大金が動いているとか、世界中の貴族がこぞって訪れて、お金をばら撒いているとか。」
「それだけじゃねぇんです。
かなりの難易度のダンジョンが最近攻略されて、そこから産出される資源や素材が、かなりの額で取り引きされているんでさぁ。」
「お頭、こんな美味しい国を見逃す手はありませんぜ。」
「てめえら、てめえらの言いたいことは分かってらぁ。
ただ、あの国には手出ししちゃならねぇ。
あの国にはな、マサルがいるんだよ。
忌々しいが、アイツには勝てねえ。
変な魔法を使いやがるし、用心深いんだよ。
隙が全くねぇんだ。
てめえらも、マサルの英雄譚は聞いているだろう。
何百もいるホンノー族を一切手出しさせずに捕らえたとか、魔族相手にクーデターを未然に防いだとか、この星に落ちてきた隕石を砕いたとか、最近では新しい大陸を見つけてそこに住む亜人共を平定したとか。
とにかく、アイツの力はそこしれねえんだよ。」
「そういや、昔アイツが乗った馬車を襲撃した時、馬車を止めることすら出来ずに捕まっちまいましたね。」
参謀のアレンがぽつりと呟いた。
「ああ、全く嫌な記憶だぜ。
たまたま、役人の中に鼻薬を嗅がせてたのがいたから良かったようなものの、それが無かったら、あの世行きになるところだったな。」
俺は大きなため息を吐きながら、遠い目をしていた。
あの時、もう10年も前になるか。
俺達は、新婚旅行で浮かれているであろう、マサル達の乗った馬車を襲ったのだ。
キンコー王国の公爵位のくせに、ろくすっぽ護衛も付けないで悠々と旅行しているんだから、カモだと思うじゃないか。
真夜中なのに無防備で馬車が走っていれば、襲ってくれと言っているようなもんだから、30人くらいの部下を引き連れて襲撃したんだ。
近くまで近づいたところで、矢を放ったが、どうも届かねぇ。
確実に射程内なのによ。
火矢を撃たせても途中で火が消えてしまう。
何が起こったのか全く分からなかったが、俺達を怒らせるには充分だった。
当時のワルダー盗賊団と言えば、周辺諸国から恐れられ、騎士団や警備隊も二の足を踏む存在だったんだぜ。
それなのに、俺達の攻撃が全く効かないんじゃ、調子に乗っていた若かりし俺には我慢ならなかったんだよ。
ただアレンだけはその不気味さに、攻撃の中止を進言していたんだが、いきり立った俺を止めることは出来なかった。
それで剣を取って全員で突撃したんだ。
いくら英雄だなんて言われてても、俺達30人の相手になるわけねぇからな。
ところが、馬で馬車に近づいた途端、何かに弾かれた。
それだけじゃねぇ、まるで身体中を何かが突き抜けたかのような衝撃に身体が全く動かなくなっちまった。
なんとか逃げようとしたが、馬も麻痺しているみたいで立ち上がることすら出来ないでいた。
忌々しく馬車を見るとマサルが窓からこちらを見ている。
その手が上がったと思ったら、俺達は全員、一瞬のうちに縄で縛られていた。
わけがわからん。
切れない縄に縛られたまま、一晩を明かした俺達は、その翌日、やってきたこの国の警備隊にそのまま御用だ。
なんともしまらねえ話しだぜ。
手懐けていた役人に処刑直前に牢から出された俺は、数人の幹部を連れて命からがら逃げ出した。
あれから、もう一度盗賊団として再生するまで、だいぶ掛かっちまったぜ、全くよう。
「お頭、それでどうしやす?」
「どうするって何をだ?」
「マサル共和国の襲撃です。
その時は、馬車に何か仕掛けがしてあったに違いありません。
今度は街を襲うのですから、いくらマサルでも、防ぐのは無理でしょう。」
「たしかにな。いくら英雄でも、観光客に紛れて侵入されたらどうしようもないに違いない。
泊まった宿から火を放ってしまえば、いくらなんでも防げないだろうな。
何組かに分かれて、同時に火を放てば、警備隊も右往左往するに違いねぇ。
観光客がパニックになって動き出せば、魔法も何もあったもんじゃないだろうな。」
「じゃあ、襲撃で決定ですね。」
5年前に入ったベルガが息巻いている。
手柄を立てたくてしようがないみたいだな。
しかし、アレンは乗り気では無さそうだ。
「アレン、どうした。」
「いえね、10年前にやられたことの仕掛けが解明出来ていないんですよ。
また、おかしな仕掛けを仕掛けているような気がするんでさあ。」
アレンはあれから、あの時の仕掛けをずっと研究していたらしい。
アレンの懸念も分からないでも無いが、あの後に盗賊団に入った奴等の方が圧倒的に多い。
たかだかひとりの人間に怖気付いていたら、舐められちまう。
「アレン、今回は慎重に計画を立てて行こうじゃないか。
なに、油断さえしなきゃ大丈夫さ。
よし、野郎ども。
マサル共和国を襲うぜ。
準備をしやがれ。」
「お頭、新しく出来たマサル共和国って国なんですが、ひどく景気が良いらしいですぜ。
世界中の名だたる商会が支店を出してしのぎを削っているって聞きましたよ。」
「あっしも聞いたことがありやす。
毎日大量の観光客が訪れ、大金が動いているとか、世界中の貴族がこぞって訪れて、お金をばら撒いているとか。」
「それだけじゃねぇんです。
かなりの難易度のダンジョンが最近攻略されて、そこから産出される資源や素材が、かなりの額で取り引きされているんでさぁ。」
「お頭、こんな美味しい国を見逃す手はありませんぜ。」
「てめえら、てめえらの言いたいことは分かってらぁ。
ただ、あの国には手出ししちゃならねぇ。
あの国にはな、マサルがいるんだよ。
忌々しいが、アイツには勝てねえ。
変な魔法を使いやがるし、用心深いんだよ。
隙が全くねぇんだ。
てめえらも、マサルの英雄譚は聞いているだろう。
何百もいるホンノー族を一切手出しさせずに捕らえたとか、魔族相手にクーデターを未然に防いだとか、この星に落ちてきた隕石を砕いたとか、最近では新しい大陸を見つけてそこに住む亜人共を平定したとか。
とにかく、アイツの力はそこしれねえんだよ。」
「そういや、昔アイツが乗った馬車を襲撃した時、馬車を止めることすら出来ずに捕まっちまいましたね。」
参謀のアレンがぽつりと呟いた。
「ああ、全く嫌な記憶だぜ。
たまたま、役人の中に鼻薬を嗅がせてたのがいたから良かったようなものの、それが無かったら、あの世行きになるところだったな。」
俺は大きなため息を吐きながら、遠い目をしていた。
あの時、もう10年も前になるか。
俺達は、新婚旅行で浮かれているであろう、マサル達の乗った馬車を襲ったのだ。
キンコー王国の公爵位のくせに、ろくすっぽ護衛も付けないで悠々と旅行しているんだから、カモだと思うじゃないか。
真夜中なのに無防備で馬車が走っていれば、襲ってくれと言っているようなもんだから、30人くらいの部下を引き連れて襲撃したんだ。
近くまで近づいたところで、矢を放ったが、どうも届かねぇ。
確実に射程内なのによ。
火矢を撃たせても途中で火が消えてしまう。
何が起こったのか全く分からなかったが、俺達を怒らせるには充分だった。
当時のワルダー盗賊団と言えば、周辺諸国から恐れられ、騎士団や警備隊も二の足を踏む存在だったんだぜ。
それなのに、俺達の攻撃が全く効かないんじゃ、調子に乗っていた若かりし俺には我慢ならなかったんだよ。
ただアレンだけはその不気味さに、攻撃の中止を進言していたんだが、いきり立った俺を止めることは出来なかった。
それで剣を取って全員で突撃したんだ。
いくら英雄だなんて言われてても、俺達30人の相手になるわけねぇからな。
ところが、馬で馬車に近づいた途端、何かに弾かれた。
それだけじゃねぇ、まるで身体中を何かが突き抜けたかのような衝撃に身体が全く動かなくなっちまった。
なんとか逃げようとしたが、馬も麻痺しているみたいで立ち上がることすら出来ないでいた。
忌々しく馬車を見るとマサルが窓からこちらを見ている。
その手が上がったと思ったら、俺達は全員、一瞬のうちに縄で縛られていた。
わけがわからん。
切れない縄に縛られたまま、一晩を明かした俺達は、その翌日、やってきたこの国の警備隊にそのまま御用だ。
なんともしまらねえ話しだぜ。
手懐けていた役人に処刑直前に牢から出された俺は、数人の幹部を連れて命からがら逃げ出した。
あれから、もう一度盗賊団として再生するまで、だいぶ掛かっちまったぜ、全くよう。
「お頭、それでどうしやす?」
「どうするって何をだ?」
「マサル共和国の襲撃です。
その時は、馬車に何か仕掛けがしてあったに違いありません。
今度は街を襲うのですから、いくらマサルでも、防ぐのは無理でしょう。」
「たしかにな。いくら英雄でも、観光客に紛れて侵入されたらどうしようもないに違いない。
泊まった宿から火を放ってしまえば、いくらなんでも防げないだろうな。
何組かに分かれて、同時に火を放てば、警備隊も右往左往するに違いねぇ。
観光客がパニックになって動き出せば、魔法も何もあったもんじゃないだろうな。」
「じゃあ、襲撃で決定ですね。」
5年前に入ったベルガが息巻いている。
手柄を立てたくてしようがないみたいだな。
しかし、アレンは乗り気では無さそうだ。
「アレン、どうした。」
「いえね、10年前にやられたことの仕掛けが解明出来ていないんですよ。
また、おかしな仕掛けを仕掛けているような気がするんでさあ。」
アレンはあれから、あの時の仕掛けをずっと研究していたらしい。
アレンの懸念も分からないでも無いが、あの後に盗賊団に入った奴等の方が圧倒的に多い。
たかだかひとりの人間に怖気付いていたら、舐められちまう。
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