254 / 382
第11章 ランスの恋
16 【狙われた……?】
しおりを挟む
<<リザベート視点>>
セラフ様いえ、クララさんをお茶会で披露したら、たちまち高評価でした。
さすがはマリス様の側近と言うべきでしょうか。
貴族夫人のうわさ話しは伝わるのが速いもので、その旦那様達が集う国際連合総会でも、休憩中はクララさんの話しで持ちきりでした。
侍女頭に迎えたいと言う方や子息の教育係を希望される方、中には自分の妻にと望む方もおられ、その対応に追われてしまいました。
思い付きでクララさんを作ってしまったことを少し後悔していますが、お茶会の時はセラフ様も楽しそうにしておられたので、よしとしましょう。
総会の1日目が終わり、後片付けを事務局メンバーにお任せして、わたしは一足先に事務局を後にします。
国連総会の時は出席者の方々が自らの護衛としてそれぞれの騎士をそれなりの人数連れてきています。
国を代表される方々の護衛を務められる方達ですから、立派な騎士様が多いのですが、全てがそうだとは言い難いようです。
「おい平民、我等はスリトー王国の王立騎士団だぞ。もっと融通せぬか!」
「そうおっしゃられましても、この鉱石は採掘するのが難しく、纏まって入荷しないのでございます。
国際連合の方で決められたこの比率で各国共お願いしております。」
「平民のくせに生意気な!」
激高した騎士のひとりが剣を抜きました。
「おまえ、俺達スリトー王国王国騎士団に楯突く気か。お前達の商会を根こそぎ潰すことなど、我々にはたやすいことなのだぞ!」
「おい、お前等そこまでだ。我が国に来て騒動を起こすとは何事だ。」
警備隊長のマクベスさんが数人の隊員を連れて駆けつけてきました。
恐らく、剣を抜く騎士を見て店の人が警報ベルを押したのでしょう。
全ての店には『テレホン』と共に非常用の警報装置が付けてあります。
押すと、近くの警備隊詰所に連絡が行き、警備隊員が数分で駆けつけるようになっています。
今日は国際連合総会がありますから、マクベスさんも最寄りの詰所に詰めていたようです。
「なんだお前は、俺達がだれか知っているのか!」
「ああ、スリトー王国のヤマトー副団長だったかな。よく知っているぞ。
ソマルト渓谷でのワイバーン騒動の時に影に隠れて震えていた奴だよな。」
「な、なにを、ふざけたことを!言いがかりにも、ほ、程がある!」
「俺の顔を見忘れたか?いや震えていて覚える余裕も無かったかもな。」
「ヤマトー様、あいつの顔に見覚えがあります。あの騒動の時、ワイバーンの大軍をひとりで追い払った加藤運輸のマクベスです。」
「ほう、そっちの部下君は俺のことを覚えているだけの余裕があったというわけか。
じゃあ、そっちの部下君にこの事態を説明してもらおうか。」
「な、何を勝手な。」
ヤマトー副団長が剣をマクベスさんに向けようとしましたが、マクベスさんの剣が閃いたかと思うと、あっけなくからめとられた剣が地面にたたき落されます。
何が起こったかも理解できず、ヤマトー副団長は立ちすくんでいます。
「さあ部下君、話してくれ。」
「はい、マサル共和国で採掘される鉱石はどれも希少性が高く高額で取引されていることはご存じだと思います。
当然その取引量や取引価格は国際連合で合意したものを守る取り決めになっていることは承知しています。
副団長は、それを正規の国際取引ではなく、市場の買い占めで過剰に入手されようとしたんです。」
「なるほど。それでお前達はそれを止めたのか?」
「はい、何度も諫めておりましたが、ヤマトー副団長の家は侯爵家でありまして、わたしどもも強くは出ることができず......」
「この件についてはスリトー王もご存じのことか?」
「恐らく、ご存じないかと。
我が国は小国であるが故、市街では目立たぬようにして問題を起こすなと厳命されておりますから。」
「となるとこいつの勝手な行動だな。よし、こちらで拘留する。
部下君、君はスリトー王の耳に入れておいてくれ。」
「わたしからもスリトー様にお話しておきましょう。」
「これはリザベート様、こちらにおられたのですね。」
「ええ、一部始終を見ておりました。わたしが証言いたします。」
「それは助かります。どうも貴族連中の相手は苦手でして。
じゃあ、こいつ連れていきますので。
おい、部下君、他の騎士達をちゃんと見ておけよ。」
そう言ってマクベスさんは何か喚き散らしているヤマトーさんを引きずって詰所に戻っていきました。
さて、国際連合事務局に向かいましょうか。
振り返るとスリトー王国の騎士団の皆様が、わたしに対して跪いておられます。
「聖女リザベート様とはつゆ知らず、大変なご無礼をお許しください。」
頭を砂地に擦る付けるようにしている皆さんを何とか立たせて、一緒に事務局に向かいました。
事務局ではお義父様であるクラーク キンコー王国宰相とスリトー国王が立ち話をされているところでした。
「おお、リザベート。お前家に帰ったんじゃなかったか?」
お義父様の問い掛けに、わたしはおふたりに挨拶をしてお義父様に声を掛けます。
「お義父様、少しお耳をお借りしたいのですが。」
わたしがお義父様の注意を引いたことで、騎士団の彼はスリトー王に先程の話を注進します。
すぐにスリトー王の顔が青ざめ、騎士団にいくつかの指示を出すと、騎士団の面々は急いで散らばっていきました。
「リザベート、なにがあったんだ?」
「クラーク殿、それはわたしからお話しします。実は.....」
お義父様も呆れたような表情をしていますが、ストリー王国の問題として内々に処理することを承知して下さいました。
悪事が知れ渡るのは早いものですね。
翌日の総会での席では、スリトー王と外務大臣のヤマトー侯爵が出席者全員の前で土下座をして謝っている姿がありました。
あの副団長はどうなったかって?
彼は副団長の任を解かれ、このマサル共和国預かりとなりました。
毎日一兵卒として、マクベスさんにしごかれているみたいですよ。
セラフ様いえ、クララさんをお茶会で披露したら、たちまち高評価でした。
さすがはマリス様の側近と言うべきでしょうか。
貴族夫人のうわさ話しは伝わるのが速いもので、その旦那様達が集う国際連合総会でも、休憩中はクララさんの話しで持ちきりでした。
侍女頭に迎えたいと言う方や子息の教育係を希望される方、中には自分の妻にと望む方もおられ、その対応に追われてしまいました。
思い付きでクララさんを作ってしまったことを少し後悔していますが、お茶会の時はセラフ様も楽しそうにしておられたので、よしとしましょう。
総会の1日目が終わり、後片付けを事務局メンバーにお任せして、わたしは一足先に事務局を後にします。
国連総会の時は出席者の方々が自らの護衛としてそれぞれの騎士をそれなりの人数連れてきています。
国を代表される方々の護衛を務められる方達ですから、立派な騎士様が多いのですが、全てがそうだとは言い難いようです。
「おい平民、我等はスリトー王国の王立騎士団だぞ。もっと融通せぬか!」
「そうおっしゃられましても、この鉱石は採掘するのが難しく、纏まって入荷しないのでございます。
国際連合の方で決められたこの比率で各国共お願いしております。」
「平民のくせに生意気な!」
激高した騎士のひとりが剣を抜きました。
「おまえ、俺達スリトー王国王国騎士団に楯突く気か。お前達の商会を根こそぎ潰すことなど、我々にはたやすいことなのだぞ!」
「おい、お前等そこまでだ。我が国に来て騒動を起こすとは何事だ。」
警備隊長のマクベスさんが数人の隊員を連れて駆けつけてきました。
恐らく、剣を抜く騎士を見て店の人が警報ベルを押したのでしょう。
全ての店には『テレホン』と共に非常用の警報装置が付けてあります。
押すと、近くの警備隊詰所に連絡が行き、警備隊員が数分で駆けつけるようになっています。
今日は国際連合総会がありますから、マクベスさんも最寄りの詰所に詰めていたようです。
「なんだお前は、俺達がだれか知っているのか!」
「ああ、スリトー王国のヤマトー副団長だったかな。よく知っているぞ。
ソマルト渓谷でのワイバーン騒動の時に影に隠れて震えていた奴だよな。」
「な、なにを、ふざけたことを!言いがかりにも、ほ、程がある!」
「俺の顔を見忘れたか?いや震えていて覚える余裕も無かったかもな。」
「ヤマトー様、あいつの顔に見覚えがあります。あの騒動の時、ワイバーンの大軍をひとりで追い払った加藤運輸のマクベスです。」
「ほう、そっちの部下君は俺のことを覚えているだけの余裕があったというわけか。
じゃあ、そっちの部下君にこの事態を説明してもらおうか。」
「な、何を勝手な。」
ヤマトー副団長が剣をマクベスさんに向けようとしましたが、マクベスさんの剣が閃いたかと思うと、あっけなくからめとられた剣が地面にたたき落されます。
何が起こったかも理解できず、ヤマトー副団長は立ちすくんでいます。
「さあ部下君、話してくれ。」
「はい、マサル共和国で採掘される鉱石はどれも希少性が高く高額で取引されていることはご存じだと思います。
当然その取引量や取引価格は国際連合で合意したものを守る取り決めになっていることは承知しています。
副団長は、それを正規の国際取引ではなく、市場の買い占めで過剰に入手されようとしたんです。」
「なるほど。それでお前達はそれを止めたのか?」
「はい、何度も諫めておりましたが、ヤマトー副団長の家は侯爵家でありまして、わたしどもも強くは出ることができず......」
「この件についてはスリトー王もご存じのことか?」
「恐らく、ご存じないかと。
我が国は小国であるが故、市街では目立たぬようにして問題を起こすなと厳命されておりますから。」
「となるとこいつの勝手な行動だな。よし、こちらで拘留する。
部下君、君はスリトー王の耳に入れておいてくれ。」
「わたしからもスリトー様にお話しておきましょう。」
「これはリザベート様、こちらにおられたのですね。」
「ええ、一部始終を見ておりました。わたしが証言いたします。」
「それは助かります。どうも貴族連中の相手は苦手でして。
じゃあ、こいつ連れていきますので。
おい、部下君、他の騎士達をちゃんと見ておけよ。」
そう言ってマクベスさんは何か喚き散らしているヤマトーさんを引きずって詰所に戻っていきました。
さて、国際連合事務局に向かいましょうか。
振り返るとスリトー王国の騎士団の皆様が、わたしに対して跪いておられます。
「聖女リザベート様とはつゆ知らず、大変なご無礼をお許しください。」
頭を砂地に擦る付けるようにしている皆さんを何とか立たせて、一緒に事務局に向かいました。
事務局ではお義父様であるクラーク キンコー王国宰相とスリトー国王が立ち話をされているところでした。
「おお、リザベート。お前家に帰ったんじゃなかったか?」
お義父様の問い掛けに、わたしはおふたりに挨拶をしてお義父様に声を掛けます。
「お義父様、少しお耳をお借りしたいのですが。」
わたしがお義父様の注意を引いたことで、騎士団の彼はスリトー王に先程の話を注進します。
すぐにスリトー王の顔が青ざめ、騎士団にいくつかの指示を出すと、騎士団の面々は急いで散らばっていきました。
「リザベート、なにがあったんだ?」
「クラーク殿、それはわたしからお話しします。実は.....」
お義父様も呆れたような表情をしていますが、ストリー王国の問題として内々に処理することを承知して下さいました。
悪事が知れ渡るのは早いものですね。
翌日の総会での席では、スリトー王と外務大臣のヤマトー侯爵が出席者全員の前で土下座をして謝っている姿がありました。
あの副団長はどうなったかって?
彼は副団長の任を解かれ、このマサル共和国預かりとなりました。
毎日一兵卒として、マクベスさんにしごかれているみたいですよ。
0
あなたにおすすめの小説
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
ブックマーク・評価、宜しくお願いします。
不要とされる寄せ集め部隊、正規軍の背後で人知れず行軍する〜茫漠と彷徨えるなにか〜
サカキ カリイ
ファンタジー
「なんだ!あの農具は!槍のつもりか?」「あいつの頭見ろよ!鍋を被ってるやつもいるぞ!」ギャハハと指さして笑い転げる正規軍の面々。
魔王と魔獣討伐の為、軍をあげた帝国。
討伐の為に徴兵をかけたのだが、数合わせの事情で無経験かつ寄せ集め、どう見ても不要である部隊を作った。
魔獣を倒しながら敵の現れる発生地点を目指す本隊。
だが、なぜか、全く役に立たないと思われていた部隊が、背後に隠されていた陰謀を暴く一端となってしまう…!
〜以下、第二章の説明〜
魔道士の術式により、異世界への裂け目が大きくなってしまい、
ついに哨戒機などという謎の乗り物まで、この世界へあらわれてしまう…!
一方で主人公は、渦周辺の平野を、異世界との裂け目を閉じる呪物、巫女のネックレスを探して彷徨う羽目となる。
そしてあらわれ来る亡霊達と、戦うこととなるのだった…
以前こちらで途中まで公開していたものの、再アップとなります。
他サイトでも公開しております。旧タイトル「茫漠と彷徨えるなにか」。
「離れ小島の二人の巫女」の登場人物が出てきますが、読まれなくても大丈夫です。
ちなみに巫女のネックレスを持って登場した魔道士は、離れ小島に出てくる男とは別人です。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
充実した人生の送り方 ~妹よ、俺は今異世界に居ます~
中畑 道
ファンタジー
「充実した人生を送ってください。私が創造した剣と魔法の世界で」
唯一の肉親だった妹の葬儀を終えた帰り道、不慮の事故で命を落とした世良登希雄は異世界の創造神に召喚される。弟子である第一女神の願いを叶えるために。
人類未開の地、魔獣の大森林最奥地で異世界の常識や習慣、魔法やスキル、身の守り方や戦い方を学んだトキオ セラは、女神から遣わされた御供のコタローと街へ向かう。
目的は一つ。充実した人生を送ること。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる