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第14章 そして神になった
17【異世界に米を 5】
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<<大道芸人セイム視点>>
僕達は旅の大道芸人。
一昨日この街について今日で3日目になるんだけど、この国の中心地であるこの街は人も多いし稼ぎも大きい。
神殿前の大広場は国中の様々な一座が集まってお互いの芸を競い合っている。
そのぶん観客の目も肥えているから、ここは大道芸人達のコンテスト会場でもあるわけだ。
僕達の一座は結構人気が高いから、人出の多い場所を確保できている。
おかげで今日も朝から大盛況だ。
「セイム、少し早いけどお昼行っといで。」
「わかったよー、行って来るねー。」
興行は毎日朝10時頃から19時頃まで休みなく行われる。
稼ぎ時でもあるし、少しでも場所を空けてしまうと横取りしようと虎視眈々と場所を狙う同業者が多いのだ。
だから昼は交代で摂ることになっている。
僕は契約している食堂に行きいつもの昼食を食べた。
その帰り道で奇妙な芸をする女の子を見かけたんだ。
キラキラするコインを器用に右手親指だけで放り上げてはキャッチしている。
それが珍しくて思わず声を掛けてしまった。
じーっとこっちを見て黙る女の子。しまった、ナンパだと思われたかな?
「ごめん、ごめん。突然声を掛けられてすぐに答えられるわけないよね。」
自分が大道芸人で、自分達と一緒に芸をしないか誘ってみる。
ちょっと悩んでいたみたいだけどニコッと笑って、一緒に来てくれることになった。
昼時で道は混雑している。
ヒロコはこの街が初めてだって言うから迷子になったら大変だ。
手を差し出すと手を握り返してくれた。
ヒロコの芸は僕が思っていたよりも大好評だった。
始めは片手でだったのがいつの間にか両手になり、右手で投げたコインを左手で、左で投げたコインを右でキャッチするなど、観客達を沸かせるのに充分な芸になっていたのだ。
おかげで稼ぎもこの数日で一番多かった。
「ヒロコちゃん、良い芸だったわよ。おばさん思わず見とれちゃったわ。」
「そうだな、お客さんの視線を集めてたぞ。」
「もういっそ、ウチの座員になったら?」
「.......ありが...とうございます。」
「ほら、ヒロコが困ってるじゃないか。皆んないい加減にしてあげなよ。」
晩御飯を食べながら、いろいろ話しかけられ困っている様子のヒロコに助け船をだす。
「あらやだ、そんなつもりは無かったんだけどね。ヒロコちゃんごめんね。」
「ところでヒロコちゃんだったか、行くところはあるのかい。」
「実はこれからどうしようか困ってたんです。よろしければもう少しだけでもご一緒させて頂ければ。」
座長の言葉にヒロコが答える。
「いいよ、どうせこいつら皆んな今のヒロコちゃんと同じで根無し草なんだ。
ひとりぐらい増えたってなんの問題も無いよ。」
「はい!頑張って働きますので、よろしくお願いします。」
「「「こっちこそ」」」
こうしてヒロコは我が大道芸一座の一員になったんだ。
「セイム、新しい芸を覚えたいんだけど。コインだけじゃすぐに飽きられちゃうでしょ。」
「うーーん、あれだけでも充分だと思うけど。でもやる気があるのはいいことだね。
それじゃあ、ムルカさんに相談してみよう。」
ヒロコが一座に加わってから3週間。
相変わらずヒロコのコイン芸は大評判で、今回の興行は大成功なんだけど、もうヒロコは次の芸を考えているみたいだ。
相談を持ち掛けたムルカさんは座長の次に古株。
気軽な性格っていうのもあって、一座のおふくろ的な立ち位置。
思慮深くていろんな知識を持っている。
「ヒロコちゃん、コインで他に出来ることは?」
「うーん、簡単な手品くらいだったら出来ますけど、大したことないですよ。」
「「手品?」」
手品って、何だ?聞いたことないよ。
「ええ、コインを消したり、手からポケットに移動するとかくらいですけど。」
「それは魔法かい?」
「いえ魔法じゃないんですけど。ちょっとやって見せますね。」
ヒロコは1枚のコインを取り出し、手のひらに乗せる。
その上からハンカチを掛けて、一気にハンカチを取り去ると手の上にあったはずのコインが消えていた。
「ほら、ここに移動しました。」
コインが消えたことに驚く俺達に何事も無かったかのように机の下に置いていたもう片方の手のひらを上げると、そこにコインがあったんだ。
「これはたまげたねえ。まるで魔人のようだ。本当に魔法じゃないのかい?」
「ええ、種明かしをすると、.......」
種明かしをされれば、指の繊細な動きと手首を利かせてコインを隠して投げ飛ばすだけのシンプルなものだが、観客の注意を上手く逸らすと共に最小限の動きで正確に操作しなきゃいけないんだから、やっぱりヒロコの芸は大したもんだ。
「すごいねえ。こんなことが出来るのはヒロコちゃんだけだよ。
十分に芸になるはずなんだけどねえ、魔法と勘違いされちゃうかもね。
でもその器用さは天下一品だよ。何か見世物に活用できればいいのにね。」
本当にムルカさんの言う通りだ。何か考えてあげないとな。
僕達は旅の大道芸人。
一昨日この街について今日で3日目になるんだけど、この国の中心地であるこの街は人も多いし稼ぎも大きい。
神殿前の大広場は国中の様々な一座が集まってお互いの芸を競い合っている。
そのぶん観客の目も肥えているから、ここは大道芸人達のコンテスト会場でもあるわけだ。
僕達の一座は結構人気が高いから、人出の多い場所を確保できている。
おかげで今日も朝から大盛況だ。
「セイム、少し早いけどお昼行っといで。」
「わかったよー、行って来るねー。」
興行は毎日朝10時頃から19時頃まで休みなく行われる。
稼ぎ時でもあるし、少しでも場所を空けてしまうと横取りしようと虎視眈々と場所を狙う同業者が多いのだ。
だから昼は交代で摂ることになっている。
僕は契約している食堂に行きいつもの昼食を食べた。
その帰り道で奇妙な芸をする女の子を見かけたんだ。
キラキラするコインを器用に右手親指だけで放り上げてはキャッチしている。
それが珍しくて思わず声を掛けてしまった。
じーっとこっちを見て黙る女の子。しまった、ナンパだと思われたかな?
「ごめん、ごめん。突然声を掛けられてすぐに答えられるわけないよね。」
自分が大道芸人で、自分達と一緒に芸をしないか誘ってみる。
ちょっと悩んでいたみたいだけどニコッと笑って、一緒に来てくれることになった。
昼時で道は混雑している。
ヒロコはこの街が初めてだって言うから迷子になったら大変だ。
手を差し出すと手を握り返してくれた。
ヒロコの芸は僕が思っていたよりも大好評だった。
始めは片手でだったのがいつの間にか両手になり、右手で投げたコインを左手で、左で投げたコインを右でキャッチするなど、観客達を沸かせるのに充分な芸になっていたのだ。
おかげで稼ぎもこの数日で一番多かった。
「ヒロコちゃん、良い芸だったわよ。おばさん思わず見とれちゃったわ。」
「そうだな、お客さんの視線を集めてたぞ。」
「もういっそ、ウチの座員になったら?」
「.......ありが...とうございます。」
「ほら、ヒロコが困ってるじゃないか。皆んないい加減にしてあげなよ。」
晩御飯を食べながら、いろいろ話しかけられ困っている様子のヒロコに助け船をだす。
「あらやだ、そんなつもりは無かったんだけどね。ヒロコちゃんごめんね。」
「ところでヒロコちゃんだったか、行くところはあるのかい。」
「実はこれからどうしようか困ってたんです。よろしければもう少しだけでもご一緒させて頂ければ。」
座長の言葉にヒロコが答える。
「いいよ、どうせこいつら皆んな今のヒロコちゃんと同じで根無し草なんだ。
ひとりぐらい増えたってなんの問題も無いよ。」
「はい!頑張って働きますので、よろしくお願いします。」
「「「こっちこそ」」」
こうしてヒロコは我が大道芸一座の一員になったんだ。
「セイム、新しい芸を覚えたいんだけど。コインだけじゃすぐに飽きられちゃうでしょ。」
「うーーん、あれだけでも充分だと思うけど。でもやる気があるのはいいことだね。
それじゃあ、ムルカさんに相談してみよう。」
ヒロコが一座に加わってから3週間。
相変わらずヒロコのコイン芸は大評判で、今回の興行は大成功なんだけど、もうヒロコは次の芸を考えているみたいだ。
相談を持ち掛けたムルカさんは座長の次に古株。
気軽な性格っていうのもあって、一座のおふくろ的な立ち位置。
思慮深くていろんな知識を持っている。
「ヒロコちゃん、コインで他に出来ることは?」
「うーん、簡単な手品くらいだったら出来ますけど、大したことないですよ。」
「「手品?」」
手品って、何だ?聞いたことないよ。
「ええ、コインを消したり、手からポケットに移動するとかくらいですけど。」
「それは魔法かい?」
「いえ魔法じゃないんですけど。ちょっとやって見せますね。」
ヒロコは1枚のコインを取り出し、手のひらに乗せる。
その上からハンカチを掛けて、一気にハンカチを取り去ると手の上にあったはずのコインが消えていた。
「ほら、ここに移動しました。」
コインが消えたことに驚く俺達に何事も無かったかのように机の下に置いていたもう片方の手のひらを上げると、そこにコインがあったんだ。
「これはたまげたねえ。まるで魔人のようだ。本当に魔法じゃないのかい?」
「ええ、種明かしをすると、.......」
種明かしをされれば、指の繊細な動きと手首を利かせてコインを隠して投げ飛ばすだけのシンプルなものだが、観客の注意を上手く逸らすと共に最小限の動きで正確に操作しなきゃいけないんだから、やっぱりヒロコの芸は大したもんだ。
「すごいねえ。こんなことが出来るのはヒロコちゃんだけだよ。
十分に芸になるはずなんだけどねえ、魔法と勘違いされちゃうかもね。
でもその器用さは天下一品だよ。何か見世物に活用できればいいのにね。」
本当にムルカさんの言う通りだ。何か考えてあげないとな。
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