みんなの女神サマは最強ヤンキーに甘く壊される

けるたん

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第1部 春のはじまりパッドエンド事件

第15話 キミの谷間にシャル・ウィ・ダンス?

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「――これが中学時代のよこたんかぁ」
『は、恥ずかしいから、あまり見ないでぇ~』



 何とも情けない声が、スマホから聞こえてくる。

 俺はそんな声を無視しながら、しげしげとスマホに移された中学時代の古羊の写真を眺め続けた。

 時刻は午後8時ちょうど。俺は最近仲良くなった古羊と、かれこれ30分ほど自室でビデオ通話している最中だった。

 寝巻きに使っているのか、薄手のトレーナーを着こんだ古羊が恥ずかしそうに身をよじる。

 そのたびに、画面越しからでも分かるほどの彼女の爆乳が、フリーダムに暴れ回った。

 しかも薄手のトレーナーのせいで、胸の形がハッキリと分かるソレは、俺の視線を吸い込んで離さないっ! まさにブラックホール!

 その吸引力は、人類が誇るイギリス製最強サイクロン式掃除機ダイソ●の約10倍に匹敵するだろう。

 なんならもうスカウターがぶっ壊れそうなほどの吸引力だ。

 やばいですね☆



『??? どうしたの、ししょー?』



 谷間ブラックホールに意識を吸い込まれかけた俺に、古羊が不思議そうに声をかけてくる。

 もちろんアメリカの国防省よりも強固なセキュリティを有する俺の精神力は、この程度でのハプニングではまったく動じることなどなく、「左手は添えるだけ」とシュートのコツを心の中で呟きながら、爽やかな笑みを浮かべて口をひらいた。



「それにしても双子だって言うわりには、あんまり似てねぇなぁ。よこたんと姉ちゃん」
「当たり前だよぉ。だってボクたち、双子は双子でも二卵性双生児なんだし」



 そう言ってほんわか笑う、よこたん。

 ソレは普通の双子とは何が違うのん? と尋ねたかったが、それよりも先に俺のスマホに中学時代の双子姫の姿が映った写真がデカデカと表示された。

 よこたんはこの頃からお胸が大きく、姉の方は残念ながら、この頃から試される大地だった。

 ほんと、これよこたんの半分でもいいから、お姉ちゃんに分けてあげられればなぁ。

 と失礼な感想を抱いていると、ふとあることに気がついた。



「そういえば、姉の方はどこ行ったべ?」
『メイちゃんは今、お風呂だよ』
「ほーん。それにしては長くない?」
『そ、そうかな? 別に普通だと思うけどなぁ?』



 コテンと可愛らしく首を傾げる古羊。

 そのキョトンとした顔は実に愛らしくて……チクショウ、可愛いじゃねぇか。

 キスしてやろうかコイツ?



「そういえば、親御さんの声とか聞こえねぇけど、まだ帰って来てないのか?」
『あっ、まだししょーには話してなかったっけ? ボクとメイちゃんはね、県外受験なの』
「えっ? おまえら地元民じゃねぇの!?」
『うん、ボクとメイちゃんはね【星美町】って所から引っ越してきたんだ。ししょーは【星美町】って知ってる?』
「知ってる知ってる! アレだろ? 日本で1番星が近い町だよな!」
『ピンポンピンポ~ン♪ 大せいか~いっ!』



 と、その可愛らしいお口から正解のファンファーレを奏でる妹ちゃん。

 おいおい、画面越しじゃなければ今頃、正解のご褒美として、そのプルプルの唇を美味しく頂いている所だぞ? 気をつけてくれよな!



『その【星美町】がボクたちの地元なワケ。でね? さすがに県外からは通えないから、2人で両親を説得して、学校に近いこのマンションを借りたんだ。だから、このマンションはボクたち2人しか居ないわけ』

「はぁ~、よくこんな何もないところに引っ越そうと思ったもんだ」



 星美町といえば、日本でも「住んでみたい町ベスト5」に入るほど有名な町である。

 交通の便はもちろんのこと、高校だってウチとは比べものにならない位イイ所がたくさんある。



「そんなに森実高校ウチに入学したかったのかよ?」

『う~ん? 別にそういうワケではないかなぁ。ただこの地域はどこのマンションも家賃が安いから、それでこの学校を選んだんだよ』

「ほ~ん。でもなんで地元の高校には進学しなかったんだ? 学力的にもアッチの高校の方が偏差値高いよな?」

『それはその……えへへ』



 よこたんが誤魔化すようにペロッ! とその真っ赤な舌を出す。

 どうやら聞いて欲しくない話題らしい。

 本来なら根掘り葉掘り聞き出すところだが、可愛いモノも見れたし、勘弁してあげよっと☆

 なんて思っていると、よこたんの背後の方で、ガチャッと扉の開く音が聞こえてきた。



『洋子ぉ~? お風呂、空いたわよ~』
『あっ、はーい! ――それじゃししょー、また明日学校でね。おやすみなさい』
「ほいほーい、おにゃむみ~」



 もうなにそれ~? と、よこたんの笑顔を最後に、画面から彼女の姿が消える。

 俺はスマホをベッドの上に放り、横になった。

 さてさて、それじゃそろそろ良い時間だし、俺も魂の洗濯に行ってこようかなぁ。

 俺がいそいそとベッドから立ち上がろうとして、



『あーっ!? もうメイちゃんったら、またそんな格好をして! 風邪ひいちゃうよ?』
『いいでしょ、この格好の方が楽チンなんだから。それに誰も見てないんだし』
「うん?」



 何故かスマホの方から、巨乳と虚乳(きょにゅう)の会話が聞こえてきた。

 あれ、そういえば俺、ビデオ通話をちゃんと切ったっけ?

 そう思い、放り投げたスマホを拾い上げ。



『あぁ~、やっぱりお風呂上りのアイスは格別だわぁ~』
「ぶほっ!?」




 そこには、画面いっぱいに上半身裸の古羊芽衣が映っていた。




 お風呂あがりなのだろう、身に着けているのはピンクのパンツ1枚だけ。

 しっとりと濡れた亜麻色の髪を拭くためか、首にはタオル、右手にはアイスが握られていた。

 そんなだらしない格好のまま、俺に気づくことなくペロペロとアイスを舐め続ける古羊。

 普段からは想像できないくらい、気の抜けた姿である。



『う~ん、アイスはやっぱりミルク味が王道よねぇ』



 学校では絶対に見せない子どもっぽい笑顔で、満足気にうなずく古羊。

 どうしてか、そんな古羊から目を逸らせない俺。

 白い滑らかな肌が、風呂上りのせいかほんのり赤みがかっている。

 が、問題なのはそこではない。

 そう問題なのは、今、古羊がパンツ以外、何も身に着けていないということだ。

 それはつまり、普段母親の形見のように肌に離さず身に着けている冗談みたいにバカでかい超偽乳パッドをしていないということで。

 今の古羊は、生まれたままの、ありのままの姿であるということだ。







 ……一言で言って、見ていて悲しくなってきた。

 まさか俺の人生で、女の子のおっぱいを見て、泣きたくなる日がくるとは思わなかった。

 地平線、地平線なのだ。
 
 それかもしくは日の丸弁当。

 悲しいまでにぺったんこ。

 その姿を前に、よもや拝まずにはいられない。

 頑張れ古羊の女性ホルモン!

 目覚めよ、そのおっぱい



『さて、それじゃ軽くおっぱいをマッサージして……えっ?』
「あっ」



 タップダンスが出来る位まったいらだなぁ、コイツ。

 まさに谷間にシャル・ウィ・ダンスだ。

 なんてことを考えていると、スマホを通じて目と目がかち合ってしまう。

 あっ、バレたわコレ。

 気まずい沈黙が部屋の中を支配する。



『…………』
「よ、よう。その……お疲れさま?」
『…………』
「やっぱりおまえ、乳が貧しいと書く人種の人だったんだな」
『~~~~~~ッッ!?』



 数秒後、耳をつんざくような超音波がスマホ側から鳴り響いた。

 俺はキンキンと痛む耳を押さえながら、超音波ボイスを繰り出した犯人を睨みつけた。



「急に大きな声を出すんじゃねぇよっ!? 耳がレイプされた気分だわ!」
『こっちは心をレイプされた気分よ!』



 ガーッ! と犬歯剥き出し、おっぱい丸出しで叫ぶ美少女こと古羊。



「ええいっ!? 悲鳴をあげる前に、その粗末なおっぱいを隠せ!」
『だ、誰の胸が粗末ですってぇ!? ぶち殺すわよヒューマン!』
「おまえもヒューマンでは!?」



 またもや醜い言い争いに発展してしまった。

 なんだか最近、コイツと顔を合わせれば喧嘩ばかりしている気がしてならない。

 おかしいなぁ、つい数週間前までは俺の心のお嫁さんだったハズなのに……今ではもうモンスターにしか見えないよ。

 オードリー・ヘップバーンだったハズなのに、もうコッペパーンにしか見えないよ……。



『誰がコッペパンだ、ブサイク?』
「おまえ……人の心を読むなよ?」
『普通に口に出てたわよ、このバカ』



 ガルルルるるるるっ! と威嚇するように小さく唸る古羊。

 もう同級生に向ける態度じゃない、怖スギィッ!?



「いやほんと悪かったって、口が滑ってつい……」
『ああん?』
「ッ!? ひ、貧乳万歳! ちっぱい最高! まな板イェーイ!」
『謝るフリしてアタシに喧嘩売ってるわよね!? そうなんでしょ? ねぇっ!?』



 煽ってどうする、俺のバカ!

 古羊は某有名なロボットアニメの初号機のように荒い呼吸を繰り返している。

 なんなら本当に今にも画面をぶち破って次元を超越してやってきそうだ!



「お、落ちつけ古羊! 小さいは小さいなりに需要があるんだぞ? 特に成長した女の子のペッタンは貴重だからさ。その、元気だせよ!」

『慰め方ヘタクソか!? あとペッタン言うな、ぶっ飛ばすわよ!?』



 ひぃぃぃ、古羊がご乱心じゃぁぁぁ――ッッ!?



「わ、わかった! じゃあ忘れる! 今見たもの全部忘れるから! 簡単に忘れられるから!」
『簡単にって、アタシの乳はそんなにどうでもいいものなのかぁ――ッ!?』
「じゃあ一生覚えてる! Aカップ!」
『よ、寄せて上げればBくらいあるわよっ!』



 もはや身体中から発せられる蒸気が風呂上りによるものなのか、それとも純粋な怒りによるものなのか区別がつかない。

 結局、よこたんが風呂からあがるまでの1時間、俺と古羊はお互いに醜い罵り合いを続けるハメになるのであった……。
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