みんなの女神サマは最強ヤンキーに甘く壊される

けるたん

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第3部 恋するウサギはくじけないっ!

第4話 ようこママにおまかせ♪

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「ほぇ~。それじゃ、ししょーとメイちゃんの所は『おにぎり屋』さんで決まったんだね?」

「まぁ、何か作為的な力が働いたような気がしなくはないんだけど、一応ね。……ねっ、士狼?」

「な、なんだよ? やっぱり『ノーパンしゃぶしゃぶ喫茶』の方が良かったか?」

「んなワケないでしょうが。相変わらずデリカシーの無い男ねぇ」

「あ、あはは……。まぁ、ししょーだし、しょうがないよ」



 我らが2年A組の出し物が決まった、その日の放課後。

 最近、彼女たちのまり場になりつつある俺の部屋で、芽衣と共によこたんが作ってくれたクッキーをモグモグと咀嚼そしゃくしながら、俺はロングホームルームでの1件を語っていた。


「でも意外だなぁ。ししょーのコトだから、てっきりもっと過激な案でも出すのかと思ったよ」
「『ノーパンしゃぶしゃぶ喫茶』も大概だけどね」


 そう言いながら、ぐでーっ! と俺のベッドに寝転がる芽衣。

 完全にリラックス状態である。

 野生を忘れた野良猫のようにゴロンッ、と仰向あおむけで転がる芽衣。

 途端に超偽乳パッドで盛り上げられたお乳様がふにょん♪ と潰れ(どういう技術なんだろう、アレ?)、会長閣下の形のいいヒップラインが、スカート越しから如実に浮かび上がって……ほほぅ?



「もうメイちゃん! はしたないよ?」

「いいじゃない別に。ここにはアタシたちしか居ないんだし……って、おいコラ? なにスカートの中を覗こうとしてんだ、このスケベ?」

「ハッ!? いつの間に!?」



 気がつくと、体が勝手に芽衣のパンチラという名のドラマを鑑賞しようと、彼女の足先へと移動していた。


「いつの間にじゃないわよ、堂々と移動してたじゃない。このドスケベ」
「……ししょー?」


 とうとう『スケベ』から『ドスケベ』にジョブチェンジが完了してしまった。

 ちょっと、よこたん?

 そんな濁った眼で俺を見ないでくれません?

 同級生に向ける目じゃないですよ、ソレ?



「ご、ゴホンッ! そ、そんなコトよりもっ! よこたんのところはナニを出店するつもりなんだよ?」

「露骨に話題を逸らしてきたわね、この男」

「……ししょーのすけべ」

「さぁ、ナニを出店するつもりかなぁ!?」 



 2人の責める視線を打ち消すように声を張り上げると、ベッドで寝転がっていた芽衣が唐突にスクッ! と起き上がった。



「あっ、ごめん。アタシちょっと、お化粧なおしてくるわ」

「化粧? 別に俺らだけなんだから、気にすることねぇのに」

「……これは『トイレに行ってくる』って言う隠語よ、バカ。それくらい察しない、このデリカシーナシが」

「デリカシーナシ男……」

「ま、まぁまぁメイちゃん。落ち着いて、ね? ししょーもセクハラしちゃダメだよ?」

「したつもりは無かったんだけどなぁ……」



 軽く肩を竦めながら、部屋を出て行く芽衣。

 部屋に取り残された俺とよこたんは、気を取り直すようにストリートに居そうなモンスターのごとく、モグモグとクッキーを頬張りながら、改めて雑談に華を咲かせた。



「それで? よこたんのところの出し物は一体なんなワケ?」

2年C組ウチは『ママみ喫茶』をやるんだって」

「えっ、なにそのごうの深そうな喫茶店名は?」



 この国の闇を、というか『病み』を凝縮したような喫茶店に、ドン引きを隠せなかった。


「あっ! 『ママみ』って言っても、ししょーには分からないか。えっとね、ボクもよく分かってないんだけどね? 実行委員の男の子が言うにはね? 母性溢れる女の子に甘える喫茶店にしたいんだって」


 よこたんも自分で言っていてよく分かっていないのか、頭の上に感嘆符を浮かせながら、小首を傾げていた。

 とりあえず分かったことは、2年C組の中にヤベェ奴が居るということだけハッキリと分かった。

 う~ん。出来ればよこたんには、そういったやからとは付き合って欲しくないんだけどなぁ。

 なんて考えていたせいで沈黙してしまう俺。

 ソレをどう受け取ったのか、よこたんはやけに難しい顔で「う~ん」と唸りながら、


「やっぱり言葉だけじゃ分からないよね。よしっ! それじゃ1回実践してみるよっ!」
「実践?」
「うんっ! 今からボクがししょーのママになってあげるね!」


 と無知なうえにムチムチな身体をした大天使よこたんが、ニッコリと微笑んだ。

 おっとぉ? そこはかとなく、犯罪の香りが立ち込めてきやがったぞぉ?

 大丈夫かコレ?

 同級生に赤ちゃんプレイをさせるのは、流石にヤバくないか、人として? 

 というか、東京都から俺を抹殺するために刺客とか放たれて来ないかな?

 クソッ! 東京都の動きが気になって仕方がねぇぜ!?



「おいで、ししょーっ! ボクがヨシヨシしてあげるよ!」
「いやあの、古羊さん? ちょっと俺の話を聞いてくれませんか?」
「ししょー? あっ、そっか、そっか! お母さんっぽい言葉づかいにしなきゃね!」


「いやそういう意味じゃなくて」と、俺が困惑した顔を浮かべていると、よこたんはスカートの丈から覗いているムチムチと柔らかそうな太ももを、ポンポン♪ と優しく叩き。


「ほらっ、ママのところへおいで『しーちゃん』? 今日はたくさん甘えてもいいんだよ?」


 母性溢れる笑みでそう告げる、よこたん。

 まったく、俺はもう高校2年生なんだぜ? 

 今さら「ママぁ~♪」って言いながら甘えるなんて……ふっ。

 硬派な俺が、そんなことをするワケがないだろう? 常識的に考えて。

 だから俺は、母性の塊のような笑みを浮かべるよこたんに、毅然きぜんとした態度で、ハッキリと言ってやった。



「はぁ~い、ママぁ~♪」




◇◇



「えぇ~ん、聞いてよママぁ~っ! 男みたいな胸をしたハリボテ(笑)女に、毎日いじめられるんだよぉ~っ!」

「よしよし。大丈夫だよ、ママがしーちゃんを守ってあげるからねぇ」



 ぷにぷに♪ と柔らかい、ようこママの太ももに、全力で頬ずりしながら、よしよしと頭を撫でで貰う。

 それだけで脳内麻薬がどっぴゅどぴゅ♪ と分泌されて……あっ、ヤバい。ヤバいわコレ。

 思った以上にヤバい……ハマる。


「ほぉら、しーちゃん? よしよ~し」
「ママぁ、もっともっとぉ~っ!」
「もうしーちゃんは甘えんぼさんだねぇ」
 

 神に懺悔するかのごとく、ようこママの太ももに鼻先をうずめる。

 それだけでとんでもねぇ多幸感が俺を襲い、何故かストレ●チ・パワーが下半身ここに溜まっていくのを感じる。

 まるで底なし沼のような安心感に、IQがガンガン下がっていくかのようだ。

 こんなのもう……ダメでしょ?

 太刀打ち出来ないでしょ?

 もう完全にお手上げ宣言である。

『ママみ』に対してガンジー宣言。

 甘やかされるままに無抵抗。

 もはや戦術は武田ですよ。

 心地よいこと、そよ風のごとし。

 癒されること、林の如し。

 萌え続けること、火の如し。

 そして股間は、山の如し。

 これぞ『ママみ』の風林火山っ!



「(ガチャリ)お待たせ2人とも。ところで士狼? 今さっき、リビングで蓮季さんと会ったんだけど――」

「はいしーちゃん、よちよ~ち♪」

「ようこママのよちよち……ちゅき♪」

「……ごめんなさい、部屋を間違えました」



 バタンッ、と無情にも閉まっていく自室の扉。

 アカンッ!?

 あの顔は、絶対に俺が幼児退行プレイを楽しんでいる変態だと認識している顔だ!

 このままじゃ、芽衣の中で俺のあだ名「赤ちゃんクソ野郎」に確定してしまう!

 瞬間、俺は電光石火の速さで扉まで近づくなり、引き返そうとする芽衣の手首をガッチリと掴んだ。



「待ちゅでちゅ芽衣ちゃんっ!? 誤解でちゅっ!」

「いや誤解も6階もないでしょ? 絶対に正解でしょ? ファイナルアンサーでしょ? 完膚なきまでに大正解でしょ? むしろ、なんでその口調で是正ぜせいできると思えたわけ?」



 完全に冷めきった瞳で、辛辣しんらつな言葉を口にする芽衣。

 気のせいか、俺が言葉を発するたびに、心の距離が離れていっている気がしてならない。



「テメェ、自分が普段俺らがドン引きするようなことをしている癖に、今さらこの程度で引くなんて理不尽だぞ!」

「その言い分の方が理不尽だわ。だいたい同級生に赤ちゃんプレイを要求する方がおかしいのよ! 普通にキモいから、いやマジでっ!」

「なんだとぉ!」

「なによぉ!」



 バブバブ、オギャオギャ! と、気がつけば芽衣と醜い言い争いに発展していた。

 残念ながら、どちらも退く気は無いようで、キス出来る至近距離で睨みあう俺たち。

 そんな仁義なき戦いに終止符を打つかのように、よこたんが両手をパンパンと鳴らした。


「はいはい喧嘩はめーですよぉ? 大丈夫、ママが2人まとめて面倒みてあげますからねぇ」
「「……えっ?」」


◇◇



「えぇ~んママぁ! 女の子が全然しーちゃんのことを好きになってくれないよぉ!」

「大丈夫だよぉ。ママはしーちゃんが大好きだよぉ」

「聞いてよママぁっ! どんなに頑張ってもおっぱいが大きくならないんだよぉ!」

「心配しないでメイちゃん。希望は残されているよ、遺伝的に考えればね」



 10分後。

 気がつくと俺は、芽衣と2人仲良く、一緒にようこママの膝に抱き着いて、いや泣きついていた。


「あっ、ヤバい。コレは本当にヤバイわ……ハマるわ」
「芽衣ちゃんも、ようやく分かってくれまちたか」


 2人仲良くニッコリと微笑み合う。

 やはり人間は、どんなにいがみ合っていても、最後には分かり合える生き物なんだぁ、と痛感した瞬間だった。


「ほら2人とも、もっと甘えいいんですよぉ?」
「「ばぶぅ~♪」」


 ようこママの慈愛の瞳を一身に受けながら、自然と言語中枢が退化していく。

 なるほど、これが原始回帰というモノか……。

 そりゃグラ●ドンさんもカイオ●ガ先輩も、ゲンシに戻りたくなるワケだ!

 と完全に気を抜いていたがために、自室の前でドン引きしている女性の存在に気づくのが遅れてしまった。


「……何してんだ、アンタたち?」
「あっ、母ちゃん。おかえり」
「よくその体勢で平然と挨拶が出来るなキサマ? 我が息子ながら末恐ろしいわ……」


 そこには約数週間ぶりの再会となる我が家の大黒柱、大神おおかみ蓮季はすきママ上が、頬を引きつらせて立っていた。

 久しぶりに再会する息子を前に、母ちゃんの瞳は、何故か虫ケラを見るように冷たかった。
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