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第4部 残酷すぎる天使のテーゼ
第14話 森実祭2日目 ~今日、けつ●あな確定な! 編~
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「――今年のミスコン本選出場者も、去年と同じく、かなり粒ぞろいが多いなぁ」
森実祭2日目。
俺は朝から我がクラスの出し物である『コスプレ女装おにぎり喫茶【バーバリアン♪】』のバックヤードに引っ込み、女子写真部の盗撮ゲリラ部隊が撮影し、発行した森実新聞に目を走らせていた。
新聞の見出しには6人の女子生徒がそれぞれキメ顔で映っており、その中には我らが生徒会長殿も、当然のごとく写りこんでいた。
「う~ん、さすがは我が校が誇る双子姫さまだ。余裕で本選出場を決めてやがる」
アイツ、何をやらせても大体なんでも出来るからなぁ。
出来ないことと言えば、豊胸くらいじゃなかろうか?
ほんと、どこに女性ホルモンを忘れていったのだろうか?
頑張って、芽衣の女性ホルモン!
諦めたらそこで試合終了だよ?
なんて心の中で芽衣のちっぱいに激励を送っていると、なんだか廊下の方がやけに騒がしいことに気がついた。
「おっ? なんだ、なんだ? なんの騒ぎだ?」
視線を芽衣の写真から引きはがし、ひょっこりと廊下に顔を出して……気がつくとスマホをカメラモードにして構えていた。
廊下の向こう、そこにはミスコン本選出場が決定している1年生女子である大和田信菜ちゃんが、かなりセクシーな衣装で廊下を歩いていた。
下卑た男ども視線など、ものともせず、笑顔をふりふり☆ お手々をふりふり☆ 腰に手を当て、お尻ふりふり♪ ハッピー・ジャ●ジャムしながら優雅に歩くその姿は、まるでただの廊下がレッドカーペットに早変わりしたかのような錯覚を俺に与えてくれた。
お、おいおい!?
アレ激しく動いたら、ポロるんじゃねぇの!?
「こ、こうしちゃいられねぇ! 俺もローアングルから彼女を見守って――」
「お、おい、大神っ!?『指名』が入ったから爆速で準備しな!」
このビック・ウェーブに乗ろうと廊下へ飛び出そうとした矢先、ボーイ役の女子生徒が、やけに切羽詰った様子でバックヤードに飛び込んできた。
えぇ~、このタイミングでかよぉ?
俺はスマホ片手に不満タラタラな表情をボーイ役の女子生徒に向けるが、女子生徒は何故か顔を真っ青にしながら。
「ほら早くっ! 今、ヤベェ奴が教室に来ていて、ちょっとした騒ぎになってんだから!」
「ヤベェ奴? なになに? ジャニ●ズのスカウトが、とうとう俺というダイヤモンドを見つけて、狂喜乱舞してるとか?」
「今は大神の冗談に付き合っている場合じゃないのっ!」
急げ! と、それだけ言い残して、さっさと教室に戻って行く女子生徒。
今日は一般開放日ということもあり、家族連れや中学生が多く、どこの出し物も、てんやわんやな印象を受けた。
とくに我が2年A組の『コスプレ女装おにぎり喫茶【バーバリアン♪】』は1日目と同じく、かなり大盛況で、みなお尻に火が点いたかのように、ホールと化した教室を必死に動き回っていた。
とは言っても、キャストである俺は『指名』が入らなければヒマなもので、今日も今日とてガチムチナース服姿のまま、まったりと時間を潰していたのだが……。
「大神っ! はやくっ!」
「ほいほーい。いま、行きますよぉ~っと」
ボーイ役の女子生徒に急かされ、バックヤードからホールに移動した。
その瞬間。
「おっ、きたきた♪ おーい、喧嘩狼ぃ~っ!」
と不愉快の極みのような声音が、耳朶を叩いた。
こ、この声はっ!?
俺は導かれるように視線を声のした方向に滑らすと、そこにはジャージにスウェットを着こなした、股間部分がやけにふっくら♪ 膨らんでいる、顔の整った小さな男が「こっち、こっちぃ~♪」と手を振っていた。――って!?
「て、テントマン!? な、なんでここにっ!?」
「おふぅっ!? 久々の喧嘩狼の声、堪らんわぁ……やっべ勃起しそう❤」
「もう勃起してますよ、タカさん」
「て、テメェは大和田!? な、なんでおまえまで、ここに居るっ!?」
どこか隔離されるように窓際で待機していた男たちは、先月、俺の親友と同僚を拉致った報復に『古羊クラブ』に身も心もズタボロにされたハズの鷹野翼と大和田信愛であった。
瞬間、カチリッ! と自分の中で何かのスイッチが切り替わる音が響く。
途端に全身の細胞が闘争本能に支配されていくのが、自分でも分かった。
「……なるほど、この間の『お礼』をしに来たってワケね。森実祭のタイミングで来るとは、相変わらずいい度胸してるよ、おまえら」
「勘違いしないでください、大神様。ココへはタカさんが来たいというから寄っただけで、別に危害を加えるつもりはありませんよ」
「はぁん? 信じられるか、そんな言葉」
「いやいや、これがホンマなんやて! 今回はワシらも別の目的があって、やってきたんや。その証拠にほら、制服を着てないやろ?」
そう言って鷹野は、俺にジャージを見せびらかしてくる。
確かに2人とも、今日は九頭竜高校の真っ白な制服ではなく、キチンと私服を身に纏い、のほほん♪ とした顔を浮かべていた。
まぁそれはそれとして、おい鷹野よ?
おまえはジャージを見せびらかす前に、そのモッコリした鷹野ジュニアをはやく鎮めろや?
「じゃあ何が目的なんだよ?」
「……『ミス森実高校美少女コンテスト』です」
「はい?」
「だ、だから! 『ミス森実高校美少女コンテスト』の応援に来たんですよ!」
大和田が恥ずかしそうに頬を染めながら、ぷいっ! と明後日の方向に視線を向ける。
可愛くない……。
というか……えっ?
なにコイツら?
わざわざ他校のミスコンを観に、ウチまで来たわけ?
「おいおい? 今日は男子コンテストの予選だけで、ミスコンの本選は明日の最終日からだぞ? どんだけ気合入れて来てんだよ?」
「分かっていますよ、ソレくらい。もちろん明日も来ますよ。ただ今日は、ちょっと気になる噂があったものですから、ソレの確認を取りに来ただけです」
「噂? いやその前に、他校のミスコンまで観に来るなんて、なに? 気になる女の子でも居るワケ?」
どこかストーカー気質な大和田に俺が若干引いていると、未だ下半身をギンギンに屹立させたままの鷹野が、付け加えるように口をひらいた。
「ちゃうちゃうっ! 違うぜよ喧嘩狼。そんなんじゃないぜよ。実はノブの妹が、そのミスコンに参加するらしくてのぉ。その応援に、ワシらが駆けつけたワケぜよ」
「大和田の妹ぉ?」
どうせこの性悪の兄貴に似て、スキンヘッドのパチンコ玉みたいな格好をした女なんだろうよ。
なんて内心毒づいていて、ハタと気がつく。
あれ? わざわざ最終日のミスコン本選にまで行くということは、大和田の妹は、本選出場者ってことだよな?
しかも妹ってことは、高校1年生くらいで……っ!?
刹那、俺の脳裏に、先ほどの際どい衣装に身を包んだ1人の女子生徒の姿がフラッシュ・バックした。
ちょっと待て、まさかっ!?
「大和田の妹って……も、もしかしてっ!? 1年生の、あの『大和田信菜』ちゃんですかい!?」
俺がそう訊ねた瞬間、大和田が気まずそうに、無言のままコクリと頷いて見せた。
「えっ!? ウソ、ほんとうに? あの大和田信菜ちゃんの、お義兄さまなんですか!?」
「お義兄さまって呼ばないでください……」
「こう見えてノブはなぁ、かなりのシスコンぜよ」
「タカさんも、適当なことを言わないでください。わたくしはただ、妹の晴れ舞台を応援しに来ただけです」
豪快に笑う鷹野と、ちょっとだけふて腐れた顔を浮かべる大和田、もといお兄様。
う、嘘だろ!?
ど、どうやったら、あんな珠のような美少女に、こんなある意味玉のような頭をしたアニキが出来るんだ?
完全に遺伝子を組み換えなきゃ不可能だぞ?
も、もしかして血が繋がっていない義理の兄妹とか?
ヤダ、ヨスガにソラってそう!
「一応言っておきますけどね喧嘩狼、別に信菜さんとは義理の兄妹でも何でもありませんからね? キチンと半分、血の繋がった本物の兄妹です」
「な、なんで俺の考えが分かるんだよ、にーに?」
「あなたが分かりやすい顔をしているだけです。あと『にーに』は止めてください」
不愉快そうに眉をしかめる兄たま。
おいおい、マジかよ?
こりゃ大和田兄妹コーディネーター説が浮上してきたんじゃねぇか?
おい誰かフリーダム先輩を呼んで来い!
いや、今はそんなことを考えている場合ではない!
そう、今は兄たまを無事に大和田信菜たんの元まで、エスコートしなければっ!
「これは申し訳ありませんでした、兄上! ささっ! 不肖、わたくし大神士狼が、兄上を信菜たんの元までエスコートさせていただきたいと思いますっ!」
「いや1人で行けますから……。というか兄上って呼ぶのやめてください。一体どれだけ親族に食い込もうと必死になっているんですか? 下心が丸見えで気持ち悪いですよ?」
「いえいえ? 他意はありませんよ、兄たま。ただ兄たまには『ある日突然できた12人の可愛い弟たちに囲まれる幸せ』を味わっていただきたくて」
「他意しかないじゃないですか……。どこの汚いブラザープリンセスですか?」
いやいやほんと、他意なんて無いから。むしろ何も無いから!
大和田信菜ちゃんを俺の義理の妹にして、最終的にマイワイフにする計画なんて立ててないから。ほんとだから!
だからお兄ちゃん、そんな人を殺しそうな目で俺を見ないでくれないかな?
ぶわっ! と体中から謎のプレッシャーを放ちだす兄上。
今のにーになら、大神姉弟の悲願である『目からビーム』が出せるかもしれない。
「そ、そう睨まないでくださいよ、タマタマ」
「もはや兄でも何でもないじゃないですか……。やめてください、そんな卑猥な呼び方。本気で怒りますよ?」
「すみません、タマタマ兄さん」
「もうそれタマタマが兄さんになっていますよね? 原型留めてないですよね?」
キンタマタマ兄さんもとい、大和田のお兄様がジロリッ! と未来の弟である俺を睨みつけてきた。
その横で何故か「あぁ、お茶目な喧嘩狼……勃つわぁ」と恍惚の表情で下半身にテントを建設する鷹野。
もうコイツは俺が鉛筆を転がしても勃起するんじゃないだろうか?
「はぁ、もういいです。今はあなたに構っているヒマはありませんので。行きましょうかタカさん」
「えっ、もう行くんかいなぁ。もうちょっと、お話ししてたぁ~い♥」
「そうですよ、あにぃ。もうちょっと、お喋りしましょうよ。具体的には、俺がいつそちらに婿入りすればいいのかとか」
「大神様……ほんと信菜さんに手を出したら、怒りますよ?」
光彩の失せた瞳で俺を睨めつける、あにぃ。
もしかしたら見惚れているのかもしれない。
こりゃ俺が大和田家に嫁ぐ日もそう遠くないな。
と、やってくるであろう輝かしい未来に胸を高鳴らせていると、不意にあにあにの視線が横に滑った。
「ほらっ、大神様。お店も繁盛しているようですし、こんな所で油を売ってないで、早く仕事に戻ってください。みなさん大変そうにしていますよ?」
「大丈夫ですよ、兄上。俺の仲間たちはみんな優秀なんで、これくらい屁でもありませんよ。それに、俺たちは尻上がりに良くなっていくタイプですし――」
瞬間、パッシーンッ! と鷹野にケツを引っ叩かれた。
ものスゲェいい音を立てる俺の尻。
そんな俺の尻をニチャリッ♪ と邪悪な笑みを浮かべてぶっ叩く、ハードゲイ。
刹那、鷹野の頭を片手でガッシリと掴みあげている自分が居た。
「何をするキサマッ!?」
「だ、だって喧嘩狼が朝から『俺たちは尻を上げて、ヨガって、イクッ!?』なんて言うもんやから、思わず『このいやらしい尻めっ!』と思って、つい……」
「イッてねぇよ!? いや、言ってねぇよ!」
恋する乙女のようにポッ♪ と頬を朱に染めるハードゲイに、恐怖を隠せない。
こ、この男は『つい』で人の尻を引っ叩くのか!?
頭の中はどうなっているんだ?
危険思想にも程があるぞっ!?
何故日本の公安は、こんな思想テロリストを野放しにしているんだ?
ちゃんと仕事はしているのか?
「まったく……。タカさん、遊んでないで行きますよ?」
「んほぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっ♥♥♥♥♥♥♥」
「あぁ、そっちの『イク』じゃありません」
大和田の兄者は、どことなく疲れた表情で「んぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ♥♥♥♥♥♥♥」と股間を押さえて小刻みに震えているハードゲイを引っ張って行こうとする。
「あにタマ、我らが妹の所へ行くので? よければ案内しますぜ!」
「結構です。信菜さんの所へ行く前に、噂の確認を取りに行かなければならないので」
「そう言えば、さっきもそんなコトを言ってましたね。何の噂ですかい?」
「この学校のミスコンについての噂ですよ。……もしかして、知らないんですか?」
「ミスコンの噂?」
なんだろう?
ミスコン優勝者は、脳内大神ハーレムの一員になれるコトかな?
なんて考えながら、小首を傾げていると、兄様は『しょうがない』と言わんばかりに肩を竦めて、そのプリティな唇を動かしてみせた。
「この学校のミスコンには、悪い噂があるんですよ」
「悪い噂?」
「はい。数年前から、この学校のミスコン本選出場者たちが無理やり男たちに犯される――いわゆる裏ビデオと呼ばれるモノが、ネットに出回っているんですよ」
血の気が引いた。
森実祭2日目。
俺は朝から我がクラスの出し物である『コスプレ女装おにぎり喫茶【バーバリアン♪】』のバックヤードに引っ込み、女子写真部の盗撮ゲリラ部隊が撮影し、発行した森実新聞に目を走らせていた。
新聞の見出しには6人の女子生徒がそれぞれキメ顔で映っており、その中には我らが生徒会長殿も、当然のごとく写りこんでいた。
「う~ん、さすがは我が校が誇る双子姫さまだ。余裕で本選出場を決めてやがる」
アイツ、何をやらせても大体なんでも出来るからなぁ。
出来ないことと言えば、豊胸くらいじゃなかろうか?
ほんと、どこに女性ホルモンを忘れていったのだろうか?
頑張って、芽衣の女性ホルモン!
諦めたらそこで試合終了だよ?
なんて心の中で芽衣のちっぱいに激励を送っていると、なんだか廊下の方がやけに騒がしいことに気がついた。
「おっ? なんだ、なんだ? なんの騒ぎだ?」
視線を芽衣の写真から引きはがし、ひょっこりと廊下に顔を出して……気がつくとスマホをカメラモードにして構えていた。
廊下の向こう、そこにはミスコン本選出場が決定している1年生女子である大和田信菜ちゃんが、かなりセクシーな衣装で廊下を歩いていた。
下卑た男ども視線など、ものともせず、笑顔をふりふり☆ お手々をふりふり☆ 腰に手を当て、お尻ふりふり♪ ハッピー・ジャ●ジャムしながら優雅に歩くその姿は、まるでただの廊下がレッドカーペットに早変わりしたかのような錯覚を俺に与えてくれた。
お、おいおい!?
アレ激しく動いたら、ポロるんじゃねぇの!?
「こ、こうしちゃいられねぇ! 俺もローアングルから彼女を見守って――」
「お、おい、大神っ!?『指名』が入ったから爆速で準備しな!」
このビック・ウェーブに乗ろうと廊下へ飛び出そうとした矢先、ボーイ役の女子生徒が、やけに切羽詰った様子でバックヤードに飛び込んできた。
えぇ~、このタイミングでかよぉ?
俺はスマホ片手に不満タラタラな表情をボーイ役の女子生徒に向けるが、女子生徒は何故か顔を真っ青にしながら。
「ほら早くっ! 今、ヤベェ奴が教室に来ていて、ちょっとした騒ぎになってんだから!」
「ヤベェ奴? なになに? ジャニ●ズのスカウトが、とうとう俺というダイヤモンドを見つけて、狂喜乱舞してるとか?」
「今は大神の冗談に付き合っている場合じゃないのっ!」
急げ! と、それだけ言い残して、さっさと教室に戻って行く女子生徒。
今日は一般開放日ということもあり、家族連れや中学生が多く、どこの出し物も、てんやわんやな印象を受けた。
とくに我が2年A組の『コスプレ女装おにぎり喫茶【バーバリアン♪】』は1日目と同じく、かなり大盛況で、みなお尻に火が点いたかのように、ホールと化した教室を必死に動き回っていた。
とは言っても、キャストである俺は『指名』が入らなければヒマなもので、今日も今日とてガチムチナース服姿のまま、まったりと時間を潰していたのだが……。
「大神っ! はやくっ!」
「ほいほーい。いま、行きますよぉ~っと」
ボーイ役の女子生徒に急かされ、バックヤードからホールに移動した。
その瞬間。
「おっ、きたきた♪ おーい、喧嘩狼ぃ~っ!」
と不愉快の極みのような声音が、耳朶を叩いた。
こ、この声はっ!?
俺は導かれるように視線を声のした方向に滑らすと、そこにはジャージにスウェットを着こなした、股間部分がやけにふっくら♪ 膨らんでいる、顔の整った小さな男が「こっち、こっちぃ~♪」と手を振っていた。――って!?
「て、テントマン!? な、なんでここにっ!?」
「おふぅっ!? 久々の喧嘩狼の声、堪らんわぁ……やっべ勃起しそう❤」
「もう勃起してますよ、タカさん」
「て、テメェは大和田!? な、なんでおまえまで、ここに居るっ!?」
どこか隔離されるように窓際で待機していた男たちは、先月、俺の親友と同僚を拉致った報復に『古羊クラブ』に身も心もズタボロにされたハズの鷹野翼と大和田信愛であった。
瞬間、カチリッ! と自分の中で何かのスイッチが切り替わる音が響く。
途端に全身の細胞が闘争本能に支配されていくのが、自分でも分かった。
「……なるほど、この間の『お礼』をしに来たってワケね。森実祭のタイミングで来るとは、相変わらずいい度胸してるよ、おまえら」
「勘違いしないでください、大神様。ココへはタカさんが来たいというから寄っただけで、別に危害を加えるつもりはありませんよ」
「はぁん? 信じられるか、そんな言葉」
「いやいや、これがホンマなんやて! 今回はワシらも別の目的があって、やってきたんや。その証拠にほら、制服を着てないやろ?」
そう言って鷹野は、俺にジャージを見せびらかしてくる。
確かに2人とも、今日は九頭竜高校の真っ白な制服ではなく、キチンと私服を身に纏い、のほほん♪ とした顔を浮かべていた。
まぁそれはそれとして、おい鷹野よ?
おまえはジャージを見せびらかす前に、そのモッコリした鷹野ジュニアをはやく鎮めろや?
「じゃあ何が目的なんだよ?」
「……『ミス森実高校美少女コンテスト』です」
「はい?」
「だ、だから! 『ミス森実高校美少女コンテスト』の応援に来たんですよ!」
大和田が恥ずかしそうに頬を染めながら、ぷいっ! と明後日の方向に視線を向ける。
可愛くない……。
というか……えっ?
なにコイツら?
わざわざ他校のミスコンを観に、ウチまで来たわけ?
「おいおい? 今日は男子コンテストの予選だけで、ミスコンの本選は明日の最終日からだぞ? どんだけ気合入れて来てんだよ?」
「分かっていますよ、ソレくらい。もちろん明日も来ますよ。ただ今日は、ちょっと気になる噂があったものですから、ソレの確認を取りに来ただけです」
「噂? いやその前に、他校のミスコンまで観に来るなんて、なに? 気になる女の子でも居るワケ?」
どこかストーカー気質な大和田に俺が若干引いていると、未だ下半身をギンギンに屹立させたままの鷹野が、付け加えるように口をひらいた。
「ちゃうちゃうっ! 違うぜよ喧嘩狼。そんなんじゃないぜよ。実はノブの妹が、そのミスコンに参加するらしくてのぉ。その応援に、ワシらが駆けつけたワケぜよ」
「大和田の妹ぉ?」
どうせこの性悪の兄貴に似て、スキンヘッドのパチンコ玉みたいな格好をした女なんだろうよ。
なんて内心毒づいていて、ハタと気がつく。
あれ? わざわざ最終日のミスコン本選にまで行くということは、大和田の妹は、本選出場者ってことだよな?
しかも妹ってことは、高校1年生くらいで……っ!?
刹那、俺の脳裏に、先ほどの際どい衣装に身を包んだ1人の女子生徒の姿がフラッシュ・バックした。
ちょっと待て、まさかっ!?
「大和田の妹って……も、もしかしてっ!? 1年生の、あの『大和田信菜』ちゃんですかい!?」
俺がそう訊ねた瞬間、大和田が気まずそうに、無言のままコクリと頷いて見せた。
「えっ!? ウソ、ほんとうに? あの大和田信菜ちゃんの、お義兄さまなんですか!?」
「お義兄さまって呼ばないでください……」
「こう見えてノブはなぁ、かなりのシスコンぜよ」
「タカさんも、適当なことを言わないでください。わたくしはただ、妹の晴れ舞台を応援しに来ただけです」
豪快に笑う鷹野と、ちょっとだけふて腐れた顔を浮かべる大和田、もといお兄様。
う、嘘だろ!?
ど、どうやったら、あんな珠のような美少女に、こんなある意味玉のような頭をしたアニキが出来るんだ?
完全に遺伝子を組み換えなきゃ不可能だぞ?
も、もしかして血が繋がっていない義理の兄妹とか?
ヤダ、ヨスガにソラってそう!
「一応言っておきますけどね喧嘩狼、別に信菜さんとは義理の兄妹でも何でもありませんからね? キチンと半分、血の繋がった本物の兄妹です」
「な、なんで俺の考えが分かるんだよ、にーに?」
「あなたが分かりやすい顔をしているだけです。あと『にーに』は止めてください」
不愉快そうに眉をしかめる兄たま。
おいおい、マジかよ?
こりゃ大和田兄妹コーディネーター説が浮上してきたんじゃねぇか?
おい誰かフリーダム先輩を呼んで来い!
いや、今はそんなことを考えている場合ではない!
そう、今は兄たまを無事に大和田信菜たんの元まで、エスコートしなければっ!
「これは申し訳ありませんでした、兄上! ささっ! 不肖、わたくし大神士狼が、兄上を信菜たんの元までエスコートさせていただきたいと思いますっ!」
「いや1人で行けますから……。というか兄上って呼ぶのやめてください。一体どれだけ親族に食い込もうと必死になっているんですか? 下心が丸見えで気持ち悪いですよ?」
「いえいえ? 他意はありませんよ、兄たま。ただ兄たまには『ある日突然できた12人の可愛い弟たちに囲まれる幸せ』を味わっていただきたくて」
「他意しかないじゃないですか……。どこの汚いブラザープリンセスですか?」
いやいやほんと、他意なんて無いから。むしろ何も無いから!
大和田信菜ちゃんを俺の義理の妹にして、最終的にマイワイフにする計画なんて立ててないから。ほんとだから!
だからお兄ちゃん、そんな人を殺しそうな目で俺を見ないでくれないかな?
ぶわっ! と体中から謎のプレッシャーを放ちだす兄上。
今のにーになら、大神姉弟の悲願である『目からビーム』が出せるかもしれない。
「そ、そう睨まないでくださいよ、タマタマ」
「もはや兄でも何でもないじゃないですか……。やめてください、そんな卑猥な呼び方。本気で怒りますよ?」
「すみません、タマタマ兄さん」
「もうそれタマタマが兄さんになっていますよね? 原型留めてないですよね?」
キンタマタマ兄さんもとい、大和田のお兄様がジロリッ! と未来の弟である俺を睨みつけてきた。
その横で何故か「あぁ、お茶目な喧嘩狼……勃つわぁ」と恍惚の表情で下半身にテントを建設する鷹野。
もうコイツは俺が鉛筆を転がしても勃起するんじゃないだろうか?
「はぁ、もういいです。今はあなたに構っているヒマはありませんので。行きましょうかタカさん」
「えっ、もう行くんかいなぁ。もうちょっと、お話ししてたぁ~い♥」
「そうですよ、あにぃ。もうちょっと、お喋りしましょうよ。具体的には、俺がいつそちらに婿入りすればいいのかとか」
「大神様……ほんと信菜さんに手を出したら、怒りますよ?」
光彩の失せた瞳で俺を睨めつける、あにぃ。
もしかしたら見惚れているのかもしれない。
こりゃ俺が大和田家に嫁ぐ日もそう遠くないな。
と、やってくるであろう輝かしい未来に胸を高鳴らせていると、不意にあにあにの視線が横に滑った。
「ほらっ、大神様。お店も繁盛しているようですし、こんな所で油を売ってないで、早く仕事に戻ってください。みなさん大変そうにしていますよ?」
「大丈夫ですよ、兄上。俺の仲間たちはみんな優秀なんで、これくらい屁でもありませんよ。それに、俺たちは尻上がりに良くなっていくタイプですし――」
瞬間、パッシーンッ! と鷹野にケツを引っ叩かれた。
ものスゲェいい音を立てる俺の尻。
そんな俺の尻をニチャリッ♪ と邪悪な笑みを浮かべてぶっ叩く、ハードゲイ。
刹那、鷹野の頭を片手でガッシリと掴みあげている自分が居た。
「何をするキサマッ!?」
「だ、だって喧嘩狼が朝から『俺たちは尻を上げて、ヨガって、イクッ!?』なんて言うもんやから、思わず『このいやらしい尻めっ!』と思って、つい……」
「イッてねぇよ!? いや、言ってねぇよ!」
恋する乙女のようにポッ♪ と頬を朱に染めるハードゲイに、恐怖を隠せない。
こ、この男は『つい』で人の尻を引っ叩くのか!?
頭の中はどうなっているんだ?
危険思想にも程があるぞっ!?
何故日本の公安は、こんな思想テロリストを野放しにしているんだ?
ちゃんと仕事はしているのか?
「まったく……。タカさん、遊んでないで行きますよ?」
「んほぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっ♥♥♥♥♥♥♥」
「あぁ、そっちの『イク』じゃありません」
大和田の兄者は、どことなく疲れた表情で「んぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ♥♥♥♥♥♥♥」と股間を押さえて小刻みに震えているハードゲイを引っ張って行こうとする。
「あにタマ、我らが妹の所へ行くので? よければ案内しますぜ!」
「結構です。信菜さんの所へ行く前に、噂の確認を取りに行かなければならないので」
「そう言えば、さっきもそんなコトを言ってましたね。何の噂ですかい?」
「この学校のミスコンについての噂ですよ。……もしかして、知らないんですか?」
「ミスコンの噂?」
なんだろう?
ミスコン優勝者は、脳内大神ハーレムの一員になれるコトかな?
なんて考えながら、小首を傾げていると、兄様は『しょうがない』と言わんばかりに肩を竦めて、そのプリティな唇を動かしてみせた。
「この学校のミスコンには、悪い噂があるんですよ」
「悪い噂?」
「はい。数年前から、この学校のミスコン本選出場者たちが無理やり男たちに犯される――いわゆる裏ビデオと呼ばれるモノが、ネットに出回っているんですよ」
血の気が引いた。
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キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
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