みんなの女神サマは最強ヤンキーに甘く壊される

けるたん

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第4部 残酷すぎる天使のテーゼ

第14話 森実祭2日目 ~今日、けつ●あな確定な! 編~

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「――今年のミスコン本選出場者も、去年と同じく、かなり粒ぞろいが多いなぁ」



 森実祭2日目。

 俺は朝から我がクラスの出し物である『コスプレ女装おにぎり喫茶【バーバリアン♪】』のバックヤードに引っ込み、女子写真部の盗撮ゲリラ部隊が撮影し、発行した森実新聞に目を走らせていた。

 新聞の見出しには6人の女子生徒がそれぞれキメ顔で映っており、その中には我らが生徒会長殿も、当然のごとく写りこんでいた。



「う~ん、さすがは我が校が誇る双子姫さまだ。余裕で本選出場を決めてやがる」



 アイツ、何をやらせても大体なんでも出来るからなぁ。

 出来ないことと言えば、豊胸くらいじゃなかろうか?

 ほんと、どこに女性ホルモンを忘れていったのだろうか?

 頑張って、芽衣の女性ホルモン!

 諦めたらそこで試合終了だよ?

 なんて心の中で芽衣のちっぱいに激励を送っていると、なんだか廊下の方がやけに騒がしいことに気がついた。



「おっ? なんだ、なんだ? なんの騒ぎだ?」 



 視線を芽衣の写真から引きはがし、ひょっこりと廊下に顔を出して……気がつくとスマホをカメラモードにして構えていた。

 廊下の向こう、そこにはミスコン本選出場が決定している1年生女子である大和田おおわだ信菜のぶなちゃんが、かなりセクシーな衣装で廊下を歩いていた。

 下卑た男ども視線など、ものともせず、笑顔をふりふり☆ お手々をふりふり☆ 腰に手を当て、お尻ふりふり♪ ハッピー・ジャ●ジャムしながら優雅に歩くその姿は、まるでただの廊下がレッドカーペットに早変わりしたかのような錯覚を俺に与えてくれた。

 お、おいおい!?

 アレ激しく動いたら、ポロるんじゃねぇの!?



「こ、こうしちゃいられねぇ! 俺もローアングルから彼女を見守って――」
「お、おい、大神っ!?『指名』が入ったから爆速で準備しな!」



 このビック・ウェーブに乗ろうと廊下ハッピーパラダイスへ飛び出そうとした矢先、ボーイ役の女子生徒が、やけに切羽詰った様子でバックヤードに飛び込んできた。

 えぇ~、このタイミングでかよぉ?

 俺はスマホ片手に不満タラタラな表情をボーイ役の女子生徒に向けるが、女子生徒は何故か顔を真っ青にしながら。



「ほら早くっ! 今、ヤベェ奴が教室に来ていて、ちょっとした騒ぎになってんだから!」

「ヤベェ奴? なになに? ジャニ●ズのスカウトが、とうとう俺というダイヤモンドを見つけて、狂喜乱舞してるとか?」

「今は大神の冗談に付き合っている場合じゃないのっ!」



 急げ! と、それだけ言い残して、さっさと教室に戻って行く女子生徒。

 今日は一般開放日ということもあり、家族連れや中学生が多く、どこの出し物も、てんやわんやな印象を受けた。

 とくに我が2年A組の『コスプレ女装おにぎり喫茶【バーバリアン♪】』は1日目と同じく、かなり大盛況で、みなお尻に火が点いたかのように、ホールと化した教室を必死に動き回っていた。

 とは言っても、キャストである俺は『指名』が入らなければヒマなもので、今日も今日とてガチムチナース服姿のまま、まったりと時間を潰していたのだが……。



「大神っ! はやくっ!」
「ほいほーい。いま、行きますよぉ~っと」



 ボーイ役の女子生徒に急かされ、バックヤードからホールに移動した。

 その瞬間。



「おっ、きたきた♪ おーい、喧嘩狼ぃ~っ!」



 と不愉快の極みのような声音が、耳朶を叩いた。

 こ、この声はっ!?

 俺は導かれるように視線を声のした方向に滑らすと、そこにはジャージにスウェットを着こなした、股間部分がやけにふっくら♪ ふくらんでいる、顔の整った小さな男が「こっち、こっちぃ~♪」と手を振っていた。――って!?



「て、テントマン!? な、なんでここにっ!?」

「おふぅっ!? 久々の喧嘩狼の声、たまらんわぁ……やっべ勃起しそう❤」

「もう勃起してますよ、タカさん」

「て、テメェは大和田!? な、なんでおまえまで、ここに居るっ!?」



 どこか隔離されるように窓際で待機していた男たちは、先月、俺の親友と同僚を拉致った報復に『古羊クラブ』に身も心もズタボロにされたハズの鷹野翼たかのつばさ大和田おおわだ信愛のぶちかであった。

 瞬間、カチリッ! と自分の中で何かのスイッチが切り替わる音が響く。

 途端に全身の細胞が闘争本能に支配されていくのが、自分でも分かった。



「……なるほど、この間の『お礼』をしに来たってワケね。森実祭のタイミングで来るとは、相変わらずいい度胸してるよ、おまえら」

「勘違いしないでください、大神様。ココへはタカさんが来たいというから寄っただけで、別に危害を加えるつもりはありませんよ」

「はぁん? 信じられるか、そんな言葉」

「いやいや、これがホンマなんやて! 今回はワシらも別の目的があって、やってきたんや。その証拠にほら、制服を着てないやろ?」



 そう言って鷹野は、俺にジャージを見せびらかしてくる。

 確かに2人とも、今日は九頭竜高校の真っ白な制服ではなく、キチンと私服を身に纏い、のほほん♪ とした顔を浮かべていた。

 まぁそれはそれとして、おい鷹野よ?

 おまえはジャージを見せびらかす前に、そのモッコリした鷹野ジュニアをはやくしずめろや?



「じゃあ何が目的なんだよ?」

「……『ミス森実高校美少女コンテスト』です」

「はい?」

「だ、だから! 『ミス森実高校美少女コンテスト』の応援に来たんですよ!」



 大和田が恥ずかしそうに頬を染めながら、ぷいっ! と明後日の方向に視線を向ける。

 可愛くない……。

 というか……えっ?

 なにコイツら? 

 わざわざ他校のミスコンをに、ウチまで来たわけ?



「おいおい? 今日は男子コンテストの予選だけで、ミスコンの本選は明日の最終日からだぞ? どんだけ気合入れて来てんだよ?」

「分かっていますよ、ソレくらい。もちろん明日も来ますよ。ただ今日は、ちょっと気になる噂があったものですから、ソレの確認を取りに来ただけです」

「噂? いやその前に、他校のミスコンまで観に来るなんて、なに? 気になる女の子でも居るワケ?」



 どこかストーカー気質な大和田に俺が若干引いていると、未だ下半身をギンギンに屹立きつりつさせたままの鷹野が、付け加えるように口をひらいた。



「ちゃうちゃうっ! 違うぜよ喧嘩狼。そんなんじゃないぜよ。実はノブの妹が、そのミスコンに参加するらしくてのぉ。その応援に、ワシらが駆けつけたワケぜよ」

「大和田の妹ぉ?」



 どうせこの性悪の兄貴に似て、スキンヘッドのパチンコ玉みたいな格好をした女なんだろうよ。

 なんて内心毒づいていて、ハタと気がつく。

 あれ? わざわざ最終日のミスコン本選にまで行くということは、大和田の妹は、本選出場者ってことだよな?

 しかも妹ってことは、高校1年生くらいで……っ!?

 刹那、俺の脳裏に、先ほどの際どい衣装に身を包んだ1人の女子生徒の姿がフラッシュ・バックした。

 ちょっと待て、まさかっ!?



「大和田の妹って……も、もしかしてっ!? 1年生の、あの『大和田信菜』ちゃんですかい!?」



 俺がそう訊ねた瞬間、大和田が気まずそうに、無言のままコクリと頷いて見せた。



「えっ!? ウソ、ほんとうに? あの大和田信菜ちゃんの、お義兄にいさまなんですか!?」

「お義兄さまって呼ばないでください……」

「こう見えてノブはなぁ、かなりのシスコンぜよ」

「タカさんも、適当なことを言わないでください。わたくしはただ、妹の晴れ舞台を応援しに来ただけです」



 豪快に笑う鷹野と、ちょっとだけふて腐れた顔を浮かべる大和田、もといお兄様。

 う、嘘だろ!? 

 ど、どうやったら、あんなたまのような美少女に、こんなある意味たまのような頭をしたアニキが出来るんだ? 

 完全に遺伝子を組み換えなきゃ不可能だぞ?

 も、もしかして血が繋がっていない義理の兄妹とか?

 ヤダ、ヨスガにソラってそう!



「一応言っておきますけどね喧嘩狼、別に信菜さんとは義理の兄妹でも何でもありませんからね? キチンと半分、血の繋がった本物の兄妹です」

「な、なんで俺の考えが分かるんだよ、にーに?」

「あなたが分かりやすい顔をしているだけです。あと『にーに』は止めてください」



 不愉快そうに眉をしかめる兄たま。

 おいおい、マジかよ?

 こりゃ大和田兄妹コーディネーター説が浮上してきたんじゃねぇか?

 おい誰かフリーダム先輩を呼んで来い!

 いや、今はそんなことを考えている場合ではない!

 そう、今は兄たまを無事に大和田信菜たんの元まで、エスコートしなければっ!



「これは申し訳ありませんでした、兄上! ささっ! 不肖、わたくし大神士狼が、兄上を信菜たんの元までエスコートさせていただきたいと思いますっ!」

「いや1人で行けますから……。というか兄上って呼ぶのやめてください。一体どれだけ親族に食い込もうと必死になっているんですか? 下心が丸見えで気持ち悪いですよ?」

「いえいえ? 他意はありませんよ、兄たま。ただ兄たまには『ある日突然できた12人の可愛い弟たちに囲まれる幸せ』を味わっていただきたくて」

「他意しかないじゃないですか……。どこの汚いブラザープリンセスですか?」



 いやいやほんと、他意なんて無いから。むしろ何も無いから!

 大和田信菜ちゃんを俺の義理の妹にして、最終的にマイワイフにする計画なんて立ててないから。ほんとだから! 

 だからお兄ちゃん、そんな人を殺しそうな目で俺を見ないでくれないかな?

 ぶわっ! と体中から謎のプレッシャーを放ちだす兄上。

 今のにーになら、大神姉弟していの悲願である『目からビーム』が出せるかもしれない。



「そ、そう睨まないでくださいよ、タマタマ」

「もはや兄でも何でもないじゃないですか……。やめてください、そんな卑猥な呼び方。本気で怒りますよ?」

「すみません、タマタマ兄さん」

「もうそれタマタマが兄さんになっていますよね? 原型とどめてないですよね?」



 キンタマタマ兄さんもとい、大和田のお兄様がジロリッ! と未来の弟である俺を睨みつけてきた。

 その横で何故か「あぁ、お茶目な喧嘩狼……勃つわぁ」と恍惚こうこつの表情で下半身にテントを建設する鷹野。

 もうコイツは俺が鉛筆を転がしても勃起するんじゃないだろうか?



「はぁ、もういいです。今はあなたに構っているヒマはありませんので。行きましょうかタカさん」

「えっ、もう行くんかいなぁ。もうちょっと、お話ししてたぁ~い♥」

「そうですよ、あにぃ。もうちょっと、お喋りしましょうよ。具体的には、俺がいつそちらに婿入りすればいいのかとか」

「大神様……ほんと信菜さんに手を出したら、怒りますよ?」



 光彩の失せた瞳で俺をめつける、あにぃ。

 もしかしたら見惚れているのかもしれない。

 こりゃ俺が大和田家に嫁ぐ日もそう遠くないな。

 と、やってくるであろう輝かしい未来に胸を高鳴らせていると、不意にあにあにの視線が横に滑った。



「ほらっ、大神様。お店も繁盛しているようですし、こんな所で油を売ってないで、早く仕事に戻ってください。みなさん大変そうにしていますよ?」

「大丈夫ですよ、兄上。俺の仲間たちはみんな優秀なんで、これくらい屁でもありませんよ。それに、俺たちは尻上がりに良くなっていくタイプですし――」



 瞬間、パッシーンッ! と鷹野にケツをぱたかれた。

 ものスゲェいい音を立てる俺の尻。

 そんな俺の尻をニチャリッ♪ と邪悪な笑みを浮かべてぶっ叩く、ハードゲイ。

 刹那、鷹野の頭を片手でガッシリと掴みあげている自分が居た。



「何をするキサマッ!?」

「だ、だって喧嘩狼が朝から『俺たちは尻を上げて、ヨガって、イクッ!?』なんて言うもんやから、思わず『このいやらしいケツめっ!』と思って、つい……」

「イッてねぇよ!? いや、言ってねぇよ!」



 恋する乙女のようにポッ♪ と頬を朱に染めるハードゲイに、恐怖を隠せない。

 こ、この男は『つい』で人の尻を引っ叩くのか!?

 頭の中はどうなっているんだ?

 危険思想にも程があるぞっ!?

 何故日本の公安は、こんな思想テロリストを野放しにしているんだ?

 ちゃんと仕事はしているのか?



「まったく……。タカさん、遊んでないで行きますよ?」

「んほぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっ♥♥♥♥♥♥♥」

「あぁ、そっちの『イク』じゃありません」



 大和田の兄者は、どことなく疲れた表情で「んぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ♥♥♥♥♥♥♥」と股間を押さえて小刻みに震えているハードゲイを引っ張って行こうとする。



「あにタマ、我らが妹の所へ行くので? よければ案内しますぜ!」

「結構です。信菜さんの所へ行く前に、噂の確認を取りに行かなければならないので」

「そう言えば、さっきもそんなコトを言ってましたね。何の噂ですかい?」

「この学校のミスコンについての噂ですよ。……もしかして、知らないんですか?」

「ミスコンの噂?」



 なんだろう?

 ミスコン優勝者は、脳内大神ハーレムの一員になれるコトかな?

 なんて考えながら、小首を傾げていると、兄様は『しょうがない』と言わんばかりに肩を竦めて、そのプリティな唇を動かしてみせた。



「この学校のミスコンには、悪い噂があるんですよ」
「悪い噂?」




「はい。数年前から、この学校のミスコン本選出場者たちが無理やり男たちに犯される――いわゆる裏ビデオと呼ばれるモノが、ネットに出回っているんですよ」





 血の気が引いた。
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