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第7部 大乱闘スマッシュシスターズ
第5話 転校生は美少女と相場が決まっている!
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その衝撃は、気怠い金曜日の朝に訪れた。
時刻は8時30分少し過ぎ。
いつも通り、マッスルティーチャー☆ヤマキの暑苦しいホームルームがスタートして30秒。
その筋骨隆々の肉体をムキッ! と誇張しながら「今日はみんなに大事なお話がある」と、神妙な口調で言い始めたのが、全ての始まりだった。
金曜日ということもあってか、クラスメイトたちの身体からは、気怠いオーラがありありと発散されており、グレートティーチャーヤマキのお話には関心ゼロ。
なんせうつ伏せで寝ているヤツも居れば、机の下でスマホを弄っているヤツ、正面を向きながら耳にイヤホンを突っ込んで音楽鑑賞中の会長閣下さまなど、みな自由な時間を楽しんでいた。
そんな我が道を行く2年A組一同に向かって、ヤマキ先生は。
「このクラスに転校生がやってくる」
と告げるが、やはりみな無関心。
静かに好き勝手する我らが2年A組を前に、ヤマキ先生は独り言のようにボソリと呟いた。
「……ちなみに、転校生は女の子だ」
「「「「「いぃぃぃぃぃぃぃぃっやふぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」」」」」
瞬間、風船が爆発したかのように、教室中に男たちの歓喜の咆哮が響き渡る。
ほんとコイツら、どういう耳をしているんだろうか?
なんで自分の都合のいい話だけ聞き取れるの?
下心がなせる業なの?
「ほんとウチのクラスの男子って、なんでこう、まともなヤツが1人も居ないのかしらね。ねぇ、士狼?」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ! 美少女ですか!? 美少女ですか先生!?」
「……そういえば、アンタもおかしいヤツだったわね」
隣の席で芽衣が何やら小声で喋っていたが、正直、今はそんな事はどうでもよかった。
今は美少女転校生(仮)の情報が、少しでも欲しい。
褐色巨乳美人か?
褐色巨美人なんだよな?
褐色巨乳美人であってくれ!
「落ち着け、クソガキども。そう焦らんでも呼んでやるから、ちょっと待ってろ。……おーい、入ってきてくれぇ~?」
「――ハイっ!」
カタコトっぽい言葉が教室に木霊するが、不思議と砂糖菓子のような甘い声音に全員、スッ!と開いた教室のドアを凝視してしまう。
そして中から女の子が姿を現した瞬間、男達のテンションが天元突破。
一瞬で動物園へと姿を変える2年A組。
「それじゃ蜂谷、自己紹介を頼む」
「了解デース!」
コホンッ! と、可愛らしく空咳をしながら、色素の薄い髪がハラりと顔にかかる。
その宝石のような瞳に、淡い唇はまさに薔薇の蕾。
甘く整った容貌は、少しでも触れたら、すぐに溶けて消えてしまいそうなくらい儚い。
まさに薄幸の美少女という名にふさわしい、超絶プリティな女の子が、そこに立っていた。
カス共が彼女に見とれる中、薄幸の美少女はニッコリ♪ と微笑み、
「先ほどご紹介にあずかりまシタ、蜂谷蝶々と申しマス! トアル事情でコチラに引っ越してキタばかりデスので、みなさん仲良くしてくれると嬉しいデス!」
ふんわり♪ と言った様子で、ペコリと頭を下げる。
途端に、夏服の上からでも分かるくらい、その瑞々しいメロンが「ぷるるるん♪」と揺れて……ほほぅ?
スカイブルーのブラジャーか。いいセンスだ!
あとで彼女には、シロウ・オオカミ特製のエロデミー賞を送ってやろう。もちろん心の中で。
薄幸の美少女こと蜂谷女子のスカイブルーのブラジャーを、大神士狼データバンク永久保存コーナーへと大切に記録している傍ら、
「……コラコラ、どこを見ているんだ貴様? 殺すぞ?」
スッ! と目を細め、氷のような微笑を浮かべる芽衣に咎(とが)められる。
なんでこの女は、俺がエロいことを考えていると、すぐに察知できるのだろうか?
妖怪アンテナでも搭載しているのだろうか?
俺は自分の下半身に搭載された自慢の妖怪アンテナをびんびんっ!? にしながら、可愛らしく小首を傾げていると、芽衣は蜂谷のたわわ♪ に実った核兵器へと視線をやり、
「チッ。洋子といい、宇佐美さんといい……なんでアタシの周りには巨乳しか集まらないのよ? クソがッ!」
「芽衣ちゃん」
「……あによ?」
「どんまい♪」
「あら、ごめんなさい士狼? 頬に蚊が居たので、つい打っちゃいました♪」
パァン! と小気味よい音を立てながら、芽衣のビンタが俺のもち肌を捉える。
俺は叩かれた頬を押さえながら、非難がましい瞳を芽衣に向けた。
「ぶ、打ったね? 父ちゃんにも打たれたことないのに!」
「打ってナゼ悪いか!」
謎の決めポーズをとる我らが生徒会長。
キミはどこのホワイト的なベースの艦長なんだい? というツッコミを抑えつつ、芽衣を見やる。
その瞳には底意地の悪い光が宿っているのを、俺は確かに見た。
おいおい? 素がはみ出てるぜ、会長閣下?
そんな俺たちの静かなる攻防に気がついていないクラスメイトたちは、「はいはいはいはいっ!」と我先に蜂谷同級生に質問しようと、必死に手を挙げていた。
「質問、質問! 蜂谷さんは今、彼氏居ますか?」
「今のところは居まセンヨ? ……今はマダ、ネ」
喜べ男子ぃ! と言わんばかりに、クラス中のカス共が一斉に沸きあがる。
途端に割れんばかりの歓声が教室を支配した。
「あれは反則よ。誰でも落とされるわ、あんな笑顔を見せられたら」
「うぉぉぉぉぉっ!? お、俺、目が合っちゃった! 目が合っちゃったよ芽衣!」
「そんなワケないでしょ。あれは誰とでも目が合っているように見せるテクニックの1つよ」
「違うね! 絶対に合わせてくれたね!」
男どもの五月蠅い咆哮の中、芽衣と軽く言い合っている間に、また蜂谷と目が合う。
その瞳はどう考えても、俺を見据えているようにしか見えなくて、つい心が躍ってしまう。
「ほら、やっぱり目が合った!」
「だから、そういうテクニックで……」
「あっ、また目が合ったぞ! かっわいぃ~っ!」
「~~~~っ!? 目が合って良かったわね! 士狼のバーカッ!」
フンッ! と鼻息を荒くして、そっぽを向いてしまう芽衣。
なんで急に怒り出したんだ?
もしかして、また『あの日』か?
なんてことは怖くて聞けなかったので、とりあえず彼女の機嫌は休み時間にとるとして、今は未来のマイワイフ(予定)に集中しよう!
俺は再び教壇の上に立っている薄幸美少女へと視線を移すと、近くから「はいっ、質問です!」と、アマゾンのアホっぽい声音が鼓膜を揺さぶった。
「ど、どどどど、どんな男の子が好きですか!?」
「ウン? そうデスネ~……ちょっとおバカな男の子が好きデスネ」
「そ、そっかぁ。ちなみに関係ないけど、オレ実は、そこそこ『おバカ』なんだよねぇ~♪ いや、とくに意味はないんだけどさ? 今なんとなく思い出したから、ついね! ついっ!」
「いやいや、アマゾンよ? この『7の段も言えない男』田坂浩二の方が、バカとして格上だと思うが?」
「いやいやっ! 『1+1=200、10倍だぞ! 10倍!』をキャッチコピーにしているこのオレ、宮永啓太郎の方がすこぶるバカだね!」
う~ん、さすがはウチのクラスと言うべきか。
みな一斉にいかに自分がバカであるかを、必死に蜂谷にアピールしていた。
なんて醜い争いなんだろうか……。
そんなんだから、おまえらはモテないんだぞ?
その証拠に、蜂谷さんも「エ~ト……」と、どう収拾をつければいいのか分からず、困惑した表情を浮かべていた。
まったく、ここは生徒会役員である俺の出番だな。
「おい、おまえらっ!? いい加減にしろよ? 蜂谷さんが困っているだろうが! ちなみに俺は1学期の中間テストで、全教科0点を取った事がありまぁす!」
「あっ、大神テメェ! ズリィぞ!」
「クソッ! バカさ加減でコイツに勝てる気がしねぇ!」
「さすがは2年A組を代表……いや森実高校を代表するバカなだけある」
「あぁ。悔しいが、いくらオレたちでも、キングオブ底辺には勝てねぇよ」
クッ! と悔しそうに下唇を噛みしめるカス共。
なんだろう、この釈然としない気持ちは?
気を緩めると泣きそうだ。
試合に勝って勝負に負けた気分を味わっていると、教壇に立っていたヤマキティーチャーが「はいはい、お喋りはそこまでだ」と両手を軽く鳴らして、質問タイムをぶった切る。
「あとの質問はホームルームが終わってからにしてくれ。さて、それじゃ蜂谷の席は……とりあえずは1番後ろの空いてる席でいいか?」
「ハイ、構わないデスヨ」
「じゃあ、そこで頼む。おまえらも、キチンと仲良く……じゃなくて、変なことを蜂谷にするなよ。特に男子ども」
ヤマキ先生は何故か俺とアマゾンをジロリッ! と睨みつけながら、朝の連絡事項を口にし始める。
まったく、変なことなんかしないっての。
……今はまだ、ね?
俺とアマゾンが肩を竦めている間に、蜂谷は言われた席に着くべく、テクテクと列の間を優雅に歩いて行く。
さらさら♪ と、靡く長髪からフローラルな香りが漂ってきそうで、うわっ!?
めっちゃイイ匂いがするぅ~☆
思わず鼻をヒクヒク動かし……うっ!?
「……ふふっ♪(にっごり)」
「うっ!?」
突如隣から圧倒的なまでの怒気を感じ取り、思わずそちらに振り向いてしまう。
そこにはビックリするくらい満面の笑みを浮かべた芽衣が、にっこり♪ と俺の方にその女神スマイルを送っていた。
お、おかしいな?
最近あの笑顔を見ると、鳥肌が止まらなくなるんだけど……何コレ? 病気かな?
「あ、あの芽衣さん? な、何か怒ってます?」
「いいえ、何も怒っていませんよ?」
生徒会長モード全開で、うふふ♪ と微笑む、我らが女神さま。
「いやでも、なんか笑みが怖いし……絶対怒ってるよね?」
「だから怒ってませんってば」
「いやでも――」
「士狼?」
芽衣はその桃の果実のように潤った唇をニンマリと動かし、
「もう一度、言わせる気ですか?」
「ご、ごめんなさい……俺が間違ってました……」
「よろしい」
ようやく『いつもの』作り笑顔に戻った芽衣が、上品そうに口元を手で隠して、うふふ♪ と笑みを溢す。
それにしても、笑顔1つでここまでプレッシャーを与えることが出来るだなんて……なにコイツ? 覇王色でも使ってるの?
怖いわぁ。
知れば知るほど、コイツが怖いわぁ。
と、このときの俺は、芽衣の発する覇気に当てられていたから、気づくことが出来なかったのだ。
……後ろの席から、俺に熱い視線を送る転校生の姿に。
「フフ、見つけたデース」
そうボソリと呟いた彼女の声は、クラスの喧騒に溶けて消えた。
時刻は8時30分少し過ぎ。
いつも通り、マッスルティーチャー☆ヤマキの暑苦しいホームルームがスタートして30秒。
その筋骨隆々の肉体をムキッ! と誇張しながら「今日はみんなに大事なお話がある」と、神妙な口調で言い始めたのが、全ての始まりだった。
金曜日ということもあってか、クラスメイトたちの身体からは、気怠いオーラがありありと発散されており、グレートティーチャーヤマキのお話には関心ゼロ。
なんせうつ伏せで寝ているヤツも居れば、机の下でスマホを弄っているヤツ、正面を向きながら耳にイヤホンを突っ込んで音楽鑑賞中の会長閣下さまなど、みな自由な時間を楽しんでいた。
そんな我が道を行く2年A組一同に向かって、ヤマキ先生は。
「このクラスに転校生がやってくる」
と告げるが、やはりみな無関心。
静かに好き勝手する我らが2年A組を前に、ヤマキ先生は独り言のようにボソリと呟いた。
「……ちなみに、転校生は女の子だ」
「「「「「いぃぃぃぃぃぃぃぃっやふぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」」」」」
瞬間、風船が爆発したかのように、教室中に男たちの歓喜の咆哮が響き渡る。
ほんとコイツら、どういう耳をしているんだろうか?
なんで自分の都合のいい話だけ聞き取れるの?
下心がなせる業なの?
「ほんとウチのクラスの男子って、なんでこう、まともなヤツが1人も居ないのかしらね。ねぇ、士狼?」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ! 美少女ですか!? 美少女ですか先生!?」
「……そういえば、アンタもおかしいヤツだったわね」
隣の席で芽衣が何やら小声で喋っていたが、正直、今はそんな事はどうでもよかった。
今は美少女転校生(仮)の情報が、少しでも欲しい。
褐色巨乳美人か?
褐色巨美人なんだよな?
褐色巨乳美人であってくれ!
「落ち着け、クソガキども。そう焦らんでも呼んでやるから、ちょっと待ってろ。……おーい、入ってきてくれぇ~?」
「――ハイっ!」
カタコトっぽい言葉が教室に木霊するが、不思議と砂糖菓子のような甘い声音に全員、スッ!と開いた教室のドアを凝視してしまう。
そして中から女の子が姿を現した瞬間、男達のテンションが天元突破。
一瞬で動物園へと姿を変える2年A組。
「それじゃ蜂谷、自己紹介を頼む」
「了解デース!」
コホンッ! と、可愛らしく空咳をしながら、色素の薄い髪がハラりと顔にかかる。
その宝石のような瞳に、淡い唇はまさに薔薇の蕾。
甘く整った容貌は、少しでも触れたら、すぐに溶けて消えてしまいそうなくらい儚い。
まさに薄幸の美少女という名にふさわしい、超絶プリティな女の子が、そこに立っていた。
カス共が彼女に見とれる中、薄幸の美少女はニッコリ♪ と微笑み、
「先ほどご紹介にあずかりまシタ、蜂谷蝶々と申しマス! トアル事情でコチラに引っ越してキタばかりデスので、みなさん仲良くしてくれると嬉しいデス!」
ふんわり♪ と言った様子で、ペコリと頭を下げる。
途端に、夏服の上からでも分かるくらい、その瑞々しいメロンが「ぷるるるん♪」と揺れて……ほほぅ?
スカイブルーのブラジャーか。いいセンスだ!
あとで彼女には、シロウ・オオカミ特製のエロデミー賞を送ってやろう。もちろん心の中で。
薄幸の美少女こと蜂谷女子のスカイブルーのブラジャーを、大神士狼データバンク永久保存コーナーへと大切に記録している傍ら、
「……コラコラ、どこを見ているんだ貴様? 殺すぞ?」
スッ! と目を細め、氷のような微笑を浮かべる芽衣に咎(とが)められる。
なんでこの女は、俺がエロいことを考えていると、すぐに察知できるのだろうか?
妖怪アンテナでも搭載しているのだろうか?
俺は自分の下半身に搭載された自慢の妖怪アンテナをびんびんっ!? にしながら、可愛らしく小首を傾げていると、芽衣は蜂谷のたわわ♪ に実った核兵器へと視線をやり、
「チッ。洋子といい、宇佐美さんといい……なんでアタシの周りには巨乳しか集まらないのよ? クソがッ!」
「芽衣ちゃん」
「……あによ?」
「どんまい♪」
「あら、ごめんなさい士狼? 頬に蚊が居たので、つい打っちゃいました♪」
パァン! と小気味よい音を立てながら、芽衣のビンタが俺のもち肌を捉える。
俺は叩かれた頬を押さえながら、非難がましい瞳を芽衣に向けた。
「ぶ、打ったね? 父ちゃんにも打たれたことないのに!」
「打ってナゼ悪いか!」
謎の決めポーズをとる我らが生徒会長。
キミはどこのホワイト的なベースの艦長なんだい? というツッコミを抑えつつ、芽衣を見やる。
その瞳には底意地の悪い光が宿っているのを、俺は確かに見た。
おいおい? 素がはみ出てるぜ、会長閣下?
そんな俺たちの静かなる攻防に気がついていないクラスメイトたちは、「はいはいはいはいっ!」と我先に蜂谷同級生に質問しようと、必死に手を挙げていた。
「質問、質問! 蜂谷さんは今、彼氏居ますか?」
「今のところは居まセンヨ? ……今はマダ、ネ」
喜べ男子ぃ! と言わんばかりに、クラス中のカス共が一斉に沸きあがる。
途端に割れんばかりの歓声が教室を支配した。
「あれは反則よ。誰でも落とされるわ、あんな笑顔を見せられたら」
「うぉぉぉぉぉっ!? お、俺、目が合っちゃった! 目が合っちゃったよ芽衣!」
「そんなワケないでしょ。あれは誰とでも目が合っているように見せるテクニックの1つよ」
「違うね! 絶対に合わせてくれたね!」
男どもの五月蠅い咆哮の中、芽衣と軽く言い合っている間に、また蜂谷と目が合う。
その瞳はどう考えても、俺を見据えているようにしか見えなくて、つい心が躍ってしまう。
「ほら、やっぱり目が合った!」
「だから、そういうテクニックで……」
「あっ、また目が合ったぞ! かっわいぃ~っ!」
「~~~~っ!? 目が合って良かったわね! 士狼のバーカッ!」
フンッ! と鼻息を荒くして、そっぽを向いてしまう芽衣。
なんで急に怒り出したんだ?
もしかして、また『あの日』か?
なんてことは怖くて聞けなかったので、とりあえず彼女の機嫌は休み時間にとるとして、今は未来のマイワイフ(予定)に集中しよう!
俺は再び教壇の上に立っている薄幸美少女へと視線を移すと、近くから「はいっ、質問です!」と、アマゾンのアホっぽい声音が鼓膜を揺さぶった。
「ど、どどどど、どんな男の子が好きですか!?」
「ウン? そうデスネ~……ちょっとおバカな男の子が好きデスネ」
「そ、そっかぁ。ちなみに関係ないけど、オレ実は、そこそこ『おバカ』なんだよねぇ~♪ いや、とくに意味はないんだけどさ? 今なんとなく思い出したから、ついね! ついっ!」
「いやいや、アマゾンよ? この『7の段も言えない男』田坂浩二の方が、バカとして格上だと思うが?」
「いやいやっ! 『1+1=200、10倍だぞ! 10倍!』をキャッチコピーにしているこのオレ、宮永啓太郎の方がすこぶるバカだね!」
う~ん、さすがはウチのクラスと言うべきか。
みな一斉にいかに自分がバカであるかを、必死に蜂谷にアピールしていた。
なんて醜い争いなんだろうか……。
そんなんだから、おまえらはモテないんだぞ?
その証拠に、蜂谷さんも「エ~ト……」と、どう収拾をつければいいのか分からず、困惑した表情を浮かべていた。
まったく、ここは生徒会役員である俺の出番だな。
「おい、おまえらっ!? いい加減にしろよ? 蜂谷さんが困っているだろうが! ちなみに俺は1学期の中間テストで、全教科0点を取った事がありまぁす!」
「あっ、大神テメェ! ズリィぞ!」
「クソッ! バカさ加減でコイツに勝てる気がしねぇ!」
「さすがは2年A組を代表……いや森実高校を代表するバカなだけある」
「あぁ。悔しいが、いくらオレたちでも、キングオブ底辺には勝てねぇよ」
クッ! と悔しそうに下唇を噛みしめるカス共。
なんだろう、この釈然としない気持ちは?
気を緩めると泣きそうだ。
試合に勝って勝負に負けた気分を味わっていると、教壇に立っていたヤマキティーチャーが「はいはい、お喋りはそこまでだ」と両手を軽く鳴らして、質問タイムをぶった切る。
「あとの質問はホームルームが終わってからにしてくれ。さて、それじゃ蜂谷の席は……とりあえずは1番後ろの空いてる席でいいか?」
「ハイ、構わないデスヨ」
「じゃあ、そこで頼む。おまえらも、キチンと仲良く……じゃなくて、変なことを蜂谷にするなよ。特に男子ども」
ヤマキ先生は何故か俺とアマゾンをジロリッ! と睨みつけながら、朝の連絡事項を口にし始める。
まったく、変なことなんかしないっての。
……今はまだ、ね?
俺とアマゾンが肩を竦めている間に、蜂谷は言われた席に着くべく、テクテクと列の間を優雅に歩いて行く。
さらさら♪ と、靡く長髪からフローラルな香りが漂ってきそうで、うわっ!?
めっちゃイイ匂いがするぅ~☆
思わず鼻をヒクヒク動かし……うっ!?
「……ふふっ♪(にっごり)」
「うっ!?」
突如隣から圧倒的なまでの怒気を感じ取り、思わずそちらに振り向いてしまう。
そこにはビックリするくらい満面の笑みを浮かべた芽衣が、にっこり♪ と俺の方にその女神スマイルを送っていた。
お、おかしいな?
最近あの笑顔を見ると、鳥肌が止まらなくなるんだけど……何コレ? 病気かな?
「あ、あの芽衣さん? な、何か怒ってます?」
「いいえ、何も怒っていませんよ?」
生徒会長モード全開で、うふふ♪ と微笑む、我らが女神さま。
「いやでも、なんか笑みが怖いし……絶対怒ってるよね?」
「だから怒ってませんってば」
「いやでも――」
「士狼?」
芽衣はその桃の果実のように潤った唇をニンマリと動かし、
「もう一度、言わせる気ですか?」
「ご、ごめんなさい……俺が間違ってました……」
「よろしい」
ようやく『いつもの』作り笑顔に戻った芽衣が、上品そうに口元を手で隠して、うふふ♪ と笑みを溢す。
それにしても、笑顔1つでここまでプレッシャーを与えることが出来るだなんて……なにコイツ? 覇王色でも使ってるの?
怖いわぁ。
知れば知るほど、コイツが怖いわぁ。
と、このときの俺は、芽衣の発する覇気に当てられていたから、気づくことが出来なかったのだ。
……後ろの席から、俺に熱い視線を送る転校生の姿に。
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