みんなの女神サマは最強ヤンキーに甘く壊される

けるたん

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第8部 ぽんこつMy.HERO

第33話 悪意は唐突に牙を剥く

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 森実生徒会長選挙、最終日の朝は、不気味なくらい『いつも通り』の幕開けだった。

 各会長候補が登校してくる生徒たちに最後のアピールをするべく、ときにダイナミックに、ときにセンチメンタルに、いかに自分が会長にふさわしいか唇を震わせる。

 いよいよ我が校の代表が決まるとあってか、生徒達の方も、どことなく浮き足だっているように俺には見えた。

 それは生徒から生徒へと伝染し、気がつくと、学校中が不思議な雰囲気に包まれていた。

 そして各候補者による最終演説まで、残り2時間ちょい。

 ここで我ら『チーム信菜とイケてる仲間たち』に、ちょっとしたトラブルが発生していた。

 というのも、大和田ちゃんが学校に来ていないのである。



「――うーす、ただいまぁ」



 ガラッ! と2年A組の教室のドアを乱暴に開けつつ、芽衣とC組から様子を見に来てくれた爆乳わん娘のいる机まで移動する。



「おかえり、ししょーっ!」
「それで? 大和田さんは学校に来てましたか?」
「いや、ダメだ。学校どころか教室にすら来ていないらしい……」



 そうですか、と神妙な面持ちで眉を寄せる女神さま。

 その横で「どうしちゃったんだろう、オオワダさん?」と心配そうに顔を歪ませる、ラブリー☆マイエンジェル。

 3時間目が始まる少し前の行間休み。

 俺は念のために大和田ちゃんが学校に来ていないか確認するべく、彼女の居る1年生の教室へと向かってみたのだが……結果はごらんの有様だ。

 マジでどこ行っちゃったんだ、大和田ちゃん?

 昨日アレだけ気合十分だったから、サボタージュは無いと思うんだが……う~ん?



「とりあえず、もう1回電話かけてみるわ」



 俺はポケットから新しく買い替えたピンク色のスマホを取り出し、大和田ちゃんへ今日何度目になるか分からない連絡を入れた。

 ……が、返ってくるのは無機質な女性の声で『おかけになった電話は、電波が届かない場所にあるか、電源が入っていない為』うんたらかんたらと、やはり繋がらない。



「どうだった、ししょー? オオワダさんと繋がりそう?」

「アカン、一向に繋がる気配がないわ。……どうしちゃったんだよ、大和田ちゃん? 遅めの反抗期か?」

「う~ん。彼女の性格上、この土壇場で学校を休むとは考えられないですし。それに休むにしても、協力者である士狼に一言も連絡が無いのはおかしいですよね……」



 周りにクラスメイトが居る手前、猫を被ったまま「ふむ……」と熟考しはじめる芽衣。

 気がつくと、俺もムッツリと黙り込んでしまっていた。

 どんどん重くなっていく空気。

 ソレが嫌だったのか、よこたんが妙に明るい声で希望的観測を口にした。



「も、もしかしたら、緊張し過ぎてどこかのトイレに籠っているのかもしれないね? なぁ~んて、ハハッ! ……ご、ごめんなさい」

「洋子? 彼女がそんな繊細なハートの持ち主だと思いますか?」

「そうだぜ? むしろ緊張しすぎてお腹がゴロゴロピーなのは、俺の方だぞ? なんせ今朝から俺の肛門セキュリティ括約筋ホールは、清純派AV女優のお股並みの固さを保持してるしな!」

「ガッバガバのユッルユルじゃないですか……。セキュリティぶっ壊れてますよ、士狼?」



 というかソレ、本当に大丈夫なんですか?

 と、しきりに俺の臀部でんぶを気にし始める芽衣。

 俺はそんな芽衣に向かって、爽やかにサムズアップを決めてやった。



「今のところは大丈夫。ただ、もし俺がこの場を無言で立ち去ったら……その時は察してくれ」
「なるほど、理解しました」



 さすがは我らが女神さまだ、話が早くて助かる。

 そんな会話をしていると、握りしめていたスマホが激しく震えだした。

 もしかして大和田ちゃんか!? と慌てて画面に視線を落とすと、そこには『未来の妹』という文字がデカデカと映し出されていた。



「『未来の妹』って……誰なの、ししょー?」
「もちろん俺の心の妹、みんなのアイドル大和田の信菜様だよ。よかったぁ、連絡が繋がった!」
「本気で親族に食い込む気マンマンですね、士狼……。って、コレ電話じゃなくてラインですよ?」
「あっ、ほんとだ。はやく中身を確認してみようよ、ししょー」
「かしこまリーの木ノ葉旋風このはせんぷう☆」
「頭の八門遁甲が全開になってますよ、士狼?」
「ししょー……」



 可愛くお茶目にウィンクしたのに、何故かドン引きをしている古羊姉妹。

 どうやら俺の可愛さに心をトキメかせているらしい。可愛くて、ごめんね?

 心の中で双子姫に頭を下げながら、プチデビル後輩から届いた愛のライン画面を開いた。

 そこには文章は打ち出されておらず、血走った瞳に鼻の穴をぷくぅ! と膨らませた男子高校生が、いたいけな女子生徒を無理やり押し倒しているように見える画像が映し出されていた。

 要するに――俺が大和田ちゃんを襲っているように見える【例の脅迫画像】が送られていた。



「……士狼、なんですかコレは?」
「……ししょー? ちゃんと説明してほしなぁ?」



 光彩が消え失せた瞳で、俺をガン見する古羊姉妹。

 その横で俺は……身体を震わせていた。

 2人のブリザードのような視線に対して。

 
 ――ではなく、この画像が有する『本当の意味』に対して。



「ヤバい……大和田ちゃんが危ねぇ!?」
「はいっ? どういう意味ですか、士狼?」
「ど、どうしたの、ししょー? そんな急に慌てだして?」



 俺は凍てつく波動を放つ2人を無視して、慌てて教室を後にしようとするのだが、


 ――ガシッ! 


 と、芽衣に手首を掴まれて動きを封じられてしまう。

 あぁ、もう!?

 こんな事をしている場合じゃないのに!



「ストップ! 出て行く前に、この画像の意味を教えてください」

「その画像は、大和田ちゃんから俺に向けての【SOS】サインだ! きっと何か学校に来る途中でトラブルに巻き込まれたに違いねぇ!」

「SOSのサイン……?」
「これが?」



 懐疑的な視線を俺にぶつける、芽衣とよこたん。

 だが2人のその疑問も、次に送られてきた画像であっけなく霧散した。

 シュポッ! と、情けない音と同時に再び送られてくる画像。

 3人の視線が再び俺のスマホに落ちる。

 そこには、どこかの廃屋はいおくと思われる部屋の1室に、真っ白な九頭竜高校の制服を着こんだ男子生徒数名が映しだされていた。



「こ、これって!? め、メイちゃん!」
「……どうやら士狼の話は本当のようですね」
「おい、アマゾン!? 自転車の鍵を貸してくれ!」



 顔を青ざめる爆乳わん娘と、難しい顔を浮かべる芽衣。

 そんな彼女たちを放って、俺は教室で『ロシア人美少女の脇のエロさ』につい、て熱く語っていたアマゾンに声をかけた。

 アマゾンは面倒臭そうに「えぇ~? まぁいいけど……」と、俺に向かって自転車の鍵を放り投げる。

 それを片手で受け取り、2年A組の教室を後にしようとして、



「待ってください、士狼」



 と、芽衣に止められた。



「今、慌てて出て行ったところで、大和田さんの居場所は分からないでしょ?」
「分からなくても、怪しい所を片っ端から探す!」
「落ち着いてください。だからと言って、闇雲に探せばいいってワケじゃありませんよ?」

「そ、そうだよ、ししょーっ!? 最終演説まで時間もないし、闇雲に探してもらちがあかないよぉ!」

「なら、このまま指を咥えて待ってろってか? 冗談じゃねぇ。アイツは今、俺に助けを求めているんだ。ここで行かなきゃ男じゃねぇ!」

「だから落ち着いてください、士狼。洋子もわたしも、言ったじゃないですか?『闇雲に探してもらちがあかない』って」



 そう言って芽衣は俺からスマホを奪いとると、大和田ちゃんから送られてきた画像をジッと眺めて「洋子、地図」と、短く妹の名を呼んだ。

 よこたんは「う、うん!」と頷くなり、ブレザーのポケットに入れていたスマホを取り出し、ササッ! と森実周辺の地図を表示して、芽衣に見せた。



「この画像から見るに、今、窓から見える太陽の位置からして、おそらく森実東町の廃墟のどれかって所ですかね……」

「ちょっと待って、メイちゃん。今調べたけど、東町で使われていない廃墟は30件ほどあるよ?」

「そうですか……。ならその廃墟の中に比較的古い、木造建築で出来た洋風の家が、どれだけありますか?」

「えっとね……5件あるね」
「それだけ絞れれば、充分です」



 芽衣は妹のスマホに映し出された森実東町の地図を見つめ、ある1点を指さした。



「――さぁ士狼。一体誰に喧嘩を売ったのか、おバカちゃん達に分からせて来なさい?」



 そう言って微笑む芽衣の顔は、背筋がゾクリとするほど美しく、身体が震えるほど恐ろしかった。
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