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第8部 ぽんこつMy.HERO
第36話 ぽんこつMy.HERO
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『――古羊芽衣さん、ありがとうございました。それではお席の方へお戻りください』
実行委員会のアナウンスと共に、ステージの上に設置された教壇に登っていた芽衣が深々と全校生徒に向かって一礼する。
瞬間、体育館が拍手と喝采でブワッ! と激しく揺れた。
時刻は午後1時30分。
長かったような生徒会長選挙もいよいよ大詰め。
各会長候補もベストを尽くしたと言わんばかりに、清々しい表情でステージの上に用意されていた自分専用の椅子に腰を下ろしている。
芽衣はいまだ鳴りやまぬ拍手の雨の中を、微笑みを浮かべながら、悠然と自分の席に向かって歩いて行く。
次の大和田信菜1年生の演説で、この生徒会長選挙という祭りも終わる。
だというのに、ステージの上に用意された彼女の席は、いまだに空白のままだった。
『えぇ~、続きましては1年F組、大和田信菜さん、お願いします。……と、言いたいところなんですが、えぇ~と。どうしましょう、コレ?』
空白の席を見つめながら困った顔を浮かべる実行委員。
助けを求めるように檀上の傍で待機していたヤマキ先生にチラッ、と視線を向ける。
そのヤマキも実に渋い顔を浮かべながら「ふぅ……」と、ため息を1つ溢した。
途端にザワザワし始める体育館。
「……なにをしてるのよ士狼」
そんな芽衣の呟きも生徒達の喧騒とともに儚く消えてく。
ヤマキは腕に巻いていた時計を確認するなり、
「ここが限界か……」
と短く吐き捨てながら、実行委員に合図を送った。
『え、えぇ~と。大和田信菜さん不在ということなので、各候補者による最終演説はこれにて終了となります。生徒のみなさんはこのあと速やかに教室へ戻り、投票用紙に――』
と、言いかけた実行委員の言葉は、突如開かれた体育館の扉の音によって掻き消された。
生徒全員「何事だ!?」と、開けっぴろげにされた扉の方へと振り返り、息を呑んだ。
そこには――
「だらっしゃぁぁぁぁぁっ!? 間に合ったぞ、オラァァァァァ!?」
「ちょっ!? シロパイ、静かに! 注目されてるから!」
そこにはもう秋だというのに、全身汗でビショビショなうえ、両足が大人のオモチャよろしく高速バイブしている赤髪の少年と、息一つ切らしていない桃色の髪をした少女が立っていた。
そんな2人を目にした途端、檀上の脇に控えていたヤマキが驚きと安堵に満ちた表情で、声を張り上げていた。
「大神! それに大和田も! 何をしていたんだ、おまえらは! 遅刻も遅刻、大遅刻だぞ!?」
「いやいや先生、これにはマリアナ海溝よりも深いワケがあるんですよ?」
赤髪の少年、士狼は信菜を引きつれて檀上の方へと歩いて行く。
全員の視線を一身に浴びながら、わざとらしく肩を揺すって、ヤマキはおろか、ここに居る全員に宣戦布告するかのように口をひらいていた。
「大和田ちゃんは生徒会長になる女ですよ? だから今のうちに重役出勤の練習でもしておこうかと思いましてね?」
「なら、おまえは何で遅刻した? 重役でも何でもないよなぁ? んん~?」
「おやおや? 先生ともあろうお方が、愚問ですよ? ヒーローは、いつだって遅れて登場するものでアダダダダダダッ!? あ、頭が割れる、喰われる、砕け散るぅぅぅぅっ!?」
檀上の上にあがりヤマキのもとまで近づいた瞬間、彼のアイアンクローが士狼のブサイク極まりない顔面を捉えた。
うぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ!? と、大義のための犠牲となっている士狼を放置して、彼の後ろに控えていた信菜が「あの……」と、控えめにヤマキに向かって声を出していた。
「やっぱり、もうダメですか……?」
「……ふぅ、ギリギリだ。ギリギリ時間内な、このバカ共め」
そう言ってヤマキは、親指をクイッ! と教壇の方へ向け、信菜に「行って来い!」と合図を送る。
信菜はパァ! と顏を輝かせ、ヤマキに一礼しながら、慌てて教壇の方へと歩みを進める。
そんな教え子の後ろ姿を眺めながら、「頑張って来いよ!」とアイアンクローの向こう側で応援している、もう1人の問題児に視線を移した。
「まったく。あとで理由を聞くからな?」
「まぁまぁ先生! 今は大和田ちゃんの演説を聞いてあげましょうや。ね?」
「……先生が言うのアレだが、大神。おまえ、よくこの状況で普通に会話できるな?」
相変わらずバカなことをする2人だ、と信菜は何故か口角が緩むのを感じながら、教壇へとたどり着く。
ここまで来るのに夢中過ぎて気が付かなかったが、みなの好奇な視線が自分に釘づけになっていることに、ようやく気がつく。
それが妙に面白くて、信菜は何度も吹き出しそうになった。
『それでは大和田信菜さんの10分間スピーチです、どうぞ』
司会のアナウンスと共に、チンっ! と演説開始のベルが鳴る。
さて、言わなきゃいけないことはたくさんある。
自分が生徒会長になったら学校をより良くするためのマニュフェストや、会長になるための心意気。
語り出したら10分じゃ足りないくらいだ。
どれから言うべきか、信菜はまるで机の上いっぱいに並べられた料理を吟味するような気分で思考を巡らす。
が、それよりも早く、自分の口が、己の気持ちを無視して、勝手に饒舌に動き出した。
「――私は、人間があまり好きではありません」
瞬間、体育館内が水を打ったように静かになった。
生徒全員が「いきなりナニ言ってんだ、コイツ?」と、疑惑や驚きに満ちた目で、信菜を見上げている。
もちろん、当の信菜も「何を言ってんだウチは?」と、心の中で驚き慌てていた。
そんな彼女と会場を無視して、その愛らしい唇は歌でも歌うかのように、上機嫌には跳ね回る。
「両親も好きではありません。弟も好きではありません。正直、この学校の生徒たちも、好きじゃありません。なんなら生徒会長だって、今となったら本当にどうでもいいです」
先ほどとは比べものにならないほど、ザワザワと体育館が喧騒で包まれる。
普段の彼女からは想像も出来ない信菜の突然のはっちゃけトークに、脇で待機していた先生たちは身動き1つ出来ずフリーズしてしまう。
それをいいことに、信菜は今の自分のまっすぐな気持ちをマイクに向かってぶつけてやった。
「自分を善人だと信じて疑わない、そんな人間が嫌いです。薄汚いノラ犬がドブに落ちると、一斉に集まって袋叩きする……そんな善人が大嫌いです」
だから私は、今、胸を張ってこう言います。と、信菜は続けた。
「――この世の中、そんな捨てたモノじゃないってことを」
途端に、生徒達全員が同時に息を呑んだ。
いや生徒たちだけではない。
傍に控えていた教職員たちも、ゴクリと生唾を飲んで信菜を見守っていた。
今の彼女には、他にはない不思議な魅力が溢れているようで、自然と視線が彼女に吸い寄せられてしまう。
間違いなく、この瞬間、世界の中心は彼女だった。
「だって私は……ウチは知っちゃったから」
――世の中には、ドブに落ちたノラ犬を平気で助けようとする、大バカ野郎が居ることを。
――己の信念だけを頼りに、平気でドブの中に突っ込む、愛すべきバカ野郎が居ることを。
彼女は知ってしまったから。
知ってしまった以上、もう前の自分には戻れない。
戻るつもりも、ない。
「きっと周りから見たら、彼は滑稽に見えたかもしれない」
ドブ犬を助けたところで、得な事なんて、何もない。
得る物なんて、何もない。
多くの人達が、彼をバカな男と吐き捨てて、愚鈍な男と鼻で笑うだろう。
それでも、例えそうだとしても。
世界中の人間が、彼を笑い者にしようとも――
「――それでもウチは……そんなバカを誇らしく思います」
こんな素敵な大バカ野郎は、他に居ないのだから。
「笑いたければ、どうぞご自由に? ただ最後に、これだけは言っておきます」
突如信菜の脳裏に、ここ数日の記憶が、シャボン玉のように浮かんできた。
それはごくありふれた日常の数々であったが、信菜にとってはかけがえのない宝物であった。
例え世界が彼をバカだと罵ろうと構わない。
そんなバカの隣を歩いて行けるのなら、きっとソレは最高に楽しいに違いないのだから。
だから信菜は、そのバカの隣を、胸を張って歩けるように、全校生徒をまっすぐ見据えて、ハッキリとこう言った。
「世界を回すのは、いつだって一握りのバカだと相場が決まっています。だから、だから――」
すぅ、とその女性らしい胸が大きく上下する。
次の瞬間、風船が爆発したかのように、小さな虎は大きく吠えた。
「――黙ってウチに投票しやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ! 以上!」
スピーチ終了! と、信菜が満足気に笑みを深めた。
刹那、体育館が怒号やら混乱やら、混沌の極みのような状況へと成り下がった。
「うぉぉぉぉぉっ!? 最高にロックじゃん!? あの1年カッケェ!?」
「う、ウソだ!? ぼ、ぼぼぼ、ボキの信菜ちゃんはあんな下品な言葉は使わない! こ、これはきっと夢、そう夢なんだ!」
「言ってること支離滅裂じゃない、あの子……」
尊敬、絶望、困惑や嫉妬と、感情の嵐が体育館を支配する。
慌てて司会の実行委員が『お、お静かに! お静かにお願いします!』と声を張り上げて、場の鎮静化を図っていた。
そんな中、件の信菜は嵐の中心の中、ステージの脇で見守ってくれていた例のバカと向き合っていた。
バカは心底驚いた顔を浮かべていたが、最後は彼女の知っているあの人懐っこい笑みで、グッ! と親指を立ててみせた。
信菜はそれがやけに嬉しくて、思わず彼に向かってVサインを突き出していた。
実行委員会のアナウンスと共に、ステージの上に設置された教壇に登っていた芽衣が深々と全校生徒に向かって一礼する。
瞬間、体育館が拍手と喝采でブワッ! と激しく揺れた。
時刻は午後1時30分。
長かったような生徒会長選挙もいよいよ大詰め。
各会長候補もベストを尽くしたと言わんばかりに、清々しい表情でステージの上に用意されていた自分専用の椅子に腰を下ろしている。
芽衣はいまだ鳴りやまぬ拍手の雨の中を、微笑みを浮かべながら、悠然と自分の席に向かって歩いて行く。
次の大和田信菜1年生の演説で、この生徒会長選挙という祭りも終わる。
だというのに、ステージの上に用意された彼女の席は、いまだに空白のままだった。
『えぇ~、続きましては1年F組、大和田信菜さん、お願いします。……と、言いたいところなんですが、えぇ~と。どうしましょう、コレ?』
空白の席を見つめながら困った顔を浮かべる実行委員。
助けを求めるように檀上の傍で待機していたヤマキ先生にチラッ、と視線を向ける。
そのヤマキも実に渋い顔を浮かべながら「ふぅ……」と、ため息を1つ溢した。
途端にザワザワし始める体育館。
「……なにをしてるのよ士狼」
そんな芽衣の呟きも生徒達の喧騒とともに儚く消えてく。
ヤマキは腕に巻いていた時計を確認するなり、
「ここが限界か……」
と短く吐き捨てながら、実行委員に合図を送った。
『え、えぇ~と。大和田信菜さん不在ということなので、各候補者による最終演説はこれにて終了となります。生徒のみなさんはこのあと速やかに教室へ戻り、投票用紙に――』
と、言いかけた実行委員の言葉は、突如開かれた体育館の扉の音によって掻き消された。
生徒全員「何事だ!?」と、開けっぴろげにされた扉の方へと振り返り、息を呑んだ。
そこには――
「だらっしゃぁぁぁぁぁっ!? 間に合ったぞ、オラァァァァァ!?」
「ちょっ!? シロパイ、静かに! 注目されてるから!」
そこにはもう秋だというのに、全身汗でビショビショなうえ、両足が大人のオモチャよろしく高速バイブしている赤髪の少年と、息一つ切らしていない桃色の髪をした少女が立っていた。
そんな2人を目にした途端、檀上の脇に控えていたヤマキが驚きと安堵に満ちた表情で、声を張り上げていた。
「大神! それに大和田も! 何をしていたんだ、おまえらは! 遅刻も遅刻、大遅刻だぞ!?」
「いやいや先生、これにはマリアナ海溝よりも深いワケがあるんですよ?」
赤髪の少年、士狼は信菜を引きつれて檀上の方へと歩いて行く。
全員の視線を一身に浴びながら、わざとらしく肩を揺すって、ヤマキはおろか、ここに居る全員に宣戦布告するかのように口をひらいていた。
「大和田ちゃんは生徒会長になる女ですよ? だから今のうちに重役出勤の練習でもしておこうかと思いましてね?」
「なら、おまえは何で遅刻した? 重役でも何でもないよなぁ? んん~?」
「おやおや? 先生ともあろうお方が、愚問ですよ? ヒーローは、いつだって遅れて登場するものでアダダダダダダッ!? あ、頭が割れる、喰われる、砕け散るぅぅぅぅっ!?」
檀上の上にあがりヤマキのもとまで近づいた瞬間、彼のアイアンクローが士狼のブサイク極まりない顔面を捉えた。
うぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ!? と、大義のための犠牲となっている士狼を放置して、彼の後ろに控えていた信菜が「あの……」と、控えめにヤマキに向かって声を出していた。
「やっぱり、もうダメですか……?」
「……ふぅ、ギリギリだ。ギリギリ時間内な、このバカ共め」
そう言ってヤマキは、親指をクイッ! と教壇の方へ向け、信菜に「行って来い!」と合図を送る。
信菜はパァ! と顏を輝かせ、ヤマキに一礼しながら、慌てて教壇の方へと歩みを進める。
そんな教え子の後ろ姿を眺めながら、「頑張って来いよ!」とアイアンクローの向こう側で応援している、もう1人の問題児に視線を移した。
「まったく。あとで理由を聞くからな?」
「まぁまぁ先生! 今は大和田ちゃんの演説を聞いてあげましょうや。ね?」
「……先生が言うのアレだが、大神。おまえ、よくこの状況で普通に会話できるな?」
相変わらずバカなことをする2人だ、と信菜は何故か口角が緩むのを感じながら、教壇へとたどり着く。
ここまで来るのに夢中過ぎて気が付かなかったが、みなの好奇な視線が自分に釘づけになっていることに、ようやく気がつく。
それが妙に面白くて、信菜は何度も吹き出しそうになった。
『それでは大和田信菜さんの10分間スピーチです、どうぞ』
司会のアナウンスと共に、チンっ! と演説開始のベルが鳴る。
さて、言わなきゃいけないことはたくさんある。
自分が生徒会長になったら学校をより良くするためのマニュフェストや、会長になるための心意気。
語り出したら10分じゃ足りないくらいだ。
どれから言うべきか、信菜はまるで机の上いっぱいに並べられた料理を吟味するような気分で思考を巡らす。
が、それよりも早く、自分の口が、己の気持ちを無視して、勝手に饒舌に動き出した。
「――私は、人間があまり好きではありません」
瞬間、体育館内が水を打ったように静かになった。
生徒全員が「いきなりナニ言ってんだ、コイツ?」と、疑惑や驚きに満ちた目で、信菜を見上げている。
もちろん、当の信菜も「何を言ってんだウチは?」と、心の中で驚き慌てていた。
そんな彼女と会場を無視して、その愛らしい唇は歌でも歌うかのように、上機嫌には跳ね回る。
「両親も好きではありません。弟も好きではありません。正直、この学校の生徒たちも、好きじゃありません。なんなら生徒会長だって、今となったら本当にどうでもいいです」
先ほどとは比べものにならないほど、ザワザワと体育館が喧騒で包まれる。
普段の彼女からは想像も出来ない信菜の突然のはっちゃけトークに、脇で待機していた先生たちは身動き1つ出来ずフリーズしてしまう。
それをいいことに、信菜は今の自分のまっすぐな気持ちをマイクに向かってぶつけてやった。
「自分を善人だと信じて疑わない、そんな人間が嫌いです。薄汚いノラ犬がドブに落ちると、一斉に集まって袋叩きする……そんな善人が大嫌いです」
だから私は、今、胸を張ってこう言います。と、信菜は続けた。
「――この世の中、そんな捨てたモノじゃないってことを」
途端に、生徒達全員が同時に息を呑んだ。
いや生徒たちだけではない。
傍に控えていた教職員たちも、ゴクリと生唾を飲んで信菜を見守っていた。
今の彼女には、他にはない不思議な魅力が溢れているようで、自然と視線が彼女に吸い寄せられてしまう。
間違いなく、この瞬間、世界の中心は彼女だった。
「だって私は……ウチは知っちゃったから」
――世の中には、ドブに落ちたノラ犬を平気で助けようとする、大バカ野郎が居ることを。
――己の信念だけを頼りに、平気でドブの中に突っ込む、愛すべきバカ野郎が居ることを。
彼女は知ってしまったから。
知ってしまった以上、もう前の自分には戻れない。
戻るつもりも、ない。
「きっと周りから見たら、彼は滑稽に見えたかもしれない」
ドブ犬を助けたところで、得な事なんて、何もない。
得る物なんて、何もない。
多くの人達が、彼をバカな男と吐き捨てて、愚鈍な男と鼻で笑うだろう。
それでも、例えそうだとしても。
世界中の人間が、彼を笑い者にしようとも――
「――それでもウチは……そんなバカを誇らしく思います」
こんな素敵な大バカ野郎は、他に居ないのだから。
「笑いたければ、どうぞご自由に? ただ最後に、これだけは言っておきます」
突如信菜の脳裏に、ここ数日の記憶が、シャボン玉のように浮かんできた。
それはごくありふれた日常の数々であったが、信菜にとってはかけがえのない宝物であった。
例え世界が彼をバカだと罵ろうと構わない。
そんなバカの隣を歩いて行けるのなら、きっとソレは最高に楽しいに違いないのだから。
だから信菜は、そのバカの隣を、胸を張って歩けるように、全校生徒をまっすぐ見据えて、ハッキリとこう言った。
「世界を回すのは、いつだって一握りのバカだと相場が決まっています。だから、だから――」
すぅ、とその女性らしい胸が大きく上下する。
次の瞬間、風船が爆発したかのように、小さな虎は大きく吠えた。
「――黙ってウチに投票しやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ! 以上!」
スピーチ終了! と、信菜が満足気に笑みを深めた。
刹那、体育館が怒号やら混乱やら、混沌の極みのような状況へと成り下がった。
「うぉぉぉぉぉっ!? 最高にロックじゃん!? あの1年カッケェ!?」
「う、ウソだ!? ぼ、ぼぼぼ、ボキの信菜ちゃんはあんな下品な言葉は使わない! こ、これはきっと夢、そう夢なんだ!」
「言ってること支離滅裂じゃない、あの子……」
尊敬、絶望、困惑や嫉妬と、感情の嵐が体育館を支配する。
慌てて司会の実行委員が『お、お静かに! お静かにお願いします!』と声を張り上げて、場の鎮静化を図っていた。
そんな中、件の信菜は嵐の中心の中、ステージの脇で見守ってくれていた例のバカと向き合っていた。
バカは心底驚いた顔を浮かべていたが、最後は彼女の知っているあの人懐っこい笑みで、グッ! と親指を立ててみせた。
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