みんなの女神サマは最強ヤンキーに甘く壊される

けるたん

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第9部 聖夜に水星は巡航する

第15話 オールゲイズ~2丁目の夕日~

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 今、ありのまま起こったことを話すぜ?

 森実が誇るケダモノの槍に連絡を入れたら、何故か足下から着信音が聞こえてきた。

 何を言っているのか分からんと思うが、俺も何を言っているのか分からない。

 というか、分かりたくなかった。



「? 何の音だし、コレ?」
「何かししょーの声、というか歌が聞こえるんだけど……?」
「いや、俺は歌ってねぇぞ?」
「……どうやら士狼の歌声は、この机の下から聞こえてくるようですね」



 芽衣の一言で全員、潜りこむように机の下へと視線を移した。

 そこには、真っ白な制服に身を包み、体操座りのまま、一心不乱に俺の鼠蹊部そけいぶを凝視しているストーカーが居た。

 というか鷹野が居た。

 鷹野はポケットからスマホを取り出すなり、通話ボタンをタップ。

 そのまま湖面こめんの如く澄んだ瞳で、まっすぐ俺を見据えながら。



「どうしたんや喧嘩狼? 喧嘩狼の方から電話をかけてくるやなんて、珍しいやないか」
「いやソレは俺の台詞だわ。マジで何してんだよ、おまえ?」



 ガッハッハッハッ! と豪快に笑いながら、

 ――ぬるっ♪

 と机の下から這い出てくる鷹野。

 そのまま気持ちの悪い笑みを浮かべ、俺と芽衣の間に強引に割り込むなり、うっとりした声音で、こうつぶやいた。



「『何をしてた』も何も、喧嘩狼の周りを警備してただけやが?」
「ねぇ?『警備』って意味、ちゃんと知ってる?」



 世間一般では、ソレをストーカーと呼ぶんだよ?

 それにしても、いつの間に机の下にスタンバイしていたんだろうかコイツ?

 くそっ!?

 普段であれば、コイツのこの奇行に悪態を吐いているところなんだが、今日は何故かコイツにすげぇ癒しを感じる!

 そんな自分に腹が立つ!



「というか、大和田のおにぃが見当たらねぇけど、今日は一緒じゃねぇの?」
「ノブなら、もうすぐ隣町の高月こうつき高校こうこうとの全面戦争やさかい、下のモンに喝を入れるって言って、学校へ行ったぜよ?」



 そんなことよりもっ! と、鷹野は呆気とられている乙女3人組を順番に一瞥いちべつした。



「話は全部聞かせてもろぉーたで。ええか、メスガキ共? コレだけは言っておく?」



 一体コイツは何を聞いたんだろうか? と、乙女3人の瞳に疑問符が浮かび上がる。

 が、そんな事お構いなしに、鷹野は俺の肩を強引に掴むと、何故か勝者の笑みを顔に張り付けた。



「おまえらは喧嘩狼のことを何一つ知っとらん!」
「むっ? なら鷹野さんは士狼の何を知っているんですか?」
「そ、そうだよ! タカノくんが、ししょーの何を知っているって言うのさ!」
「翼さん。急に横から割り込んで、シャシャリ出てこないで欲しいし」



 急に結託した生徒会シスターズが、変態を口々に批難ひなんしはじめる。

 変態、もとい鷹野は、勝者の余裕とばかりに3人をゆっくりと見渡しながら、フッ! と小さく微笑んだ。



「ワシは知っとるぞ? 喧嘩狼がベッドの上では、狼ではなくワンちゃんであることを! 乱れた時は、首筋を甘噛みしてくることを! 無類のピロートーク好きであることも! ワシは……ワシは全部知っとる! ほんまドエロい男やでぇ、コイツぅ♥」

「おい!? 捏造した記憶を喜々として語るんじゃねぇよ!?」



 バカやめろ!?

 頬を染めるな!

 コッチを見るな!?

 甘えた声で頬ずりするなぁ!?

 真実はいつも1つだって、爺ちゃんから教わってねぇのかコイツ?

 もう純粋に気持ち悪いんだよなぁ……。

 なんで警察はこんな危険人物をノーマークで世に解き放っているんだ?

 ちゃんと仕事してんのか、アイツら? 

 気がつくと芽衣たちの視線が、化け物を見るかのように冷たくなっていた。



「し、士狼……。あなた、女の子にモテないからって、そんな……」

「し、ししょーっ! 目を覚まして!? お、女の子の身体の方が気持ちいいよ、ゼッタイ! な、なんならボクで試してみる!?」

「マジすか!? いいんすか!?」

「いや、古羊パイセンはナニを言ってるし……。つぅかシロパイも、パイセンを抱きしめようとすんな! シロパイはハードゲイじゃなかったの!?」



 うっ!? と目元を押さえる芽衣と、慌てた様子ですげぇコトを口走るよこたん。

 そんな爆乳わん娘を、可哀そうな子を見る目で見つめながら、よこたんのデカパイへと伸びていた俺の手をペシッ! と弾く、大和田ちゃん。

 う~ん?

 あの重苦しい空気感は無くなったが、今度は俺に【ガチホモクソ野郎】疑惑が浮上してしまったぞぉ?

 いやまぁ、それはそれとして、よこたんよ?

『女の子の身体は気持ちいい♪』件について、このあとじっくり話し合いたいから、我が家まで来てくれるかなぁ?

 いいともーっ! と、胸の内で歓喜の声をあげていると、今度は芽衣のスマホに着信が入った。



「はいもしもし? ……そうですか、ありがとうございます」
「メイちゃん、今の誰から?」
「猿野くんからです。……どうやら心配していた事が、現実になってしまったみたいで」



 心配していたこと? と、全員で首を傾げていると、芽衣はグルリッ! とその場を見渡して、ハッキリとこう言った。



「さぁ、小競り合いはここまでです。みなさん、落ち着いてわたしの話を聞いてください」



 静かにそう告げるや否や、芽衣は俺たちの間に超特大の爆弾をアッサリと投下したのだった。




「――このままじゃ、クリスマス会が中止になりそうです」
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