みんなの女神サマは最強ヤンキーに甘く壊される

けるたん

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第10部 ボクの弟がこんなにシスコンなわけがない!

第15話 絶対に結婚させたい男VS絶対に婿入りしたい男

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 古羊ファミリーによる怒涛の夕食を終えた、午後8時前。

 古羊ママが洗い物を片付けながら、キッチンからひょっこりと顏を出し、



『ちょっと早いけど、芽衣ちゃん、洋子ちゃん。お風呂に入っておいで? 2人の好きだった入浴剤も一緒に入れてあるから、ね?』



 という一言により、双子姫は顔を輝かせながら古羊家の脱衣所へと消えていった。

 そして居間へ残されたのは古羊家のビック☆ダディと、大神家が誇るナイスガイの2人だけという、その、なんだ?

 ……さっきからパパ上が、超ご機嫌なご様子で俺の方ばかり見てくるのだが、何なんだコレは?

 まるで鷹野やオカマ姉さんが、俺と接するときのような雰囲気をパパ上から感じ、思わず尻の穴がキュッ! と引き締まる。



「大神くん……。いや、士狼くんと呼んでもいいかな?」
「あっ、はい。ど、どうぞ、お好きなように……」
「ありがとう。……それじゃ士狼くん――ぼくと組まないかい?」
「はい?」



 パパ上が何を言っているのか分からず、つい間の抜けた顔で聞き返してしまう。

 く、組む? 

 どういう意味だ?

 ……ハッ!? さては俺を「組み伏せてやる!」とか、そういう意味か!?

 エロ同人みたいに、エロ同人みたいに!

 ツツーッ!? と、俺のこめかみに冷たいモノが流れる。

 が、どうやらソレは俺の勘違いだったらしく、パパ上は悲しそうに目を伏せ、ぽつり、ぽつり、とつぶやきだした。



「親であるぼくが言うのもアレなんだけどね、あの、中学のときに、その……とある男の子に酷い目に合わされて、人間不信になって引きこもっていた時期があったことは、もちろん知っているよね?」
「えっと、はい……」



 きっと、佐久間との1件のことを言っているんだな、とすぐに理解できたので、素直に頷く。

 その途端、パパ上の悲しげな瞳がユラリと揺れた。



「あの事件以来、芽衣は家族以外には心を開かなくなってしまってね。……実の娘が苦しんでいるときに、何の力にもなることが出来なかった、非力な自分を何度恨んだことか」

「い、いやいや! 悪いのは全部あのクソ野郎であって、パパ上たちが責任を感じる必要なんてありませんよ!」

「……ありがとう。士狼くんは優しいね。……そんなキミだからこそ、この話が出来る」



 そう言って、パパ上はニチャリ♪ と、芽衣とよく似た邪悪なる笑みを口元へ浮かべた。



「話は変わるんだけどね、士狼くん。ぼくらの自慢の娘である芽衣はどうだい? 嫌いじゃないだろう?」

「そ、そりゃ好きか嫌いかで言えば……愛してます、けど」
「なるほど。なら――妻とするなら、どうだい?」

「つ、妻ですか? そ、そうですね……芽衣は確かに綺麗で可愛くて、仕事も出来て、スタイルも(虚乳を除けば)抜群だし……恋人、というか妻としてみるなら、この上なく最高だと思いますけど……」



 それが一体? と俺がコテンと首を傾げると同時に、パパンが「それはよかった!」と満面の笑みを顔に張りつけ、こう言った。



「なら、どうだろう士狼くん? ぼくと家内が全面的に全力でサポートするから、芽衣の名字を『古羊』から『大神』に変えてしまうというのは?」



 瞬間、俺は逡巡しゅんじゅんすることなく、崩れ落ちるように椅子から腰を浮かせると、すぐ傍のパパンの足下まで近づき、単三電池を握っていない方の手で彼の手を握り締めていた。

 それはさながら、王に忠誠を誓う騎士のように、自然に片膝を立て、こうべを垂れていた。

 きっと今の俺の姿を大和田ちゃんあたりが目撃したら、あまりの凛々しさに「ヤダ、シロパイかっこいい……抱いて!」と瞳にハートマークを浮かべながら、お股をビショビショ♪ にしていたに違いない。

 下半身、大雨・洪水警報である!



「ありがとう士狼くん。キミなら分かってくれると思っていたよ。ただ、芽衣を貰いに来るときは、父親としての義務と権利を全力で行使させていただくよ? ……つまり『キミに大切な娘はやらん!』的な……ね?」

「もちろんですよ、パパ上! 俺も負けずに、全力全開で食い下がってみせますよ! ……むしろ、今からパパ上とやり合うのが、楽しみで仕方がないくらいです!」

「ふふっ、さすがは芽衣が認めた男の子なだけあるね。……士狼くんが必死の形相でぼくに迫ってくるのが、楽しみでならないよ」



 俺たちは人知れず「へへっ」と2人してはにかんだ。

 こうして当人であるハズの芽衣のあずかり知らぬトコロで、古羊芽衣をめとるための最強タッグが結成されたのであった。



「ふぃぃ~、いいお湯だったぁ~♪ ……って、ナニこの状況? なんでお父さんと士狼は、そんなニコニコしながら握手してるの? ちょっと怖いんだけど?」

「やぁ芽衣、早かったね。ちゃんとゆっくり湯船には浸かったかい?」
「気にすんな。ちょっとマイ☆ダディと親交を深めていただけだから、さ」
「……何かしら? 2人の笑顔を見てると、身の危険を感じるんだけど?」



 例の真っ白なふわふわの寝巻きを身に纏い、身体中からホカホカ♪ と湯気を立ち上らせながら、俺たちの居る居間へと帰ってきた芽衣。

 何故か芽衣は俺たちを見つけるなり、ぶるっ! と小刻みに身体を震わせる。

 いけない!?

 体の芯までしっかり温まってないじゃないか!

 このままじゃ風邪をひくぞ!?

 しょうがない、このシロウ・オオカミが、優しく抱きしめて温めてやるとするか。

 もちろんベッドの上で。

 ふふふっ♪ 今夜は季節外れの夜の大運動会へと、洒落こもうじゃないか!

 妄想の翼を最大限に広げていた矢先、突如俺の真横でミルクのような甘い匂いが、鼻腔を蹂躙じゅうりんした。

 おぉっ! なんだ、このいい匂いは?

 蜜に群がる蜂のように、鼻先をヒクヒクッ! させながら、隣へと振り向くと、そこには。



「むぅぅぅ~」



 頬をリスみたいに膨らませ、大変ご立腹なご様子であらせられる我らが大天使、ラブリー☆マイエンジェルよこたんが、責めるような視線で俺を見据えていた。

 芽衣と同じくお風呂あがりということもあり、体中から「ギア2かな?」と錯覚しそうなくらい湯気を放出させている、マイ☆エンジェル。

 ほんのりと頬にピンクが差し込んで、何とも色っぽい♪

 ……のだが、なんで俺は彼女に睨まれているんだろうか?



「よ、よこたん? な、なんか怒ってます?」
「……怒ってないもん。ししょーのバカ」
「怒ってじゃん……。オコじゃん、激オコぷんぷん丸じゃん」



 怒ってないもん! と、子どもっぽく頬を膨らませたまま、ぷいっ! とそっぽを向いてしまう、ラブリー☆マイエンジェルよこたん。

 そのいじけた態度に、不覚にもトキめいてしまった。

 おいおい、なんだコイツ?

 可愛さの擬人化か?

 今夜はまさか3P突入か?

 マジかよ……ランボーもビックリのワンマンアーミーじゃねぇかベイベー。

 さすがに姉妹同時攻略は、キツイか?

 いや、若さ溢れる今の俺ならば!

 うん、問題ないな! ピロートークの練習は12歳の頃から毎日かかさずやっているし、何ならまるで小鳥がさえずるように語れる自信があるね。

『日本経済と性』という絶妙なるテーマのピロートークを展開しつつ、ロマンティックな雰囲気がだんだんエロティックに変わっていき、そこからまさかの2回戦突入で――よしっ、イケる!

 と、俺がゲスな妄想に花咲かせていると、パパ上が何かに気づいたようにボソリッ、と呟いた。



「もしや洋子も……なのかな? う~ん、コレは困ったことになったなぁ……。やっぱり双子だと、そういうのも被っちゃうのかなぁ。娘たちには幸せになって欲しいんだけど……コレばっかりはなぁ」

「パパ上? いかがしましたか?」
「ううん。なんでもないよ?」



 ニッコリ♪ と微笑みながら、小さく首を振るパパン。

 そんなパパンの行動の意味が分からず、首を捻る俺と芽衣。

 そして、何故かチマッ! と俺のスカジャンの裾を不安気に握りしめる、よこたん。



「ほらっ! そんなことよりも、士狼くん。お風呂が空いたよっ! 入っておいで? 長旅で疲れただろう?」

「あっ、それじゃお言葉に甘えて……。ほい、よこたん」



 俺は握っていた単三電池を、よこたんに渡そうとするが、そろそろ使用限界時間である30分が来るハズなので、代わりにポケットから替えの電池を取り出そうとして……「あれ?」と間の抜けた声を漏らした。



「? どうしたの、ししょー? 電池さん貸してくれないと、またビリビリがきちゃうよ?」
「あぁ~……どうしよう? もうストックがないわ」
「へっ?」
「コレが最後の1本だったみたい……」



 そう言って俺は、握っていた単三電池をよこたんに見せると同時に、慌てて彼女の右手を握り締めた。

 あ、あっぶねぇ~っ!?

 あと少し気づくのが遅かったら、ハードにダンスってた所だったわ!

 俺は内心冷や汗をかきながら、何故か自分の身体を抱きしめて、俺から距離を取ろうとする芽衣へと視線を向けた。



「なぁ芽衣。予備の電池持ってない?」
「ん? 電池? 電池なら、士狼が持ってるヤツで全部よ。……って、まさか?」
「おう、その『まさか』だ」

「……全部使い切っちゃったのね。まったく……お父さん? 我が家に単三電池の余りって、あったっけ?」

「単三電池かい? う~ん、あまり使わないから、多分無いんじゃないかなぁ?」



 と、言いながら席を立ち、単三電池を探しに家の中を捜索してくれるパパ上。

 ほんといい父親だよなぁ。

 大和田ちゃん家のクソ親父に、爪の垢を煎じて飲ませてやりたいくらいだわ。

 ガサゴソと物置らしい棚を捜索する音が聞こえてきたかと思うと、廊下の方からパパ上の「やっぱり無いねぇ~」と妙にびした声が居間へと響いた



「ど、どうしよう、ししょー?」
「『どうしよう』って、まぁ買いに行くしかないわなぁ」

「で、でもでも! 駅前で、あの鬼島さんって人が言っていたよね? 最近『不良狩り』っていうのが流行はやってるから、夜はお外に出ない方がいいって!」

「大丈夫だって。俺、不良じゃねぇし。問題ねぇよ」



 心配し過ぎだって! と笑みを返してみるが、それでも爆乳わんは「でもでも!?」と食い下がってくる。



「それに電池がねぇと、俺が風呂に入れねぇしな。まぁ、よこたんがもう1回俺と一緒に入ってくれるっていうなら、大人しく家に居ようとは思うけどさ……どうする?」

「ふぇっ!? しょ、しょれは!?」
「ふふふっ、士狼? 却下に決まってるでしょ? コロスゾ?」



 ドストレートの罵倒が俺を襲う!

 ご、ごめん、ごめん!

 ちょっとしたジョークじゃん!?

 お茶目なシロウ☆ジョークじゃ~ん!

 芽衣ちゃん怖すぎぃ~♪ と心の中でウィンクを決めていると、芽衣はしょうがいとばかりに、「ハァ」ため息を1つこぼした。



「ちょっと高いけど、ちょうど我が家の近くにコンビニがあるから、そこで買いましょう」
「うーす。よし行くぞ、よこたん。湯冷めしねぇように、何か羽織はおれよ?」
「う、うん。ありがと……」



 ぎゅっ! と、優しく彼女の右手を握り締めると、なぜかうつむき気味にお礼の言葉を口にする、よこたん。

 その唇は笑みを噛み殺すように、もにょもにょっ! とせわしなく動いていた。

 クソっ、可愛いなコイツ? 

 結婚してやろうか?

 ムクムクと膨れ上がる結婚願望を抑え込みつつ、とりあえず俺達はお外へ出るべく、居間の隅にハンガー掛けされていた爆乳わんのキャラメルコートを協力して羽織りつつ、準備完了。

 いざ出陣じゃ! といった所で、ハタッと気がつく。



「アレ? 芽衣のヤツどこ行った? トイレか?」
「……ししょー。そういうことは、気づいても言わないのがマナーだよ?」



 よこたんにやんわりいさめられながら、芽衣のパッパとマッマに「お外いってきます!」と伝え、2人仲良く玄関へと移動。

 そのまま流れるように、玄関の扉を開けた。

 瞬間、いつの間にかゴツイ防寒着を身に纏った芽衣が、お外でスタンバイしていた姿が目に入った。



「遅いわよ、2人とも。さぁ、行きましょうか。あっ、そうだっ! 帰りにプリンでも買って帰りましょ」

「いや、そのまえに……えっ? 芽衣も行くの?」
「……なに? アタシが居たら、何かマズイことでもあるワケ?」



 ジロリッ! と、下からめあげられ、別の意味で震えがる俺。

 うっひょ~♪ やっぱ美人から睨まれるのは、スッゲェゾクゾクするなぁ!

 おしょんしょんが漏れそうだ!



「ま、マズイだなんて、そんな! む、むしろ大歓迎ですよ、旦那!」
「誰が旦那よ。じゃあ問題はないわね、行くわよ、2人とも」
「あっ! ちょっと待て、芽衣。その……大丈夫か?」
「? 何がよ?」



『意味が分からない』とばかりに、首を捻る芽衣を前に、俺は精一杯のデリカシーを持って、彼女の身を案じてみせた。



「いやその、パッ――おっぱい、盛ってないみたいだけど、大丈夫? Aカップのままで、いいの?」

「そこを退きなさい、洋子! 今日という今日は、あのバカの頭をかち割ってやる!」

「お、落ち着いて、メイちゃん! お母さん達が居るから! ね? ね!? あ、謝って、ししょーッ! はやくメイちゃんに謝って!」

「す、すまん。Aカップじゃなかったな、B寄りのAカップだったな。ごめんな?」
「ナニに謝ってんだ、キサマぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「お、落ちちゅいて!? 落ちちゅいて、メイちゃん!?」



 何故か唐突な怒りによってスーパー地球人へと目覚めようとしている、我らが女神さま。

 今にも俺の身体を部位破壊してきそう狩人かりうどを前に、よこたんが壁でも作るかのように俺たちの間に身を滑り込ませる。

 そして荒ぶる女神さまを鎮めるべく、祈祷きとうを開始するのだが……どういうワケか俺が何かを喋るたびに、芽衣の怒りのボルテージが上昇していく気がしてならない。

 いや冷静に観察している場合じゃないぞ、俺!?

 はやく謝るんだ!



「ま、待ってくれ芽衣! 別に俺は芽衣のブラの奥底で枯れ果ててしまった、慎ましやかな胸をバカにしたワケじゃないんだ! ただ、親の形見のように大事にしているパッドを身につけなくて本当にいいのかな? って思っただけで、悪意はない! 信じてくれ!」

「悪意がないのが一番たち悪いのよぉぉぉぉぉっ!? いいのね!? ソレが最後の言葉で、本当にいいのね!?」

「待って、待ってメイちゃん! バットはマズイ! バットはマズイよ! というか、どこから出したの、ソレ!?」



 かくして電池を買いにいく前に何故か荒ぶってしまったメイ・コヒツジを鎮魂ちんこんするべく、俺とラブリー☆マイエンジェルの熱い夜が、幕を開けたのであった。
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