みんなの女神サマは最強ヤンキーに甘く壊される

けるたん

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第10部 ボクの弟がこんなにシスコンなわけがない!

第24話 右手にホモを左手にノンケを

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恍惚とした表情で俺の尻に顔をうずめようとしている鷹野翼《クリーチャー》を前に、言葉がジェットエンジンのような勢いで飛び出ていった。


「貴様ナニをしている!?」
「ッ!? ど、どったんや喧嘩狼? そんな大きな声を出してからに? 敵襲か?」
「あぁ敵襲だ。主に俺の肛門あたりで、トンデモねぇ裏切り行為が発生している」

「なんやと!? 安心せい喧嘩狼! ワシが命を懸けてでも、喧嘩狼のこの美尻を守ってみせるわい!」

「おいっ、やめろ!? ケツに顔を埋めるな! 深呼吸するな!?」



 うっほほ~い♪ と、歓喜の奇声をあげる鷹野を慌ててケツから引き離す。

 なんてこったい。

 戦友にケツを掘られるとは、まさにこのこと。

 もう2度と、コイツの前で無防備にケツをさらさないことを心に誓った。



「あぁっ!? もうイケズやなぁ喧嘩狼は♪ ……うん? なんやこの不愉快な視線は?」
「た、鷹野……翼!」



 キジマーライオンに名前を呼ばれて、ようやく『そちら』に意識が向いたのだろう。

 我らがハードゲイは、不愉快そうに眉根を寄せながら「なんや?」とキジマーライオンの方へと視線を向け……絶句した。


 そこには耳の端まで吊り上がっていそうな位、不気味な三日月のように唇を歪ませ、歓喜の表情を浮かべるキジマーライオンが居た。


 うわっ、怖っ!?

 なにあれ!?

 その表情を例えるのであれば、街を歩いていると偶然肩から掛けていたバックにスカートの裾が引っかかって、パンティー丸出しのまま毅然きぜんとした態度で街を歩いている女子校生を、初孫ういまごでる老夫婦ような目で観察している男子高校生のようだ、と言えば分かりやすいだろうか。

 よこたんが「ししょー……」と弱々しげに呟きながら、ギュッ! と握っていた手に力をこめる。
それどころか、芽衣でさえ気後れしたのか、俺のスカジャンをチマッ! と握りしめる始末だ。

 そんな俺たちのことなど完全に無視して、その歪に歪んだ瞳で鷹野だけを見据えるキジマーライオン。

 その瞬間、身の危険でも感じたのか、珍しく大和田の兄上の背後に隠れるハードゲイ、改め鷹野。



「な、なんやなんや? あの気持ち悪い男は? ワシの身体を舐めまわすように見て……変態か?」
「いや、ソレを翼さんが言うなし……」
「タカさん。ほら、あの方ですよ。去年ウチにカチコミに来た……その頭です」
「おぉっ! あの妙に歯ごたえの無い連中の!」



 なるほど、と鷹野が1人納得したように頷く。

 う~ん?

 結構、というか、かなり酷いことを言われているが、キジマーライオンは大丈夫だろうか?

 メンタル・ブレイクしていないだろうか?

 再びキジマーライオンに視線を向けると、そこにはまるで月の光に祝福されたかのように、オーバーに両手を広げ、静かに笑っているキジマーライオンが居た。



「クハッ! これは現実ばい? だとしたら……今日はなんて良い日だべ! きっと今までの日頃の行いが良かったから、神様がワテにご褒美をくれたんやな!」



 きっとそうに違いないばい! 神様、あんがとぉ!

 と、恍惚とした笑みのまま、声を大にして呟くキジマーライオンに、大和田ちゃんが若干……いや、全力で引いていた。



「あ、なんだしアイツ? ヤバい薬でもキメてんの、アレ……?」
「ねっ? もはや顔面猥褻物だよね、アレ? 顔面猥褻物陳列罪だよね?」
「今回ばかりはシロパイに完全同意だし……うわっ!? コッチ見た!?」



 ふひっ♪ と唇の端から気持ち悪い笑みを溢しつつ、ギョロンッ! と三度みたび鷹野の姿を捉えるキジマーライオン。

 その頬は遠目からでも分かるくらい紅潮していて、それはまるで恋する乙女のように俺には見えた。

 ……まぁ男なんだけどね。



「ひ、久しぶりだべ鷹野! わ、ワテのコトを覚えとるか?」
「んにゃっ、まったく? 誰や、おまえ?」

「ほぉか! ほぉか! 覚えてくれとったべか! ワテもやで! あの日から1日足りとも忘れたコトはなかったばい!」

「いや覚えてないって言っとるやないか。なんやコイツ? 人の話を聞かんヤツのぅ」
「なっ!? ば、バカな!? 鷹野がツッコんだ……だと!?」
「驚く所はソコじゃありませんよ、大神様?」



 大和田の兄たまが、ため息まじりにそうツッコむが、俺はそれどころではなかった。

 だってさ? あの年中ボケ倒す、男色だんしょく下ネタカタパルトの鷹野がツッコミを入れるなんて……俺、初めて見たよ。

 あっ! 『ツッコミを入れる!』と言っても、別に「肛門」とか「菊門」とか「後ろの蕾」とか
「入れる専用出口」とか、そういう意味合いじゃないからね?

 勘違いしないでね?



 鷹野が気持ち悪そうな顔でキジマーライオンの顔を見据えながら、キュッ! とお尻に力をこめる。

 それと同時に、キジマーラインはニヤニヤ♪ と下卑げびた笑みを溢しながら、



「この1年、キサンを倒すためだけに、腕を磨いてきたばい。もう前哨戦ぜんしょうせんとか、どうでもよか! さぁ鷹野! ワテとタイマンを張れや!」

「だが断る!」

「ふふっ……♪ キサンなら、そう言うと思っ――ハァッ!? な、なんでや!? なんで断るばい!?」



 断られるとは全く思っていなかったのだろう。

 キジマーライオンの狼狽うろたえる声音が、俺達の肌を不愉快に撫でた。

 鷹野は、この場に居る全員の視線を一身に浴びながら、



「この鷹野翼がもっとも好きな事のひとつは、自分で強いと思っているやつに『NO』と断ってやることや!」

「ねぇ兄上? もしかしてアイツ、ここに来る前に『ジョジョ』でも読んだの?」
「よく分かりましたね、大神様」



 正解です、と小さく頷くタマキン兄さん。

 なるほど。

 どうやらアイツも、顎鬚少年と同じく、生粋のジャンプっ子らしい。

 みんなジャンプ好き過ぎだろ?

 ……まぁ俺も大好きだけどさ。



「な、なんでや!? なんでタイマンを張ってくれへんのや!?」
「なんでも何も、ワシ、自分より弱い奴には興味あらへんし」
「んなっ!? た、確かに去年までワテは弱かった……せやけど! 今は違う! 今はここに居る誰よりも強い自覚があるばい!」



 ドンッ! と胸を力強く叩く、キジマーライオン。

 よっぽど鷹野と再戦がしたいのだろう。

 了承するまで退かない! という固い意思が、言葉の節々から感じ取れた。

 鷹野は至極面倒臭そうに顔をしかめたが、すぐさま名案でも思いついたかのように「そうや!」と声を張り上げた。



「そこまで言うんやったら、再戦してもええで?」
「ほ、ほんまかえ!? ならさっそく――」
「ただし! ここに居る喧嘩狼を倒すことが出来たら、やけどな」



 ニィッ! と笑みを深めながら、パァンッ! と俺の尻を叩くハードゲイ。

 いや、そこは肩じゃねぇのかよ?

 おいバカ、手をニギニギするな!?

 感触を思い出すな!?



「この場でワシより強い男は、喧嘩狼しか居らん。その喧嘩狼に勝った言うんやったら、アンさんと再戦してもええわ」

「……ほんまやな? 男に二言はなかとよ?」
「ほんまも、ほんまや。なんなら喧嘩狼の尻に誓ってもええで?」



 いやそこは神に誓えよ? と、みなの心が1つになった事は、言うまでもないだろう。

 キジマーライオンはスッ! と笑みを噛み殺し、感情のともっていない瞳で、鋭く俺を睨みつけてきた。



「分かったばい。……というワケでや、赤毛の兄ちゃん。わりぃが大義のための犠牲となって貰うばい」

「と言うワケで喧嘩狼。ワシのために、よろしく頼むわ?」
「すげぇ。俺、一言も了承してないのに、勝手に話が進んでやがるわ」



 傍若無人にも程がありませんか? 

 まぁ、駅前の借りも返しておきたいし、別にいいけどさ。



「よっしゃ! 話もついたことやし、ついて来るべ! 特設リングへと案内するけん!」



 そう言って俺たちに背を向け、ご機嫌にスクラップ置き場の奥へと進んで行く、キジマーライオン。

 俺たちは少し躊躇ためらったあと、鷹野を先頭にキジマーライオン率いるキジマーランドへと足を踏み入れたのであった。
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