みんなの女神サマは最強ヤンキーに甘く壊される

けるたん

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第10部 ボクの弟がこんなにシスコンなわけがない!

第25話 オレ、この戦いが終わったら……ヨーコ姉と結婚するんだ!

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 キジマーライオン主催のキジマーランド。

 もとい、スクラップ置き場の中へと足を踏み入れて3分。

 俺たちがキジマーライオンの後ろをついて歩いていると、大和田ちゃんが不思議そうに辺りを見渡して、



「??? なんか、この辺りだけ、やけに温かくないし?」

「確かにそうですね。もう12月末だっていうのに、不思議とポカポカしているように感じますよね? それに、ここら一帯だけ妙に明るいのも気になります……どうしたんでしょうか?」

「気にすんな。きっと妖怪のせいなんだろ?」
「絶対に違うと思うよ、ししょー……?」



 どぉわっはっは~♪ と、全てを妖怪のせいにしてしまうクソガキのように口を開いていたら、何故か鷹野が「くぅっ!?」と小さく呻いた。



「お茶目な喧嘩狼……いとをかしぜよ❤ アカン、股にくる! ワシのお股に住むデイダラボッチが目を覚ましそうぜよ!?」

「すいません、タカさん。今はちょっとツッコミしづらい面持おももちですので、静かにして貰ってもいいですか?」

「……なぁ洋? 本当の本当に、このメンツで大丈夫かなぁ?」
「だ、大丈夫だって! 多分……おそらく……き、きっと!」



 不安気にそう呟く顎鬚に、古羊弟は言い聞かせるように何度も「大丈夫、絶対に大丈夫」と、無敵の呪文を繰り返していく。

 おいおい、まだ緊張してんのかコイツらは?

 しょうがないなぁ。もう1度だけ、俺様の小粋なトークで肩の力を抜かせてやるか!

 キャバ嬢がごときサービス精神旺盛な面持ちで、弟と顎鬚にむかって声を掛けようとした、その時だった。

 突如光の奔流ほんりゅうが、俺たちの身体を包み込んだのは。

 そのお昼と勘違いしそうなまばゆさ、一瞬だけ目を細めるが、それも本当に一瞬のこと。

 すぐさま光に慣れると、俺達はゆっくりと瞳を見開いた。

 そこには、30人に近い黒の特攻服を身に纏った男たちが、正四角形のように等間隔で埋められた太い松明にロープを巻いて、まるでボクシングのリングを彷彿とさせるソレの周りを、取り囲むように待機していた。



「どうや? 驚いたべ? コレが今回の代表戦で使う即席リングや!」
「そ、即席リング?」



 俺の言葉に「せやせや!」と嬉しそうに返事をしながら、リングの中へと足を踏み入れるキジマーライオン。

 そのままロープに身を預け、



「この代表戦のルールは至って簡単や。選ばれた5人の代表が、それぞれ1人ずつ、このワテらが作ったリングの中で気を失う、もしくは『まいった』と言うまでドツキ合うばい。そんでもって、先に3勝した方のチームが勝利ばい」



 ほな始めよか!

 そう口にするなり、キジマーライオンはリングの中へと入ってきたソフトモヒカンの男と入れ替わるように外へと身を滑り込ませる。

 ソフトモヒカンは俺たちの方へ一瞥しながら、「かかってこい」と手招きするようなアクションをしてみせた。



「どうやら、あのソフトモヒカンが1番最初らしいな」
「そのようですね。それで? コチラは誰が1番手を務めますか?」



 わたくしが行きましょうか? と、大和田のお兄様が主張する。

 が、それを古羊弟が「待った」をかけた。



「ま、待ってください、オオワダさん! ここは自分に行かせてください!」



 古羊弟は1歩前へと踏み出すと、まっすぐ兄上の瞳を見据えて、そう進言する。

 そんな古羊弟に厳しい目を向けながら、我らが兄様は渋った様子でこう呟いた。



「……この魁戦さきがけせんは、いわばチームが波に乗れるか、それとも相手の波に呑まれてしまうか、今後の残り4戦を左右する大切な仕事です。必ず勝てると約束できますか?」
「出来ます!」



 ハッキリとそう断言する古羊弟。

 その潔さの前に、一瞬だけ驚いたように大きく目を見開く、大和田の兄者。

 兄者のその驚いた隙をつくように、弟はさらに言いつのった。



「コレは星美の……オレたちの戦いです。なら1番手は星美の人間が務めるのが、礼儀というモノ。いや、大切な1番手だからこそ、星美の――オレが行くんです!」



 だから行かせてください!

 と、信念すら感じる口調で、兄たまをまっすぐ射抜く弟。

 しばしの静寂。

 だがやがて、大和田の兄上は「フッ」と口角を引き上げ、



「わかりました。そこまで言うのであれば、お任せします。大神様もタカさんも、それでいいですよね?」

「俺は文句ねぇよ?」
「ワシも喧嘩狼に同じく」
「――だ、そうです。それでは1番手、任せましたよ?」
「あ、ありがとうございます!」



 弟は一瞬だけ顔を綻ばせると、すぐさま戦士のような顔つきになり、手作りのリングの方へと歩みを進めた。



「洋……」
「洋介……」
「ヨーくん……」
「大丈夫だ。必ず勝つ!」



 顎鬚少年の肩を軽く叩きながら、心配そうに見つめる実の姉たちに笑みを返す。

 その姿は、まさに強者の余裕すら漂わせていた。



「それじゃ――行ってくる!」



 弟はそれだけ告げると、意気揚々とリングの中へ身を突っ込んだ。
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