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王都に着きました
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王都に着くと、趙子光様が申し訳なさそうに話しかけてきた。
「大変申し訳ありませんが、髪を切っていただきたい。ご婦人にとってそれがどれだけ大変なことかは存じているつもりですが・・。どうしても必要なのです。」
旅の途中、ずっと何か言いたげだったがこのことだったのか。
王都のお姫様ならともかく、首を斬られるところだったんだから、髪くらいどうってことない。髪が邪魔になるような仕事なのか、それとも単にそういうご趣味なのか。
「わかりました。どのようにでもお好きなようになさってください」
もちろん本心からそう思った。髪は切ってもまた伸びてくる。首は斬られたら、多分もう生えてこない。
「申し訳ありません。本当に心からお詫びいたします」
趙子光様は道中ずっと優しかった。私と話すときは、まるで後宮のお姫様と接するように接してくれた。こんな腰の低い人も珍しいが、ものすごく偉い人だということをつい忘れてしまいそうで怖かった。
王宮に着いた。確かに着いた。だけど・・
「でか!!!」
とにかくでかい。限りなく広い。大旦那様のお屋敷も広かったが、ここはもう建物そのものが街レベルに広い。自分の建物の概念を吹き飛ばすに十分な大きさだ。
「しばらくお待ちください。国王陛下に拝謁を賜りますので。」
趙子光様は当たり前のようにおっしゃられた。
「ホワッ」
ヤバい!変な声出た。なに!なに!なに!。国王陛下に会うの。私が!。そうかこの人、そういう立場の人なんだ。本来なら私なんかが、仰ぎ見ることさえ許されないような高貴なお方なんだ。
ヤバい・・ちょっとちびった。
今更ながら身体が震えだした。歯がカチカチなってくる。
「どうされました。お加減でも悪いのですか」
趙子光様が、心配そうに話しかけてきた。
「いえ、大丈夫です。ちょっとお手洗いに行きたくて・・。」
本当は行きたくないけど行っとこう。国王陛下の前で漏らしたら打ち首だろうし、趙子光様にもご迷惑をおかけするから。
「も、申し訳ありません。休息もとらず・・。ご婦人に恥ずかしい思いをさせてしまいました。」
お手洗いの単語に反応したのか、趙子光様は顔を真っ赤にして謝罪しだした。本当に純情なんだから。イヤ違うんです。私なんか、普段ならその辺の草むらで用をたしてた人間なんです。あなた様が気を使わなきゃいけないような人間では、決してないんです。
申し訳ないやら恐れ多いやらで、頭が整理できない。連れていってもらったお手洗いも、とてつもなく広い。いや広さは私たち使用人が使っていたお手洗いと大差ないんけど、違うのは用がたせそうな穴が一つしかないことだ。
大旦那様は文化人だったから、お手洗いは男女別々に用意してくれていた。女性用は長い溝が掘ってあるだけだったから、7~8人は同時に使えた。前の人にかからないように簡単な仕切りはあったけど、壁や扉はもちろんない。
完全な個室で用をたすって生まれて初めてだ。
用をたしてるあいだ、みんなとしゃべってるのが当たり前だと思ってたけど、王宮ではいつも一人で用をたすんだろうか。
何から何まで違う世界。衣服の裾をまくってしゃがめば、股の間から流れる黄色い液体はいつもと同じ。お姫様でも使用人でも、同じものを出すに決まってる。ビビることはない。もう開き直っていくしかないんだから。
なんか用をたしたらすっきりした。まあ当たり前だけど・・。
すっきりしたところで趙子光様のところへ戻ると、趙子光様は片膝をついて誰かとお話されていた。
お話されている相手は、一目で身分の高いお方とわかる立派な服装をされていた。
まさか、まさか・・。
恐る恐る近づいてみる。
「た、ただいま戻りました」
震えながらもなんとか声を絞り出した。
まさかこのお方が・・
震えながらも何とか相手のお顔を確認すると、予想に反してそれは私が良く知る人物だった。
「あっ・・私だ・・・」
「大変申し訳ありませんが、髪を切っていただきたい。ご婦人にとってそれがどれだけ大変なことかは存じているつもりですが・・。どうしても必要なのです。」
旅の途中、ずっと何か言いたげだったがこのことだったのか。
王都のお姫様ならともかく、首を斬られるところだったんだから、髪くらいどうってことない。髪が邪魔になるような仕事なのか、それとも単にそういうご趣味なのか。
「わかりました。どのようにでもお好きなようになさってください」
もちろん本心からそう思った。髪は切ってもまた伸びてくる。首は斬られたら、多分もう生えてこない。
「申し訳ありません。本当に心からお詫びいたします」
趙子光様は道中ずっと優しかった。私と話すときは、まるで後宮のお姫様と接するように接してくれた。こんな腰の低い人も珍しいが、ものすごく偉い人だということをつい忘れてしまいそうで怖かった。
王宮に着いた。確かに着いた。だけど・・
「でか!!!」
とにかくでかい。限りなく広い。大旦那様のお屋敷も広かったが、ここはもう建物そのものが街レベルに広い。自分の建物の概念を吹き飛ばすに十分な大きさだ。
「しばらくお待ちください。国王陛下に拝謁を賜りますので。」
趙子光様は当たり前のようにおっしゃられた。
「ホワッ」
ヤバい!変な声出た。なに!なに!なに!。国王陛下に会うの。私が!。そうかこの人、そういう立場の人なんだ。本来なら私なんかが、仰ぎ見ることさえ許されないような高貴なお方なんだ。
ヤバい・・ちょっとちびった。
今更ながら身体が震えだした。歯がカチカチなってくる。
「どうされました。お加減でも悪いのですか」
趙子光様が、心配そうに話しかけてきた。
「いえ、大丈夫です。ちょっとお手洗いに行きたくて・・。」
本当は行きたくないけど行っとこう。国王陛下の前で漏らしたら打ち首だろうし、趙子光様にもご迷惑をおかけするから。
「も、申し訳ありません。休息もとらず・・。ご婦人に恥ずかしい思いをさせてしまいました。」
お手洗いの単語に反応したのか、趙子光様は顔を真っ赤にして謝罪しだした。本当に純情なんだから。イヤ違うんです。私なんか、普段ならその辺の草むらで用をたしてた人間なんです。あなた様が気を使わなきゃいけないような人間では、決してないんです。
申し訳ないやら恐れ多いやらで、頭が整理できない。連れていってもらったお手洗いも、とてつもなく広い。いや広さは私たち使用人が使っていたお手洗いと大差ないんけど、違うのは用がたせそうな穴が一つしかないことだ。
大旦那様は文化人だったから、お手洗いは男女別々に用意してくれていた。女性用は長い溝が掘ってあるだけだったから、7~8人は同時に使えた。前の人にかからないように簡単な仕切りはあったけど、壁や扉はもちろんない。
完全な個室で用をたすって生まれて初めてだ。
用をたしてるあいだ、みんなとしゃべってるのが当たり前だと思ってたけど、王宮ではいつも一人で用をたすんだろうか。
何から何まで違う世界。衣服の裾をまくってしゃがめば、股の間から流れる黄色い液体はいつもと同じ。お姫様でも使用人でも、同じものを出すに決まってる。ビビることはない。もう開き直っていくしかないんだから。
なんか用をたしたらすっきりした。まあ当たり前だけど・・。
すっきりしたところで趙子光様のところへ戻ると、趙子光様は片膝をついて誰かとお話されていた。
お話されている相手は、一目で身分の高いお方とわかる立派な服装をされていた。
まさか、まさか・・。
恐る恐る近づいてみる。
「た、ただいま戻りました」
震えながらもなんとか声を絞り出した。
まさかこのお方が・・
震えながらも何とか相手のお顔を確認すると、予想に反してそれは私が良く知る人物だった。
「あっ・・私だ・・・」
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