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ふたりぼっち

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森に入った赤頭巾くん

急げ急げ

シチューが冷めないうちに

お婆ちゃんのお家へ行かなくちゃ


ビュービュー

風の音

風に連れ去られたらどうしよう


キーキー

動物の声

木の向こうに化け物がいるかもしれない


ポロポロ涙をこぼしながら

一生懸命に歩きます

後ろを振り向いても

もうお家は見えません

前に進むしかないのです


怖いよ

心細いよ


ヒクヒク泣きながら歩く赤頭巾くん

池の近くまで来ました


あんた誰?


そこにはオオカミちゃんが居ました


ぼくは赤頭巾くん

きみは誰?


私はオオカミちゃん

この森の王様よ!


ふたりは初めて会いました


王様!

勝手に森に入ってごめんなさい


赤頭巾くんは嘘を信じました

怒られたらどうしよう

不安で涙が止まりません


やった

この子は騙されてくれる


大喜びのオオカミちゃん

飛び跳ねたくなりました


くんくん

美味しそうな匂い

なに持ってるの?


赤頭巾くんから良い匂いがします


これはね

お母さんが作ったシチューだよ

お婆ちゃんに持っていくんだ


赤頭巾くんはお使いの途中です


いいないいな

あったかいシチュー食べたいな


オオカミちゃんは言いました

ずっとひとりぼっちで

もうずっと美味しいものを食べていないのです


ダメだよ

これはお婆ちゃんに届けるんだ


赤頭巾くんはお鍋を大切そうに抱えます

お母さんのシチューはとっても美味しくて

一人暮らしのお婆ちゃんも元気になる

魔法のシチューなのです


そのシチューを置いていかないと

オバケが出るぞ!


オオカミちゃんはまた嘘をつきました

どうしてもシチューを食べてみたかったのです


オバケ怖い!

でもシチューはあげられない!


赤頭巾くんは

初めて勇気を出して断りました

シチューを守らないといけないからです


なによケチ!


オオカミちゃんは叫びます

せっかく嘘を信じてくれて

シチューも食べられると思ったのに

やっぱりおもしろくありません


赤頭巾くんは

オオカミちゃんをよく見ました

小さなオオカミの女の子


もしかして

お腹がすいているの?


赤頭巾くんは気づきました


ねえ

じゃあ一緒に食べようよ


シチューはたくさん入っています

少しずつ食べても

お婆ちゃんの分が残りそうです


…ありがとう


オオカミちゃんは

初めてお礼を言いました

あったかいシチュー

あったかい気持ち

初めてがいっぱいです


赤頭巾くんとオオカミちゃんは

ふたりぼっちのお食事会をして

お友達になる約束をしました

そして森の外まで一緒に歩いて

お婆ちゃんにシチューを届けた後

ふたりでたくさん遊びました


ひとりぼっち



ひとりぼっち


合わせたら

ふたりぼっちの出来あがり


とっても仲良しな

お友達になれましたとさ
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