似た者同士は恋人同志

歌龍吟伶

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第二話

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二人の出会いは、生まれた時。

翔の父が経営する病院で、同じ日に産声を上げた。

数時間差で産まれた二人は、新生児室で隣同士。

そして母親同士も部屋が隣で、互いを労いあっていた。

院長夫人と社長夫人は立場に似た部分があったこともあり、意気投合。

家族ぐるみの付き合いが始まったのは自然な流れと言える。


「姫華ちゃんは本当に美人さんね、将来が楽しみだわ」

「翔くんこそ産まれた時からイケメンで賢そう。きっと素敵な紳士になるわね」


新生児室のガラス越しにお互いの子を褒め合う母親たち。

そして、


「「そうだわ、二人で結婚すればいいのよ」」


産後ハイで浮かれていた大人の、何気ない一言。

その言葉は言霊となり、幼い二人を縛る鎖となる。


「僕は完璧でなければならない」

わたくしは完璧でなければならない」


成長するにつれ、自我が芽生えてからも。


「完璧な僕に相応しいのは」

「完璧なわたくしに相応しいのは」

「「完璧なもの同士だけ」」


お互いだけが理解者で。


「誰もこの話を理解できないんだ」

「あら、つまらないですわね」

「君には分かるかい?」

「ここのズレが気になるのでしょう?」

「さすがだね」

「当然ですわ」


仲良く二人の世界に入り込む姿を、大人たちは微笑ましく見ていたけれど。


「翔くんと仲良くしてくれて嬉しいわ」

「姫華ちゃんが合わせてくれているのかしら。ありがたいことね」


当の二人の会話といえば。


「ねえ姫華、中世の拷問図鑑を手に入れたんだ」

「まあ素敵!わたくしにも見せてくださいな」


目を輝かせて二人が夢中になっているのは、拷問や解剖の本。

そして犯罪心理学なども二人の興味を惹き、会話が弾む。


「学者はこの時の犯人の心境をこう推測しているけれど…」

「違うと思いますわ。この時点で後悔があれば、この先の事件の内容が変わるのでは?」

「そうなんだよ。僕もそう思う…楽しそうだよね」


一見すると優しい笑みを浮かべながら、物騒な話をする翔。

そんな彼に笑みを返す姫華もまた、物騒な話が好きなのだ。


「人の心理というものは本当に面白いですわね」

「酒やクスリの影響もなく理性が消える…面白いよね」

「人間だからこその醜さ。たまりませんわよね」


ニコリと笑う姫華。

彼女は人間が好きであり、嫌いだ。


「愚かで醜くて。オモチャに相応しいわ」

「そうだね」


翔も、話が合うのは姫華だけ。


「お父様とお母様は、毎日朝晩に愛していると言い合っておりますのよ」

「仲が良いよね。僕には愛がよくわからないけれど」

「翔さんのご両親も、喧嘩などなさらないのでしょう?」

「そうだね。同業者だからお互いの事がよく分かると言っているよ」

「理想的ですわ」

「観察する分には面白いな」


両親のことすら別次元の存在だと思っている。

二人はどこまでも似たもの同士なのだ。
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