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第16話:受け継がれるものと受け継がれないもの
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トゥリアは賭けをすることにした。
生まれたのが娘であれば、ヴィンセントの記憶を消す。
しかし、確率は低いが息子であったなら、ヴィンセントが死ぬまで父親として接する事を許そうと。
妊娠中頻繁に通うヴィンセントとの時間は穏やかで、それはトゥリアも幸福を感じられるものであった。
「具合はどう?」
「大丈夫だよ」
森の精霊たちは答えを知っていたけれど、それを教えることはなく。
「どちらが生まれたって僕の子だ…記憶を失うことになっても愛してる」
「…かならず伝えるよ」
魔女が産むのは高確率で女児。
男児が生まれることは稀であり、前例は片手で数える程度しかない。
それでもヴィンセントはトゥリアを愛し続け、子供の誕生を心待ちにした。
そして迎えた出産の時…使い魔の知らせを受け駆けつけたヴィンセントが見たのは。
「ほぎゃあああ!!」
「おぎゃぁああ!!」
魔女史上初の、双子であった。
「トゥリアさん!」
「ヴィンセント…」
「大丈夫ですか?まさか双子だなんて…」
「どうりで腹がデカくなるわけだよ…」
薄々感づいてはいたが、精霊たちは最後まで教えてくれなかったのだ。
一人で出産に挑んだトゥリアの身を案じるヴィンセント。
疲れ果ててはいるが、森の精霊たちが寄り添い彼女を癒しているおかげで顔色は悪くはない。
「あたしは大丈夫だよ」
「良かった…子供たちも元気そうで」
性別が気になるだろうに聞かないヴィンセントに微笑みながら、しかし困惑気味にトゥリアは告げる。
「困ったことになったよ…どっちも、なんだ」
「え?」
「先に生まれたのは男で、次に生まれたのは女なのさ」
双子は息子と娘、どちらもだったのだ。
「それは…どうしたらいいんでしょうね?」
賭けはどちらで判断したらいいのか。
男児はトゥリア譲りの藍色の髪を持ち、女児はヴィンセントによく似ている。
「娘の方はあたしに負けない美人魔女になるだろうねえ」
「息子はどうなるのですか?」
「うーん…男は魔女の力を継げないから、人間の街に捨てて普通の生活をさせるって聞いたことがあるけど」
「捨てるなんて!」
「あたしが捨てるわけないだろう、前例の話だよ」
話し合いは三日間続き、そして出された結論はーーー
「ちちうえ!ははうえ!ちょうちょがいる!」
「捕まえてはいけないよ、ヴァルトゥー」
王城の庭を駆け回るのは、藍色の髪を持つ少年。
国王ヴィンセントと王妃、そして年の離れた兄姉らに見守られながら少年が蝶を追い回している。
王が愛人に産ませた子供を引き取ったという知らせは国内に衝撃を与え、王妃が受け入れ愛情を持って育てている様子は更に国民を驚かせた。
動植物に愛される不思議な少年は、心優しい末の王子として徐々に国民からも愛されるようになる。
ーーー同じ頃、トゥーリエの森では。
「かあさま、この葉っぱはおくすりになる?」
「ああ、正解だよヴィアリア」
400歳近くなったトゥリアは、娘ヴィアリアに己の知識や技術を仕込んでいた。
自分が死を迎える前に、魔女として受け継げるものを全て与えなくてはならないから。
(あたしの最後の晩餐はヴィンセントになりそうだね)
後何十年かしたら自分も死ぬだろう、そう感じ取っているトゥリア。
息子を引き取っていったヴィンセントの寿命も、残り三十年無いくらいだろう。
娘を一人、まだ若いうちに残すことになるかもしれない…それは心残りではあるが、だからこそ今という時間を大切にしたかった。
「ヴィアリア、お勉強はお休みして遊ぼうか」
「いいの?」
「明日は父様が遊びに来るからね、クッキーでも焼いてやろう」
「やったー!」
ヴィンセントはヴァルトゥーを連れて三ヶ月に一回だけ森を訪れる。
王妃公認の仲は、ヴィンセントが死ぬまで続いたのであったーーー完
生まれたのが娘であれば、ヴィンセントの記憶を消す。
しかし、確率は低いが息子であったなら、ヴィンセントが死ぬまで父親として接する事を許そうと。
妊娠中頻繁に通うヴィンセントとの時間は穏やかで、それはトゥリアも幸福を感じられるものであった。
「具合はどう?」
「大丈夫だよ」
森の精霊たちは答えを知っていたけれど、それを教えることはなく。
「どちらが生まれたって僕の子だ…記憶を失うことになっても愛してる」
「…かならず伝えるよ」
魔女が産むのは高確率で女児。
男児が生まれることは稀であり、前例は片手で数える程度しかない。
それでもヴィンセントはトゥリアを愛し続け、子供の誕生を心待ちにした。
そして迎えた出産の時…使い魔の知らせを受け駆けつけたヴィンセントが見たのは。
「ほぎゃあああ!!」
「おぎゃぁああ!!」
魔女史上初の、双子であった。
「トゥリアさん!」
「ヴィンセント…」
「大丈夫ですか?まさか双子だなんて…」
「どうりで腹がデカくなるわけだよ…」
薄々感づいてはいたが、精霊たちは最後まで教えてくれなかったのだ。
一人で出産に挑んだトゥリアの身を案じるヴィンセント。
疲れ果ててはいるが、森の精霊たちが寄り添い彼女を癒しているおかげで顔色は悪くはない。
「あたしは大丈夫だよ」
「良かった…子供たちも元気そうで」
性別が気になるだろうに聞かないヴィンセントに微笑みながら、しかし困惑気味にトゥリアは告げる。
「困ったことになったよ…どっちも、なんだ」
「え?」
「先に生まれたのは男で、次に生まれたのは女なのさ」
双子は息子と娘、どちらもだったのだ。
「それは…どうしたらいいんでしょうね?」
賭けはどちらで判断したらいいのか。
男児はトゥリア譲りの藍色の髪を持ち、女児はヴィンセントによく似ている。
「娘の方はあたしに負けない美人魔女になるだろうねえ」
「息子はどうなるのですか?」
「うーん…男は魔女の力を継げないから、人間の街に捨てて普通の生活をさせるって聞いたことがあるけど」
「捨てるなんて!」
「あたしが捨てるわけないだろう、前例の話だよ」
話し合いは三日間続き、そして出された結論はーーー
「ちちうえ!ははうえ!ちょうちょがいる!」
「捕まえてはいけないよ、ヴァルトゥー」
王城の庭を駆け回るのは、藍色の髪を持つ少年。
国王ヴィンセントと王妃、そして年の離れた兄姉らに見守られながら少年が蝶を追い回している。
王が愛人に産ませた子供を引き取ったという知らせは国内に衝撃を与え、王妃が受け入れ愛情を持って育てている様子は更に国民を驚かせた。
動植物に愛される不思議な少年は、心優しい末の王子として徐々に国民からも愛されるようになる。
ーーー同じ頃、トゥーリエの森では。
「かあさま、この葉っぱはおくすりになる?」
「ああ、正解だよヴィアリア」
400歳近くなったトゥリアは、娘ヴィアリアに己の知識や技術を仕込んでいた。
自分が死を迎える前に、魔女として受け継げるものを全て与えなくてはならないから。
(あたしの最後の晩餐はヴィンセントになりそうだね)
後何十年かしたら自分も死ぬだろう、そう感じ取っているトゥリア。
息子を引き取っていったヴィンセントの寿命も、残り三十年無いくらいだろう。
娘を一人、まだ若いうちに残すことになるかもしれない…それは心残りではあるが、だからこそ今という時間を大切にしたかった。
「ヴィアリア、お勉強はお休みして遊ぼうか」
「いいの?」
「明日は父様が遊びに来るからね、クッキーでも焼いてやろう」
「やったー!」
ヴィンセントはヴァルトゥーを連れて三ヶ月に一回だけ森を訪れる。
王妃公認の仲は、ヴィンセントが死ぬまで続いたのであったーーー完
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