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大地震は異世界との門を開く
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ガチャリと玄関の音がして、子供達は震え上がった。
外で買い物してきたらしく、二人揃ってご帰宅だ。
「うわ、子供の様子見せろって誰か来てたみたい」
「あー、めんどくせえな…どうすんの?」
「前回はビンボーだから親に預けましたって言ったらアッサリ信じてくれたよ」
「引っ越すのも手だよなー、凄えくせーし」
引っ越し。
その言葉にエルは恐怖する。
この部屋に引っ越してくる前、虐待疑惑で通報されて焦った女が動けなくなっていた妹達を二人始末したのだ。
今は動けている三人だが、ハルはかなり弱っているしマイも危ない。
また減らされてしまうのかと考え、震えが止まらなくなるエル。
しかし男と女は笑い合いながら服を脱ぎ、ベッドへ直行していった。
ひとまずホッとしていた、その時。
地響きが聞こえ、部屋が大きく揺れ始める。
経験したことがないほどの揺れで建物が軋み、男と女は悲鳴を上げた。
「うわっ、地震!でけーぞ!」
「きゃああああああ!!」
「うっ…ぐぁああああ!」
「うぅ…!!」
悲鳴が呻き声に変わり、揺れが収まっていく。
「ぐ…動けねえ…!」
「く、苦しい…!!」
「クソッ、スマホ届かねえ!」
「ううっ…あ、アンタ達!誰か出て来なさい!」
エルはアイにマイを預け、恐る恐る押し入れから出た。
部屋の中は物が散乱しぐちゃぐちゃになっており、男と女が絡み合っていたベッドはタンスの下敷きになっている。
「早く助けろクソガキども!」
「早く!苦しくて死んじゃう!」
タンス自体はベッドに引っかかっているのだが、引き出しが飛び出しその上から上の階の床が落ちて来て潰されていたのだ。
辛うじて即死を免れ、まだ会話もできる状態の二人。
エルが側にきた気配に気づき、必死に声を上げる。
「そこにいるんでしょ、早く助けて!」
「早く誰か呼んでこい!!」
散々誰にも会うなと言っておきながら…どんなに子供達が泣き叫んでも、うるさいと言って殴る蹴るの暴行を加えておきながら。
助けを求めてくる〝両親〟を前に、エルは。
「…嫌だ」
一言だけ言うと押し入れへ戻る。
「アイ、ハル!出ておいで、今なら大丈夫だ!」
「え…」
「早く!マイは俺が抱っこするから、アイはハルと手を繋いで」
「う、うん…」
戸惑いながら押し入れから出てくる妹弟たち。
めちゃくちゃになっている室内を見て驚いている。
「何これ、さっき揺れたから?」
「大地震だ…」
「…あの人たちは、どうしたの?」
「あそこ。動けなくなってる」
だからチャンスだ、そう言うとエルは妹弟をキッチンへ連れて行く。
地震の影響で水も電気も止まっているが、斜めに倒れた冷蔵庫から中身を取り出すことができた。
酒とツマミばかりの冷蔵庫だったが、ツマミでも食べられるだけマシだ。
水も入っていたので三人で分け合い、生活に困窮している母子家庭への支援品として届けられたオムツとミルクがあったため、それを開けてマイに与えた。
「ぐっ、お前ら、早く助けろよ!後で覚えてやがれ!」
「ぶっ殺してやるからね!」
二人の叫び声にアイとハルが飛び上がるが、
「大丈夫、あいつらはもう動けない」
エルは久しぶりの笑みを浮かべて二人を落ち着かせる。
「外の様子を見てくるから、二人は玄関にいて。アイ、マイのこと頼むよ」
「やだ、置いていかないで!」
「おそとでるの?こわい」
「大丈夫、すぐ戻るよ。外に悪い奴がいなかったら、食べ物を買いに行ってくる。たくさん持って帰ってくるから、ちょっとだから待ってて」
食べ物と聞いてアイとハルは目を輝かせた。
エルは女の財布から金を抜き取り、約2年ぶりに外へ。
外は色々なところから悲鳴が聞こえ、煙も上がっている…町中がパニックになっている様だ。
幸いなことに目の前がコンビニのため、エルは決死の思いで店に入った。
ドアは開いていたが人がいない…入り口にあったカードとカゴを使い、エルは目一杯食べ物と飲み物を詰め込む。
残念ながらミルクは売っていなかったけれど、バスタオルを貰うことにした。
(お金足りるかな…すみませんお店の人、置いておくから許してください)
エルは握りしめていた二万円をレジカウンターに置くと急いで店を出る。
妹弟の喜ぶ顔を思い浮かべていたエルは、家を取り囲む大人の姿を見て一気に青ざめた。
見たことのない服装の男女が部屋の前にもいて、アイたちが怯えて泣いている。
「アイ!ハル、マイ!」
エルが荷物を階段下に置いたまま駆け上がると、部屋からも知らない男性が出て来た。
剣を手にした金色の髪の男性は、エル達を見て驚いた顔をする。
「ああ、なんて酷い…セレーヌ、彼らに浄化を」
「はい、エリック様」
セレーヌと呼ばれた女性がエル達に手をかざすと、光が体を包みあっという間に綺麗にしてくれた。
「わあ、すごい!まほうつかい?」
ハルは無邪気に喜んでいたが、室内で〝両親〟の救助活動が行われていることに気づいたエルは頭が真っ白になる。
外で買い物してきたらしく、二人揃ってご帰宅だ。
「うわ、子供の様子見せろって誰か来てたみたい」
「あー、めんどくせえな…どうすんの?」
「前回はビンボーだから親に預けましたって言ったらアッサリ信じてくれたよ」
「引っ越すのも手だよなー、凄えくせーし」
引っ越し。
その言葉にエルは恐怖する。
この部屋に引っ越してくる前、虐待疑惑で通報されて焦った女が動けなくなっていた妹達を二人始末したのだ。
今は動けている三人だが、ハルはかなり弱っているしマイも危ない。
また減らされてしまうのかと考え、震えが止まらなくなるエル。
しかし男と女は笑い合いながら服を脱ぎ、ベッドへ直行していった。
ひとまずホッとしていた、その時。
地響きが聞こえ、部屋が大きく揺れ始める。
経験したことがないほどの揺れで建物が軋み、男と女は悲鳴を上げた。
「うわっ、地震!でけーぞ!」
「きゃああああああ!!」
「うっ…ぐぁああああ!」
「うぅ…!!」
悲鳴が呻き声に変わり、揺れが収まっていく。
「ぐ…動けねえ…!」
「く、苦しい…!!」
「クソッ、スマホ届かねえ!」
「ううっ…あ、アンタ達!誰か出て来なさい!」
エルはアイにマイを預け、恐る恐る押し入れから出た。
部屋の中は物が散乱しぐちゃぐちゃになっており、男と女が絡み合っていたベッドはタンスの下敷きになっている。
「早く助けろクソガキども!」
「早く!苦しくて死んじゃう!」
タンス自体はベッドに引っかかっているのだが、引き出しが飛び出しその上から上の階の床が落ちて来て潰されていたのだ。
辛うじて即死を免れ、まだ会話もできる状態の二人。
エルが側にきた気配に気づき、必死に声を上げる。
「そこにいるんでしょ、早く助けて!」
「早く誰か呼んでこい!!」
散々誰にも会うなと言っておきながら…どんなに子供達が泣き叫んでも、うるさいと言って殴る蹴るの暴行を加えておきながら。
助けを求めてくる〝両親〟を前に、エルは。
「…嫌だ」
一言だけ言うと押し入れへ戻る。
「アイ、ハル!出ておいで、今なら大丈夫だ!」
「え…」
「早く!マイは俺が抱っこするから、アイはハルと手を繋いで」
「う、うん…」
戸惑いながら押し入れから出てくる妹弟たち。
めちゃくちゃになっている室内を見て驚いている。
「何これ、さっき揺れたから?」
「大地震だ…」
「…あの人たちは、どうしたの?」
「あそこ。動けなくなってる」
だからチャンスだ、そう言うとエルは妹弟をキッチンへ連れて行く。
地震の影響で水も電気も止まっているが、斜めに倒れた冷蔵庫から中身を取り出すことができた。
酒とツマミばかりの冷蔵庫だったが、ツマミでも食べられるだけマシだ。
水も入っていたので三人で分け合い、生活に困窮している母子家庭への支援品として届けられたオムツとミルクがあったため、それを開けてマイに与えた。
「ぐっ、お前ら、早く助けろよ!後で覚えてやがれ!」
「ぶっ殺してやるからね!」
二人の叫び声にアイとハルが飛び上がるが、
「大丈夫、あいつらはもう動けない」
エルは久しぶりの笑みを浮かべて二人を落ち着かせる。
「外の様子を見てくるから、二人は玄関にいて。アイ、マイのこと頼むよ」
「やだ、置いていかないで!」
「おそとでるの?こわい」
「大丈夫、すぐ戻るよ。外に悪い奴がいなかったら、食べ物を買いに行ってくる。たくさん持って帰ってくるから、ちょっとだから待ってて」
食べ物と聞いてアイとハルは目を輝かせた。
エルは女の財布から金を抜き取り、約2年ぶりに外へ。
外は色々なところから悲鳴が聞こえ、煙も上がっている…町中がパニックになっている様だ。
幸いなことに目の前がコンビニのため、エルは決死の思いで店に入った。
ドアは開いていたが人がいない…入り口にあったカードとカゴを使い、エルは目一杯食べ物と飲み物を詰め込む。
残念ながらミルクは売っていなかったけれど、バスタオルを貰うことにした。
(お金足りるかな…すみませんお店の人、置いておくから許してください)
エルは握りしめていた二万円をレジカウンターに置くと急いで店を出る。
妹弟の喜ぶ顔を思い浮かべていたエルは、家を取り囲む大人の姿を見て一気に青ざめた。
見たことのない服装の男女が部屋の前にもいて、アイたちが怯えて泣いている。
「アイ!ハル、マイ!」
エルが荷物を階段下に置いたまま駆け上がると、部屋からも知らない男性が出て来た。
剣を手にした金色の髪の男性は、エル達を見て驚いた顔をする。
「ああ、なんて酷い…セレーヌ、彼らに浄化を」
「はい、エリック様」
セレーヌと呼ばれた女性がエル達に手をかざすと、光が体を包みあっという間に綺麗にしてくれた。
「わあ、すごい!まほうつかい?」
ハルは無邪気に喜んでいたが、室内で〝両親〟の救助活動が行われていることに気づいたエルは頭が真っ白になる。
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