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神々の娯楽

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一連の出来事を眺めていたのは、人間の世界を生み出した神アーヴィア。

そしてもう一人、魔王と勇者の世界を生み出した神イーヴィン。


『ふむ。我の世界が滅んだか…まあよい、人間以外は生き残っているからな』


アーヴィンが言うと、


『あの子供に鍵を与えた時点で結末は見えていただろう』


イーヴィンは欠伸をしながら言った。


『そうでもないぞ。もしも勇者の輝きに惹かれ、あの親を許していたら。違う演目が見られたであろう』

『許す可能性など無さそうだったがな』

『人間とは不安定な生き物だ。そのように創り出したのだからな…予想外のものを見られる楽しみのために』


アーヴィンとイーヴィンにとって、世界は暇潰しの道具。


『また人間を生み出すのか?生命が少ない世界では糧にならぬだろう』


繋がりを完全に断たれてしまうと、神といえども滅ぶ。


『しばらくはこのままにしておくさ。静かな世界も悪くない』

『我の世界には干渉してくるなよ、次の勇者を生み出さねばならぬのだから忙しいのだ』


魔王達の世界にも普通の人間は五万といる。

次の勇者を選定し、争いを続けさせなくてはならない…それがイーヴィンが世界を作った時の決まり事だから。


『我はのんびり過ごさせてもらうぞ、イーヴィン』

『ボケる前にまた話をしよう、アーヴィン』


二人の神は、とてもよく似た双子。

それぞれ別の世界を生み出し、管理している。

完全に滅びない程度に遊び続けるアーヴィンとイーヴィン。

悠久の時を生きる彼らの手のひらで踊る生命達は、自分達の世界が神の気分ひとつで滅びと再生を繰り返していることなど知らない。

アーヴィンは人類が滅んだ世界を見渡し呟く。


『ああ…我が世界は今日も平和だ』


己の世界に戻ったイーヴィンも、世界を見渡ししみじみと思う。


『やはり我が世界が一番美しい…殺し合う人間と魔族。今日も平和だな』


神曰く、世界は今日も平和らしい---
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