少年王は妖艶な妃に恋をする

歌龍吟伶

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第27話

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幼い国王に代わり王妃が政治を牛耳っている、そんな噂が貴族の間で流れているのを耳にしていたミリス。

しかし目の前にいる王妃は、とても慈愛に満ちた目を自分に向けてくれている。

なんでも話を聞いてくれそうな、自分の状況に同情してくれそうな雰囲気…それは都合の良い錯覚だろうか。


「…あの、王妃様」


全て話して楽になりたい、ミリスは無意識のうちに涙を流していた。


「なあに、ミリス」


どうか名で呼んでほしい、そう伝えたらすぐに呼んでくれた王妃様。


「申し訳、ございません…!」


その瞳がスッと細められたのを、優しい笑みだと思って。

ミリスは泣きながら全てを吐き出した。


ミリスが幼い頃、父は自慢の父親だった。

領民の事を第一に考え、生活困難者への支援を欠かす事なく。

教育や医療にも力を入れ、皆から好かれる立派な領主だった。

鉱山で働く者たちのことも常に労い、月に一度交流会を開くほど気遣っていて。

商人たちが商売のことで衝突していると聞けば夜でも家を飛び出して行くような、仕事熱心な人だった。

それがいつからだろう、母が亡くなって家に寄り付かなくなり、ミリスの誕生日すら祝ってくれなくなった頃だったか。

久しぶりに帰ってきた父は、部屋に篭って手紙をたくさん書いていた。

久しぶりに顔を見れた喜びと、勉強を頑張ったことを褒めて欲しくて部屋の前に行ったミリスを怒鳴りつけ、物に当たり散らしながら机に向かう父の姿は恐ろしかった。

初めて怒鳴られて呆然とするミリスを突き飛ばして出かけて行き、また戻ってきて手紙を書く。

そんな事が何度か繰り返され、ある日突然父が笑った。

嬉しそうに、楽しそうに。

大笑いする父の不気味さに目を瞑り、恐る恐る近づいたミリスを父は抱きしめてくれた。

何年ぶりの温もりだろう、泣いて喜ぶミリスに向けられた笑みが既に狂っていた事に気づいたのは数年後、父が亡くなる直前。

急に羽振りが良くなって領民への支援も手厚くなり、みんな喜んでいたけれど。

鉱山が次々と枯れたという連絡が入り、不安がる鉱山関係者たちに父はずっと大丈夫だと繰り返した。

ある日糸が切れたように突然倒れた父の書斎から出てきたのは、不正の証拠の数々。

病床の父を問い詰める事ができず、ただ泣きながら見守っていたミリスに最後に告げられたのは愛の言葉。


「…愛していた、全ての領民を。それが父の最後の言葉でした」


ミリスは泣きながら語った。

全ての領民、その中に自分が含まれていたのかどうかは最後まで分からなかったけれど。

父は守るために裏切ったのだと考え、ミリスは不正を告発できずに受け継いでしまったのだ。

亡き父の最後の愛を否定する事がどうしてもできなくて。

若い女性の身で領主になる重圧もあり、ミリスは流れに身を任せてしまったのだ。
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