少年王は妖艶な妃に恋をする

歌龍吟伶

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第32話

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貴族裁判にかけられる者は、証拠隠滅などを防ぐために身内と会う事を禁じられる。

イルヴィンドは即座にメラニー・ディランの隔離を命じ、リラフィアにも一部の女官以外接触禁止を言い渡す。

そしてリラフィアと言葉を交わす事なく執務室へ向かった。

仕事用の椅子に腰掛け、長いため息をつくイルヴィンド。


「ふーーー…」


「陛下、本当によろしいのですか?」


王妃が不貞疑惑で裁判にかけられた例は、以前にもある。

しかしそれらはすべて有罪で終わっているため、宰相は不安になったのだ。


「…リラフィアが浮気してるって、ケネスは思ってるの?」


疲れた顔で力なく尋ねるイルヴィンド。


「いえ、聡明な王妃様がそのような穢れた真似をなさるとは思っておりません」


リラフィアが浮気をしていたとは思っていない、しかし裁判にかけられるという事は疑惑を国民にも知られることになる。

ケネスはリラフィアに不名誉な噂がつきまとう事を恐れていると説明した。


「マズかったかなあ…」


先程の堂々とした姿はどこへやら、イルヴィンドは自信を失い半泣きになる。


「メラニーがあんなこと言うから、絶対にリラフィアはやましいことしてない!って証明したかったんだけど…」


「裁判ではなく会議で済ませれば良かったかもしれませんね」


イルヴィンドは頭を抱えて机に突っ伏し唸る…すっかりいつもの彼に戻ってしまった。

ケネスは笑いを隠しながらお茶を入れる。


「もう宣言しちゃったし!撤回するなんてかっこ悪いよね…」


「そうですね。陛下が撤回すれば、王妃様に非があるのではと勘繰られてしまいますし」


「それはダメ、絶対ダメ。絶対リラフィアは悪くない!」


メラニー側が撤回を求めてくれないかな…そうブツブツと独り言を始めるイルヴィンドにお茶を勧めながら、ケネスは内心では感心していた。


(押しに弱く人の後ろに隠れたがるような王だったのに。妃のために前に出て庇うとは…見直しましたよ)


きっと王妃も惚れなおしていることだろう。

そう考え、ケネスは人知れず笑みを浮かべるのであった。

一方のメラニーは、与えられた部屋に軟禁され物に当たり散らしている。


「なんなのよ!どうしてこんな事に!!」


王命のため夫の助けも得られない、裁判を終えるまでは外に出る事どころか誰とも接触できない。

これではディラン家の不正を隠す手伝いもできはしないと焦り、しかしどうすることもできなくなってしまった。

裁判を拒めば、自分が王妃に言い掛かりをつけたという事になり不敬罪で裁かれるだろう。

妻がやらかしたと知らせを受けた夫がどれほど絶望しているか、想像することもなく己の不幸を嘆くばかりのメラニー…もう彼女に逃げ場はない。
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