少年王は妖艶な妃に恋をする

歌龍吟伶

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第31話

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王妃が男と通じている、この目で見たのだから間違いない。

そう主張するメラニーは興奮状態で、何度か同じ話を繰り返し語った。

それを遮る事なく聞き終えたイルヴィンドは、深く息を吐くとリラフィアに向き直る。


「王妃リラフィア。メラニー・ディランはこのように話しているが、異論はあるか」


真っ直ぐに見つめられた瞳を見て、いつものイルヴィンドではないことにリラフィアも気付く。

口調も雰囲気も、普段の気弱な少年ではない。


「人目を忍んで異性と会ったことは認めます。しかし、ライラ・バーネットも同席しておりました」


イルヴィンドは入り口付近に立っているライラに視線を向ける。


「ライラ・バーネットの名を掛けて誓います。私もその場におりました。一度も席を外さず、王妃様が異性と二人きりになるような場面はございませんでした」


「嘘よ!そんなの証拠にならないわ!」


国王の許可なくメラニーが口を挟む。


「親しいライラ夫人の証言など信用できません!二人きりにならなかった証拠などありませんわ!」


「では、其方は王妃の不貞行為を証明できると。そういうことか?」


勝手に発言したことは咎めず、静かに問いかけるイルヴィンド。

自分が見た、それしか言えることがないメラニーの目が泳ぎ始める。


「え、証拠…そんな、私は確かに見ましたもの…」


「王妃が男と通じていると申していたが、その場面を見たということか」


「そ、それは…会合の後、わざわざ一人だけと会っていらしたから…」


自信を無くしたように小声になっていくメラニーに、イルヴィンドは厳しい口調で話す。


「証拠証拠と申していながら、其方は不貞の証拠を示さない。そのような曖昧な状況で王妃に不貞の疑惑を掛け、糾弾したと。そういうことだな」


王が怒っている、それは誰の目から見ても明らかだった。


「陛下、私はただ…王妃に相応しくないと…」


「よかろう。そこまで言うならば自信があるのであろうな」


そしてイルヴィンドははっきりと告げる。


「この件を、貴族裁判にかける」


貴族裁判と聞き、その場の誰もが息を飲んだ。

国の方針を決める際や、なにか厄介事が起きた時などに行われる貴族会議とは違う。

裁判というだけあって、それは中立な立場にある神殿から第三者を呼び、証人を呼び証拠を提示するもの。

どのような家柄の人間であっても厳しく追求され、当然偽証は許されない。

どうしても秘密にしたいからと証拠を出さない事は自由だが、もちろんそれは不利になる。


「国王の権限により、王妃リラフィアとメラニー・ディランの貴族裁判を行う」


静まり返る謁見の間に、イルヴィンドの宣言だけが響いた。
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