少年王は妖艶な妃に恋をする

歌龍吟伶

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第35話

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泣きそうな顔で自分を見つめるリラフィアに、オリオは微笑んでみせる。


(大丈夫です、貴女を守れるならどんなことも苦痛ではない)


チラリとゾエを見れば、珍しく彼女も微笑んでいた。


「私にとってリラフィア様は母親のようなお方なのです、不貞行為など有り得ません」


精神的にも肉体的にもあり得ない、と改めて断言する。

さすがにこれ以上の証拠はない、メラニーは青ざめて椅子に座り込んだ。

怒りを抑えながらイルヴィンドが口を開く。


「裁判官、クレマン猊下。メラニー・ディランによる王妃への暴言の数々は許されるものではない。重大な王家への冒涜行為だ、厳罰を望む」


誰も異議を唱えられる者などいない。

夫であるトーマス・ディランも傍聴していたが、妻のあまりの暴走ぶりに顔を覆って立ち上がれずにいた。

長年の不正行為だけでももうディラン家は終わりだというのに、これでは極刑すら有り得る事態だ。


「王妃陛下への疑惑は解消された。メラニー・ディランへの判決は、審議を行なってから言い渡すものとする」


ひとまずこの場は解散となった。

監視が解かれ、久しぶりにイルヴィンドとリラフィアは顔を合わせる。


「リラフィア大丈夫だった?具合悪くなったりしてない?嫌な思いしたよね、もう大丈夫だからね」


心配でたまらなかったと言うイルヴィンドに世話を焼かれ、大丈夫ですと笑おうとしたリラフィア。

しかし緊張の糸が切れ、涙が溢れ出た。


「リラフィア…」


「申し訳、ございません…!」


黙って不正調査をしたあげく、不貞疑惑をかけられ裁判になってしまったというのに優しくしてくれる夫。

涙が止まらないリラフィアを、イルヴィンドはしっかりと抱きしめる。


(イルヴィンド…いつの間にこんなに背が伸びたのかしら)


見下ろしていたはずの彼が、ヒールを履いている自分と同じ高さになっていることに気づく。

ボンヤリと成長を感じているリラフィアの背を撫でながら、イルヴィンドは優しく言う。


「怖かったよね、一人にしてごめんね。絶対に君を守るって約束したのに、あんまり役に立たなかったな」


「そんなこと…ないです」


充分すぎるほど守ってくれた、不審な行動をした事は間違いないのに信じてくれたのだから。

泣き止むまで抱きしめ続けたイルヴィンドに、


「なんでも一人で抱え込まないで、これからは僕に相談する事!約束だよ?」


しっかり釘を刺されリラフィアは頷くことしかできなかった。

そして後日、メラニー・ディランは王妃への冒涜と不正関与、ミリスへの脅迫行為など様々な罪に問われ、終身刑を言い渡され牢獄島送りにされる。

死刑が避けられたのは、彼女にはこの先何十年も牢獄で生き地獄を味合わせる事の方が罰になると判断されたから。

トーマスも全ての地位、財産没収の上民間人として放り出された。
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