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神の箱庭
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白い部屋と、魔物を集めた森、そして美しい神殿。
その三つのエリアしか存在しないこの世界は、神々が創り出した『箱庭』だ。
無人だったその空間に、ある時一人の神が訪れた。
「やあ、久しぶりだねエルクィード」
エルクィードと呼ばれたのは、神殿に漂っていた光。
光はふわふわと神の前へ飛んでいき、人間の姿へと変わっていく。
「わあ、久しぶりだねメージェ。生きてたんだ、500年くらい寝てたから死ぬのかと思った」
メージェと呼ばれた神はクスクス笑った。
「ふふ。代わりの神が生まれたからね、休むことができたよ」
「ふーん。で、わざわざおはようを言いに来たの?」
エルクィードの言葉に、メージェは笑みを消し悲しげな顔になる。
「いや…実はちょっとね、処理して欲しい人間達がいてね」
「仕事だね!やったー!」
エルクィードは無邪気に喜んだ。
魔物が森で殺し合う以外は何もないこの空間で、彼は一人退屈しているから。
「僕の世界からはこの六人だ」
一瞬にして、男女六人が姿を表した。
眠らされていて意識はなく、無様に床に放り出される。
「了解」
エルクィードが指を鳴らすと、彼らは森を挟んだ反対側にある白の間へ転送された。
「期間や処理方法の指定はある?」
「いいや、任せるよ」
「いつも通りお任せね。でも珍しいね、メージェが自分の世界から送り込んでくるなんて」
複数存在する神々の中でも、メージェは人との距離が近く感情移入しやすいタイプ。
人間の処理を頼みに来ることは稀だった。
「…うん、ちょっとね。新しい神が優しすぎて、自分の世界で人を裁けないんだ」
メージェは新しく神の座に着いた彼を思い浮かべる。
常に笑顔を絶やさず心優しい彼は、弱っていた世界を慈愛の心で癒してくれた。
しかし人間同士の争いには疎く、ただ見ていることしかしないのだ。
「優しすぎるのか、無関心だからなのか…もう少し厳しさも必要だと言うことをもう一度説明しなくてはね…」
「甘ちゃんな神なんだね。僕がまだあった事ないあいつでしょ?」
「とても良い子なんだよ…いつか顔を見せに来るかもしれないね。その時はよろしく」
そして、悲しい顔のままメージェは去っていった。
一人になったエルクィードは、舌舐めずりをして白の間へ飛んだ。
床に転がって寝ている六人の情報を確認する。
「私欲まみれの人間共。強欲、傲慢…性欲も。ホントに人間って愚かで面白いなあ」
ニヤリと笑う彼は楽しそうで、恐ろしかった。
「さて、魔物の数を増やしておこうかな」
エルクィードは目を閉じて他の世界を覗く。
人を何十人も食い殺している魔獣、共食いを繰り返し縄張りの頂点に立った魔獣、人間を嫌い残虐な殺し方を好む魔物……何体か選んで魔の森へ放つ。
「森の準備はこんなものかな」
新たな魔物が増えたことにより、森の中では早速争いが勃発している。
「早く始めないと、せっかく増やした魔物が減っちゃうや」
獣型の魔獣とそれ以外の魔物たちは皆気性が荒く、人間など居なくても殺し合い続ける生き物。
止めようと思えば止めておけるのだが、エルクィードはそれをしていない。
そしてエルクィードは指を鳴らし、寝ていた人間達を起こした。
その三つのエリアしか存在しないこの世界は、神々が創り出した『箱庭』だ。
無人だったその空間に、ある時一人の神が訪れた。
「やあ、久しぶりだねエルクィード」
エルクィードと呼ばれたのは、神殿に漂っていた光。
光はふわふわと神の前へ飛んでいき、人間の姿へと変わっていく。
「わあ、久しぶりだねメージェ。生きてたんだ、500年くらい寝てたから死ぬのかと思った」
メージェと呼ばれた神はクスクス笑った。
「ふふ。代わりの神が生まれたからね、休むことができたよ」
「ふーん。で、わざわざおはようを言いに来たの?」
エルクィードの言葉に、メージェは笑みを消し悲しげな顔になる。
「いや…実はちょっとね、処理して欲しい人間達がいてね」
「仕事だね!やったー!」
エルクィードは無邪気に喜んだ。
魔物が森で殺し合う以外は何もないこの空間で、彼は一人退屈しているから。
「僕の世界からはこの六人だ」
一瞬にして、男女六人が姿を表した。
眠らされていて意識はなく、無様に床に放り出される。
「了解」
エルクィードが指を鳴らすと、彼らは森を挟んだ反対側にある白の間へ転送された。
「期間や処理方法の指定はある?」
「いいや、任せるよ」
「いつも通りお任せね。でも珍しいね、メージェが自分の世界から送り込んでくるなんて」
複数存在する神々の中でも、メージェは人との距離が近く感情移入しやすいタイプ。
人間の処理を頼みに来ることは稀だった。
「…うん、ちょっとね。新しい神が優しすぎて、自分の世界で人を裁けないんだ」
メージェは新しく神の座に着いた彼を思い浮かべる。
常に笑顔を絶やさず心優しい彼は、弱っていた世界を慈愛の心で癒してくれた。
しかし人間同士の争いには疎く、ただ見ていることしかしないのだ。
「優しすぎるのか、無関心だからなのか…もう少し厳しさも必要だと言うことをもう一度説明しなくてはね…」
「甘ちゃんな神なんだね。僕がまだあった事ないあいつでしょ?」
「とても良い子なんだよ…いつか顔を見せに来るかもしれないね。その時はよろしく」
そして、悲しい顔のままメージェは去っていった。
一人になったエルクィードは、舌舐めずりをして白の間へ飛んだ。
床に転がって寝ている六人の情報を確認する。
「私欲まみれの人間共。強欲、傲慢…性欲も。ホントに人間って愚かで面白いなあ」
ニヤリと笑う彼は楽しそうで、恐ろしかった。
「さて、魔物の数を増やしておこうかな」
エルクィードは目を閉じて他の世界を覗く。
人を何十人も食い殺している魔獣、共食いを繰り返し縄張りの頂点に立った魔獣、人間を嫌い残虐な殺し方を好む魔物……何体か選んで魔の森へ放つ。
「森の準備はこんなものかな」
新たな魔物が増えたことにより、森の中では早速争いが勃発している。
「早く始めないと、せっかく増やした魔物が減っちゃうや」
獣型の魔獣とそれ以外の魔物たちは皆気性が荒く、人間など居なくても殺し合い続ける生き物。
止めようと思えば止めておけるのだが、エルクィードはそれをしていない。
そしてエルクィードは指を鳴らし、寝ていた人間達を起こした。
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