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第4話:味方
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放課後。
重い足取りで校門へ向かったリーリャは、仁王立ちで待っていたアーリャを見て一瞬足を止める。
(う…どうしよう)
どうやって誤魔化そうか。
自分は王子とは何もない、妹を紹介して仲をとり持たなくては。
ずっとそう考えていた筈なのに、リュカリウスから告白されたせいで抵抗を感じてしまう。
「お姉ちゃん!お気に入りの喫茶店があるからそこに行こう」
「わ、わかった…」
アーリャについていくと、女子生徒に人気だという近場の喫茶店に案内された。
「…で。王子と何があったの?」
「何もないってば」
「はい嘘!お姉ちゃん嘘つける人間じゃないのわかってるでしょ、バレバレ。目が泳ぎすぎ」
妹には敵わない…成績優秀なリーリャだが、身内に嘘をつく能力には恵まれなかったようだ。
観念し、リーリャは今朝のことを話す。
「告白されたー!?!?」
「しっ、静かに!声が大きいわよ!聞かれたらどうするの!」
「まさかそこまで話進んでるとは思わなかったんだもん!えー、いいなあ!!」
「でも、アーリャが狙ってたのに…」
「まさか、それを気にして断ったの?」
「だって…」
可愛い妹。
その可愛さを維持するため、そして磨くために努力してきたことをよく知っている。
恋愛に興味がなくつまらない女だと言われてきた自分とは違う、愛し愛されるための妹。
リュカリウスをよく知らないうちは、とてもお似合いの二人だと思っていた。
きっと王子の心を射止めることができる、念願叶えて玉の輿に乗れる。
そう思っていたのに。
「あのねえ、お姉ちゃん」
アーリャの手がリーリャの頬に伸び、静かに流れていた涙を拭う。
「自分が今どんな顔してるか、わかる?」
「…」
「あたしだって鬼じゃないわよ、お姉ちゃんが王子のこと好きになったなら、幸せになってほしいに決まってるじゃない」
「…私が、王子を好き?」
泣いている自覚もなく、恋をしている自覚もなく。
そんなリーリャを呆れ顔で見つめるアーリャは、とても優しい目をしていた。
「馬鹿ねー、頭良くても鈍すぎ。別にさ、あたしが王子と付き合ってるわけでもないんだから遠慮しなくていいのよ?自分の気持ちに正直になっていいのよ」
「私の…気持ち…」
「好きって言われてどう思った?」
「…嬉しかった」
「あたしが王子に近づいたら、どう思う?」
「…」
「言って良いのよ」
「…嫌。アーリャも、他の子も。嫌…」
そう、嫌だ。
自分のことを好きだと言ってくれたリュカリウスが、諦めて他の子に気持ちを向けたら?
あの笑顔が、他の人に向いたら。
「私…リュカリウス様の事、好き」
この気持ちを認めて良いのなら。
伝えて良いのなら…伝えなくては。
初恋を自覚し泣くリーリャは、アーリャに抱きしめられながら決意していた。
(明日、ちゃんと伝えよう。会えるかな…)
どちらが姉かわからないね、と笑い合い。
姉妹は寮へ戻っていったのだった。
重い足取りで校門へ向かったリーリャは、仁王立ちで待っていたアーリャを見て一瞬足を止める。
(う…どうしよう)
どうやって誤魔化そうか。
自分は王子とは何もない、妹を紹介して仲をとり持たなくては。
ずっとそう考えていた筈なのに、リュカリウスから告白されたせいで抵抗を感じてしまう。
「お姉ちゃん!お気に入りの喫茶店があるからそこに行こう」
「わ、わかった…」
アーリャについていくと、女子生徒に人気だという近場の喫茶店に案内された。
「…で。王子と何があったの?」
「何もないってば」
「はい嘘!お姉ちゃん嘘つける人間じゃないのわかってるでしょ、バレバレ。目が泳ぎすぎ」
妹には敵わない…成績優秀なリーリャだが、身内に嘘をつく能力には恵まれなかったようだ。
観念し、リーリャは今朝のことを話す。
「告白されたー!?!?」
「しっ、静かに!声が大きいわよ!聞かれたらどうするの!」
「まさかそこまで話進んでるとは思わなかったんだもん!えー、いいなあ!!」
「でも、アーリャが狙ってたのに…」
「まさか、それを気にして断ったの?」
「だって…」
可愛い妹。
その可愛さを維持するため、そして磨くために努力してきたことをよく知っている。
恋愛に興味がなくつまらない女だと言われてきた自分とは違う、愛し愛されるための妹。
リュカリウスをよく知らないうちは、とてもお似合いの二人だと思っていた。
きっと王子の心を射止めることができる、念願叶えて玉の輿に乗れる。
そう思っていたのに。
「あのねえ、お姉ちゃん」
アーリャの手がリーリャの頬に伸び、静かに流れていた涙を拭う。
「自分が今どんな顔してるか、わかる?」
「…」
「あたしだって鬼じゃないわよ、お姉ちゃんが王子のこと好きになったなら、幸せになってほしいに決まってるじゃない」
「…私が、王子を好き?」
泣いている自覚もなく、恋をしている自覚もなく。
そんなリーリャを呆れ顔で見つめるアーリャは、とても優しい目をしていた。
「馬鹿ねー、頭良くても鈍すぎ。別にさ、あたしが王子と付き合ってるわけでもないんだから遠慮しなくていいのよ?自分の気持ちに正直になっていいのよ」
「私の…気持ち…」
「好きって言われてどう思った?」
「…嬉しかった」
「あたしが王子に近づいたら、どう思う?」
「…」
「言って良いのよ」
「…嫌。アーリャも、他の子も。嫌…」
そう、嫌だ。
自分のことを好きだと言ってくれたリュカリウスが、諦めて他の子に気持ちを向けたら?
あの笑顔が、他の人に向いたら。
「私…リュカリウス様の事、好き」
この気持ちを認めて良いのなら。
伝えて良いのなら…伝えなくては。
初恋を自覚し泣くリーリャは、アーリャに抱きしめられながら決意していた。
(明日、ちゃんと伝えよう。会えるかな…)
どちらが姉かわからないね、と笑い合い。
姉妹は寮へ戻っていったのだった。
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