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盲目の騎士〜過去〜
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実家は嫌いだ。
いつも両親が喧嘩している。
実家は嫌いだ。
ふたりとも俺の責任を押し付け合って喧嘩する。
「病院代だってばかにならないのよ。」
「うちの家系にそんな病気はいない。お前の家系だろう?」
「うちの家系じゃないわよ!!」
母は苛立ってテーブルを叩く。
「とにかく手術代を捻出しないと…。」
「保険の適用外なのよ…。」
カタン、と幼かった俺は音を出した。
「どうしたの。聖人?」
「トイレに行きたくて…。」
「起こしちゃったかしら?」
「なんのことですか?」
「いいえ、なんでもないのよ。」
5歳の時、病気が見つかった。病名は長くて覚えていない。血管の病気だとは聞いていた。たまに息ができなくなる。過呼吸のようなものだと思う。あれから、両親は毎晩のように喧嘩している。治療に使われる薬はまだ開発されておらず入退院を繰り返した。
小学校高学年になった頃から体育の授業には出ないように言われた。
「サボりの青柳だー。」
「止めなさい!!青柳君は病気なのよ!!」
「どこが悪いのさ?」
「…。」
「ほら、やっぱりサボりじゃん。」
「いいから、グラウンド走ってらっしゃい!!」
「先生、僕は学校に来ないほうが良いんでしょうか?」
「そんな心配しなくていいのよ青柳君。」
「僕は走ることも出来ないし…。」
「青柳君は勉強ができるし、絵も上手いじゃない?」
「そうですか?僕としてはなんとも…。」
「先生は青柳君が学校に来てくれて嬉しいわ。気にしないでね。」
時間はいつもあった。でも何をして過ごせばいいのかいつも分からなかった。
中学に上がってから俺の居場所はもっと小さくなった。
「青柳は障害者なんだろう?うちの親父が言ってたぞ。」
「障害者なら障害者学級へ移れよ!!」
そう言って教科書を窓から投げ捨てられた。慌てて拾いに行くと今度はカバンが降ってきた。
「か・え・れ!か・え・れ!か・え・れ!」
同級生から容赦無く帰れコールをされた。
その日は大人しく家に帰った。
この頃の父と母は離婚まで秒読みでお互いの再婚相手の影がちらついていた。お互いに養育費は払うからと言って親権は押し付け合っていた。
「僕は北満高校に通いたいんです。」
祖母の家に近い高校だった。
「聖人の学力なら北満にも通えるだろうけど…。」
父は悩んでいた。
「進学したら聖人はおばあちゃんと暮らしたらどうかしら?学校も近いわよ。」
そう言って俺は北満高校を志望校にした。教室にはもう行けなくなっていた。机に花が飾られるようになったからだ。
悔しくなかったかと言えば嘘になる。それでも俺は勉強した。保健室登校だ。
保健の先生は学校でリースを作ったり、ビーズアートをしていた。
「仕事中にそんな事してて良いんですか?」
俺は聞いた。
「保健室に彩りを添えるのよ。」
そう言って先生は笑った。
保健室の黒板にはたくさんのイラストが貼ってあった。その中には何枚か写実的な物があった。何となくプリントの裏にその絵を真似して絵を描いた。先生は随分上手いのねーと、コーヒーを淹れてくれた。
「そうだ。青柳君は絵が上手いから油絵とか描いたらどうかしら?」
「油絵ですか?」
「佐田山先生が青柳君の絵を見て是非にって。」
「考えてみます…。」
その日の帰り道、発作が起きた。息ができない。ぜいぜいと息をしてなんとか家についた。
家に帰ると母が知らない男と居た。
「どうしたの聖人?発作?」
母は慌てて駆け寄ってくる。
「触るな!!」
自分でも何故そんな事を言ったか分からなかった。ただ、見知らぬ男と一緒にいる母に吐き気がした。俺はそのまま部屋に戻って呼吸が落ち着くまでベッドで横になった。
帰ってきた父と母がまた喧嘩を始めていた。
俺はリビングに行って一言、父と母にこう言った。
「ばあちゃんと暮らしたい。」
そして俺は転校した。
転校先の中学は大半が北満高校に進学する。皆、自分のことでいっぱいいっぱいでいじめなどしている余裕はない。
「青柳は北満に行くのか?」
転校してきた俺に皆は親切だった。
「一応、志望校は北満だ。」
俺は答えた。
「まあ北満はほとんどうちの中学の集まりみたいなもんだからな。」
そう言って中里は笑った。
「青柳って病気なんだろう?なんて病名何だ?」
「長くて覚えてない。」
それから中里は色々と親切にしてくれた。理由は分からなかった。中里の父親は開業医だった。中里は時計、文房具、カバン、どれをとっても一流品を身に着けていた。
転校先の中学は部活動が強制されていたので美術部に入った。
佐田山先生が推薦してくれたのに油絵をしなかったなぁ、そう思いながら毎日デッサンに明け暮れた。
中里は変わらずに親切だった。
「ばあちゃん、俺やるよ。」
学校が休みの日は俺は率先して家事をした。カレーと肉じゃがは得意だった。
「お父さんとお母さんを恨んじゃいけないよ。ふたりともいつか気づく日が来るんだから。」
そう言ってばあちゃんは俺の頭を撫でた。
こんな俺に生きてる価値はあるんだろうか。ぼんやりと自死という言葉が浮かんだ。
それでも俺は生きていればきっと何か変わるんだ。そう思った。
ある日学校へ行くと机に花が飾られていた。中里達がニヤニヤしている。
ああ、ここでも俺はこうなるんだな、そう思って、学校を飛び出した。
川に飛び込もうか、ビルから飛び降りようか、泣きながら考えた。交差点で、自転車とぶつかった。そして俺は救急車で搬送された。
搬送された病院で病気の話をした。
若い医師が、
「頑張って生きてきたんですね。」
そう言って微笑んだ。俺は何故かその言葉を聞いて涙を流し続けた。
「一度しかない人生です。やりたいことをしても良いんですよ。」
そう言われた。入院中何がしたいか考えた。
油絵を描いてみたい。そう思った。
退院して前の中学まで保健の先生に会いに行った。
「青柳君じゃない?元気だったの?」
先生は満面の笑みで迎えてくれた。俺は泣いた。途中途中、涙で言葉が詰まったものの、今までの経緯を話した。
「頑張ったわね。」
そう言って先生は頭を撫でてくれた。先生は保健室に、佐田山先生を呼んでくれた。
そして俺は転校先の中学で油絵を描き始めた。油絵の具の手配などは佐田山先生がしてくれた。それからの俺は保健室で、勉強し、放課後は美術室で油絵を描いた。
中里達はたまに俺の様子を見に来ては面白くないという顔をしていた。
3年になって受験が近づいてきた。俺は北満高校から志望校を変えることなく受験に臨んだ。結果は合格だった。そして中里は不合格だった。
高校に通い始めて発作が頻発するようになった。ばあちゃんと病院へ行った。
「このままだと失明するかもしれませんね…。」
医師の言葉に俺は真っ青になった。ばあちゃんは泣いた。
家に戻るとばあちゃんは父と母に電話をかけた。
「聖人が失明するかもしれないっていうのにあんたらは!!」
ばあちゃんが声を荒げる姿を初めて見た。俺は試しに目をつぶって部屋の中で動いた。
机やイスにぶつかる。
もう俺はおしまい何だ、そう思った。
そう思って、医師の言葉を思い出した。
「一度しかない人生…。」
俺は翌日から美術室に籠もった。一枚でも多く油絵を仕上げたい。そう思った。
小さい頃に父と母が連れて行ってくれた動物園を思い出した。動物は生命力を分けてくれる。
俺は病気になって両親を憎んでいた。それでもふたりは色んなところに連れて行ってくれた。
俺は涙を流しながら油絵を描き続けた。
制服を汚すと困るからとばあちゃんが作業服を買ってくれた。
そしてその日は訪れた。
自動販売機で炭酸を買っている同級生がいた。名前すら知らなかった彼が俺を新しい世界へと連れ出してくれた。
その同級生の名前は高真武彦。
俺の人生の大半を共に過ごすことになる少年だった。俺は今でもこの日を忘れない。
いつも両親が喧嘩している。
実家は嫌いだ。
ふたりとも俺の責任を押し付け合って喧嘩する。
「病院代だってばかにならないのよ。」
「うちの家系にそんな病気はいない。お前の家系だろう?」
「うちの家系じゃないわよ!!」
母は苛立ってテーブルを叩く。
「とにかく手術代を捻出しないと…。」
「保険の適用外なのよ…。」
カタン、と幼かった俺は音を出した。
「どうしたの。聖人?」
「トイレに行きたくて…。」
「起こしちゃったかしら?」
「なんのことですか?」
「いいえ、なんでもないのよ。」
5歳の時、病気が見つかった。病名は長くて覚えていない。血管の病気だとは聞いていた。たまに息ができなくなる。過呼吸のようなものだと思う。あれから、両親は毎晩のように喧嘩している。治療に使われる薬はまだ開発されておらず入退院を繰り返した。
小学校高学年になった頃から体育の授業には出ないように言われた。
「サボりの青柳だー。」
「止めなさい!!青柳君は病気なのよ!!」
「どこが悪いのさ?」
「…。」
「ほら、やっぱりサボりじゃん。」
「いいから、グラウンド走ってらっしゃい!!」
「先生、僕は学校に来ないほうが良いんでしょうか?」
「そんな心配しなくていいのよ青柳君。」
「僕は走ることも出来ないし…。」
「青柳君は勉強ができるし、絵も上手いじゃない?」
「そうですか?僕としてはなんとも…。」
「先生は青柳君が学校に来てくれて嬉しいわ。気にしないでね。」
時間はいつもあった。でも何をして過ごせばいいのかいつも分からなかった。
中学に上がってから俺の居場所はもっと小さくなった。
「青柳は障害者なんだろう?うちの親父が言ってたぞ。」
「障害者なら障害者学級へ移れよ!!」
そう言って教科書を窓から投げ捨てられた。慌てて拾いに行くと今度はカバンが降ってきた。
「か・え・れ!か・え・れ!か・え・れ!」
同級生から容赦無く帰れコールをされた。
その日は大人しく家に帰った。
この頃の父と母は離婚まで秒読みでお互いの再婚相手の影がちらついていた。お互いに養育費は払うからと言って親権は押し付け合っていた。
「僕は北満高校に通いたいんです。」
祖母の家に近い高校だった。
「聖人の学力なら北満にも通えるだろうけど…。」
父は悩んでいた。
「進学したら聖人はおばあちゃんと暮らしたらどうかしら?学校も近いわよ。」
そう言って俺は北満高校を志望校にした。教室にはもう行けなくなっていた。机に花が飾られるようになったからだ。
悔しくなかったかと言えば嘘になる。それでも俺は勉強した。保健室登校だ。
保健の先生は学校でリースを作ったり、ビーズアートをしていた。
「仕事中にそんな事してて良いんですか?」
俺は聞いた。
「保健室に彩りを添えるのよ。」
そう言って先生は笑った。
保健室の黒板にはたくさんのイラストが貼ってあった。その中には何枚か写実的な物があった。何となくプリントの裏にその絵を真似して絵を描いた。先生は随分上手いのねーと、コーヒーを淹れてくれた。
「そうだ。青柳君は絵が上手いから油絵とか描いたらどうかしら?」
「油絵ですか?」
「佐田山先生が青柳君の絵を見て是非にって。」
「考えてみます…。」
その日の帰り道、発作が起きた。息ができない。ぜいぜいと息をしてなんとか家についた。
家に帰ると母が知らない男と居た。
「どうしたの聖人?発作?」
母は慌てて駆け寄ってくる。
「触るな!!」
自分でも何故そんな事を言ったか分からなかった。ただ、見知らぬ男と一緒にいる母に吐き気がした。俺はそのまま部屋に戻って呼吸が落ち着くまでベッドで横になった。
帰ってきた父と母がまた喧嘩を始めていた。
俺はリビングに行って一言、父と母にこう言った。
「ばあちゃんと暮らしたい。」
そして俺は転校した。
転校先の中学は大半が北満高校に進学する。皆、自分のことでいっぱいいっぱいでいじめなどしている余裕はない。
「青柳は北満に行くのか?」
転校してきた俺に皆は親切だった。
「一応、志望校は北満だ。」
俺は答えた。
「まあ北満はほとんどうちの中学の集まりみたいなもんだからな。」
そう言って中里は笑った。
「青柳って病気なんだろう?なんて病名何だ?」
「長くて覚えてない。」
それから中里は色々と親切にしてくれた。理由は分からなかった。中里の父親は開業医だった。中里は時計、文房具、カバン、どれをとっても一流品を身に着けていた。
転校先の中学は部活動が強制されていたので美術部に入った。
佐田山先生が推薦してくれたのに油絵をしなかったなぁ、そう思いながら毎日デッサンに明け暮れた。
中里は変わらずに親切だった。
「ばあちゃん、俺やるよ。」
学校が休みの日は俺は率先して家事をした。カレーと肉じゃがは得意だった。
「お父さんとお母さんを恨んじゃいけないよ。ふたりともいつか気づく日が来るんだから。」
そう言ってばあちゃんは俺の頭を撫でた。
こんな俺に生きてる価値はあるんだろうか。ぼんやりと自死という言葉が浮かんだ。
それでも俺は生きていればきっと何か変わるんだ。そう思った。
ある日学校へ行くと机に花が飾られていた。中里達がニヤニヤしている。
ああ、ここでも俺はこうなるんだな、そう思って、学校を飛び出した。
川に飛び込もうか、ビルから飛び降りようか、泣きながら考えた。交差点で、自転車とぶつかった。そして俺は救急車で搬送された。
搬送された病院で病気の話をした。
若い医師が、
「頑張って生きてきたんですね。」
そう言って微笑んだ。俺は何故かその言葉を聞いて涙を流し続けた。
「一度しかない人生です。やりたいことをしても良いんですよ。」
そう言われた。入院中何がしたいか考えた。
油絵を描いてみたい。そう思った。
退院して前の中学まで保健の先生に会いに行った。
「青柳君じゃない?元気だったの?」
先生は満面の笑みで迎えてくれた。俺は泣いた。途中途中、涙で言葉が詰まったものの、今までの経緯を話した。
「頑張ったわね。」
そう言って先生は頭を撫でてくれた。先生は保健室に、佐田山先生を呼んでくれた。
そして俺は転校先の中学で油絵を描き始めた。油絵の具の手配などは佐田山先生がしてくれた。それからの俺は保健室で、勉強し、放課後は美術室で油絵を描いた。
中里達はたまに俺の様子を見に来ては面白くないという顔をしていた。
3年になって受験が近づいてきた。俺は北満高校から志望校を変えることなく受験に臨んだ。結果は合格だった。そして中里は不合格だった。
高校に通い始めて発作が頻発するようになった。ばあちゃんと病院へ行った。
「このままだと失明するかもしれませんね…。」
医師の言葉に俺は真っ青になった。ばあちゃんは泣いた。
家に戻るとばあちゃんは父と母に電話をかけた。
「聖人が失明するかもしれないっていうのにあんたらは!!」
ばあちゃんが声を荒げる姿を初めて見た。俺は試しに目をつぶって部屋の中で動いた。
机やイスにぶつかる。
もう俺はおしまい何だ、そう思った。
そう思って、医師の言葉を思い出した。
「一度しかない人生…。」
俺は翌日から美術室に籠もった。一枚でも多く油絵を仕上げたい。そう思った。
小さい頃に父と母が連れて行ってくれた動物園を思い出した。動物は生命力を分けてくれる。
俺は病気になって両親を憎んでいた。それでもふたりは色んなところに連れて行ってくれた。
俺は涙を流しながら油絵を描き続けた。
制服を汚すと困るからとばあちゃんが作業服を買ってくれた。
そしてその日は訪れた。
自動販売機で炭酸を買っている同級生がいた。名前すら知らなかった彼が俺を新しい世界へと連れ出してくれた。
その同級生の名前は高真武彦。
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