【完結】六文銭の渡し方

九時せんり

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砂上の楼閣

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「お父さん、どういうことなの?」
その日、菜摘は六郎が帰ってくるまで八重子から離れなかった。
「苑田さんは父さんの会社で働いていた人の奥さんなんだよ。何も無い仲だよ。」
そう言って六郎は視線を逸らす。
「お父さん、嘘ついてる!」
菜摘はそう言って六郎を問い詰める。
「嘘なんてついてない。」
「だったらお父さんそんなに取り乱してない!!」
そんな押し問答が30分程続いた。
佑が部屋から出てきて頭が痛いと言い出した。八重子はまた痛み止めを飲むと聞こうとして佑の顔色があんまりにも悪いことに気がついた。佑はリビングまで来て足元から崩れ落ちた。
「救急車、救急車!!」
菜摘の声で八重子はハッとして電話をかける。
救急車が来るまでの時間、八重子は菜摘とソファに佑を寝かせた。
「何でこんな時に佑まで…。」
そう言って八重子は泣いた。六郎はバツの悪そうな顔をしている。
「今は佑の事が一番だよ。苑田さんの話はまたにしよう。」
そう言って六郎はタオルを濡らして絞り、佑の額にかけた。
私が何か悪いことでもしたのだろうか、八重子は泣き続けた。
5分ほどで救急車が到着し、佑はストレッチャーに乗せられた。
八重子は救急車に乗り込み、佑の問診票を書いた。救急隊員が受け入れ先について電話で確認を取っていく。幸い3件目で受け入れが決まった。

病院につくと薄暗い電灯がより一層不安を掻き立てる。菜摘と六郎が、後からやってきた。
「佑、寝ろって言っても寝ないで勉強してたから…。」
菜摘は不安げな声を出す。
「疲労から来てるだけかもしれない。そんなに心配いらないよ。」
六郎はそう言ったが、看護士が八重子を呼んだ。
「手術が必要です。同意書にサインしてください。」
「どういうことですか?」
八重子はギリギリだった。
「脳の血管が切れて脳出血しています。一刻を争います。」
その瞬間、八重子はぷつりと何かが切れた。
看護士に言われるままサインをし、涙はピタリと止まった。
「六郎さん、苑田さんを呼んで。」
「何故ここに苑田さんを呼ぶ必要かあるんだい?」
「あなたの壊した家庭がここにあるからです。」
そう言って八重子は背筋を伸ばした。
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