8 / 9
本当は僕は、あっ、いや、はい。
しおりを挟む
希望は颯爽と自分のアパートに向かう。あまりにもアパートとは相性の悪い高級車で。
「着きましたよー。」
希望は死にかけの満の身体をガンガン揺らす。
「や、ヤメテクダサイ、は、吐く。」
満に意識が戻ったところで久々に家に帰る希望。
「そういえば、私って誘拐されてから何日経ったんですかね?
「昨日、誘拐したばかりなので、あの、そんなに時間は経ってないです。」
「え?ということは今日の仕事は_____、」
「希望さんの知り合いを装って休みにしておきました。」
「今日って何曜日?」
「金曜ですね、一応、」
「土日休みじゃん!!!」
ハイテンションになる希望。それをただ眺める満。
そうこうするうちに、希望の住む部屋の扉の前までやってきた。
「えっと、」
「入ってください。」
希望の部屋に入るのを躊躇する満を無理やり部屋に入れる。というか詰め込む。
「し、失礼します!」
今まで女性の部屋に入ったことのない満の声は甲高くなっていた。イントネーションは「しつれいしまぁ↑す」である。
満は女性の部屋はいい匂いがして、清潔で_____、そんな想像をしていた。
「あー、そうだった、一昨日、友達と呑み会したばかりだったんだっけ。」
希望の部屋のテーブルやら床にアルコールの缶やらお菓子の袋が散乱している。実際の独り暮らし生活など、そんなものだ。
「お片付け、手伝いましょうか……?」
「満さんは疲れたと思うのでその辺で、休んでて良いですよ!」
この様々な物が散らばった部屋のどこがその辺なのだろうと思いつつ、満はさりげなく体育座りをして希望を待機する。イルカのクッションことクーちゃんを抱き抱えながら、軽く眠りに落ちた。
「これでお掃除完了!ってあれ?」
気づけば満はすやすやと眠っていた。車の中で気絶していた時とは違って上品な寝顔をしている。普段なら仰向けに寝て、手を組むお姫様眠りをしていそうだなと思った。
「……っんぁっ!」
ちょうど満が起きた。希望がじっと満の寝顔を見ていたため、反射条件的に起きた。
「ごめんなさい、寝てました……。」
「おはようございます?」
そんなやりとりをしつつ、希望においでという合図をされたのでテーブルに近づく。コンビニで買った飲み物などを希望は取り出した。
「好きに食べてください!」
テーブルにあるのは頼んだ紅茶と栄養ドリンクと大量のサプリメントグミと少しのおにぎりだった。ちなみにサラダちきんもある。
「こ、これは一体、」
「私が考えた最強の栄養食です!」
確かに全部食べれば、満遍なく栄養は取れるだろうと思った。
「これ、なんですか……?鉄分が入っているグミ、そんなのあるんだ。」
満は普段、家では調理担当で滅多に外食をすることはなかった。配達ピザは例外として。ましてや、コンビニの菓子など食べたことなんて無かった。
「だ、食べてみてもいいですか?」
そう言いながら、満はグミの袋を開けようとする。
「あ」
袋の開け方を失敗し、無事にグミが部屋に飛び散った。
「うわぁ!ご、ごめんなさい、今洗って_____、」
水で洗ってから満は食べようとしたが希望は飛び散ったグミを床から直で食べていた。
「三秒ルールですよ、まだ床に落ちて三秒しか経ってないから食べられます。」
「もう三秒経ってる、」
「良いから早く食べる!」
まるで、母親に囃し立てられるようにされ、床に転がったグミを食べる。
「美味しい、すごく美味しいです、こんなの初めて食べました……!」
床に転がるグミを食べながら感動する満という非常にシュールな状態が生じる。
「もしかして、グミ食べたことないんですか?」
「世の中にはこんなに美味しいものがあったんですね……!」
さすが御曹司。お育ちが違いになられる。と、希望は思う。
「そういえば、満さんの布団を用意しないとですね。」
あーだこーだしているうちに、時計は22時を過ぎていた。
「いや、自分は床に寝るので大丈夫、です。」
さすがに女性が使用する布団で寝るのには抵抗があるのか、後退りをして、壁に体育座りをする。
「ちゃんと布団で寝ないと風邪引きますよー、ただでさえ、身体弱そうなのにー。」
そう言いながら、テキパキと布団の準備をする。そして満は布団に潜る。
「布団って良いですね。」
馴染むのが早いというツッコミを心の中で希望はしつつ、部屋の電気を消す。
「今日は疲れたし、これからのことは明日考えましょう。」
「そうですね……。」
そして、おやすみなさいと言う前に満が呟く。
「ごめんなさい、俺、じゃなくて僕は一つ嘘をついていました。」
「ん?」
「僕は本当は弟じゃなくて兄です。双子だから間違えられやすいんですけど……。」
「ん??」
「僕は鈴鹿家の長男です、これでも……。」
希望は考える。てっきり、鈴鹿グループの息子の弟を連れてきたと思ったら、兄の方だった。つまり。
「まさか、満さんって将来、鈴鹿グループの社長になる立場にいらっしゃる……?」
「僕よりも弟の方が優秀なので、弟が引き継ぐとは思いますが、父は僕に引き継がせたがってます。」
「ということは私はとんでもない方を家に引き連れてしまった……?」
「いえいえいえっ、僕が弟だなんて嘘をつくから悪いんです!でも、本当のことを言える機会が無くて_____。」
「満さんは想像以上の御曹司ということで合ってます?」
「はい、一応、そうなるのかなって……。」
希望は固まる。そうだ、明日考えよう。全部明日考えよう。自分がとんでもないことをしてしまったと今更気付いたのだった。
「着きましたよー。」
希望は死にかけの満の身体をガンガン揺らす。
「や、ヤメテクダサイ、は、吐く。」
満に意識が戻ったところで久々に家に帰る希望。
「そういえば、私って誘拐されてから何日経ったんですかね?
「昨日、誘拐したばかりなので、あの、そんなに時間は経ってないです。」
「え?ということは今日の仕事は_____、」
「希望さんの知り合いを装って休みにしておきました。」
「今日って何曜日?」
「金曜ですね、一応、」
「土日休みじゃん!!!」
ハイテンションになる希望。それをただ眺める満。
そうこうするうちに、希望の住む部屋の扉の前までやってきた。
「えっと、」
「入ってください。」
希望の部屋に入るのを躊躇する満を無理やり部屋に入れる。というか詰め込む。
「し、失礼します!」
今まで女性の部屋に入ったことのない満の声は甲高くなっていた。イントネーションは「しつれいしまぁ↑す」である。
満は女性の部屋はいい匂いがして、清潔で_____、そんな想像をしていた。
「あー、そうだった、一昨日、友達と呑み会したばかりだったんだっけ。」
希望の部屋のテーブルやら床にアルコールの缶やらお菓子の袋が散乱している。実際の独り暮らし生活など、そんなものだ。
「お片付け、手伝いましょうか……?」
「満さんは疲れたと思うのでその辺で、休んでて良いですよ!」
この様々な物が散らばった部屋のどこがその辺なのだろうと思いつつ、満はさりげなく体育座りをして希望を待機する。イルカのクッションことクーちゃんを抱き抱えながら、軽く眠りに落ちた。
「これでお掃除完了!ってあれ?」
気づけば満はすやすやと眠っていた。車の中で気絶していた時とは違って上品な寝顔をしている。普段なら仰向けに寝て、手を組むお姫様眠りをしていそうだなと思った。
「……っんぁっ!」
ちょうど満が起きた。希望がじっと満の寝顔を見ていたため、反射条件的に起きた。
「ごめんなさい、寝てました……。」
「おはようございます?」
そんなやりとりをしつつ、希望においでという合図をされたのでテーブルに近づく。コンビニで買った飲み物などを希望は取り出した。
「好きに食べてください!」
テーブルにあるのは頼んだ紅茶と栄養ドリンクと大量のサプリメントグミと少しのおにぎりだった。ちなみにサラダちきんもある。
「こ、これは一体、」
「私が考えた最強の栄養食です!」
確かに全部食べれば、満遍なく栄養は取れるだろうと思った。
「これ、なんですか……?鉄分が入っているグミ、そんなのあるんだ。」
満は普段、家では調理担当で滅多に外食をすることはなかった。配達ピザは例外として。ましてや、コンビニの菓子など食べたことなんて無かった。
「だ、食べてみてもいいですか?」
そう言いながら、満はグミの袋を開けようとする。
「あ」
袋の開け方を失敗し、無事にグミが部屋に飛び散った。
「うわぁ!ご、ごめんなさい、今洗って_____、」
水で洗ってから満は食べようとしたが希望は飛び散ったグミを床から直で食べていた。
「三秒ルールですよ、まだ床に落ちて三秒しか経ってないから食べられます。」
「もう三秒経ってる、」
「良いから早く食べる!」
まるで、母親に囃し立てられるようにされ、床に転がったグミを食べる。
「美味しい、すごく美味しいです、こんなの初めて食べました……!」
床に転がるグミを食べながら感動する満という非常にシュールな状態が生じる。
「もしかして、グミ食べたことないんですか?」
「世の中にはこんなに美味しいものがあったんですね……!」
さすが御曹司。お育ちが違いになられる。と、希望は思う。
「そういえば、満さんの布団を用意しないとですね。」
あーだこーだしているうちに、時計は22時を過ぎていた。
「いや、自分は床に寝るので大丈夫、です。」
さすがに女性が使用する布団で寝るのには抵抗があるのか、後退りをして、壁に体育座りをする。
「ちゃんと布団で寝ないと風邪引きますよー、ただでさえ、身体弱そうなのにー。」
そう言いながら、テキパキと布団の準備をする。そして満は布団に潜る。
「布団って良いですね。」
馴染むのが早いというツッコミを心の中で希望はしつつ、部屋の電気を消す。
「今日は疲れたし、これからのことは明日考えましょう。」
「そうですね……。」
そして、おやすみなさいと言う前に満が呟く。
「ごめんなさい、俺、じゃなくて僕は一つ嘘をついていました。」
「ん?」
「僕は本当は弟じゃなくて兄です。双子だから間違えられやすいんですけど……。」
「ん??」
「僕は鈴鹿家の長男です、これでも……。」
希望は考える。てっきり、鈴鹿グループの息子の弟を連れてきたと思ったら、兄の方だった。つまり。
「まさか、満さんって将来、鈴鹿グループの社長になる立場にいらっしゃる……?」
「僕よりも弟の方が優秀なので、弟が引き継ぐとは思いますが、父は僕に引き継がせたがってます。」
「ということは私はとんでもない方を家に引き連れてしまった……?」
「いえいえいえっ、僕が弟だなんて嘘をつくから悪いんです!でも、本当のことを言える機会が無くて_____。」
「満さんは想像以上の御曹司ということで合ってます?」
「はい、一応、そうなるのかなって……。」
希望は固まる。そうだ、明日考えよう。全部明日考えよう。自分がとんでもないことをしてしまったと今更気付いたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
【完結】『推しの騎士団長様が婚約破棄されたそうなので、私が拾ってみた。』
ぽんぽこ@3/28新作発売!!
恋愛
【完結まで執筆済み】筋肉が語る男、冷徹と噂される騎士団長レオン・バルクハルト。
――そんな彼が、ある日突然、婚約破棄されたという噂が城下に広まった。
「……えっ、それってめっちゃ美味しい展開じゃない!?」
破天荒で豪快な令嬢、ミレイア・グランシェリは思った。
重度の“筋肉フェチ”で料理上手、○○なのに自由すぎる彼女が取った行動は──まさかの自ら押しかけ!?
騎士団で巻き起こる爆笑と騒動、そして、不器用なふたりの距離は少しずつ近づいていく。
これは、筋肉を愛し、胃袋を掴み、心まで溶かす姉御ヒロインが、
推しの騎士団長を全力で幸せにするまでの、ときめきと笑いと“ざまぁ”の物語。
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
【完結】離婚を切り出したら私に不干渉だったはずの夫が激甘に豹変しました
雨宮羽那
恋愛
結婚して5年。リディアは悩んでいた。
夫のレナードが仕事で忙しく、夫婦らしいことが何一つないことに。
ある日「私、離婚しようと思うの」と義妹に相談すると、とある薬を渡される。
どうやらそれは、『ちょーっとだけ本音がでちゃう薬』のよう。
そうしてやってきた離婚の話を告げる場で、リディアはつい好奇心に負けて、夫へ薬を飲ませてしまう。
すると、あら不思議。
いつもは浮ついた言葉なんて口にしない夫が、とんでもなく甘い言葉を口にしはじめたのだ。
「どうか離婚だなんて言わないでください。私のスイートハニーは君だけなんです」
(誰ですかあなた)
◇◇◇◇
※全3話。
※コメディ重視のお話です。深く考えちゃダメです!少しでも笑っていただけますと幸いです(*_ _))*゜
「転生したら推しの悪役宰相と婚約してました!?」〜推しが今日も溺愛してきます〜 (旧題:転生したら報われない悪役夫を溺愛することになった件)
透子(とおるこ)
恋愛
読んでいた小説の中で一番好きだった“悪役宰相グラヴィス”。
有能で冷たく見えるけど、本当は一途で優しい――そんな彼が、報われずに処刑された。
「今度こそ、彼を幸せにしてあげたい」
そう願った瞬間、気づけば私は物語の姫ジェニエットに転生していて――
しかも、彼との“政略結婚”が目前!?
婚約から始まる、再構築系・年の差溺愛ラブ。
“報われない推し”が、今度こそ幸せになるお話。
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?
はくら(仮名)
恋愛
ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる