魔法使いの少年と二人の女神様【R18】

龍 翠玉

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2.いつもの日常と……

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「オッス、優希。相変わらずしけた面してんなぁ」
「うるせえ、お前はいつもさわやか過ぎるんだよ」

 翌朝、学校で自分の席に着くなり声をかけてきたのは風間浩介かざまこうすけ。茶髪のさわやかイケメンで、正直言ってかなりモテるが、特定の彼女がいるという話は聞かない。かと言ってとっかえひっかえ遊びまくっているわけではないみたいだ。実際は外見に似合わずいざという時にヘタレすぎて、もう一歩先に進めないというだけらしい。

 入学時から、たまたま席が隣になったこともあり仲良くなった。あまり自分から人間関係の新規開拓はしない俺にとっては、何もしなくても構ってきてくれる良い友人だ。
 俺は友達が少ないのは間違いないが、決してぼっちというわけではない。

 魔法のことなど大っぴらにできないし、人付き合いがそれほど得意でもないので、学校での交友関係は必要最小限にとどめている。

「お~、いつものが来たぜ、優希」
「ああ、いつものな」

 いつもの光景。
 つまり、一ノ瀬穂香が登校してくると、一目見るためにわざわざ廊下に出てきたり、階層の違う上級生まで見に来るという状態が毎日のように続いている。俺からしたら、よくもまぁ飽きないものだと思うが、確かに一ノ瀬は可愛いし美人だ。
 誰が呼び始めたのかは知らないが、多くの男子生徒からは女神様と呼ばれているほどだしな。

 あの一ノ瀬の追っかけやファンクラブの連中に、昨日のお姫様抱っこや、その後のシーンを見られでもしてたら、俺は今日、無事に登校できなかったかもしれないな。

 いや、校舎裏とかに呼ばれたとしても、十数人程度なら身体強化を軽く使えばバレないように何とかなるか――ただ、そんなことで目立ってしまったら、俺は番長とか呼ばれるようになったりするのだろうか?それは困るし、学校にも悪い印象しか与えないだろう。

「お、優希、お前も一ノ瀬さんに興味あるのか?」

 ぼーっと一ノ瀬の方を見ながら考え事をしていたからか、浩介に言われてしまった。

「いや、さすがにそれはない。住む世界が違うって感じだな。それに、何とかなったとしても、あのスペックは持て余す。釣り合わないな」
「あーなるほどな、それはわからんでもないけどなぁ……一ノ瀬さんに興味ない男ってお前ぐらいじゃないか? 俺はどっちかって言うと、もう片方の女神様の方がいいな~」
「もう片方って言うと……清浦だったか?」

 清浦菜摘きようらなつみ――一ノ瀬穂香と人気を二分するもう一人の女神様。ただ、一ノ瀬とはタイプが違う。清浦は一言で言うと子供っぽい外見だ。
 一ノ瀬と同じ黒髪で肩には触れないくらいのショートカット。身長は見た感じ140センチ台半ばくらいだろう。普通に中学生とか下手したら小学生でも通じる。常に丁寧な言葉使いだが、その丁寧な口調のまま結構な毒舌家でもあるらしい。その可愛らしい外見とのギャップから、一部の男子生徒からは絶大な支持を得ているようだ。
 ちなみに一ノ瀬と清浦は仲が良いらしく、支持する男子生徒たちも特に対立などはしていない。その辺りは上手くすみ分けができているようだ。

「ああ、あの子供ぽい感じとかいいよな~一度あの毒舌を味わってみたいぜ」
「……おい、浩介。お前、ロリコンでドMなのか?」
「ん? いや、違うぜ。俺は子供っぽいのは好きだが子供に興味はないからな」
「なるほど……」

 ドMは否定しないんだな。そうだったのか、知らなかった。

「だけどよ、あの二人って入学してから頻繁に告白されてるだろ? でも、誰もいい返事は貰ってないみたいだし、連絡先すら交換できた奴いないみたいだぜ? 特に清浦さんなんかは、男嫌いって噂もあるくらいだしな」
「浩介は突撃しないのか? 骨くらいは拾ってやるぞ」
「あ~無理無理。碌に話したこともないのにOKもらえるわけないだろ?」
「ま、それもそうか……俺も話した事ないしな……」

 清浦とはな……さすがに浩介でも、一ノ瀬を抱きしめたとかなんて言えないしな。


 
 ◇◇◇◇◇


 昼休み。俺は基本的にパンだ。いつも通学途中のコンビニで買ってくるが、忘れた時は売店に走ることになる。売店は意外と競争率が高くて、ちょっと出遅れると人気のパンはすぐに売り切れてしまうのだ。
 一人暮らししているが、料理なんてものは全くできないからな。
 浩介と教室で食べることも多いが、天気が良い日なんかは屋上で食べたりもする。
 屋上に電機室みたいな部屋があって、その屋根の上が窪んでいる――というよりは、屋根がない二階があると言った方がいいか。壁も150センチ程の高さがあり、周りからは見えなくなっているので一人で寛ぐには最高の場所だ。もちろん、普通は屋根に上ることなどできないが、俺の場合はちょっと身体を強化すれば余裕で上れる。
 六畳ほどあるその場所には、勝手にベンチとテーブルも一つ持ってきていて、俺の秘密基地と化している。なぜ、こんな場所があるのかはわからないが、俺としてはありがたい。

 昼飯の焼きそばパンを食べていると、声が聞こえてきた。

「付き合ってください。お願いします」

 屋上自体はそれほど人がきたりしないので、告白スポットとして扱われることが多い。俺は聞いたことない声なので知らない男子だが、誰かに告白しているようだ。

「今は誰とも付き合う気がないんです。ごめんなさい」

 聞こえてきたのは聞き覚えのある落ち着いた感じの美しい声。一ノ瀬が告白されている現場に遭遇してしまったらしい。


「……そうですか。わかりました。すいません、ありがとうございました」

 男子生徒はそれだけ言うと、走って屋上から去っていった。

「ふぅ……」
「穂香さん……今ので何人目ですか?」

 男子生徒と入れ違いに女子生徒が一人来たようだ。この声は清浦か?

「ん~数えてないからわかんないよ。なっちゃんも似たようなものでしょ?」
「私は穂香さんほど多くはありませんよ。そろそろ誰かと付き合ったりしないんですか?」
「え? しないかな。好きな人もいないし、誰かと付き合うつもりがないもの」
「勿体ないですね……でも、誰か気になる人くらいはいますよね?」
「ん~そうね……少し気になる人なら……なっちゃんこそどうなの?」
「私は、気になるというか……ちょっと興味がある人はいますよ。その人って私が知っている人ですか?」
「ん~どうかな~? なっちゃんに告白したことがある人を、全員知っているわけじゃないから……とりあえず、私がわかる範囲ではなっちゃんが知らない人かな。なっちゃんの方こそどうなの?」

 なんか盗み聞きしているような気分になってきたが、俺がいるところの近くに向こうからやってきて喋っているんだから、俺は悪くないと言っておこう。それにしても……一ノ瀬の気になる人か……俺は清浦とは話したこともないから、一応条件には当てはまるがそんなことはないだろう。

「私ですか? それこそ穂香さんに告白した人の中にいるんじゃないですか? だって、告白された男子の方が多いくらいですよね?」
「ちょっと、そんなにたくさん告白されてないってば……その人は私に告白どころか、多分興味もないんじゃないかな……」
「え!? そんな人この学校にいるんですか?」
「たくさんいると思うよ? だって、なっちゃんを追いかけてる人たちも私には興味ないはずだし……」
「……あ~……まぁそうかもしれませんね……ただ、お互いにわかったことは、同じクラスの人じゃないって事ですね」
「ふふっ、そうね……あ、もうこんな時間。昼休み終わっちゃうから行きましょ」
「はい、そうですね」

 二人はそう言って屋上から去っていった。なんか色々聞いた気がするが、誰かと共有できるような内容でもないな。浩介になら話してもいいかもしれないが、情報源がどこかって聞かれたら面倒くさいしな。
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