魔法使いの少年と二人の女神様【R18】

龍 翠玉

文字の大きさ
12 / 26

12.穂香の気付き

しおりを挟む
◇◇一ノ瀬穂香◇◇

 はぁ~。
 自分の部屋に帰ってきてドアを後ろ手に閉めると、思わずため息をついてしまった。
 ゆうくんにされた事ではなく、自分のとった行動についてだ。
 もっとさせてあげればいいのに……私の中でそう語りかけてくる何かがいるような気さえする。
 私だって大好きなゆうくんにならって思うけど、それをどうしても拒んでしまう理由がある。
 でも、さっきのはよくわからなかったけど、気持ち良かったなぁ。お風呂で身体洗うときにも触れたりするけど、あんな風にはならないし……ゆうくんに触ってもらったからなのかな?
 先ほどの行為を思い出すと、股間の辺りがジュンと熱くなってきたような気がした。

「え?」

 恐る恐る股間に手を伸ばしてみると、ぐっしょりと濡れたショーツがあった。それにも驚いたけど、ゆうくんに触られたように触れてみると、身体中に電気が走ったような気がした。

「ああっ……んんっ」

 意図せず声が出てしまったこと手で口を塞いでしまい、周りに誰もいないことなどわかっているのに、辺りの様子を伺ってしまう。
 やだ……何、これ? 変な感覚だけど、気持ちいい。

「うっ……ぁ……あぁ…………んんんっ……」

 次第に指が激しく動き、与えてくる快感も増してくる。
 そこでふと思ってしまった。直接触ったらどうなんだろうと。気になった私はショーツとスカートを脱ぎ捨て、下半身だけ裸になった。
 熱を持った股間が外気にさらされて、ひんやりとした感じが心地よい。

「んあっ!」

 直接触れると先ほどまでとは比べものにならないくらい強い快感が訪れた。勝手にビクビクする身体をよそに、割れ目に沿って指を滑らせると、水とは違う少しだけ粘性のある液体で濡れているのがわかる。
 その液体を絡ませた指を目の前に持ってきて、親指と中指をくっつけたり離したりすると、にゅ~んと糸を引いた。

「うっ、なんかエッチな感じ……これが濡れるってこと……か」

 私はエッチな事に関してはあまりというか、ほとんど知識がない。なっちゃんは好奇心旺盛なようで、色々話を聞いたりするけど、よくわかってないことの方が多い。
 それでも、今している行為がオナニーだっていうことはわかる。

「んっ……んっ、んっ…………ぁ、あぁぁ……」

 今までしようと思ったこともなかったし、何のためにするのかもわからなかったけど、ゆうくんのことを考えながら触るとわかる気がする。
 今日された風に、ゆうくんの指を思い出しながら触ると、その時の感覚がよみがえってくるような気がした。

「はぁ……はぁ……んっ、んっ、んっ…………んんっ、んんんんんんんっ!」

 一瞬、頭が真っ白になるような感じがして、腰を中心に身体がビクッ、ビクッと痙攣する。

「はぁ、はぁ……ふぅ……」

 しばらくそのままの姿勢でいると、次第に興奮が冷めてきて冷静になっていく。それに合わせて、今やっていた行為が虚しく思えてきた。

「うぅ……お風呂……入ろう……」

 頭を切り替えて脱衣場で服を脱いでいく。下半身は脱いでいるから上半身だけだ。セーターを脱ぎ、ブラを外せば全裸のはずだが、私はそうじゃない。
 胸の下からお腹までミイラのようにぐるぐる巻かれた包帯がある。
 これこそが、私がゆうくんともう一歩先に進むのを躊躇させる最大の原因。この包帯の下には胸の下からお腹にかけて、大きな傷痕がある。
 子供の頃、事故で負った大怪我。何度も治療して怪我は治ったけど、一生消えないであろう大きな傷痕が残ってしまった。中学生の頃は怪我が治ったのが嬉しくて包帯を着けずにいたら、傷痕が原因でたくさん虐められた。それからは段々学校に行かなくなって……あの頃は何も良いことなかった。
 高校は誰も知り合いがいないくらい遠くて、プールがなくて水泳の授業がない学校を選んだ。他にすることが無くて勉強ばかりしてきたことと、体力をつけるために運動はしっかりやってきたおかげもあって、どちらも好成績を残せている。ただ、周りの男子から女神様と呼ばれていることについてはいただけない。
 私なんてそんな風に呼ばれる柄じゃない。みんながこの傷跡のことを知ったらどう思うだろう。また中学時代みたいになってしまうのかなと思う。
たとえみんなに嫌われたとしても、ゆうくんとなっちゃんには嫌われたくない。
なっちゃんと言えば……間違いなくゆうくんの事、好きよね。なっちゃんと取り合いは……嫌だなぁ。いっそのことゆうくんが二人とも選んでくれたらいいのに。
あ……でも、私はこれがあるから選んでももらえないか。
段々ネガティブな思考になっていくのを振り払って、包帯に手をかける。私が一日の中で一番嫌な時間だ。嫌でも目にしてしまうこの傷痕。

「あ、あれ?」

 いつもならすぐに見えてくるはずの傷痕がない。急いで包帯を全部取ってみると、一回り小さくなった傷痕があった。

「な……んで? 急に小さく……」

 昨日の夜はいつもと同じ大きさだった。それは間違いない。
 今日初めてあった出来事と言えば、ゆうくんにされたエッチなこととオナニーしたことくらい。でも、そんなことで傷痕が小さくなることなんてないはず。
 あとは……ゆうくんにされる前、少し寝ちゃってた時、お腹がポカポカ温かかった気がする。それくらいしか思い浮かばないけど、そんな魔法みたいなことあるはずもないよね。
 屋上から落ちた私を優しく受け止めてくれた時から気になって、気が付いたらすごく好きになっている自分がいて……あれ? そう言えば、あの高さから落ちたのに、私はほとんど衝撃を感じなかったけど……そんなことあるの?
 気になった私は全裸のままリビングへ行って、紙とペンを手に取りゆうくんが受けたであろう衝撃の強さを計算した。

「私がぬいぐるみみたいに軽かったら可能だけど……それに……」

 何回計算しても、誤差の範囲で条件の数値を変えても、ゆうくんが受け止めたようなことはできないとしか思える数値しか出ない。しかも、落下し始めてから墜落まで約二秒しかない。それなのに、ゆうくんのかばんは少し遠くにあった。落ちるのを確認してからあの距離を移動して受け止めるなんて……それこそ、漫画やアニメのような出来事だとしか思えない。
 結局、答えが出ないままそのことばかりが気になって、この日はなかなか寝付けなかった。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...