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4.初めての共同作業
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午前9時。
昨日の約束通り、女神様が汚部屋にやってきた。もちろん私服だ。白のTシャツにデニムパンツという動きやすい服装で髪はポニーテールにしている。やはり美人はどんな格好でも美人なのだと納得だ。
「じゃあ、順番に片付けていきましょう。とりあえず、相沢君は、この大量のごみを分別して出してきて。私はその間にキッチンの掃除をするわ」
「はい、わかりました、一ノ瀬先生」
今日は完全に一ノ瀬主導だ。俺は言われたことをする作業員に徹するのが、一番スムーズにいくだろう。
とは言え、ごみ出しだけで何往復すればいいのか。自業自得とはいえ、これは大変だ。
何度目かのごみ出しを終えた時だった。
「ねぇ、相沢君、これは何なの?」
そう言って冷蔵庫のドアを開けた。中には大量のスポーツドリンクと筋トレのお供、サラダチキンのみ入っている。いつも通りの俺の見慣れた光景だ。
「見ての通り、スポーツドリンクとサラダチキンだが、何かあったか?」
「はぁ、聞いた私が間違ってました。相沢君って料理は?」
「自慢じゃないが全くできない。炊飯器でご飯炊くのとカップラーメンくらいなら作れる」
「偉そうに言うことじゃないよ?この状況見たら予想通りだけど。あと、フライパンとかの調理器具が全くないんだけど、何もないの?」
「あぁ、使ったことないからな。確かこっちに」
引っ越してきたときに母さんが揃えてくれた調理器具一式が段ボールに封印されたままだ。母さんが来るまでに、これを開ける日がくるとは。
「あ、ちゃんとあるんだ。しかも結構良いものじゃない」
「母さんが揃えておいてくれたからな。入学したときに」
「入学したとき……ね……半年間も眠ったままとか勿体ない」
一ノ瀬がジト目を向けてくるがスルーする。気にしたら負けだ、というよりこの戦場で一ノ瀬に勝てる気がしない。
調理器具出されても使う予定がないし使えない、下手したら次に触るのが引っ越しするときとかありえるからな。それを言おうかと思ったが、なんだか言ってはいけないような気がしたので、やめておいた。言ったら多分怒られる。
「とりあえず、これをセッティングしたらキッチンは終わりね。全くと言っていいほど使った形跡がなかったから掃除は楽だったけど」
「大丈夫だ、これからも汚れる心配はない」
「それはそれで問題よ。あれれ?」
「どうかしたか?」
「今気付いたけど、ここって私の部屋より間取り広い気がする。」
「ああ、この階までは2LDKで上の階は1LDKって聞いたぞ」
「一人暮らしなのに、なんでそんなに広いところに住んでるの?」
「契約したのは親だから俺には何も言えないが、たまには泊りに来るかもとか言ってたような気がする。半年間放置されてるけどな」
家賃も高くなるし、俺一人ならこんなに広くなくてもいいって言ったんだけどな。もしかしたら、散らかって物が置ききれなくなることを前提に、この広い部屋にしたとか?そうだとしたら母さんすげぇ。
それでも、月に1回でも母さんが来てたら、ここまで散らかりはしなかったかもしれない。いや、掃除をしない俺が悪いのはわかってる。皆まで言うな。
「ふ~ん、リビングもちょっと広い気がする。でも、こんなに散らかしたら部屋が可愛そうよね」
「まぁ、片付いたら、できる限り散らかさないように善処する」
「ホントに?」
「……できる限りは」
「はぁ、まあいいわ。とりあえずどんどん片付けていきましょう」
俺は基本的に一ノ瀬に言われた通りに動くだけだが、部屋がどんどん片付いていく。散らかった服は一ノ瀬に畳まれ、いらないものはどんどん捨てていく。
一ノ瀬の手際の良さに脱帽だな。
「さてと、結構片付いたね。そろそろお昼にしましょ。ちょっと待っててね」
それだけ言うと、一ノ瀬は部屋を出て行って5分ほどで帰ってきた。でかい包みを持って。
「口に合うかわからないけど、どうぞ」
目の前には色とりどりのサンドイッチ。ハム、たまご、ポテトサラダ、カツ、レタスなど種類も多いが量も結構ある。
「うおっ、すげぇ!これ全部作ったのか?」
「うん、昨日見た感じ、絶対料理してそうになかったし、今日もキッチンが使えないのはわかってたから」
「ってかこれだけ作ったんだから結構早起きしたんじゃ?」
「そんなことないの。料理は好きだから問題ないしね。さぁ、そんなことより早く食べましょう」
そんなことあるだろうと思いつつも、今は一ノ瀬に感謝だ。
とりあえず一口……モグモグ……うまっ。何これ、売ってるのよりずっと美味い。あまりの美味しさに手が止まらず、気が付けば四人前くらいはあったサンドイッチがキレイになくなっていた。
「ごちそうさま。めっちゃ旨かった」
「良かった~でも、さすが男の子。凄い食欲ね~」
「いや、これだけ旨かったらいくらでも食える」
「ありがと。そう言ってもらえると作った甲斐があるわ」
食後に一ノ瀬がコーヒーを淹れてくれた。これも一ノ瀬が持参してくれたものだ。
飲み終わったら残りの掃除。一ノ瀬主導の元、俺の部屋は今までで一番綺麗な状態になった。
「とりあえず、こんな感じでいいかな。ね、相沢君……あれ?どうしたの?」
「……いや、こんなに綺麗になるとは……」
ビフォーアフターを携帯で撮っておけば良かったと思う。
「まだまだ細かいとこはできてないけど、最低でもこの状態は維持してね」
「……一週間くらいなら、自信ある」
「散らかしてないか毎日確認にくるからね。ちなみに、明日は細かい部分の掃除をするから」
そう言って笑顔でウインクする一ノ瀬はやっぱり可愛い。
健全な男子高校生には毒過ぎるだろ、強制的に意識させられてしまう感じだ。
一ノ瀬なら変顔とかしても可愛いのではないかと思ってしまった。見てみたいが、やってくれと言ってやってもらえるものでもないからな。
俺が勝手にドキドキしていると、キッチンのほうから「ご飯炊けた~」とか聞こえてきた。夕食はカレーだった。昨日の夜から仕込みしていたそうだ。
余談だが、エプロン姿の一ノ瀬は最高だった。
昨日の約束通り、女神様が汚部屋にやってきた。もちろん私服だ。白のTシャツにデニムパンツという動きやすい服装で髪はポニーテールにしている。やはり美人はどんな格好でも美人なのだと納得だ。
「じゃあ、順番に片付けていきましょう。とりあえず、相沢君は、この大量のごみを分別して出してきて。私はその間にキッチンの掃除をするわ」
「はい、わかりました、一ノ瀬先生」
今日は完全に一ノ瀬主導だ。俺は言われたことをする作業員に徹するのが、一番スムーズにいくだろう。
とは言え、ごみ出しだけで何往復すればいいのか。自業自得とはいえ、これは大変だ。
何度目かのごみ出しを終えた時だった。
「ねぇ、相沢君、これは何なの?」
そう言って冷蔵庫のドアを開けた。中には大量のスポーツドリンクと筋トレのお供、サラダチキンのみ入っている。いつも通りの俺の見慣れた光景だ。
「見ての通り、スポーツドリンクとサラダチキンだが、何かあったか?」
「はぁ、聞いた私が間違ってました。相沢君って料理は?」
「自慢じゃないが全くできない。炊飯器でご飯炊くのとカップラーメンくらいなら作れる」
「偉そうに言うことじゃないよ?この状況見たら予想通りだけど。あと、フライパンとかの調理器具が全くないんだけど、何もないの?」
「あぁ、使ったことないからな。確かこっちに」
引っ越してきたときに母さんが揃えてくれた調理器具一式が段ボールに封印されたままだ。母さんが来るまでに、これを開ける日がくるとは。
「あ、ちゃんとあるんだ。しかも結構良いものじゃない」
「母さんが揃えておいてくれたからな。入学したときに」
「入学したとき……ね……半年間も眠ったままとか勿体ない」
一ノ瀬がジト目を向けてくるがスルーする。気にしたら負けだ、というよりこの戦場で一ノ瀬に勝てる気がしない。
調理器具出されても使う予定がないし使えない、下手したら次に触るのが引っ越しするときとかありえるからな。それを言おうかと思ったが、なんだか言ってはいけないような気がしたので、やめておいた。言ったら多分怒られる。
「とりあえず、これをセッティングしたらキッチンは終わりね。全くと言っていいほど使った形跡がなかったから掃除は楽だったけど」
「大丈夫だ、これからも汚れる心配はない」
「それはそれで問題よ。あれれ?」
「どうかしたか?」
「今気付いたけど、ここって私の部屋より間取り広い気がする。」
「ああ、この階までは2LDKで上の階は1LDKって聞いたぞ」
「一人暮らしなのに、なんでそんなに広いところに住んでるの?」
「契約したのは親だから俺には何も言えないが、たまには泊りに来るかもとか言ってたような気がする。半年間放置されてるけどな」
家賃も高くなるし、俺一人ならこんなに広くなくてもいいって言ったんだけどな。もしかしたら、散らかって物が置ききれなくなることを前提に、この広い部屋にしたとか?そうだとしたら母さんすげぇ。
それでも、月に1回でも母さんが来てたら、ここまで散らかりはしなかったかもしれない。いや、掃除をしない俺が悪いのはわかってる。皆まで言うな。
「ふ~ん、リビングもちょっと広い気がする。でも、こんなに散らかしたら部屋が可愛そうよね」
「まぁ、片付いたら、できる限り散らかさないように善処する」
「ホントに?」
「……できる限りは」
「はぁ、まあいいわ。とりあえずどんどん片付けていきましょう」
俺は基本的に一ノ瀬に言われた通りに動くだけだが、部屋がどんどん片付いていく。散らかった服は一ノ瀬に畳まれ、いらないものはどんどん捨てていく。
一ノ瀬の手際の良さに脱帽だな。
「さてと、結構片付いたね。そろそろお昼にしましょ。ちょっと待っててね」
それだけ言うと、一ノ瀬は部屋を出て行って5分ほどで帰ってきた。でかい包みを持って。
「口に合うかわからないけど、どうぞ」
目の前には色とりどりのサンドイッチ。ハム、たまご、ポテトサラダ、カツ、レタスなど種類も多いが量も結構ある。
「うおっ、すげぇ!これ全部作ったのか?」
「うん、昨日見た感じ、絶対料理してそうになかったし、今日もキッチンが使えないのはわかってたから」
「ってかこれだけ作ったんだから結構早起きしたんじゃ?」
「そんなことないの。料理は好きだから問題ないしね。さぁ、そんなことより早く食べましょう」
そんなことあるだろうと思いつつも、今は一ノ瀬に感謝だ。
とりあえず一口……モグモグ……うまっ。何これ、売ってるのよりずっと美味い。あまりの美味しさに手が止まらず、気が付けば四人前くらいはあったサンドイッチがキレイになくなっていた。
「ごちそうさま。めっちゃ旨かった」
「良かった~でも、さすが男の子。凄い食欲ね~」
「いや、これだけ旨かったらいくらでも食える」
「ありがと。そう言ってもらえると作った甲斐があるわ」
食後に一ノ瀬がコーヒーを淹れてくれた。これも一ノ瀬が持参してくれたものだ。
飲み終わったら残りの掃除。一ノ瀬主導の元、俺の部屋は今までで一番綺麗な状態になった。
「とりあえず、こんな感じでいいかな。ね、相沢君……あれ?どうしたの?」
「……いや、こんなに綺麗になるとは……」
ビフォーアフターを携帯で撮っておけば良かったと思う。
「まだまだ細かいとこはできてないけど、最低でもこの状態は維持してね」
「……一週間くらいなら、自信ある」
「散らかしてないか毎日確認にくるからね。ちなみに、明日は細かい部分の掃除をするから」
そう言って笑顔でウインクする一ノ瀬はやっぱり可愛い。
健全な男子高校生には毒過ぎるだろ、強制的に意識させられてしまう感じだ。
一ノ瀬なら変顔とかしても可愛いのではないかと思ってしまった。見てみたいが、やってくれと言ってやってもらえるものでもないからな。
俺が勝手にドキドキしていると、キッチンのほうから「ご飯炊けた~」とか聞こえてきた。夕食はカレーだった。昨日の夜から仕込みしていたそうだ。
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