魔法使いの少年と学園の女神様

龍 翠玉

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44.女神様は現状維持を望む

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 学校の朝って季節に関係なく同じような感じがするな。
 穂香と一緒に登校して、教室に着いたら守を愛でる玲がいて、菜摘に弄られる浩介がいる。うちのクラスの定番になりつつある朝の風物詩だ。

 最近変わったことと言えば、浩介が急に身体を鍛えるとか言い出したことくらいか。大方、菜摘がらみで何かあったのだろう。あいつは生活の全てが菜摘中心に回ってるからな。
 そんなことを考えていると、俺の頭の中で注目されていた浩介がやってきた。

「おはよう、浩介。なんだ?珍しく元気ないな?」
「おっす、優希。ああ、慣れない筋トレとかしてたら身体がキツくて……」
「いきなり負荷を掛けすぎじゃないのか?あとで、良いメニューを教えるよ」
「お、マジか!頼むぜ」
「ちなみに、なんでいきなり筋トレ始めたんだ?」
「いや~、前から俺は自分でも体力ないと思ってたぜ?ただ、この間、家でねーちゃんとナツと三人で人生ゲームしてたんだけどな、俺が負けまくって、罰ゲームでねーちゃんには椅子にされたり、ナツは肩車したりしてたんだ。まぁ、それで体力ないとか情けないとか色々言われてな。まあ、その後ナツといちゃつく時には力尽きててな……いつも通りってわけだ」

 なるほど、浩介の姉――明美さんだったか。俺は一度も会ったことないが、なかなか強烈な感じらしいな。ドMの浩介に対してドSの菜摘と明美さんか……まぁ、頑張ってくれ、浩介。屍くらいは拾ってやろう。

「そうか……それなら、最初は走ってスタミナつけた方がいいぞ。お前には圧倒的にスタミナが足りない」
「え~っ、そうなのか……走るのはあんまり好きじゃないんだよなぁ……」
「ま、菜摘のためだと思って頑張れ。いい身体になって菜摘に見せてやるんだろ?」
「おお、そうだな。俺はやるぜ!今日、ランニング用のスニーカー買いに行ってくる」

 そんなことを言いながら自分の席に行ってしまったが……単純な奴だ。

「単純のお手本のような感じの人ですね。でも、やる気を出させてくれてありがとうございます」

 どこから聞いていたのかわからないが、いつの間にか近くに菜摘が来ていたようだ。

「まあ、そう言うなよ。全部お前のためなんだし」
「そうですね、頑張ってくれたら色々ご褒美あげますが、途中で諦めたら……」

 菜摘が悪い顔になっている……浩介、絶対諦めるなよ。たまにはしっかりご褒美貰っておけ。
 いや、もしかしたら、浩介にとってはどちらもご褒美だったりするかもな。

「俺も手伝ってやるから、それなりに結果は出るまでさせるぞ?」
「ふふふ……私はどちらでもいいのですよ。どっちに転んでも私にとってはおいしいのです」
「優希君、おはよう」
「お。守かおはよう」
「あのさ、浩介君が優希君に教えてもらって身体を鍛えるとかって本当なの?」
「ああ、本当だぞ。あいつの心が折れるまでは続ける予定だ」

 なんだ?まさか守も鍛えるとか言わないだろうな。

「そうなんだ。僕も少し鍛えようかなって思うんだけど……」
「おいおい、お前まで、どうしたんだ?」
「僕って全然男らしくないからさ……このままじゃダメかなって思って」

 守は今のままでいいと思うんだが……ムキムキの守とか需要あるのか?
 菜摘と目が合うと菜摘は顔を横に振った。

「いえ、それはダメです。もし、どうしても守さんが身体鍛えるなら、そこそこにしておいてください。間違っても優希さんみたいになってはいけません。玲さんが悲しみますよ?」
「え?そうかな……」
「菜摘の言い方にはちょっと引っかかる部分があるが、俺も概ね同じ意見だな」
「そうね、私もそう思うな~」

 穂香も来た。周りを見れば、話を聞いていたクラスの女子はみんな頷いている。

「守さんがムキムキになるのは圧倒的多数で否決されました。みんな、守さんは今のままがいいと思ってるんですよ」 
「まあ、そういう訳だ。守、走り込み程度にしておけ」
「そっかぁ、みんながそう言うなら……玲さんにも反対されたしなぁ……」

 そりゃあ、玲は反対するに決まってるだろ。
 それにしても、浩介程ではないがチョロいやつだ。
 女子の思惑としては守には可愛らしいままでいてもらって、また女装させたいとかいうのがあるんだろう。周りに流されやすい性格だから、次も断り切れずにやってしまうんだろうな。
 守の女装計画は以前、玲がニヤニヤしながらクラスの女子達と話してたからな。
 この前のお姫様で味をしめたのだろうが、守にとっては災難でしかない。
 俺達男子生徒は女子生徒の意見を尊重するから、守には逃げ場は無いのは確定している。守自身はもうあんなことはないと思っているみたいだが、土壇場でお願いされて押し切られるのは目に見えているしな。まあ、そういう運命だと思って諦めてくれ。

「ねぇ、ユウ君。男子の間でトレーニングが流行ってるの?」

 教室内が急にそんな話で盛り上がってたから気になったのか、穂香が聞いてきた。

「いや、そんなことはないだろ。一部の男子だけだ。浩介とか守とかな……」
「へぇ~そうなんだね」
「浩介なんて今日、靴買いに行って走るとか言ってたからな。走りこんで足腰鍛えて、下半身の強化からとは思うが、どこまでやるのか見物だな」
「ふ~ん。良かったね、なっちゃん……って、あれ、どうしたの?」
「え?あ、いえ、ちょっと考え事を……下半身強化……いい言葉ですね……ふふっ、これで浩介さんも……」

 菜摘が何か一人でブツブツ言っている。下半身強化がどうとか聞こえたが……あいつが言うと別の事にしか聞こえないが、多分、間違いないだろう。
 一応、確認しておくか……。

「あ~、菜摘。俺の言っている下半身強化と、お前の思っている下半身強化について認識に齟齬があると思うがどうだ?」
「む~、そんな事……ありそうですね……違うんですか?」
「もちろん違うが……結果的にそっちも強化されるだろうけどな……」
「なるほど……それなら問題ありません。浩介さんに頑張ってもらいます」

 それだけ言うと、菜摘は浩介の方へ笑顔で向かって行った。
 菜摘もなんだかんだ言ってわかりやすい奴だな。しかし、朝の教室でする話ではないだろう。周りの生徒も興味津々だ。
 そこへ、しばらく黙っていた穂香が少し顔を赤くしながら耳元で囁いてきた。

「ユウ君は……それ以上強化しなくていいからね……」  

 この日から俺のクラスではトレーニングが流行りだすこととなったが、決して俺のせいではない。
 
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