少女漫画と君と巡る四季

白川ちさと

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第三十二話

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 清水寺を満喫した後は、庭が見える風情ある店舗で京料理のランチをいただく。その後はお寺を巡りながら、カフェで抹茶スイーツを食べた。



 真咲が行きたいと言っていた修学旅行定番の金閣寺にも行く。外国人の姿も多く、爽次郎は写真を撮ってくれと頼まれた。



 かなり充実した一日が一瞬で過ぎさったような心地だ。



 一応取材と言う体裁を取っているものの真咲は子供のようにはしゃぎ、それにつられて爽次郎も仕事のことは忘れて京都観光を楽しんでいた。



 日も完全に沈んだ時間に、予約していた旅館にたどり着く。食事もとったので、後は風呂に入って寝るだけだ。
しかし、問題はチェックインの時点で起きた。



「え! ひと部屋しか予約されていない?!」



「はい。ご予約はお二人様ですが、ひと部屋になっております」



 受付のコンシェルジュの女性が申し訳なさそうにしているが、恐らくこれは爽次郎のミスだ。慌ただしく仕事をしている合間に予約を取ったので、よく確認できていなかったのだろう。



「いまから、もう一部屋取ることは出来ますか」



 ぐっと身を乗り出して爽次郎は尋ねる。



「申し訳ありません。今夜はどの部屋も満室でございます」



 スマートフォンを取り出して他の宿の部屋がないか探してみるが、どの宿も当日では空いていることなどない。



「部屋はあるんでしょ。わたしもう、へとへとだから休みたい」



 隣にいた真咲が生気のない声で言う。



 かなりの距離を歩いたから真咲だけでなく爽次郎も疲れ切っている。



「すみません。その予約していた部屋をお願いします」



 爽次郎はとりあえず部屋に行って、それから考えることにした。



「はい。こちらがお部屋の鍵になります」



 コンシェルジュにカードの鍵を渡されて、二人は部屋に向かう。



 部屋に着くと、真咲が襖を開けた。



「中々、いい部屋じゃない」



 九畳ほどの広さの和室だ。備え付けられているのは冷蔵庫やテレビぐらいで、スタンダードな部屋だが、一泊するだけなら十分だといえるだろう。



「わたし、とりあえずお風呂に行ってくる」



「じゃあ、僕も」



 備え付けで置かれている浴衣を手に二人は大浴場に向かう。男女ののれんの前で別れて、脱衣所に入ると人がぽつぽつといるだけのようだった。



 爽次郎は服を脱いで大浴場に入る。湯気の満ちるそこは広く、ジャグジーも付いていた。きっと一日の疲れが取れるだろう。



 爽次郎は身体を洗いながら考える。



 このあと、自分は部屋に一度戻ったらロビーで過ごすことにしよう。



 一晩ぐらいならば余裕だ。せっかくだから旅行中に真咲と今後どんな作品を作っていきたいか話し合いたいが、この状態では難しいだろう。いくらなんでも、付き合ってもいないのに男女が一つの部屋に一緒にいることは出来ない。



 よしと、段取りを決めて爽次郎は長めに湯船につかった。




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