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第四章 学園祭編
第二話 仮装クイズ
しおりを挟む十一月最初の日曜日。従慈学園の生徒は全員、九時に体育館に集合した。学園祭の開会式を行ってから、それぞれの出店場所へと向かうのだ。
開会式は学園長のあいさつから始まり、簡単な注意事項の確認、合唱部の歌唱と滞りなく進んで行く。
「開会式長い。早く食堂に行きたい」
「たぶん、もうすぐ終わるよ」
倉野さんが暇そうに足首をぐりぐりしているところで、実行委員の人が壇上に出て来た。
「それでは、最後に慈従学園の生徒に特別な映像が届いています」
「特別な映像?」
「去年はそんなのあった?」
体育館内がざわつく。どうやら今年だけの演出のようだ。
プロジェクターが引き出されて、照明が消えていく。
パッと出て来たのは、『慈従学園学園祭、生徒全員参加特別企画!』と大きな文字だ。愉快な音楽も聞こえて来た。
「特別企画? 聞いてないよ?」
「なになに? 何するの?」
楽しそうな企画だと分かると生徒たちは困惑というより、高揚してきている。
画面が切り替わると、さらにワッと盛り上がった。
「チャーリンだ!」
ピンク色の髪の男性がパーティの面白メガネをつけて出て来た。手にしていたクラッカーをパンッと鳴らす。
「学園祭開催おめでとー!」
倉野さんはピンと来なかったみたいで、首をひねる。
「チャーリン? だれ?」
「人気ユーチューバーだよ! チャンネル登録が五百万人以上いる!」
倉野さんは知らないけれど、明るいキャラクターもあってか、チャンネルはとても人気がある。大食いチャレンジに、ゲーム実況、特に十代からの悩み相談は誠実に答えてくれていて人気があった。
「向井さんの言っていた有名人が来るって、チャーリンのことだったんだ!」
嬉しいサプライズだ。みんな、興奮気味に騒いでいる。
「……とても人気があることは分かった」
ただ、知らない倉野さんは不満そう。チャーリンはそういう子もいるだろうと思ってか、面白メガネを外して自己紹介を始める。
「僕はユーチューバーのチャーリン。ちょっとした有名人だね。実は前理事長にある使命を託されて、学園祭にやってきました。それが、前理事長企画の特別企画でーす! みんな、スマホを見て! メールが来ているはずだよ!」
僕らは慌てて、スマホを取り出す。確かにいつの間にか学園からメールが届いていた。慈従学園特別企画と書かれ、URLが添付してある。
「怪しいメールじゃないからね。開いてみてね!」
ポチッとURLをタップすると、特設サイトが出て来た。
タイトルは特別企画ではない。
「四人の仮装を見破れ! 仮装クイズ?」
下にスクロールしていくタイプのサイトだ。指で操作すると、チャーリンの顔写真が出てくる。仮装はどれ?という、言葉のあとに折りたたんでいる場所を展開させた。
「ゾンビに、消防士、チャイニーズマフィアに……」
十個ほど候補があって、選択するように空欄の丸がある。
「つまり、この中から正解を選べってことか」
そう水上くんのつぶやきが聞こえたと同時に、キャーッと女生徒の黄色い歓声が聞こえた。
「あっ! 若狭くん、下! 下!」
僕も特設サイトの続きを見る。
「女優の宮島晴真にアイドルの西尾涼、それに歌い手のメロー?!」
どれもチャーリンと同じように、顔写真とプロフィール、仮装の選択肢がある。
「これで分かったかな」
前に向き直ると、チャーリンの背後に三枚の顔写真が映し出されていた。
「僕たちは今日の学園祭に参加する。それぞれ、仮装しているから何の仮装をしているでしょーかっていう、単純なゲームだよ」
確かにゲームは単純だ。だけど、単純には解けないだろう。
水上くんがこっそり耳打ちしてくる。
「歌い手のメローって顔出ししてないけど、どうやって当てるんだろう。勘かな?」
三人は写真だけど、歌い手のメローは顔出しをしていないので、青い髪をした女の子のイラストだった。
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