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ノーム編
第五十二話 城の中を探せ!
しおりを挟む無事にステージから抜け出したとはいえ、わたしたちはそう遠くには行けなかった。
「ハァハァ」
膝に手をついて、なんとか荒れた息を整える。
「この後、どうしよう」
ノーム王が襲われたと町は警戒状態に入っていた。町の人が探せと叫ぶ声が聞こえる。イオがあごに手をやり、道の先に目をやる。その先は城に続く道だ。
「……やはり、サラマンダーの助けが必要だ」
あのお付きの人を斬ったときに、手ごたえが全くなかった。ノーム王を取り押さえたとして、同じようにならないとも限らない。もっと情報が欲しい。
「サラマンダー。たぶん、広場にはいなかったよね。わたしの声に反応するはずだもの」
その場にいればサラマンダーのことだ、遠慮せずわたしに話しかけてくるだろう。
「あの広場にいなければ、城にいるだろう」
「……行くしかないね」
わたしも城の方に目を向ける。城の中はどうなっているか分からない。精霊たちが山のように襲ってくるかもしれないけれど、行かなければ状況は好転しないだろう。
隠れていたカカとエルメラも出てくる。
「城の中には妖精の樹もあるはずだ!」
「行こう!」
妖精たちは城に突入する気満々だ。わたしたちは城への道を走り出した。
しつこいほど華美な道を進むと、城の門が現れる。その前には以前と同じように、赤と青の宝石で出来た精霊の騎士が門を守っていた。
「俺は左を、ユメノは右を頼む」
「うん」
わたしには花の精霊ミラーがいるだけ。それでも、どうにか宝石の騎士を突破しないと城には入れない。
「ミラー! お願い、力を貸して」
「きゅるる!」
ミラーは頷いて勇ましく鳴き、白い花びらを身体に大量にまとわせた。わたしとミラーは宝石の騎士と対峙する。宝石の騎士もわたしたちを見て、尖らせた右手を構えた。
ミラーの場合、火力というよりも、きっと花びらのコントロールが重要になるだろう。イリアさんの樹を燃やしたときのイメージで言葉を口にする。
もちろん、戦う姫君ユーリの声だ。
「ミラー。美しいこの花々を共に守りましょう。行くぞ!」
「きゅる!」
ミラーは花びらを宝石の騎士へと向けた。騎士は鋭い右手の先端をこちらに向けて振るう。そんな短い攻撃では、届かない。そう余裕ぶったのは一瞬だった。
「わっ!」
尖った宝石の右手が、ぎゅんっとわたしの目の前にまで伸びて来たのだ。慌てて横に逃げて地面に転がった。宝石の騎士は一度、右手を元の長さに戻す。でも、また構えてわたしに標準をつけていた。
最初は運よくかわせたけれど、何度もかわせるものじゃない。
「ミラー! 動きを封じて!」
わたしの声に答えて、ミラーは大量の花びらを発生させた。ペタペタと宝石の騎士に張り付いていく。それでも、騎士は私に尖った右手を伸ばしてきた。
「ッ!」
地面に座り込んでいるわたしは素早く動けない。先端が迫ってくる。
「もっと絢爛に舞え、ミラー!」
「きゅるるるるッ!」
白い花びらが一枚、わたしの鼻先に落ちた。宝石の騎士はびっしりと、白い花びらで身体を固められていく。わたしの顔に届くすれすれのところで先端も伸びず、ピタリと動きを止めた。ホッと息をついて、立ち上がる。
「ありがとう、ミラー」
「きゅる!」
ミラーは誇らしげに胸を張る。剣を担いだイオがそばに来た。
「無事に門番は片付けられたな」
後ろを見ると、石の輪がはめられた宝石の騎士が地面に転がっている。流石戦い慣れているイオだ。
「よし。城に入ろう」
わたしたちは、城への鉄の門を開ける。
城の門を入って、ドアまでは大きな庭が広がっていた。小さな精霊たちが怯えたようにこちらを見ている。襲ってくるわけでもないから放っておくけれど、やっぱり城は精霊の巣窟なのだろう。
「妖精の樹。もしかしたら庭にあるかな?」
わたしの問いに、カカが城を見上げながら答える。
「いいや。上から気配がする。きっと城の中だ」
そう言うからには間違いないだろう。でも、樹なのに城の中からというのは、おかしな話だ。地面から生えていないのだろうか。
わたしたちは城の大きな正面扉の前に来た。重い扉をイオと二人で開ける。中からひんやりとした空気が漏れてきた。
「わ、わぁ……」
感嘆の声というより、げっそりとした声が出てしまった。城の外壁はゴツゴツとした土のや石で出来ているのに、中に入ると一変。エルメラもどこか呆れたような声を出す。
「キラキラだね……」
入ってすぐはロビーだ。奥には大階段がある。
それはいいのだけれど、やっぱり花が大量に生えていた。飾られているわけではなくて、壁や床から生えている。天井には宝石のシャンデリアがいくつもぶら下がっていた。床は大理石で、大階段は水晶で出来ているように見えた。
つまり、どこを見ても目がシバシバしちゃうくらい華美だった。
「サラマンダー? どこかいる?」
声が聞こえたら、返事をしてくれるかもしれない。そう思って声が反響するロビーを歩いていく。
「サラマンダー、返事して」
「あら。あの精霊石、本当にサラマンダーが宿っているの? 何も答えなかったけれど、ムウの言うことは本当なのね」
「だれ!?」
声がした大階段の上の方を振り向いた。そこにはノーム王の側近として、白い布を被っていた人物が立っている。側近はくつくつと笑う。
「よくここまで来たわね。でも、ここに来たってことは、あなたたちは既に籠の中の虫よ」
そう見下すように言って、側近は被っていた布を外す。
「え……」「なんだと」
その姿を見て、わたしたちは言葉を失った。
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