声優召喚!~異世界に召喚された声優は最強の精霊使いです~

白川ちさと

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ノーム編

第五十八話 追ってくるノーム

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 空を飛んでいるサラマンダーは器用に首を曲げて、イオを自分の背中に乗せた。わたしはミラーに指示して、落ちないように押さえる。



「イオ! 目を覚まして!」

「ユメノ、イオはかなり花の精霊の奴にやられたんだ」



 イオを揺さぶると、カカがしょんぼりして言う。たしかに痛めつけられたのか、体中が傷だらけだ。



「オトヒメ。イオに水を!」



 精霊石から水の精霊オトヒメが出てきた。胴の長い魚のオトヒメが回転するとバシャッと音を立てて、イオの上から水が落ちてくる。



「う……」



 イオのまぶたが微かに開いた。



「イオ!」

「ここは……?」

「サラマンダーの背の上だよ! ノームの城から脱出したの」



 エルメラが状況を説明してくれる。けれど、イオは花の精霊の女王と戦ったところから意識がないだろうから、何が何だか分からないだろう。



「城から? ……なんだ、あれは」



 イオが城の方を振り返ると、その表情を険しくさせた。異変を感じたわたしも、後ろを振り返る。思わず声を上擦らせた。



「なッ! なにあれ!?」



 そこには目を疑う光景が広がっていた。




  ◇◇◇




 そのころ、家で縛られていたカッツェは、町の住民にようやく助け出されていた。



「おいッ! ムウ! お前ら何を企んでいやがったんだ」



 その場にはムウもいて、カッツェは飛び掛かろうとする。その身体を一緒に来ていた男たちが止めた。



「ムウさんはノーム王をお助けしたのです!」

「ノーム王を襲う悪漢たちを退けたのですから、我々の味方です!」



 そう言われれば、カッツェもそれ以上責めることは出来ない。手を引っ込めて、なるべく冷静を装う。



「悪漢とはイオとユメノのことか」



 ムウはこくりと頷く。



「はい。二人は元々、ノーム王にあだなす為にこの町にやって来たのです」

「……それは、お前も同じだったのでは?」

「わたしは偽物ならば廃せねばと思っていました。ですが、本物の土の精霊の王ノーム様だと分かりましたので」



 本人がそう言うならばそうなのだろう。カッツェも元々はノームを倒すためにやって来た精霊使いだった。ただ、その御業に魅せられ、この町を守るために外からやってくる者たちを見張る役を買って出たのだ。



「あの二人は……」



 ムウに質問を重ねようとしたそのときだ。周りの男たちがざわめき出す。



「地面が」「揺れている?」



 最初は細かな振動だった。しかし次の瞬間、家の床がくの字に折れるかのように割れる。



「なんだ!?」

「地が荒れているのです!」



 ムウが言うことに、それは分かるが何故と思うカッツェ。これまで、地震さえ起きたことはない。なにせここは土の精霊の王ノームのおひざ元だ。どんな危険も無縁のはず。



「家の中にいては危険です。外に出ましょう」



 一緒に来ていた男たちとカッツェとムウは、歪んだドアを何とか通って家の外に出る。しかし、そこには信じられない光景が広がっていた。



「ノーマレッジが……」



 カッツェの家のように割れている家もあれば、土に沈み込んでいる家もある。土が絶えず波打ち変化していた。自分たちも、とても立ってはいられない。

 ムウが祈りを吐き出すように言う。



「ああ、ノーム王よ。何を荒ぶっているのですか」



 確かにこれだけの大地の変動を見ると、ノーム王が関わっていることは間違いない。よく見ると、町にいた土の精霊や花の精霊たちは一斉に城の方へと向かっている。



「な……」



 城の方を見て、言葉を失った。ムウやそばにいた者たちも同じく口を開けて見上げている。

 無骨ではあるが、いつも美しい城がそこにある。その城がグネグネと蠢いていた。細く長く空へと伸びたり、縮んだりしている。しかも何か、聞こえてきた。



『たり……、た……、ない。たり、ない』

「足りない?」



 そう読み取った瞬間だ。城だったものの頂上がぐにゃりと曲がって、町の方へと落ちてくる。物凄い振動と地響きがした。



「ぎゃあああ!」



 町の広場の方だ。いきなりのことに、当然町の人々は混乱しているだろう。



「レンジ!」



 カッツェは土の精霊のカブトムシを呼び出して、駆け出していた。たどり着いた町の広場は一層酷い惨状だった。周りの家々は粉々に砕けている。

 広場は大きく陥没し、中央に城だったものの頂上が突き刺さっていた。ごくんごくんと土を飲み物のように飲み込んでいるようにも見える。



「きゃあああ!」



 石畳だった地面は砂地になり蟻地獄になっていた。そこに吸い込まれていく人影が一つ。



「ステラ!」



 町の踊り子ステラだ。きらびやかな衣装のまま、蟻地獄に引きずり込まれていた。



「誰か、助けて……」

「レンジ! 行け!」



 ステラの元にレンジが飛んだ。なんとか六本の脚でステラを掴み、こちらへ連れてくる。



「た、助かりました。ありがとうございます」



 砂まみれのステラは丁寧に頭を下げた。しかし、今はそれどころじゃない。



「他に巻き込まれたものはいないか!」



 カッツェは周りに呼び掛ける。すると、ムウから返事があった。



「こちらに! 潰れた家の下に人がいます!」

「今行く! ステラ、君は早く町の外に」

「で、でも……」



 確かに一人では心もとないだろう。



「誰か」



 ステラと町の外へ。そう言おうとしたときだ。地面に突き刺さっていた城だったものの頂上が、起き上がる。バラバラと土や岩の破片が落ちてきた。

 カッツェは身をていしてステラをかばう。



「レンジ、皆を守るんだ!」



 レンジはその黄色く光る角を使い、高速で落ちてくる大きな岩を弾いていく。



「すごい……」



 ステラからそんな声が漏れた。振ってくる岩が無くなった頃だ。巨大な影が町を覆う。



「なんだ?」



 カッツェは空を見上げた。そして、口をあんぐりと開ける。



『ふ、ははははは! 逃がさぬぞ、サラマンダー! その者をわたしの物にするのだ!』



 そこには元の城よりも大きなノーム王が仁王立ちしていた。




 
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