声優召喚!~異世界に召喚された声優は最強の精霊使いです~

白川ちさと

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ノーム編

第五十九話 追ってくるノームその2

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 ビュン! 

 すぐ横で風を切る音を立てて、大きな岩が飛んでいった。



「ちょ、ちょっと! なにするのよ!」



 とても届かないだろう文句を言う。そこには城だったノームの巨像が立っている。



『待つのだ、サラマンダー! その者を渡すがよい』



 ノームの巨像は、まるで本当に生きているかのように話す。



「渡すものか、イオは我が友ユメノの仲間であるぞ!」



 サラマンダーはノームの巨像の手から飛んでくる岩を避けるのに必死で、背を向けて逃げることは出来ない。わたしたちも縦横無尽に飛ぶサラマンダーの背中にしがみつくことで精一杯だ。



「見ろ! あのノームの胸の辺り!」



 カカが指をさす。ノームの巨像の胸は、まるで胸毛が生えているようにもじゃもじゃとしている。



「あれ! 妖精の樹!?」



 黒いもじゃもじゃして見えたのは、妖精の樹に憑りついている黒い花だ。妖精の樹はノームの巨像に取り込まれずに、胸から生えている。きっと力が強いせいだろう。

 しかし、その黒い花のオーラがノームの巨像自体を覆っているようにも見えた。



「ねぇ、もしかしたらあの黒い花をどうにかしたら、ノームも正気に戻るんじゃない?」



 サラマンダーのときも、同じように黒いオーラに覆われていた。いくらノームが自分の美しさに酔っているからと言って、町を破壊するほど取り乱すだろうか。



「そもそも、ノームは昔こんなんじゃなかったんだよね」

「うむ。もっと穏やかなじじぃであった」

「何かきっかけがあったのかも。分からないけれど、あの花が関係しているんじゃないかな」



 弱っているイオも頷く。



「妖精の樹を助けるためにもやってみる価値はあるかもしれない」

「どの道、このままでは逃げることは叶わぬ。燃やしてしまうぞ!」



 サラマンダーは口の中にブレスの炎を溜め始めた。



『このわたしを焼こうと言うのか、サラマンダー! そうはさせぬ! 花の女王よ!』



 ノームの巨像はサラマンダーに対して腕を伸ばしてくる。

 右手の先に、大輪のバラが一瞬で咲いた。その中央には花の精霊の女王が笑みを浮かべている。彼女もどこか黒いもやがかかって見えた。



「ふふふ、逃がさないわよ。みんな、捕えて!」



 花の精霊の女王がそう言うと、ノームの巨像の腕から大量の花の精霊が湧き出てくる。花びらやツタ、茎をのばして、サラマンダーに襲い掛かって来た。



「サラマンダーのブレスを使う訳にはいかない! ここはわたしが! ホムラ!」

「きゅる!」



 ホムラが前に出る。



「敵がいくら多かろうとも、一騎当千の力見せてみろ!」

「きゅるるるる!」



 ホムラは白い炎をまとい、一気に花の精霊たちに向けて解き放った。精霊たちはあっという間に焼けこげ、地面に落ちていく。



「きゃああ! お前たち!」

「ふんだ! 炎の精霊使いのわたしに、花の精霊が勝負を仕掛けるなんて相性が悪過ぎよ」

「きゅる!」



 わたしとホムラは一緒に胸を張った。



「きいぃぃぃ!」



 花の精霊の女王は花びらのハンカチを噛み締めた。



『ならば、宝石の王よ!』



 今度はノームの巨像は左手を差し出してくる。

 同じように手のひらから宝石の精霊の王が生えて来た。



「ノーム王の最上たる喜びのため、その者を渡せ」



 周りに大量の宝石の精霊の騎士たちが出てくる。

 さすがにホムラに宝石を溶かせるほどの炎は出ない。相性が悪いのはこっちだ。



「俺に任せろ。フリント!」



 イオがわたしを押しのけて前に出た。手のひらに持っている精霊石から土の精霊のキツネが出てくる。



「壁を作れ」



 フリントがひと鳴きして、わたしたちの前に壁を作ると、次々に突っ込んでくる宝石の精霊たちが激突した。



「そのまま、つるぎで牽制を!」



 空にイオの声が良く通る。壁が溶けて剣がいくつも現れた。一斉に宝石の精霊たちに向かっていく。

 キンキンと金属がぶつかる音がした。剣は彼らの隙をついて、次々と宝石の精霊たちを地面に落としていく。いつも派手にイオ自身が剣で暴れているから分からなかったけれど、すごく繊細なコントロール力だ。

 宝石の精霊の王の攻撃を防いでいると、サラマンダーが振り返った。



「よくやったぞ、二人とも。待たせたな!」



 サラマンダーが宝石の精霊の王から離れて、妖精の樹、ノームの巨像の胸元へと飛んでいく。



「その花、燃やし尽くしてやるわ!」



 サラマンダーは青い炎のブレスを大きく吐いた。



「やった!」



 準備して溜めた炎だ。きっと黒い花だけを焼くように調整されている。

 だけど――



『フハハハハハ! その程度か!』



 ノームの高笑いが響く。



「な、なに!?」



 サラマンダーの炎が消えると、妖精の樹自体も無くなっていた。いや、無くなったわけじゃない。いつの間にか黒い板に覆われて、隠されてしまったんだ。



『喜べ! わたしの麗しい鎧姿を拝めるのだからな!』



 黒い板の正体は鎧だった。ノームの巨像は黒い鎧をまとっている。顔はむき出しだけれど、妖精の樹は隠されてしまった。しかも、ノームの巨像はポーズを決めるのに夢中だ。

 身を乗り出して、サラマンダーに尋ねた。



「サラマンダー! あの鎧も焼けるのよね!」



 しかし、不敵に答えるのはノームだ。



『ふっ。この鎧は何者にも切れぬ鉱石で出来ている。もちろんサラマンダーの炎などで焼けるものではない』

「そんな!」



 そういえばノームは何でも斬れる剣が作れるとサラマンダーは言っていた。その逆の斬れない鎧も作れても全くおかしくない。ふと、サラマンダーは冷静に答える。



「焼けないことはない」

「え! 本当、サラマンダー?!」



 さすがは火の精霊の王だと思った。ノームと一緒で、サラマンダーの炎で焼けないものはない。



「ただ。その炎を吐いたときは、鎧だけでなく妖精の樹まで焼いてしまうであろう」

「そ、そんな……」



 妖精の樹を助けに来たのに、その妖精の樹を燃やさないとノームを倒せないなんて。どうすればいいの!



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