声優召喚!~異世界に召喚された声優は最強の精霊使いです~

白川ちさと

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ウンディーネ編

第百三話 メジロの実力

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 メジロが杖を掲げて、精霊たちをけしかける。



「行け! エレメンタルマスターたちから、最大限の攻撃を引き出すのだ!」



 鹿の精霊が頭をブンと振ると、床から電信柱ぐらいの太さのある氷柱が生えて来た。グヲオオオ!と吠えた巨大なシロクマ。氷柱を折り、抱えてぶんぶんと回す。



「ひぃッ!」



 すぐ近くにいたわたしは思わず頭を抱える。



「ユメノ!」



 わたしはルーシャちゃんに抱えられて、天井近くまで飛んだ。間一髪、わたしがいた場所を太い氷柱が通過する。イオにも襲い掛かるけれど、剣で氷柱を真っ二つに斬っていた。



「さすが、イオ!」

「感心している場合じゃありませんわ。イオも防衛のための攻撃は出来ても、ウンディーネを傷つけてしまうかもしれないですもの。それこそ、イオの剣が一番ウンディーネを斬ってしまう可能性が高いですわ。攻め入ることは出来ませんわ。だから、ユメノとエルメラも出来ることをするのですわ」



 ルーシャちゃんが鹿の精霊が放る雪玉を高速で避けながらたしなめる。

 そうだ。イオだって、ずっと精霊たちの相手をしていたら体力の限界が来る。わたしとエルメラは頷き合う。



「「ウンディーネ!」」



 二人分の声が神殿中に響き渡った。



「お願い! 氷を溶かして!」

「わたしたちがあなたを壊してしまう前に!」



 わたしたちの通常の攻撃でウンディーネが壊れるとは思わない。

 だけど、イオの何でも斬れる剣なら斬れてしまうだろうし、ルーシャちゃんだって追い詰められたらシルフの力を借りるしかないんだ。サラマンダーの炎もウンディーネを溶かすことが出来るかもしれない切り札だけど、加減を見誤ると傷つけてしまうかもしれない。

 だから、ウンディーネ自身で氷を溶かしてもらうしかない。メジロの攻撃ではなくウンディーネ本人が自ら凍り付いたらなら、自分で氷も溶かせるはずだ。

 問題は凍り付いたウンディーネに、わたしたちの声が届くか、どうかだ。

 だけど、メジロもわたしたちを黙ってみているなんてことはない。



「まさか! ウンディーネは拙者の手で完全に凍らせたのだ! 声など届くはずがない! ツルオリ! あの、小うるさいハエを落とすのだ!」



 ウォオン!と、ツルオリが一声鳴く。すると、先の尖った氷柱がたてがみの周りにたくさん出来た。もう一度鳴くと、氷柱が私たちに向けて猛スピードで飛んでくる。



「ミルフィーユ!」



 ルーシャちゃんの羽が羽ばたき、風の盾がわたしたちの前に展開された。ウンディーネの影の水すら跳ねのけた風の盾だ。氷柱は次々に粉砕される。



「ツルオリ! 我らの痛みをこの者たちに思い知らせるのだ!」



 メジロが叫ぶ。すると、ツルオリのたてがみや身体つきがもう一回り大きくなった。



「声でパワーアップしているよ!」



 エルメラが言う様に、見た目が大きくなっただけじゃないだろう。それほど、メジロの声には力があった。

 ツルオリが吠えると、再び尖った氷柱が生み出される。さっきよりも鋭利に見えるのは気のせいじゃないと思う。それが風の盾に目がけて飛んで来た。

 ガガガガッ!

 風の盾に氷柱が衝突する音がする。

 すると先端が盾を割って、わたしのすぐ目の前に出てきた。



「危ない!!」



 ルーシャちゃんが叫んで羽を羽ばたかせる。



「クッ!」

「ルーシャちゃん!」



 風の盾を貫通して出来ていた氷柱がルーシャちゃんの羽を傷つけた。フラフラと床に落下していく。なんとか、わたしもルーシャちゃんも両足で着地したけれど、すぐには飛べなさそうだ。

 メジロが勝ち誇ったように叫ぶ。



「ジュレ族の長に代々引き継がれし、ツルオリの力を見たか! エレメンタルマスターたちにも引けは取らない!」

「引き継がれて? 精霊が?」



 精霊は精霊使いが直接戦って使役させるものだ。引き継がれるなんて話は初めてだ。



「ジュレ族に仕える精霊たちは、古来より従順な者たちばかりである。先代の精霊使いが次はこの者に仕えろと意志を持って伝えればそれに従う。ここにいる精霊たちはそうやって引き継がれてきた精霊たちばかりである」

「この精霊たちは皆、前の精霊使いからメジロに引き継がれたというのか」



 イオが剣を振るうのを止めずに問う。



「否!」

「違う? だって、いま自分でそう……」

「この神殿の壁や床には、精霊石が埋め込まれている。ツルオリ以外の精霊は、引き継がれることなく、精霊使いの、拙者の村の家族の……」



 メジロの声が震えている。杖を持つ手も震えていた。



「殺された村の精霊使いたちの精霊である。彼らは主なき精霊たち。しかし、拙者の想いに応えたのである! さあ! 今こそ本懐を遂げるときである! 者ども、行くぞ!」



 声に答えて、ツルオリ以外の精霊たちも大きくなる。エルメラが耳元でつぶやく。



「……まるでユメノみたい」



 ユーリの声で鼓舞するわたしを思い浮かべたのだろう。確かにメジロの声は軍隊を率いる武将そのものだ。



「今だ! 取り囲め!」



 メジロの命令に迅速に対応して、精霊たちがわたしたちの周りを取り囲む。



「ウンディーネ! お願い……!」

「臆してはならぬ! 拙者たちの目的はより強い反撃を引き出すことである!」



 わたしがウンディーネに声を掛けようとしても、メジロの声がかぶさって来た。これでは、上手くウンディーネに声を届けることは出来ないだろう。



「何とかメジロを取り押さえるんだ!」

「ええ、それしかありませんわ」



 イオの言うことにルーシャちゃんも頷く。だけど、メジロを取り押さえることは難しい。強力な精霊たちが絶えず襲ってくるし、メジロを守るツルオリも強く、加減を誤ればウンディーネを壊してしまう。



「あ! ノームが檻を作れないかな」

「ノーム出来るか」

「やってみましょう」



 イオの精霊石から黄色い光が出て、青年の姿のノームが出てきた。



「さあ! 美しき檻に捕まるのです!」



 出てきたのは土で出来た大きな手だ。それが両側からメジロを掴もうとする。



「なんの! ツルオリ!」



 メジロは避けながら、ツルオリに命令して土の手を凍らせた。完全には凍らないけれど、メジロが抜け出すまでの時間稼ぎにはなる。



「逃げても無駄です!」



 ノームはさらに土の手を生み出して、メジロを抑え込もうとした。

 だけど――。

 ガンッ!



「あ!」

「ウンディーネが!」



 ノームが操る土の手が凍ったウンディーネに当たってしまった。少し揺れただけで、ヒビなどは入っていないようには見える。



「ちょっと! ウンディーネを復活させるために必死に戦っているのですから、ウンディーネを壊すことだけはダメですわ!」



 ルーシャちゃんが斧で精霊を薙ぎ払いながら怒鳴る。しゅんと肩を落としてしまうノーム。



「うう。わたしは後から飾り付けるのは得意なのですが……」



 つまりウンディーネを避けて、土を操るような繊細な作業は苦手ってことだ。



「分かった。また助けが必要なときは呼ぶ」

「面目ありません」



 しょげたままノームは精霊石に戻って行った。



「良いぞ! このまま、エレメンタルマスターたちに精霊の王たちを呼び出すよう追い込むのだ!」



 メジロの号令に精霊たちはさらに勢いを増す。鹿が雪の玉を絶えず投げて来て弾幕を張り、白い鳥が上から氷の粒手を振らせた。



「いたたたた! 痛い!」



 雪玉や氷の粒以外になにか大きなものが降って来て、わたしの顔面に張り付いた。



「な、何も見えない! これも攻撃!?」

「違うよ、ユメノ! 水の龍だよ!」

「え?」



 エルメラの言葉に、わたしはそれを引きはがしてみる。すると、眼を釣り上げている小さな龍だった。



「どこにいたの?!」

「それはこっちのセリフだ! ウンディーネさまを溶かしてくれると言うたではないか!」



 わたしたちが穴の下に落ちて行ったのを見ていたはずなのに、勝手なことを言うものだ。



「早くサラマンダーを呼んで、ウンディーネさまの氷を溶かすのだ!」



 そういえば、水の龍にはサラマンダーの炎でウンディーネが溶けるかもと言っていた。



「だけど、ウンディーネの前にはメジロがいるの。サラマンダーが炎を吐いたらメジロを巻きこんじゃう!」



 サラマンダーの火加減も心配だけど、何よりメジロが炎に巻き込まれてしまう恐れがある。わたしたちは何もメジロを倒したいわけじゃない。



「何を言うか! あの者はウンディーネさまを凍らせた狼藉ものだぞ!」

「でも、それもメジロじゃなくてウンディーネ自身が凍った可能性が……」

「ウンディーネさまが……? だか、こうして手をこまねいている場合ではない!」



 水の龍の言うことも、もっともだ。話している間も、イオとルーシャちゃんは戦っていてわたしたちを守ってくれている。その様子を見ていたエルメラが振り返った。



「ユメノ、わたしが行く」

「え、エルメラ? 行くってどこに……」



 言いながらウンディーネの元だと気づく。エルメラは小声で作戦を伝えてきた。



「サラマンダーには出て来てもらうだけでいいよ。メジロや精霊たちの気を引いている内に、わたしがウンディーネの元に行って声を届ける」



 確かに小さな妖精のエルメラならメジロに気づかれずに近づけるかもしれない。けれど、強力な精霊たちが襲ってくる中、わたしたちから一人で離れるのは危険すぎる。

 でも、出来るの?なんて、間違っても言えない。そんな強い瞳をしていた。わたしは自分の杖の精霊石に話しかける。



「サラマンダー、聞いていた?」

「もちろんである。さあ、ユメノ。吾輩を呼ぶがいい」



 頷いて、杖を高く掲げた。



「サラマンダー召喚!」



 精霊石から赤い光が宙に出て来た。それが、すぐにサラマンダーの形になる。



「吾輩が来たからには、水の精霊など一網打尽にしてくれるわ! へっくしょい!」



 来て早々にくしゃみをするサラマンダー。時間はあまりない。

 ちらりと横目で見ると、エルメラは神殿の壁の方から回り込むつもりのようだ。元々あまり気にされていないのか、メジロも注目していない。サラマンダーの登場に身構えているようだ。わたしは祈るような気持ちで見つめる。

 エルメラ、お願い……!

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