声優召喚!~異世界に召喚された声優は最強の精霊使いです~

白川ちさと

文字の大きさ
12 / 113
サラマンダー編

第十二話 要塞都市ゲーズ

しおりを挟む



 イオと出会ってから五日。徒歩と乗り合い馬車を使って、わたしたちはシュウマ山の麓にある要塞都市ゲーズにたどり着いた。もちろん、精霊使いのレクチャーを受けながらだ。背後には富士山型の大きな山がそびえている。

 山肌は茶色く、木々は生えていないようにみえた。どれくらいの標高があるのだろう。山頂にサラマンダーがいるはずだ。

 感慨深く少し埃っぽい空気を吸う。わたしはやっとたどり着いた。一週間も仕事を離れて旅をするなんて、三千年間山にこもって出てこないようなものだ。

 そのシュウマ山の麓に広がる都市、ゲーズ。城塞都市と言うだけあって、城壁に囲まれている。所々、窓のように穴も開いているから大砲や弓矢が打てるのかもしれない。

 高く囲む城壁にはぽっかりと門が開いていて、そこに人々は列をなしていた。どうやら入るのに荷物や怪しいものがいないかチェックしているようだ。槍を持った兵士が多く並んでいた。わたしたちも前にならえで、列の最後尾に並ぶ。

 すると、カカが布の間から声をかけて来た。



「おい! 杖に巻いている布を外しておいた方がいいぜ」

「なんで?」

「こういう場合、精霊使いってだけで優遇されるんだ。たぶん、すんなり中に入れるはずだ!」



 確かに前の町でも、うっかり精霊石を見られてしまったことがある。そのときも、旅で疲れているだろうからと、両手に抱えられるだけのお菓子を貰っていた。



「へー。こんな大きな町でも、そうなのね」



 素直に従って布を外した。イオも同じようにする。そこに鎧を着た兵士が列を乱さないようにと言いながら歩いてきた。



「ん。お前たち……」



 さっそく、反応があった。やっぱり並ばずに町に入れてくれるのだろうか。しかし、予想は全く外れてしまう。



「お前たち、精霊使いだな! 拘束させてもらう!」

「え? ええええええ!!」



 あっという間に数人の兵士たちに取り囲まれ、わたしとイオは槍を向けられてしまった。








 なぜか何もしていないのに、杖を取り上げられて手を縄で縛れてしまう。囲まれたまま連行された。



「なんで精霊使いってだけで、捕まるの?」



 兵士に聞くけれど、黙って歩けと槍の先を突き付けられたら黙るしかない。門の詰所にいる兵士の隊長の元に連れていかれた。兵士の一人がビシッと敬礼する。



「ニコ隊長! 精霊使いを二名捕えました!」

「そうか。では疑いが晴れるまで……ん?」



 ニコ隊長と呼ばれた人は、わたしに顔を近づけてまじまじと見つめる。そして、わたしではなく連れて来た兵士をキッと睨みつけた。



「この子のどこが精霊使いだ!」



 口ひげの生えた口を大きく開けて怒鳴りつける。



「え。でも鎮霊の杖を持っていて」

「確かに持っているが、この子はどう見ても子供ではないか!」



 確かにわたしの見た目は子供だ。



「見習いの精霊使いだろう。杖だってほとんど色が染まっていない。こんな子供にあんな芸当は出来やしない。早く縄を解いてやれ」

「はっ、はい!」



 連行してきた兵士はわたしの手にグルグル巻きにしていた縄を解いた。杖も返してくれる。初めて子供でよかったと思った。



「イオは?」



 まだ縄で拘束されているイオを指さす。ニコ隊長が蓄えたひげを弓状に曲げて優しく答えた。



「すまんな、嬢ちゃん。連れさんまだ質問することがあるんだ。まあ、わざわざ犯人が正面の門から入ってくるとは思いにくいが、決まりでね」



 犯人というは、この都市で何か事件があったってことだ。それも精霊使いに疑いがかかるような――。とはいえ、わたしには直接関係ない。



「ふーん。質問ってどれぐらいかかるの?」

「そうだな。二、三日ってところかな」

「二、三日!?」



 声を上げたのはカカだ。甲高くイオから出た声とは思えないのだろう。兵士たちの注目がイオに集まった。ごほんと咳払いを一つして、少し低めの声で言い直す。



「い、いや、そんなにかかるのか?」



「牢も混んでいるからな」



 しかも、牢で待つみたいだ。わたしはさっさとイオに背を向けた。



「じゃあ、イオがんばって」

「おい、ユメノ。薄情者」

「そうは言っても、わたしにはどうしようもできないもの。先に町を見ているね」




 もしかしたら、勢い余ってサラマンダーのところにまで行っているかもしれないけれど。そんなことを内心思いながら詰所を出た。









 石畳の道を進んで行き、アーチ状の門をくぐる。エルメラとわたしは、二人でキョロキョロと辺りを見回した。



「ここがゲーズかぁ」

「ふーん。都はやっぱり栄えているのね」



 現実の大都市とは言わずとも、石造りの大きな建物がたくさん並んでいる。町では家の窓は木の板で塞がれていたけれど、ここではどこの家もガラスの窓だ。



「うわぁ」



 大通りに出ると、頭の上でエルメラはさらに感嘆の声を漏らした。

 立派な商店がずらずらと並んでいる。武器屋に道具屋、洋服店に装飾品店。布の屋根の露店も見かける。どの店も大きく看板も工夫を凝らしていた。露店もあり、まだ加工していない鉱石が並んでいる。都会に慣れているはずのわたしも思わず魅入ってしまう。



「へー。面白いものもありそ……ぶっ!」



 骨董品に気を取られていると、誰かにぶつかった。なんだか、もふっとした感触がする。随分上から声がした。



「おっと、お嬢さん。ごめんよ」



 ぶつかった人を見上げて、わたしは目を丸くした。その場で何も言えずに固まる。目の前に立っていたのは、胸毛がふさふさした人だった。いや、人じゃない。確かファンタジーのアニメでは、コボルトと呼ばれる種族だ。コボルトのおじさんは、じゃあ気を付けてなと言って、肩に担いでいた荷物を抱え直して去って行った。
わたしは驚いたけれど、フードの中のエルメラは平然として言う。



「へー、やっぱり大きな都市は獣人もたくさん歩いているね」



 ぐるりと視線を巡らせると確かに人間が一番多いけれど、獣の耳が生えた獣人も多い。中には傷だらけの鎧を着て、武器を背負っている獣人もいた。やっぱりファンタジーの世界だなと思った、そのときだ。



 カンカンカンカン!



 街中に鐘を金づちで叩くような音が響き渡る。何も分からないけれど、警戒させる音に思わず身構えた。



「えっ?! これなに、エルメラ!?」

「わたしも分かんない!」



 わたしたちが右往左往している間に、大人たちは次々に建物の中に入っていった。入れ替わりに武器を持った兵士や獣人たちが門の方へと駆けていく。駆けて行く大人たちの慌ただしさに、さらに混乱した。



「ええ!? なに、どうすればいいの!?」

「お嬢ちゃん、こっち!」



 わたわたしていると、建物の扉からおばちゃんが手招きしていた。すぐに向かうと強く腕を引かれる。中に入ると、そこは家具店のようで照明器具や机などが所狭しと並んでいた。奥には他にも避難している人がひしめいている。

 入り口の近くで、中に招き入れてくれたおばちゃんに尋ねた。



「ねぇ、何が起きているの?」

「敵国が攻めて来たんだよ」



 わたしは予想外の言葉に目を見開いた。



「敵なんているの?」

「そんなことも知らないのかい? 旅人にしても無知だね」



 無知と言う言葉にムッとするけれど、わたしは質問を繰り返した。



「さっきの鐘の音は敵が攻めて来た合図?」

「そうさね。敵国ロザ王国が攻めて来たんさね。ロザ王国は同じシュウマ山の麓に都市を構えているのさ」

「攻めて来たって、戦争!?」



 おばちゃんは神妙に頷く。話している内に、ドンドンと衝撃音が聞こえてきた。微かに怒号も耳に届く。



「もう、領土を巡って三百年も続いている戦争さね」

「さ、三百年……」



 なんだか空いた口がふさがらない。それほど長く何を争っているのだろう。領土を取り合いしているとはいえ、他にも土地はいくらでも広がっている。



「まあ、堅牢な城壁が守ってくれているから大丈夫なんだがね。この前、事件が起きたんさ」



 事件と聞いてピンときた。



「もしかして、精霊使いを尋問していることに関係があるの?」



 おばちゃんはまた深く頷いた。



「大事な物が盗まれちまったのさ。それはこれから新たに作る城壁の設計図」



 それは敵国からしたら、のどから手が出るほど欲しいだろう。逆に盗まれた方にしたら、たまったものじゃない。



「盗んだ犯人は水の精霊。いま門を閉鎖して全軍を上げて探しているところさね」




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜

月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。 ※この作品は、カクヨムでも掲載しています。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~

ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆ ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

処理中です...