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サラマンダー編
第十九話 設計図探し
しおりを挟むイオのことを簡単に紹介するけれど、ルーシャちゃんはあまり興味がなさそうだった。同じくらいの男の子だとういうのに。それよりも、わたしが精霊ギルドに呼ばれていることが気になるみたい。
精霊ギルドの扉を開けると、以前来たときとは様子が全く違っていた。
「あれが犯人を捕まえた精霊使いか」
「Aランクらしいぜ」
ざわざわとささやきが波のように広がっていく。あれほどすっからかんだった精霊ギルドに人が多く押し寄せていた。きっと疑いが晴れて軟禁されていた精霊使いたちが解放されたのだろう。精霊石をつけた杖を手にしている人がほとんどだ。
「あ! 来ましたね! こちらへ!」
手招きをするのは受付のお姉さんだ。わたしたちの前の人が避けて道ができる。わたしは胸を張ってその道を進んだ。
「では、お二人とも、ギルドの登録カードを取り出してください」
「はい!」
元気よく返事をして、ポケットの中からカードを取り出す。
「ではこの水晶の上にかざしてください」
お姉さんが持つ水晶の上にかざした。すると、カードの文字がEの文字が消える。さあ、Sランクにしてちょうだい。
「あ、あれ?」
しかし、代わりに浮き上がってきた文字はBだった。
「Bランク!?」
ショックのあまりわたしは叫んだ。ざわざわと、周りの精霊使いの人たちが騒ぎ出した。
「Eランクだった子が、Bランク。ということは一気に三ランクもアップしたのか!」
「すげえぞ、嬢ちゃん!」
こぞって褒め称えてくれるけれど、わたしは全く納得していなかった。
「どういうことなの!?」
「そうですわ! どういうことですの!?」
ルーシャちゃんがわたしと同時に受付のお姉さんに詰め寄る。
「なんでわたくしを越して、このど素人さんが三ランクもアップしますの?!」
「どうしてスパイを捕まえたのにSランクにならないの!?」
受付のお姉さんはすごく困っているけれど、わたしも引き下がるわけにはいかない。
「それは実際に捕まえたのは彼だから。あなたはそれを手助けした功績を認められたのよ。とてもすごいことなの。さ、さぁ、あなたも」
タジタジになったお姉さんはイオの方に目配せをした。イオもわたしと同じようにカードを水晶にかざす。そして、珍しく地声で言った。
「あ。Sランク」
「な、な、なんですってえぇ!」
ぐっと近づいてカードを覗き込むと、Sの文字が書かれている。
「これでサラマンダー討伐隊に入れるな!」
カカの言葉で余計に腹が立った。悔しさで思わず大人げなく地団太を踏む。
「ズルい! ズルい! ズルい! イオなんて、わたしのおこぼれで犯人を捕まえただけじゃないの!」
ポカポカとイオを殴るけれど、ポンポンとなだめるように頭を叩かれる。
「そのお兄ちゃん目線やめろ! 余計腹立つから! ぐぬぬぬぬ。どうにかして、わたしもSランクになるんだから。見てなさいよ!」
わたしの横でルーシャちゃんがあごに手を当てて、ぽそりとつぶやく。
「……そう言えば、逮捕された犯人は設計図を持っていましたの?」
その言葉にギルドにいた精霊使いたちがそろってハッしたような表情をする。そういえば、犯人はどこかに隠したって言っていたはずだ。
「犯人は設計図の場所を話したの?」
ジーっとギルド中の視線が受付のお姉さんに注がれる。お姉さんはまた困ったような笑顔で首を傾げた。
「それが、……まだ?」
うおおおおっとギルドで雄叫びが起き、精霊使いたちが一斉に外に飛び出していった。またもや空っぽになった精霊ギルド。受付のお姉さんにイオ、わたしぐらいしかいない。ルーシャちゃんまで出ていったのは言うまでもない。
腕を組んで出入口を見ていると、受付のお姉さんに顔を覗かれる。
「ユメノさんは行かないの?」
「犯人がいた場所は兵士さんたちが、すでに隈なく探しているはずよ。目のつくところにはないと思う」
もっと場所を絞って行かないと無駄足だ。
「では、どこに隠してあると思うんだい」
後ろから聞いたことのあるよく通るバリトンの声がした。ギルドの奥から出てきた人はどことなく見覚えがある。杖を持っていて、たれ目で短い髪を逆立てている男の人。どこで見たのだろうか。
「ああ。ビューロさん。お疲れ様です」
受付のお姉さんが頭を下げる。男の人はビューロさんと言うらしい。イオがこっそり耳打ちしてくる。
「ユメノ。彼はSランクのあの戦っていた人だ」
「ああ! あの!」
オトヒメを攻撃していた人だ。髪型が違っていて分からなかった。ふふっと少し不敵に笑いながら、ビューロさんはわたしに声をかけてくる。
「それで設計図の場所に心当たりはあるのかい?」
しかし、それに答えたのはイオの胸元にいるカカだ。
「ユメノは設計図を探さなくてもいいだろ! もう三つもランクアップしたんだ。十分、十分!」
思わずムッとして、叫び返す。
「駄目よ! わたしはSランクになってサラマンダー討伐に行くんだから!」
ほうとビューロさんはあごに手を当てた。そうかと今更ながら気づく。ビューロさんはSランクの精霊使いだから、サラマンダーの討伐隊にたぶん入っている。この先討伐隊に入るためには、役に立つところを見せないといけない。
わたしは受付のお姉さんを振り返る。
「犯人のあのおじさんは何か言っていましたか?」
「黙秘しているそうよ。ただ設計図を盗んだのはお金のためとだけ言っているわ」
お金のため。城壁の設計図は機密情報だ。敵国からしたら喉が出るほど欲しい。金に糸目を付けないだろう。きっと屋外に隠してはいない。雨風で文字が滲んで消えてしまったら、元も子もないからだ。だからきっと屋内。
宿屋、食堂、道具屋、武器屋。候補は数えだしたら切りがない。でも犯人は精霊使いなのに精霊使いじゃないふりをしていた。そんな人がいくところは、どこだろうか。
「なんで設計図を盗んだスパイは、まだ黙秘しているんだろうな。吐いてしまった方が罪も軽くなるはずなのに」
ビューロさんの言うことに、もしかしてと犯人はまだ諦めていないんじゃないかと思う。物証が出て来なければ、まだ逆転の目がある。設計図が見つからなくてしらを切り通せば、解放されるのだ。そして、あとから設計図を回収する。回収して敵国に持ち込めば、いくら時間が経っていても価値はあるだろう。
つまり――
「灯台下暗し!」
精霊使いじゃないように振舞っていたなら、探す人は普通の人が行くところを探すはず。でも犯人はその裏をかく。絶対に設計図が見つからずに、解放されたら取りに来られる場所。
「そう! 設計図はこの精霊ギルドに隠されているのよ!」
「え! ……そんなことが?」
受付のお姉さんが戸惑いの声を上げる。ずっとここにいるお姉さんが不可能だと思うくらい自然と隠せる場所だ。
「その上、あまり人が触らなさそうで安全に隠しているとしていたら……」
わたしはギルドを見回す。ちょうどいいのがたくさんあるじゃない。
「本棚の本に挟まっている可能性が高い!」
本棚に駆け寄って行く。ほとんどインテリアと化して誰も触らないようだ。少しほこりをかぶっている。隠し場所にはうってつけだ。
「設計図はきっと本の間に挟まっているのよ!」
なるべく人が触らなさそうな一番下の本から探してみる。ない、ない、ない……。たくさんあるからすぐには見つからない。
そこへ、イオがやってきて一番上の棚の本を開き出す。
「なによ! 見つかったらわたしの手柄なんだからね!」
「ああ。他の人たちも手伝ってくれている」
見ると他の棚の本を受付のお姉さんやビューロさんが開いていた。
――十数分後。
「あった! あったよ!」
見つけた瞬間思わず手を上げた。八つにおられた紙が、誰も触らなさそうな一番下の端から三番目の本に挟まっていた。広げてみる。
「やっぱり! 設計図!」
城壁の事細かな情報が描かれている。どこに砲門を置くとか、見張り台はどこに置くとか、かなり重要なことも描かれていた。
「本当にあるとは。これは絶対に見つからなかったな」
ビューロさんも感心して地図をのぞき込んでいる。
「ユメノさん、お手柄です! さっそく、兵士の方に知らせてきます!」
受付のお姉さんが嬉しそうに外へと駆けて行った。
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