声優召喚!~異世界に召喚された声優は最強の精霊使いです~

白川ちさと

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サラマンダー編

第二十三話 山の麓、彼らの実力

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 わたしたちはシュウマ山の登山口まで来ると、塹壕を出るはしごの前で兵士さんたちに止められた。ビューロさんが慣れた様子で片手をあげる。



「よお」

「通行書を」



 ビューロさんでも、顔パスとはいかないみたい。ビューロさんは一枚の紙を見せる。それは前の日に街の市長さんから貰ったものだ。太っていて、渡すときもすごく偉そうだった。通行証には五人の名前が書いてある。兵士さんたちは、紙を見ながら頷きあう。クロスしていた槍を真っ直ぐに戻した。



「確認しました。どうぞご通行ください。ご武運を!」



 兵士さんに見守られ、わたしたちはハシゴを登って塹壕を出た。



「一応、道があるのね」



 シュウマ山は岩と土ばかりの山だ。木々は全く生えていない。通行書が必要なので人はほとんど入らないだろうが、それでも薄っすらと道がある。わたしの疑問を感じ取ったのか、ビューロさんが説明してくれる。



「俺たち討伐隊が遠征の度に露払いをしているからな。サラマンダーの元に行けなくても道の確保だけはしているんだ」

「そうなんだ」

「入り口付近はいいけれど、奥に行くほど大変よ。覚悟しなさい」



 実際、オリビアさんの言う通りだった。入り口は傾斜も緩やかで、精霊も出てこない。道は狭く、縦一列でしか通れないけれど、危険な箇所はなかった。

 先頭がビューロさんで二番目がオリビアさん、真ん中がわたしでイオがその後ろ、しんがりをシュルカさんが歩く。すごくわたしを守る為の陣形だ。

 一時間ほど歩いたとき、エルメラがハッとした様子で辺りを見回した。



「精霊たちが騒めいている」



 オリビアさんが了承している顔で頷く。



「人間が侵入して来たことに気づいたのね。そろそろ来るわよ。ユメノは何があってもいいように精霊を出しておいて」

 わたしは言われた通り、火の蛇ホムラに呼び掛けて足元に出現させる。ビューロさんが一度立ち止まって、後ろを振り返った。少しからかうように笑っている。



「炎の精霊の王の元に行くのに、炎の精霊で対抗するつもりか?」



 わたしも同じようなことを考えていた。炎対炎では、絶対にサラマンダーが強いに決まっている。



「でも、わたしが解放しているのはホムラだし、水の精霊オトヒメはこの間使役したばかりで慣れなくて。他にも水の精霊はいるけれど、それほど強い攻撃は出来ないから」



 ビューロさんは一つひとつの言葉に頷く。



「確かに連携は取れた方がいいな。それに、ユメノはサラマンダーへの呼びかけが仕事だ。そこまで俺たちが守ってやる」



 すごく頼りになる言葉だ。だけど、属性の相性という点では気になることがある。この討伐隊には火の精霊に対抗できそうな水の精霊使いがいないのだ。

 街で聞いた噂では、前のリーダーだった人が水の精霊をメインに使っていたらしい。今回のリーダービューロさんは雷の精霊、オリビアさんは花の精霊、シュルカさんは風の精霊がメイン。それにSランクとはいえ、三人の実力はよく分かっていない。

 少しだけ不安を感じていると、シュルカさんが後ろから尋ねてくる。



「その火の精霊は解放できるのか?」



 こういう質問をするのはレベルの低い精霊使いは解放出来ない人も多いらしい。街について初めて知った。



「うん。解放した方がいい?」



 この質問に答えるのはビューロさんだ。



「まだ解放の必要はないが、山頂近くになれば解放しないと対抗できなくなるだろう。しかし、解放できるなら中々頼りになりそうだな。街でも解放出来るのはAかBランクの者だからな」



 そう考えると、Cランクで解放出来るルーシャちゃんは結構すごい。ただのお調子者の大道芸人じゃないんだな。などと少し失礼なことを思ってしまう。



「おい、精霊が来たぞ!」



 カカが前方を指さす。エルメラも反応した。



「五体はいるよ!」



 討伐隊に一気に緊張が走り、わたしは杖を構える。先頭のビューロさんが叫ぶ。



「ロット! 来いッ!」



 雷の精霊の名前だ。ビューロさんの前に、大きなサイが現れる。角にバチバチと電流が走っていて、まぶしいくらしだ。雷の精霊ロットが前方に走り出す。ドンッと、お腹に響くような衝撃が辺りに響いた。



「よし、戻れ」



 そのまま雷の精霊ロットはビューロさんの杖に戻った。ポカンと口を開けて前を覗き見るけれど、そこには精霊の影も形もない。



「もしかして、今の一撃だけで倒しちゃったの?」



 しかし、戸惑っているのはわたしだけで、皆何事もなかったように進みだした。わたしの背が低くて見えなかっただけなのかな。前を進むオリビアさんがあくびをしながら言う。



「まあ、攻撃力も体力もビューロが一番あるからね。中腹を登るときの戦闘はビューロに任せておけば大丈夫よ」



 後ろを振り返ってイオの顔を見る。平然としているけれど、内心驚いているんじゃないだろうか。さらに足場の悪い道を歩いていると、ビューロさんが止まった。



「オリビア」



 オリビアさんは、はーいと軽い声で返事をして前へと行く。



「あらー、これは通れないわね」



 横から前を覗き込んでみると、道を塞ぐようにマグマが流れていた。冷えて黒くなっているけれど、ときどきポコポコと赤い泡を立てている。まだ熱い証拠だ。



「あの辺に、行くわよ」



 オリビアさんはマグマの向こう側にある大きな岩を指さした。どうするつもりなんだろう。



「プルメリア。出てきて」



 ピンク色の精霊石がはまっている杖から、大きなピンク色の花を纏うミツバチが出てきた。花の精霊だ。



「さぁ、この乾いた土地に大輪を咲かせるわよ!」



 杖を振るオリビアさん。すると、花の精霊プルメリアは地面に手をついた。すぐに地面がボコボコと盛り上がり始め、まるでジャックと豆の木の絵本に出て来るような巨大なツタが出てきた。巨大なツタはプルメリアと同じピンクの花を咲かせながら伸びていく。先端はマグマを飛び越えて、オリビアさんが指定した大岩までたどり着いた。



「よくやったわ、プルメリア。さっ、行きましょう」



 つまりツタをよじ登って、マグマを超えて渡ってしまおうというわけだ。ツタは頑丈で、五人が同時に乗ってもびくともしなかった。この分だと本当に攻撃と防御をみんなに任せて、わたしはサラマンダーへの呼びかけに集中しても良さそうだ。



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