余命一年と言われたギャルの話

白川ちさと

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第二十話

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 昼休みになると、陽介と中庭のベンチでご飯を食べる。

「珍しいな、渉。食欲ない?」

 わたしは購買部で買って来たおにぎりを一口かじっただけだ。

「ううん。ちょっと考え事していただけ!」

 わたしは慌てて、もう一口無理やり頬張った。

「ああ。朝、先生に言われたっていう進路のこと? 調べものをするから、しばらく一緒に過ごせないんだっけ? なんで、渉だけ言われたんだろうな」

 進路の調べものなんて、朝に担任に呼ばれたことを誤魔化すための苦し紛れの嘘だ。

「あー、うん。進路調査で適当に書いていたせいかも」

「へー、オレも結構適当だったけど」

「まあ、いいじゃん! 進路のことはさ! それより、美玖がさ!」

 わたしが話をそらそうとしたときだ。

「渡辺さん! 宮野くん!」

 振り返ると、山崎がスマホを掲げて走ってきている。いいタイミングだ。

「どうしたの、山崎。何かいいことあった?」

「いや、いいことっていうかさ。今日の放課後、ここに行かない?」

 スマホで見せて来た画像にわたしは眼を輝かせる。

「うわっ! 美味しそう!」

 イチゴのシロップと生クリームがたっぷり乗ったパンケーキだ。

「新しく出来たカフェみたいなんだ。行くでしょ?」

「行く行く!」

 思わずその場でぴょんぴょん跳ねてしまう。昨日もパフェ食べたじゃんとか脳裏をかすめたのは徹底的に無視だ。食欲なくても、可愛いものにはテンションが上がる。

「早速だな、山崎。オレも行くけど、このパンケーキは甘すぎだな」

「甘くないメニューもあるみたいだよ。じゃあ、聖ちゃんも呼んでっと」

「あー……、あの子のやりたいことだもんね」

 まさか三人だけで行くわけにもいかない。山崎はすぐにスマホでメッセージを送る。

「返事ないな。まあ、放課後までには気づくよね」

 放課後。三人で学校から向かうと、待ち合わせの駅前に義理の妹はやって来た。

「はあ、はあ……。遅くなってごめんなさい。放課後までスマホの電源切っていて……」

 わたしたちに必死に言い訳をしながら頭を下げる。

「そんなに待ってないから、ちょっと息を整えようか」

 気遣うように陽介が義理の妹の背中をさする。

「ねー。早く行こうよ」

 わたしは待ちきれないと、少し先に歩いて指をさす。

 だけど、山崎が笑顔で反対方向を示した。

「渡辺さん、そっちじゃなくてこっち」

「ははっ。渉は地図読めないからな」

「すごく大胆に間違えたよね」

 からかう男子二人に口を尖らせて、Uターンする。

 駅から山崎のナビでカフェに向かった。


「ねぇ、渉ちゃん。……いいの? わたしが一緒で。彼氏と、……二人じゃなくていいの?」

 隣に来た義理の妹が恐る恐る聞いて来る。

「ああ」

 一瞬、何のことを言われたのかと思ったけれど、昨日わたしがお父さんとケンカしたことを気にしているのだろう。

 その原因は義理の妹と無理やり食事に行かされたことだ。でもあれは食事に行ったこと自体よりも、裏でこそこそ画策されたことに怒っていた。

 それに昨日と今じゃ状況が違う。あまり陽介と二人だけで過ごすわけにはいかない。

「まあ、あんたが言いだしたことなんだから、居ないわけにはいかないでしょ」

 とはいえ、それを説明するには病気のことも言わないといけないので当たり障りのないことを言っておいた。
少し歩いてやって来たのは、奥まったところにある隠れ家的なカフェだ。

 わたしじゃなくても迷うだろう。そんな場所にあるにも関わらず、人気があるようで数人店の前に並んでいる。

「陽介、何食べる? わたしはもちろんイチゴのパンケーキ!」

 店員の人に配られたメニューを見ながら尋ねた。

「そうだな。ティラミスがそんなに甘くないって書いてあるから、それにしようかな」

 陽介は甘さ控えめと書かれたティラミスを指さす。それも美味しそうだ。

「一口ちょうだいね!」

「ははっ、いいぞー」

「聖ちゃんは何が食べたい?」

「えっと……」

 義理の妹は山崎が見せて来るメニューに目をさ迷わせる。

「……わたしも、ティラミスで」

「え、本当? でも、ここってパンケーキが一番美味しいみたいだよ? 僕はチョコバナナのパンケーキにしようと思っているんだけど」

「甘いもの苦手で……。あ! でも、こういうオシャレなカフェとか来たことなかったんで、呼んでもらえて嬉しいです」

 山崎が「そっか……」と微妙な顔でつぶやく。失敗したと思っているのだろう。

 義理の妹が食べたかった美味しいものとは違うかもしれないけれど、それはわたし以外の三人で行ってもらうしかない。どうしても行きたかったらの話だけど。

 そうこうしているうちに、順番が回って来た。店内に入ると、外見通りオシャレでナチュラルな内装で、店員さんも大人でオシャレな雰囲気の人が働いている。

 ちょっとわたしみたいな少し派手めなギャルは浮いているけれど、美味しいパンケーキが食べられれば問題なし。

 わたしたちはそれぞれ食べようと思っていたメニューを注文する。


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