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第三十一話
しおりを挟むまだ本調子じゃない山崎のことを考えて、次はメリーゴーランドに乗る。乗った木馬が上下するだけで喜ぶほど子供じゃないけれど、中々映えた写真を撮ることが出来て意外と満足度は高い。
コーヒーカップでは、わたしと山崎、美玖と聖に別れて乗った。聖はすっかり美玖と打ち解けている。
さすがわたしの妹と親友だ。通じるところがあるのかもしれない。
だけど、わたしと乗った山崎はそんなに回転させていないのに、また酔ってふらふらになっていた。
他にも二つ、三つとアトラクションを楽しんだ。
時間を見ると、ちょうど十二時前なのでお昼ごはんを食べることにする。遊園地の真ん中辺りにあるフードコートだ。屋外だから少し肌寒いけれど、お昼時ということで賑わっている。
「買ってきたよー。はい。渉のカレーに、聖ちゃんのホットドッグ」
美玖はわたしと聖の前に、それぞれ頼んだものを置いていく。わたしと聖が席を取っておいて、山崎と美玖が買いに行ってくれたのだ。
「ほらほら、山崎。渉の隣に座りなよ!」
「う、うん……」
何故か美玖が山崎を強引にわたしの隣に座らせた。まあ、誰が隣でもいいんだけどね。
「それじゃ、いただきまーす」
「あ! 食べる前にみんなで写真撮ろう!」
顔を寄せ合って、美玖が腕を伸ばして写真を撮る。山崎と聖は少し表情が硬いけれど、いい写真が撮れた。
「じゃあ、クラスのグループに送るよー」
スマホを操作しながら言う美玖の言葉で思いだす。遊ぶことに夢中だったけれど、クラスのグループチャットには続々と写真が送られて来ているようだった。
「一緒に見よう、聖」
わたしはスマホを聖にも見えるように傾ける。聖も少し身体を寄せて来た。ほとんど写真ばかりで、スタンプもコメントもない。指でなぞりながら、グループに投稿された写真を見ていく。
「あ! 窪田たち、ゴーカート乗ってる! わたしたちも後で行こう!」
美玖が羨ましそうに見ているのは、男子二人が赤と青のカートに乗ってレースをしている写真だ。二人は遊びとは思えないほど、本気の顔をしている。次の写真を見ると、二人でぶつかって動けなくなっていた。思わず聖と一緒に「あははっ」と笑う。
「あれ? 浅倉さんたち、変わったもの食べているね」
山崎が首を捻る。浅倉の写真を見ると、大きな口を開けてスティック状のお菓子を食べようとしていた。よく遊園地や映画館に売っているやつだ。
「チュロスだね。カリカリで美味しいよ。ソフトクリームも売っているみたい」
「ここも後で行こうね、渉ちゃん」
みんな、楽しそうにしている。ただのわたしの思い付きだったけれど、あのとき遊園地に行きたいって言ってよかった。
「他には、……あ」
わたしは思わず指を止めた。
そこには陽介がジェットコースターの行列で、クラスの積極的な女子に腕を掴まれて写っている。
「どうしたの、渡辺さん」
「げっ……」
わたしと聖が固まっていると、山崎と美玖もわたしのスマホを覗き込んできた。慌てて指を動かして、他の写真に変えた。
「あ、あはははっ。みんな、すごく楽しんでいるみたいだね!」
「渉ちゃん、無理して笑わなくても」
「無理? 無理なんてしてないよ? ほら、それよりご飯食べよう。わたしのカレー冷めちゃう」
わたしはプラスチックのスプーンを口に運ぶ。カレーはまだ冷めていかったけれど、少しだけ甘すぎた。もっとピリリと、わたしの眼を覚まさせて欲しい。
陽介が他の子と写っていても、何一つショックに思う必要はない。なるべくわたしのことを忘れて欲しいんだから、むしろ歓迎すべきことだ。
「ほら、みんなも食べて!」
わたしがそう言うと、三人も食事に手を付け始める。
「えっと、渡辺さん。他に食べたいものある?」
山崎がハンバーガーを食べながら聞いて来た。指折り数えて考えてみる。
「そうだなー。やっぱりソフトクリーム食べたいかな。あとチュロスでしょ。あ! この遊園地限定の中華まんが売っているってSNSで見たよ!」
「渉ちゃん、食べすぎだよ」
クスクスと笑う聖。少しだけ暗くなっていた雰囲気が和らいだ気がする。
「渉!」
わたしがカレーを食べ終わったとほぼ同時に、突然美玖が立ち上がった。
「え。どうしたの、美玖?」
「聖ちゃん、山崎、ごめん。これから渉とわたしで観覧車乗って来るね。渉ッ! 行くよ!」
美玖はわたしの腕を強引に引いて、立ち上がらせる。
「え、ちょ、ちょっと待って」
グイグイと美玖に引っ張られていく。振り返ると聖と山崎は少し驚いている様子だけれど、追いかけて来る様子はない。
「美玖、観覧車って……」
「わたしと渉。二人だけで話した方がいいと思って!」
――話した方がいい。
ドキッと心臓が跳ねた。まだ、美玖には病気のことは話していない。
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