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2章 ドノヴォン国立学院編

140 武術の授業 Part 7

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「では、さっそく確認してみましょう」

 ルーシアはすぐに台の上の剣を調べ始めた。日本刀の銘だと普通は刀身の根元にあり、柄をはずさないと確認できなかったりするが、ここにある絶対安全魔剣の製造番号シリアルとやらは、柄の尻に刻印されているらしく、十本の確認作業はすぐに終わった。

「ここにある十本は、いずれもDNK687から始まる連番の製造番号シリアルですね。この学院と契約している正規の業者が納品した備品に間違いなさそうです」

 こ、この女……たかが学校の備品の製造番号シリアルから、それが正規の業者のものだと一瞬でわかったようだぞ。そんなことまで把握してるとは、クラス委員長様ってば、どんだけ学園生活に全力だよ!

「つまり、このことから、余分に増えた一本は、刑事がお持ちのものである可能性が濃厚だと言えるでしょう」
「ハハーン? どうですかネー? ちょっくらここの製造番号シリアルを見てみますかネー?」

 ネムはやはり余裕の表情で、自分の本体が擬態した絶対安全魔剣の柄の部分をルーシアのほうに差し出した。ルーシアはすぐにそれに顔を近づけ――、

「DNK66825……くっ!」

 と、製造番号シリアルを確認したようで、実に忌々しげにネムをにらんだ――って、この微妙にズレた感じの数字はもしや?

製造番号シリアルからして、どうやらワタシが持つこの剣は、少し前にこの学院で使われていた備品のようですネー?」
「ええ、そのようですね……」

 ルーシアはやはりとてもくやしそうな顔をしている。

 おお、この展開は! 俺はそこでやっと事態が飲み込めた。そうだ、ネムのやつ、とっさに自分の体に古い備品の製造番号シリアルを表示させたんだ。古い備品の製造番号シリアルの情報なら、魔剣様の精神干渉能力で、この学校の適当な職員の記憶を検索すれば、すぐわかるだろうし! なるほどなるほど! さすが俺のゴミ魔剣様だ、冴えてるうー!

「サテサテ? ここに余分に一本ある剣が、ただ古い備品が紛れ込んだだけのものだと判明したわけですが、それをまるで何かとてつもなく大きな事件のように騒ぎ立てたそこのガール、今どんなお気持ちなんですかネー? ねぇねぇ、今、どんな気持ち?」

 ネムはルーシアの周りをぐるぐる回りながら、超うざったらしく質問した。NDK! NDK! と……。

「くっ!」

 ルーシアは下唇をかみしめ、やはりとても悔しそうな顔をしている。

 ――が、直後、その表情は謎の笑みに変わった。

「そうですね。私も、ラックマン刑事のお持ちのその剣が、どこぞの誰かが持ち込んだ不審なシロモノではなく、ただの古い備品だとわかって本当に安心しました。しかし、このままずっと古い備品を使っているのはよくないでしょう。何か不具合があるかもしれません」

 と、ルーシアは台の上から本物の絶対安全魔剣を一本取り、

「刑事、これからは、こちらの新しいほうを指導にお使いください。そちらの古いものは、私が責任をもって処分しておきますから」

 ネムに差し出してきた――って、おい、この話の流れは!

「ナルホドー、確かに古い備品を使うのは、安全上あまりよろしくないのかもしれませんネー?」

 ピンチのはずなのに、ネムの表情はまだ崩れない! いったい、どうする気だ、お前……。
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