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ヤドリギは芽を伸ばす
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「ちょ、それ大丈夫なの?」
「すみません!! 専門生とか色々とバタバタしちゃって……」
「大丈夫大丈夫、次来てもらう時に他の事と一緒に聞けば大丈夫だから」
詰め寄る木那乃を引き剥がす。
「お客さんには私から次の日程とかと一緒に話しとくから、連絡先と名前メモに書いてあるでしょ———」
そう言ってメモを覗き、私はお客様の名前を見た瞬間崩れるように床にぺたりと座り込んだ。
「ちょっと大丈夫?」
あの名前は。今更なぜ?
忘れた筈の夢と、様々な疑問が頭の中をぐるぐると回り続け煮えたぎっていく。
川波 錨
あの日、消えてしまった筈の彼の名だ。
「ちょ、ちょっとどうしたのよ? 聞こえてる?」
木那乃が不安そうに私の顔を覗き込む。
「……あ、いえ何でもないの、大丈夫だから。町田さん、悪いんだけど電話代わりに大丈夫?」
「はい! 勿論です!」
私はそのまま一直線に受付裏のスタッフルームへ入った。
「いきなり何で、ちょっとそのメモ見せて貰える?」
鬼灯は町田からメモを奪うように受け取り、メモを読むと思わず口を覆ってしまった。
「何で……よりにもよってここに来るのよ!」
「一体何なんです?」
「聞いてない!? 青園が男と話せなくなった原因! 青園の告白を無下にしたクズよ! やっとここまで戻って来れたのに……あいつはまたこの大切な日常を壊しに来やがったんだ!」
受付をドンッと力強く叩き叫ぶ。
「町田さん! 今すぐそいつをキャンセルに!」
「駄目よ」
受付の裏から小さくも鋭い声で言った。
「どんな人でもお客様はお客様。特に理由もなしにキャンセルなんてあり得ないわ。枯れるのは一瞬なのよ?」
しかし、壁に寄りかかるように手を当てるその姿から、無理をしてるのは明白だった。
「私は、そんな顔をあんたにさせる為にこれを進めた訳じゃないのよ……」
「あ、あの!」
ずっとおろおろと2人の顔を交互に見ていた町田が声を上げた。
「でしたら、青園先輩は基本裏方で、お客さんの対応は私がするのではどうですか? 元々青園先輩はサポートメインですし……それじゃ駄目ですか?」
「あんたね、それが出来たら苦労しないわよ」
「そうね、町田さんに苦労はかけられないわ。私もいつも通り業務するから」
「大丈夫です! 出来ます! ただ……」
一呼吸置いて不安な目から真面目な目に変わって言った。
「私がスタッフルームの個室で事務してる時は絶対に入ってこないで下さい」
町田さんの言う個室とは、スタッフルームの端にある曇りガラスの付いた扉で区切られた防音室の事だ。集中したい時やオンライン会議なんかの時に私は良く使ってるが、町田さんが使ってる姿はあまり見た事が無かった。
「何だか鶴の恩返しみたいね。分かったわ。町田さんがそんなに言うなら一回試してみましょ。それで無理そうならキャンセル。青園ちゃん良いわよね?」
「えぇ、分かったわ」
「それと、もし辛くなったら絶対に言うこと! 分かった?」
木那乃は私と町田さんをビシッと指差して言った。
「それじゃ私は帰るけど、あいつが来る日決まったら教えてね。絶対よ?」
木那乃は町田さんに電話番号の紙を渡すと、自動ドアから出ていった。
「ごめんなさいね、私の事情で大変な事になっちゃって」
「いえ! 全然大丈夫です! じゃあ電話して来ますね!」
「すみません!! 専門生とか色々とバタバタしちゃって……」
「大丈夫大丈夫、次来てもらう時に他の事と一緒に聞けば大丈夫だから」
詰め寄る木那乃を引き剥がす。
「お客さんには私から次の日程とかと一緒に話しとくから、連絡先と名前メモに書いてあるでしょ———」
そう言ってメモを覗き、私はお客様の名前を見た瞬間崩れるように床にぺたりと座り込んだ。
「ちょっと大丈夫?」
あの名前は。今更なぜ?
忘れた筈の夢と、様々な疑問が頭の中をぐるぐると回り続け煮えたぎっていく。
川波 錨
あの日、消えてしまった筈の彼の名だ。
「ちょ、ちょっとどうしたのよ? 聞こえてる?」
木那乃が不安そうに私の顔を覗き込む。
「……あ、いえ何でもないの、大丈夫だから。町田さん、悪いんだけど電話代わりに大丈夫?」
「はい! 勿論です!」
私はそのまま一直線に受付裏のスタッフルームへ入った。
「いきなり何で、ちょっとそのメモ見せて貰える?」
鬼灯は町田からメモを奪うように受け取り、メモを読むと思わず口を覆ってしまった。
「何で……よりにもよってここに来るのよ!」
「一体何なんです?」
「聞いてない!? 青園が男と話せなくなった原因! 青園の告白を無下にしたクズよ! やっとここまで戻って来れたのに……あいつはまたこの大切な日常を壊しに来やがったんだ!」
受付をドンッと力強く叩き叫ぶ。
「町田さん! 今すぐそいつをキャンセルに!」
「駄目よ」
受付の裏から小さくも鋭い声で言った。
「どんな人でもお客様はお客様。特に理由もなしにキャンセルなんてあり得ないわ。枯れるのは一瞬なのよ?」
しかし、壁に寄りかかるように手を当てるその姿から、無理をしてるのは明白だった。
「私は、そんな顔をあんたにさせる為にこれを進めた訳じゃないのよ……」
「あ、あの!」
ずっとおろおろと2人の顔を交互に見ていた町田が声を上げた。
「でしたら、青園先輩は基本裏方で、お客さんの対応は私がするのではどうですか? 元々青園先輩はサポートメインですし……それじゃ駄目ですか?」
「あんたね、それが出来たら苦労しないわよ」
「そうね、町田さんに苦労はかけられないわ。私もいつも通り業務するから」
「大丈夫です! 出来ます! ただ……」
一呼吸置いて不安な目から真面目な目に変わって言った。
「私がスタッフルームの個室で事務してる時は絶対に入ってこないで下さい」
町田さんの言う個室とは、スタッフルームの端にある曇りガラスの付いた扉で区切られた防音室の事だ。集中したい時やオンライン会議なんかの時に私は良く使ってるが、町田さんが使ってる姿はあまり見た事が無かった。
「何だか鶴の恩返しみたいね。分かったわ。町田さんがそんなに言うなら一回試してみましょ。それで無理そうならキャンセル。青園ちゃん良いわよね?」
「えぇ、分かったわ」
「それと、もし辛くなったら絶対に言うこと! 分かった?」
木那乃は私と町田さんをビシッと指差して言った。
「それじゃ私は帰るけど、あいつが来る日決まったら教えてね。絶対よ?」
木那乃は町田さんに電話番号の紙を渡すと、自動ドアから出ていった。
「ごめんなさいね、私の事情で大変な事になっちゃって」
「いえ! 全然大丈夫です! じゃあ電話して来ますね!」
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