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空ろ木な装束
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「おはようございまーす」
スタッフルームに荷物を置いた町田がチャペルへ向かうと、中からうっすらと光が溢れていた。
扉を開けた先には、あの公園の夕焼けの下に鬼灯が立っていた。
「鬼灯さん? あれ、ここって……」
「ん? どうかしたの?」
「今って、朝ですよね?」
「いやねぇ、昨日描いてたじゃない」
「……あ! 本物の夕焼けかと思いましたよ」
チャペルを赤く照らすその夕陽はよくよく見ると、その赤い反射すら全てペンキで描かれていた。
「床も出来たからね。でもまだ未完成よ」
鬼灯の言う通り昨日までは白かった床が、今は土に覆われていて、実際公園にあった大きな石や、所々に雑草らしきものも生えていた。
「これで未完成……」
町田は辺りの壁や床を触ったりして鬼灯へ振り返った。
「床の土や草は少し湿ってて冷たいし、草の爽やかな匂いもします。それに椅子もベンチにかわってるし」
「まぁスプレーや霧吹き、蛍光灯をちょっと工夫して使っただけよ、ほら」
鬼灯は町田の手を取り、夕陽に近付けた。
「暖かいです」
「そっ 発熱する電球を使ったんだけど、正解だったわねぇ」
「凄いですね。確かにこれならどんな風景でも本物に出来るのも頷けます。前回の深海も本物みたいでしたし」
「あー……あれは失敗作よ」
少しバツが悪そうに端に置いといた岩に鬼灯は腰掛けた。
「あれでですか?」
「受け手の気持ちを理解出来てなかった。というより、隠されてたのかしらね」
デザイナーが客の希望を見誤るなんてね。鬼灯は口の中でそう呟いた。
「私からしたら本物の深海みたいで凄かったですけどね」
「ふふ、私の作品が何て言われてるか知ってる?」
「いえ、知らないです」
「本物以上よ、レプリカなんて今の時代、機械で充分なのよ」
「そんなの、言葉の綾ですよ。でもこれを見たら本物より凄いってのも頷けます」
「これで驚いてたらこの後大変よ? 今回は大丈夫な筈だから完成を楽しみにしてなさい、もう仕事の時間でしょ?」
「あっ本当です! では、仕事行ってきます!」
「はーい、頑張ってねぇ」
スタッフルームで青園が日課の読書をしていると、バタバタと廊下から足音を鳴らしながら町田が入ってきた。
「おはよう町田さん」
「おはようございます青園先輩!」
「来那乃の仕事見てきたの?」
「はい、凄い向上心でした……本物以上とか何とか」
「それは向上心じゃなくて事実!」
扉の隙間から鬼灯が小声で抗議していた。
「あら、もう終わったの?」
「ぜーんぜん。ちょっと休憩よ」
木那乃はぶつぶつと愚痴りながら天井を仰ぐようにソファへ深く腰掛けた。
「あっ! そうだ! この前言われてたの貰ってきましたよ!」
町田さんは声を上げると、ロッカーからビニール袋を取りだした。
「この前のって、もしかして」
ぐたっとした木那乃の体がぴくっと動く。
「そうです! 例の花です!」
町田さんが袋を開けると、中から紫がかった白い花が顔を覗かせた。
「うっそ! 本当に! いえ、間違いなく本物ね」
ソファからがばっと起き上がり白い綺麗な花に齧り付くように近づいた。
「そんなに珍しいの?」
「珍しいなんてレベルじゃ無いわよ。貴女の友人って何者なの?」
「人より植物に詳しくは有りますねー」
「……そう、まぁ良いわ。これがあれば完成にグッと近づくわ町田さんありがとねー!」
そう言って花を町田さんから奪い取ると、木那乃は扉を開けっぱにして行ってしまった。
「全く……本当に自由人なんだから。さっ仕事始めましょうか」
「出来たわよ!」
仕事を始めてから数時間、蓋の開いたままのペンキ缶を持ったままの木那乃が受付へやってきた。
「ちょっと、ペンキ床に落とさないでよ?」
「そんなおバカじゃ無いわよー」
「全く。町田さん折角だから見てらっしゃい」
「そんな事言ってないで青園ちゃんも行きましょ!」
「ちょ、ちょっと!」
木那乃に手を取られ、3人駆け足でチャペルへ連れて行かれた。
扉の先はあの時写真で見た景色と遜色無く、まるで本当に公園に繋がってるのかと思う程に本物と変わらない綺麗な夕焼けだった。
「良い感じね。町田さんの花も夕陽に照らされてとても綺麗」
「凄い! これなら確かに前回以上ですね!」
そこから少し私達は夕陽に照らされながらベンチに座ってゆったりとした空間を過ごした。
「さて、そろそろ戻りましょうか。明日のブライダルフェアの準備を進めちゃいましょう」
「あら、ごめんなさいね。私も何か手伝おうか?」
「うーん。じゃあ適当にチラシでも折ってて貰おうかな」
明日のブライダルフェアは食事の提供のみの予定だったけど、チャペルが出来たならそっちも解放しなきゃ。
「はぁ、全く。仕事が山積みね。町田さん今日は少しだけハードだけど大丈夫かしら?」
「はい! どんとこいです!」
スタッフルームに荷物を置いた町田がチャペルへ向かうと、中からうっすらと光が溢れていた。
扉を開けた先には、あの公園の夕焼けの下に鬼灯が立っていた。
「鬼灯さん? あれ、ここって……」
「ん? どうかしたの?」
「今って、朝ですよね?」
「いやねぇ、昨日描いてたじゃない」
「……あ! 本物の夕焼けかと思いましたよ」
チャペルを赤く照らすその夕陽はよくよく見ると、その赤い反射すら全てペンキで描かれていた。
「床も出来たからね。でもまだ未完成よ」
鬼灯の言う通り昨日までは白かった床が、今は土に覆われていて、実際公園にあった大きな石や、所々に雑草らしきものも生えていた。
「これで未完成……」
町田は辺りの壁や床を触ったりして鬼灯へ振り返った。
「床の土や草は少し湿ってて冷たいし、草の爽やかな匂いもします。それに椅子もベンチにかわってるし」
「まぁスプレーや霧吹き、蛍光灯をちょっと工夫して使っただけよ、ほら」
鬼灯は町田の手を取り、夕陽に近付けた。
「暖かいです」
「そっ 発熱する電球を使ったんだけど、正解だったわねぇ」
「凄いですね。確かにこれならどんな風景でも本物に出来るのも頷けます。前回の深海も本物みたいでしたし」
「あー……あれは失敗作よ」
少しバツが悪そうに端に置いといた岩に鬼灯は腰掛けた。
「あれでですか?」
「受け手の気持ちを理解出来てなかった。というより、隠されてたのかしらね」
デザイナーが客の希望を見誤るなんてね。鬼灯は口の中でそう呟いた。
「私からしたら本物の深海みたいで凄かったですけどね」
「ふふ、私の作品が何て言われてるか知ってる?」
「いえ、知らないです」
「本物以上よ、レプリカなんて今の時代、機械で充分なのよ」
「そんなの、言葉の綾ですよ。でもこれを見たら本物より凄いってのも頷けます」
「これで驚いてたらこの後大変よ? 今回は大丈夫な筈だから完成を楽しみにしてなさい、もう仕事の時間でしょ?」
「あっ本当です! では、仕事行ってきます!」
「はーい、頑張ってねぇ」
スタッフルームで青園が日課の読書をしていると、バタバタと廊下から足音を鳴らしながら町田が入ってきた。
「おはよう町田さん」
「おはようございます青園先輩!」
「来那乃の仕事見てきたの?」
「はい、凄い向上心でした……本物以上とか何とか」
「それは向上心じゃなくて事実!」
扉の隙間から鬼灯が小声で抗議していた。
「あら、もう終わったの?」
「ぜーんぜん。ちょっと休憩よ」
木那乃はぶつぶつと愚痴りながら天井を仰ぐようにソファへ深く腰掛けた。
「あっ! そうだ! この前言われてたの貰ってきましたよ!」
町田さんは声を上げると、ロッカーからビニール袋を取りだした。
「この前のって、もしかして」
ぐたっとした木那乃の体がぴくっと動く。
「そうです! 例の花です!」
町田さんが袋を開けると、中から紫がかった白い花が顔を覗かせた。
「うっそ! 本当に! いえ、間違いなく本物ね」
ソファからがばっと起き上がり白い綺麗な花に齧り付くように近づいた。
「そんなに珍しいの?」
「珍しいなんてレベルじゃ無いわよ。貴女の友人って何者なの?」
「人より植物に詳しくは有りますねー」
「……そう、まぁ良いわ。これがあれば完成にグッと近づくわ町田さんありがとねー!」
そう言って花を町田さんから奪い取ると、木那乃は扉を開けっぱにして行ってしまった。
「全く……本当に自由人なんだから。さっ仕事始めましょうか」
「出来たわよ!」
仕事を始めてから数時間、蓋の開いたままのペンキ缶を持ったままの木那乃が受付へやってきた。
「ちょっと、ペンキ床に落とさないでよ?」
「そんなおバカじゃ無いわよー」
「全く。町田さん折角だから見てらっしゃい」
「そんな事言ってないで青園ちゃんも行きましょ!」
「ちょ、ちょっと!」
木那乃に手を取られ、3人駆け足でチャペルへ連れて行かれた。
扉の先はあの時写真で見た景色と遜色無く、まるで本当に公園に繋がってるのかと思う程に本物と変わらない綺麗な夕焼けだった。
「良い感じね。町田さんの花も夕陽に照らされてとても綺麗」
「凄い! これなら確かに前回以上ですね!」
そこから少し私達は夕陽に照らされながらベンチに座ってゆったりとした空間を過ごした。
「さて、そろそろ戻りましょうか。明日のブライダルフェアの準備を進めちゃいましょう」
「あら、ごめんなさいね。私も何か手伝おうか?」
「うーん。じゃあ適当にチラシでも折ってて貰おうかな」
明日のブライダルフェアは食事の提供のみの予定だったけど、チャペルが出来たならそっちも解放しなきゃ。
「はぁ、全く。仕事が山積みね。町田さん今日は少しだけハードだけど大丈夫かしら?」
「はい! どんとこいです!」
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