幸福の花束を

天空

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不時着キキョウ便

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「おっしゃ! 俺ってばついてんなー君月城っつー子だよな?」

「……何で名前知ってんだ。やっぱ警察」

「ちょいちょい待ち! 待ってスマホ閉まって! 大丈夫だから、ほらこれ!」

 俺はスマホを取り出す手を押さえて写真を突き出し弁明を並べた。

「俺、青園の幼馴染! あいつが休んでるから君らなら何か知らないかと思って学校来たんだよ」

「何つー無鉄砲な。そう言う事ならそうと言ってくれりゃ良かったのに」

 聞かずに通報しようとしたのはそっちだろうに……。

「それで、青園の件だっけ。多分あの件じゃないすかね」

 少し気まずそうに視線を外してそう言った。

「何、何か知ってるの?」

「丁度その写真にも写ってるだろ。そいつそいつ、俺の前に写ってる奴。そいつが引っ越したんだよ」

 彼が傷だらけの指で差したのは笑顔で写る川波だった。

「え、そんな事で?」

「そりゃただの引っ越しだったら良いんすけど、川波の奴俺らに何も言わないで急に引っ越しやがったんすよ。先公に聞いても言えない分からないの一点張りでよ」

 チッと軽く舌打ちをして、そう吐き捨てた。

「ただ、1週間経った今、何で青園がいきなり休んだのかは俺にも良く分からないっすね」

「そりゃあれよ、1週間も経てば実感もするってもんでしょ、自分が捨てられたって」

 彼の後ろから抱きつく様にして現れたのは、黒い髪を腰まで伸ばした日本人形の様な髪の写真に写っていた最後の1人だった。

「お前……言い方ってもんがなぁ」

「何よ、でも事実でしょ? それに捨てられたのは私達も一緒だもの」

 少し拗ねながらもそうすっぱりと言い放った。

「捨てられたって、ちょっと状況が読み込めないんだけど?」

「だからぁ、青園ちゃんは川波くんの事好きだったの、好きな人から何も言われずに縁切られたらそりゃ部屋にも篭りたくなるよねー」

 青園の好きな人? 川波が?

「そ、それは本当なの!?」

 うんうんと頷いていた黒髪の女の子の手を掴み迫った。

「うぇ!? ほ、本当よ! だってこの前青園さんが川波くんに図書室で告白がうんたらとか、好きとか言ってるの聞いたもの!」

「幼馴染さんや、一旦落ち着いたらどうすかね」

 彼は俺の手をやんわりとしかし強い力で掴んで彼女から離した。

「すまない、つい」

「そういや青園の家にはもう行ったのか?」

「えぇ。ただ一言も話して貰えなかったわ」

 って俺、そういやあの時川波の名前出しちまった……。

「ごめん2人とも、ちょっともっかい行ってくるわ。これ俺の連絡先、話してくれたお礼! 何か有ったら電話して良いから! 無償で1回くらいなら描いてやるよ!」

 俺は芸大で作らされた名刺を2人に渡して青園の家に走って向かった。

 ただ、無我夢中で走るも、普段運動なんて一切しない俺が徒歩で30分程掛かる所を走り切れる訳なく、半分程走って息が切れてしまう。

 っつーか今更戻ってどうしよ。川波が好きだったんだなって、さっきはお前を捨てた奴の名前を出して悪かったなとでも言えってか? ここ一年ほとんど連絡してない奴が?

「はぁ、はぁ、止めだ止め。さっさと帰って、レポートでも書こう」

 きっぱりとモヤつくこの気持ちと共に忘れて家へ帰る。それが出来たらどれだけ楽だろうか。俺の体はそれを許さないとばかりに青園の家へ歩いていった。

 そのまま特に何を言うとも決まらず、俺は青園の部屋の前に再び戻ってきていた。

 コンコン

 やはり返事は無い。

「青園、どっか飯でも行くか?」
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