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いやいや、、萌え系カレンダー作りたいだけだし

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 カナ歴に合わせて、カレンダー作りが始まる。カレンダーには季節の絵柄が入ると楽しいかもっという私の提案から、フェリス殿下が宮廷画家を用意してくれた。

 宮廷画家マリウスはちょっと可愛らしい見た目十五歳ぐらいだが、実年齢多分二十五歳くらいのお兄さんでもある。

 いつもはルネッサンス絵画を想像させるような絵を描いているのが、カナがちょっと下手くそではあるが、萌え系なイラストを披露したら、そのいつものおどおどしている態度が急激に変わった。
 
 こんな感じにして欲しいと頼むとなぜか……彼が大感動。
 命をかけて、このカレンダーを仕上げると言い出した。

 いや、それは正直重いですっと思ったが、口には出さなかった。

 王室も身近に感じてもらおうと初回から王族、貴族、騎士、庶民を一つのカレンダーに入れることにした。

 絵の部分には 留学生や王宮の人々(侍女たちも!)が起用されることになり、(というか、もちろん私が提案したんだけどね)四季に合わせ、カナ監修、宮廷画家マリウス画伯によるカレンダーが製作された。

 うーーん。この絵師マリウス。
 もしかして、アニメオタクの転生者??
 萌えいっぱいなカレンダー仕上げてくれた。
 美少女たちを描いてくれてありがとう。

 可愛いと評判の侍女のマリアちゃんも入っている。

 一月はもちろん王様と王女様。二人がお城のバルコニーから手を振られているシーンとなった。
 仲が良い国王リヒッド・ロゼリア・グレンヴィルと王女様カレンはいつも国民から愛されている。

 お美しいお二人が仲いいのは、国民の幸せですね。

 二月はもちろん、我が国の王子フェリス殿下。
 第一王権継承者である美しい王子。王室の初見の間の王の座にがっちり足を組んで偉そうに(いえいえ格式高そうに)座っていらっしゃる。

 笑顔なしのまったく不満そうな顔しているが、それが世の中の女子のツボを抑えていることを本人は全く知らない。

 カナにとっては、残念系の王子になり始めている。
 エロエロ発言さえなければねーー。

 「なんだか偉そうですね」と私。
 「だって、俺は王子だぞ。恥ずかしそうに座っていたら、おかしいじゃないか」
 「確かにそうですね。殿下が恥ずかしそうにしていたら、なにか悪いことが起きそうです。それか偽物と思われますね」
 「ケヴィン、俺をなんだと思っている」
 「王太子ですよ。この国の。第一王権継承者でもございます」

  そんなフェリスを無視して、次のページ。

 三月はなんと家令ケヴィンも入れちゃったよ。本人には言わなかった。カレンダーに入れるといったら、壮絶に拒否されそうだったからだ。

 隠れながらのマリウス画家の写生が功を奏した。

 えらい!天才画家。アキバ系絵師。

 ケヴィンが憂鬱そうに本を持ちながら、執務室で窓辺に立つ姿が色っぽ過ぎる。
 窓際に肩を寄せて、本を持っているものの、顔はまったく本をみておらず、窓の外をなにか切なそうにみている。唇がちょっと開いていて、しかもつややかだ。

 これは確実にファンに受けるなっと思う私。

 だが、これを見てケヴィンが震えている。

 「こ……これは、どういうことですか??」
 「これは全グレンビィア王国女子の妄想・・いえ・・・お願いがかなったものなのです」
 「んん……でも、これは、いつの間に」

 顔をちょっと赤くさせている。

 「ごめんなさい。ケヴィン様。どうしても、(王宮のみんなが)入れたかったの。怒ってる?」
と聞くと、
 「私を入れたかったのですか? そうですか。カナ様の為になるなら……どうぞ構いません。でも、どうぞこれからは私に相談してください。こんな覗かれていると思うと……とても恥ずかしいです。」

 「わ、わかった。これからは、そうするね」

 カナは知らなかった。その窓から見えていた景色にいた人が誰であるかを……。

 四月でマリアちゃん。
 主人へお茶を入れているシーンをお願いした。
 セピア色の執務室の窓際で、紅茶を入れるマリアちゃんが微笑んでいる。
 もちろんメイド姿だ。白地のエプロン的なワンピースがよく似合っている。やっぱりメイドって男性の妄想の夢なのかな。

「かわいいですね」
「かわいいな」

 男子二人ともやられている。
 恐るべしメイドパワー。
 それとも、やっぱり絵師の腕がすごいのか??

 五月は西の方の隣国から留学中の独身美女知的お姉さん系ミアさん。
 公爵令嬢で、魔術の進化の歴史ついて研究している。
 青い髪に白系のガウンを着て、なにか赤い液体をじっと見ながら美しい研究者という絵姿。

 「あ……これは公爵令嬢のミア様ですね。あの方の研究姿とは考えましたね」
 「あ、あいつはうるさい奴だからな。この前も……転移の魔術の歴史の本が難解だから、説明してほしいと、ものすごい絡まれた。実演してほしいとも言われたけどできないと言って断ったよ」
 「そうですか、断ったのは正解ですね。フェリス殿下。あまり外部の方にあなたの魔力を見せつけるべきありません」

 まあ、グレンヴィア王国がこれだけ留学生を受け入れていることは宣伝になるよね。 

 六、七月は可愛らしい侍女さんたちが庭の季節の花を愛でる様子が描かれていた。
 あの不思議な国のアリスみたいな庭園でみんなが草陰からひょこひょこ顔を出しているシーンである。

 八月は我が国の美女と歌われる赤毛の公爵令嬢の ダイナマイトボディの姉さんナタリーさん。
 実はこの方が一番フェリス殿下の妃の大本命といわれている。お互い全くその気はないらしいが、どうでしょうね。
 歩いているだけで、宮廷の騎士たちから熱い視線を受ける彼女。
 白い薄手のノースリーブのワンピースが薄いショールで出ている肩を隠している。
 ここの国では公爵令嬢でここまでファッションに冒険できるのはナタリーさんしかいない。

 でも、なにかその白色のワンピースが体の線をよく表しており、ちょっとエロい。
 日傘をさしながら、微笑んでいる。

 「ナタリー嬢も入っているのか。まあしょうがないな。公爵令嬢だしな。でも、あいつ以外でもよかったじゃないのか?」

 「フェリス殿下!!なんですか? ナタリー様はこの国の三大公爵の中で一番権力を持つと言われながら、天才魔法師でもいらっしゃるのですよ。彼女の持つヒール(回復)魔術は、今までの高度で難解であった回復暗唱を簡易化して、重症は難しいですが軽傷なら魔力の弱い魔師たちにも扱えるようになったんですよ」

 そうだ、そうだ、それにダイナマイトボディだし! とカナは、心の中で力説するケヴィンに同意する。

 「まあ、そうだな。あいつの功績はたしかに大きいな。まあ、これによって変な輩が増えても、あいつならかなりうまくやり込めそうだしな」
と一人で納得していた。

 そうです。ナタリー様。
 見た目以上に実力がありますから、ストーカーなんて存在させません。

 九月から十一月はなんと! 王立騎士団を起用した。

 だってちょっとイケメン入れたいよねーー。
 美形多い王立騎士団だもん。

 ここには、カナ厳選。

 騎士団美男子3人を起用。
 BL的絡みは残念ながら、なしだ。
 なぜなら、これはみんなが見るカレンダーだからだ。

 ただ、見た目、実力、なぜか色気を重視してカナのイケメンレーダーによって独断と偏見で選ばれた勇者だった。

 九月には王立騎士総団長、ヴァンダラス・ヒーコック(ヴァン団長)わすが三〇歳にて総団長 。

 魔力は少ないが、リーダーシップ、戦闘における戦いでは実戦では騎士団のトップ。
 短髪明るい金色髪。ダークグリーンの眼。
 まだ独身。背中で語れる美しい筋肉美の持ち主。
 ただし、喋り方も中身もおっさんぽい。カナの調査によると多分ダイナマイトボディ系がお好みらしい。

 (もしかしてナタリー姉さん狙ってる?)

 宮廷内では手出ししないが、市井には何人かお相手がいるらしいが、本命は不明。

 本人はどうであれ、フェリスも心配しており、嫁絶賛募集中であることから、見た目、色気、肩書きとも申し分ないから、カナのカレンダーの最終候補となった。
 もちろん騎士の戦闘姿。(赤色のスーツに銀の枠線が所々についている。)

 背中で語ってもらっている。横顔ポーズだ。

 じゅる……いいわ。これ。

 本人はとっても明るく気さくな性格でカナがお昼を騎士たちの練習場で鑑賞、いえいえ見学しているところに偶然鉢合わせたから、ときどき話すようになる。

 「まあ、ヴァン団長は絵柄的に男でも惚れますね」
 「!!!!そうなの!ケヴィン、団長狙いなの!?」
 「は? なにかカナ様は考えが違う方に流れていきませんか?」
 「おまえ、まだカナをわかっていないな。この三年間でよくこいつの性格がわかった。あまりそのカナの妄想……いや想像を助長させてはだめだ。現実社会にもどってこないぞ」

 十月は王立騎士団第一部隊隊長、リヒト・マードック。 25歳。
 そして、王立騎士団第2部隊 騎士カイン・ルービン。 23歳。

 リヒト・マードックは、群青黒の髪に細身筋肉質の体。長剣の両刀使い。俊敏な動きには、その殺気でさえ色気を感じさせるほどの技の持ち主。無口な性格だかときどき毒舌を吐く。

 第一部隊のカラーの深い青色のユニフォームはヨーロッパのような騎士に近い格好なのだが、フォーム全体がちょっと近未来的でもある。ぴっちり感があるのかな。

 絵では、得意の両刀使いのところはバレると敵と応戦した時に厄介であるため、反対に短刀を胸元にかざして、威嚇するかたちだ。

 その後ろにはカイン・ルービンが、耳にかかるぐらいの栗色の髪をなびかせて、艶やかな金色の目で遠くを見据えながら、弓矢を引いている。

 ここの国では彼ほどの明るい金色の目はちょっと珍しい。いつも第二部隊の象徴であるグリーンの色のユニフォーム。弓矢を得意としている。

 この二人が、それぞれのお得意の戦闘ポーズをしているところを左右と前後する形で描いてもらっている。

 うーーん、素晴らしい。

 「これはまた……なんとも面白い人選ですね。カナ様」
 「そう? 彼らはちょっと私の押しのカプ、いえ、かなりの実力者たちだよ。宮廷でも侍女さんからの人気ナンバーワンとツーだよ」
 「カナはこういうのが、好みなのか?」
 「え、好み? そうだね。絡みの絵的には……フェリス殿下とケヴィン様のほうが好きかな。でも、それだと、いろいろみんな困るでしょ。そんな絵柄」

  好みといわれて、ちょっと嬉しがるフェリスとケヴィン。

  でも、またはっとフェリスが気がついた。

 「あ、まてよ。また違う方向に、走っているな、カナは。でもちょっと選んでもらって嬉しい……な」
 「殿下。違いますよ、きっとカナ様がおっしゃっていることは。先ほどわたしも学習しました」
 「え、でも、好みといえば、リヒト様もカイン様もなかなかイケメンでしょ。これからもっと人気でると思うよ。でも、まあ騎士として人気があっても、実力がないと、どうしょうもないけど、私的には彼らなら大丈夫だと思う。ものすごい身体能力あるし」

 「え、カナ様はどうして、そんなに王立騎士団に詳しいんですか?」
 「あ……ああの、それはね、侍女さん達に聞いたの………」

 語尾が完全に上がっている喋り方に疑惑の視線をフェリスとケヴィンから受ける。
 
 これは完全に嘘である。

 いつもお弁当をもって、ヴァン団長とお話ししたり、またまた柱の陰から、騎士団の練習を盗みにしているからだ。

 だって生イケメン見放題だよ。
 無料だよ。
 カナは心の中で叫んだ。

 ちょっと呆れた顔でフェリスが話し始めた。

 「いや、カナは騎士団の練習をいつも見ているんだよ、ケヴィン。おまえの授業が終わってからの、昼どきだ。カナが騎士団の練習をときどき見ているというのは、ヴァンから報告がきてる」

 「ええ! ヴァン団長が! フェリス殿下に報告しているの!」
 「なんだ。不服か? おまえは私の印を持っているのだ。おまえがどこにいるのか、私はいつでもわかる。おまえに余計な虫がつくのは困るからな。いつも見張っているわけにはいかなし」

 虫だって。こんなチビの腐女子を狙う人なんているわけないじゃん、と思うカナ。
 虫のほうが、怖がってにげちゃうよ……とちょっと呟いた。

 気を取り直して、次の月。

 十一月はなんと……まだ騎士見習いのエリスくんを選んだ。
 まだなんと十三歳。

 少年の麗しさを凝縮した逸材なのだが、カナは彼にただならぬカリスマ性を感じた。
 見た目と将来性でいれてみた。

「カナ……どうして彼を選んだ?」
「え、それはショ……タコン用、いえいえ将来性を見込んでですね。子供たちにも受けがいいかなと思って。彼はとっても気がつく見習いさんですよ」

 ケヴィンとフェリスは顔を見合わせた。
 カナがなぜエリスを選んだか不思議でしょうがないのだ。
 普通は誰にもあまり気にかけられない騎士見習いだ。

 見習いは、あまり演習にも出ないし、どちらかといえば、騎士たちの身の回りの世話だ。
 道具の片付け、手入れ、演習場の準備なども彼らの仕事だ。約十名ほどの見習いたちが各部隊にいる。ちなみに王立騎士団は三部隊編成である。

 王立騎士団自体は全体で約百名程度。精鋭の集まりである。特に第一部隊はその中での精鋭三十人が集められている。

 二人の男が顔を見合わせたのには、理由があった。
 実は騎士見習いのエリスくんは、フェリス直属の隠密なのだ。
 これはフェリスとケヴィン、そして国王しかしらない極秘事項だ。

 エリスはフェリスの勅命をうけ、内外の動きを探っている。それは騎士団にも言える。

 いまはそんなに不穏な動きも見えない騎士団ではあるが、いつ何時、不穏分子が現れるかわからない。
 それを監視する役割がエリスだった。

 彼は実は代々隠密の家系であり、幼少から隠密に関わるすべての術と技を兼ね備えている。
 それには、もちろん人を殺める技もある。グレンビィア王国の闇を知る家系でもある。

 カナは全くこのことについて知らない。そんな隠れ逸材に注目したカナの眼力?(腐女子能力)に二人は驚いていた。

 「よくエリスが承知したな。あいつはこういうのは嫌いと思ったが」
 「案外、気に入ってくれましたよ。こういう姿してみたかったって言われました」
 「「ええ、そうなのか!!??」」

 エリスくん、実はこのカレンダーでは女装しております。
 ちょっとどこかの深窓の令嬢っぽく仕上げています。

 十二月のところをめくってみたフェリスとケヴィンは再び驚愕の声をあげた。
 フェリスの肩は怒りなのかわからないが、震えている。
 ケヴィンは目を見張りながら、呆然としている。

 はい、わたしです。
 すみません。
 脚色ありすぎです。

 フォトショップ(画像修正ソフト)ではないですが、かなり修正入っています。

 十二月の絵には私が描かれている。
 しかも半身アップだ。

 雪景色の中、白いもこもこコートにメガネなしのウルウルした表情で描かれている。
 上目目線で、何かをおねだりポーズみたいな感じだ。
 黒い髪はおろしてあり、唇は潤いたっぷりだ。

 セクシー路線ではなく、ロリータ路線なのかな、絵師的には。
 でも、本人曰く、こんなのまったく自分ではないから、ほぼ他人は気がつかないと思った。

 しかし、この二人にとっては違うようだ。

 「カナ様は入らない予定ではありませんでしたか? 申し訳ありません、殿下。わたしの監督不足でした。まさかこんなことになっているとは……」
 「え、そんなに出来が悪い? ごめんね。目の毒だよね。私じゃ? 役不足だよって言ったんだけど、絵師のマリウス様がどうしても、私を入れなければ、絶対にこのカレンダーを完成する自信がないと力説されて……」

 肩を震わせて激おこの方が話し出す。

 「ち、違うんだ。カナ! これは………目の毒なんてもんじゃない!だめだ!これは、俺のものだ。カナをなぜみんなに披露しなければならない」
と低いフェリスのバリトンボイスが威嚇する。

 「えええ?!」

 そっちなの?
 意味がわからないカナが呆れた顔をした。

 「そうですね。フェリス殿下。廃盤ですね。これは。生産中止にしましょう」
 「そうだ。やめるべきだ。こんなの。」
 「ええええ!!!」

 だめだって。ここまで、ものすごいみんな頑張ったのだから。

 なぜか日本にいる忍が懐かしくなった。
 見た目100パーセントイケてる二人だけど、だんだん中身が最近残念になってきていることが否めない。
 全く忍と一緒なのだ。
 変人お兄ちゃんだったけど、やっぱりいないと寂しいもんだね。
 ちょっと感傷的な気分になってしまった。

「だ、だいじょうぶだよ。フェリス殿下。は、恥ずかしいけど、メガネ外しているバージョンの私だから、多分だれも私って気がつかないし、しかも、絵師さんの脚色がものすごっいから……同一人物にみえないよ。みんな太陽暦、いやカナ暦を使って欲しいから、みんなに配りたいし。きちんとケヴィンの分もあるよ。はい……これ」

 ケヴィンにもう一部カレンダーを渡す。
 なぜか十二月のじっと自分の絵を凝視している。
 恥ずかしい……。

 「絵師のマリウスさんと相談してながら、量産どうやるか思案中だよ」

 !!!!!!

 二人のイケメンに、ゴッツ睨まれた。
 絶対に眉間に川の字、出来てるよっと思う。
 
 「「量産なんてしなくていい!!」」

 叫ぶ残念イケメン二人。

 ああ、ダメだ。
 なぜか3次元のイケメンって残念系が多いの?

 その後、このカレンダーは、シルクスクリーンの技術をどうにかこうにか絵師マリウスに伝授し、王室で大量生産することに成功した。

 まさかこのカレンダーが、のちの騒動を起こすとはだれも想像しなかった。
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