私は、御曹司の忘れ物お届け係でございます。

たまる

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蓮司の敵 現る?!

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 三人の前に立っている男は、所謂、仕事が出来る男の典型のような風貌だった。

 「白石先生? もしかして?」
 「あ、良かった! 随分久しぶりだから、美代ちゃんも随分、女性らしくなって素敵になったね。まるでこの雪解けを待って出て来た新芽のような瑞々しさ! 可愛くなったね……」
 「もう、先生。その古ぼけたようなキザな言葉いらないですから! 元気になってますから。あはははっ」

 急に現れた訳のわからない事を言っている男の登場に七瀬は釈然としない。

 (何だよ! この歯が抜けるような甘い言葉を平然という奴は!)

 しかし、歩美の対応は冷静だった。

 「初めまして。美代の友達の工藤歩美です。お宅様は?」
 「これはこれは、美代のお友達なんて、嬉しいな!」
 にっこり顔がはち切れんばかりのスマイルに変わる。
 「失礼しましたね。私は白石海斗と申します。昔、美代さんとは偶然知り合って、一緒にお仕事をさせて貰ったんですよ。一応、職業は弁護士です」
 「すげっ、弁護士先生かよ。美代、何なんだよ。お前の知り合い、みんな凄すぎねえか?」
 「あのー、その弁護士先生がどう言った御用でしょうか?」

 ギロリと歩美は白石を見る。

 「あれ、初対面でなんか嫌われたっぽいね。僕」
 「歩美ちゃん、違うの。先生とは会う約束してたの。でも、先生、会うのは3日後じゃーなかったですか?」
 「ああ、時間が急にできてね。それならと思って事務所から走って来ちゃったよ」
 「そんな焦らせてごめんなさい」
 「いいよ、可愛い美代の為なら、全く走るのも問題無いから!」

 このかなりキザな甘い言葉を全く平然な顔で聞いている美代に驚く七瀬と歩美。

 「まあ、こんなところで話すのもどうかと思うから、ちょっとみんなでお茶しませんか?」
 白石先生が提案した。

  
***

 ちょっと高級な感じのカフェで四人が向き合って座っていた。店内は意外と空いていて静かだった。

 「特許?」
 「うん。君が昔、お父さんになんかアドバイスしただろ?覚えているかい?」
 「あり過ぎてわかんないけど、酒飲み過ぎるなーとか覚えてるけど」
 「はははっ。その時、お父さん、なんかシャワーの水圧かな?」
 「あ!覚えている。どうやってシャワーの水圧をもっと上げてどうこうするって言っていたのね」
 「覚えてるか?」
 「でも、あれ水圧が殺人的に強くなり過ぎて製品にはならなかったって、聞いたよ」
 「そうだね、でも、あの実はお父さん、美代ちゃんの考えを採用していてね。特許を出していたんだよ。あの時、我々は知らなかったし、美代ちゃんは、まあ、あん時は絶望のど真ん中だったよね。知り合いの弁理士さんと相談していてね、それだけは美代ちゃんに受け継げないか相談していたんだ」
 「そして、遂に!その特許。美代ちゃんの物になりそうです」
 「どういうことですか?」
 「あんまりここで詳しい話は避けるけど、特許っていうのは、特許権の場合は出願の日から20年、実用新案権の場合は出願の日から10年は有効です。美代ちゃんに遺されたのは新案の方だったんで、実はあと、6年あります! 他にもまだあるらしいけど、詳しくは弁理士さんに聞いた方がいい」
 「え?白石先生、勝手にそんな事していたんですか?」
 歩美ちゃんが口を挟む。
 「うーむ。かなり君には信用をされていないね。一応、美代ちゃんの未成年の時の法定後見人は僕だったからね」
 そのウィンク、要らないし、軽すぎる!っと歩美は思う。
 「白石先生、そんな費用も何もお支払い出来ないのに、わざわざ余り商品にもならない物の特許まで取っていただいてすみません」
 「いやー、美代ちゃん、もう一個相談なんだ」
 「何でしょう。私は先生あっての自分ですから……出来る事なら喜んで!!」

 暫くの沈黙の後、爽やかさが取り柄の白石から笑みが消えた。

 「こんなみんなの前で悪いけど……美代ちゃん、僕と結婚してくれませんか?」

 「「「えええええ?」」」

 3人がそれぞれ、その白石の言葉に驚愕した。
 ただ胸に走る想いは全く違っていた。
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