私は、御曹司の忘れ物お届け係でございます。

たまる

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嵐の夜 二

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 「冗談では、、ない、です」

 頑張って反論したが、それがまた完全に良くない答えだったと、美代は身をもって知る。こみ上げてくる感情と蓮司の巧みな指先使いが美代を苦しめる。雨の激しい音が自分の鳴り響く心臓の音と重なり合い、切ない思いがこみ上げる。

 「ああ、そうか、このお口さんがいけないんだな、修正してやろう」
 「え、あっ、か、会長!」

 すでに布団に押し倒され、蓮司の下敷きとなっていた。
 危く艶やかな唇がまた美代の口元に繋がる。
 何分、経ったのだろうか?
 息さえもつけない。

 「早く、冗談だと認めろ、止めないぞ、美代。しかも、大胆不敵に、留守番で一言だとっ。お前は! 俺を何だと思っているんだ!」

 ふらふらの状態で、美代も一生懸命、答えようとする。

 「ち、違います、あ、留守番は、意味は……会長っが、出ないから、あの、一身の上の都合、で……ですから」
 「……一身上の都合だ? 何だそれは?」

 首筋をずっとなぞるように蓮司の指がゆっくりと動く。指は美代の前開きのパジャマの第1ボタンの周りを怪しくなぞっている。

 美代はこの状況が悪化するとは考えずに思ったことを口にした。

 「け、結婚をする予定になりそうで……」

 蓮司の目が見開かれた。

 「……結婚? ……まさか? 七瀬か?」
 「え?会長、七瀬君のこと知っていたの? いえ、あの白石海斗さんと言う方です……」

 バコって音が頭の上でした。
 パラパラっと何かの屑が頭にかかった。
 見上げたら、蓮司の拳が半分以上壁の中に埋まっていた。

 あ、穴が開いてますよ! ちょっと!
 大家に怒られるじゃん?
 あ、やば、こいつが大家だよ、正確には。
 まずい、このアパートを吹っ飛ばしても、たぶんだれも文句言う奴などいなそうだ!

 「何だと? 白石だと? あいつめ……さすが弁護士だな、動きが素早いな」

 ああ、やっぱりあの白石先生の言っていたことは本当なんだなと感じた。蓮司会長にとっては、私は、単なるゲームの駒なのだ。悲しみよりも切なさと苦しさが胸をこみ上げる。美代の視線に気がついて蓮司が美代を見つめ返した。

 「美代、何だ。その顔は?」
 「か、顔? いつもの同じ地味な顔ですよ! 何ですか、そっちこそ。こんな夜更け、しかも嵐の夜にやってきて!!」

 だんだんと腹が立ってきた美代が言い返す。

 「お前こそ、俺が上空にいるときにあんなふざけた伝言を残しやがって、香港からすぐに飛んで帰ってきたんだぞ!」
 「え? 香港?」

 蓮司はこの悪天候のため、東京には飛ぶことができず、違う離れた空港まで行き、そこからここまで来たのだ。かなり無理をしたのだが、それは美代に言うほど重大なことではなかった。美代の発言の方が問題なのだ。

 「ごめんなさい、知らなかったので、すみませんでした」

 なぜかまた美代の返答の仕方が蓮司の何かを刺激したらしい。

 「お前はこの身体に刻まれた斑点を持ちながら、何もわからないのか?」

 悪魔の笑みを浮かべた蓮司はそのままパジャマの下で手を弄り始めた。その大きな手と長い指先が考えられないような繊細でかつ大胆動きをする。

 巧みな指先の動きに美代はもう体に力が入らない。

 「あ、悪いな、手が滑った」

 ブチっという音と共に何か飛ぶ。

─何? 

 気がついてみたら、第一ボタンがなくなっていた。

 「会長、ボタンが……」

 「ああ、すまんな、お、まただ」

 ブチッ、ブチッと何か切れ、台所の端に小さな破片が落ちる音がした。

 「え、ちょっと、ひぃ!」

 蓮司が微かに触れた敏感なところに反応してしまう。

 「ああ、またボタンだな!」

 ブチっ、ブチっという音がまたした。

 「悪いなーー、美代。どうやら何だか手が滑ってしょうがない。嵐のせいだな」

─え、嵐なの? 嵐のせいなの? ボタンが!

 「ボタンが、全部、ない?」

 呆気に取られている美代を笑いながら蓮司が見る。
 うまい具合にお腹だけが露わになった。見えている肌を指先でお腹のある一点に当てる。

 「ここだ、ここにお前は俺のもんってマークをつけた……」

 おへその近くだった。なぜかホッとした。

 「ほら、あるだろ。俺の印が……」
 「え?」

 そこには以前つけられた赤い印があった。

 「小学校でも、習っただろ? 持ち物、名前書けって」
 「はぁ?」
 「お前の身体に油性マジックで書くか?」
 「え、それは、マジご勘弁ください!」

 蓮司は赤い跡を優しく指先でなぞると、唇を寄せた。彼が艶めかしい動きした後、そこに痛みが走る。

 「い、痛っ!」
 「わかっていないようだから、もう一回全部付け直してやる」
 「えええ? えええええ? えええええええ??」



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